●第99回全国高校野球選手権大会 山学初戦
~投手陣安定せず崩壊。前橋育英に敗れる~
~中盤に反撃するも及ばず。初の決勝の夢潰える~
「第99回全国高等学校野球選手権大会」が8月8日に開幕。2日目の9日に山梨学院高が登場した。この日の第3試合に群馬県代表・前橋育英高と対戦した。前橋育英高は3季連続甲子園出場を果たした強豪校。2年連続7度目の出場で優勝を目指す山梨学院にとって、まずはひとつの壁を乗り越えなければならない相手。3塁アルプススタンドには午前4時にバス23台で甲府を出発した応援団、吹奏楽部、チアリーダー部を中心とした生徒会や生徒、教職員、約1100人と野球部保護者会、OBなど2000人を超える大応援団が陣取った。試合が始まった午後1時20分。台風一過のすさまじい暑さが戻り、グラウンドを照りつけた。先攻の前橋育英高を迎えるのは先発の吉松塁投手(3年)。先頭打者にいきなり死球を与え、犠打、四球、適時打で1点を先取される。その裏、山梨学院も好機を作るも無得点。3回表、吉松は先頭打者に安打を許すと、後続に本塁打を含む4連続長短打を浴び5点を追加された。山梨学院も四回裏に3つの四球で満塁に、五十嵐寛人(3年)が中越え三塁打を放ち3点を挙げ追う。山梨学院は投手継投で、相手を封じ込めようとするも、五回表、六回にも追加点を奪われ、11対2と大きく点差を広げられた。六回裏に3連続を含む4本の安打で2点を返すもここまで。12-5の大差で初戦敗退した。山梨県勢初の決勝戦進出の希望も潰えた。
昨日、投手陣の出来が鍵となると予想したが、山梨学院の投手陣が踏ん張れずに、相手の打線に捕まってしまった。三回、六回に打者一巡の集中打を浴び、本塁打も3本打たれた。試合は、先発の吉松塁(3年)は立ち上がりが悪く、先頭打者に死球を与えると犠打、盗塁、四球で一死三塁、一塁。次の4番打者に初球を中前に運ばれ簡単に1点を失った。二回は三者凡退で以降立ち直るかに見えたが、三回には先頭打者を安打で出すと二死三塁から2点本塁打を含む4連続打で5点を失い、二番手左腕の宮内大河(3年)に救援を仰いだ。山梨学院も四回裏、3四球で二死満塁の好機に、この日1番で起用された五十嵐寛人(3年)が中越えの打者一層の3点を挙げ反撃した。前橋育英高は五回にも四回から宮内を救援した石井友樹(3年)から失策絡みの1点を加え、さらに六回には、先頭打者に死球を与え、犠打で送られると次打者にきっちりと適時打で効率良く攻められ1点を追加された。なおも四球で二死二塁、一塁に8番打者に右翼スタンドに3点本塁打を浴び、栗尾勇摩(3年)にマウンドを託した。栗尾は夏の大会には一度も登板がなく、久々の登板。最初の打者に四球を与え二死満塁の窮地になるも次打者を打ち取った。山梨学院もその裏、先頭打者の7番松尾孝太(3年)、続く山本瑞基(3年)、広瀬巧真(3年)の3連打で1点を追加、一死後、栗尾が適時打で粘り強く加点したものの反撃はここまで。その後は無得点に抑えられ12対5の大差で初戦敗退した。全国で勝つチームを目標に研鑽を積み、山梨県勢の、山梨学院の歴史を変えることができずに夏の大会が終わった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
前橋育英高 | 1 | 0 | 5 | 0 | 1 | 4 | 1 | 0 | 0 | 12 |
山梨学院高 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 5 |
山梨学院
[投手]吉松2回2/3→宮内1/3→石井2回2/3→栗尾2回1/3→垣越1回
[捕手]五十嵐→山本瑞基
[打撃] 安打7《 三塁打1:五十嵐 二塁打1:松尾 安打:関口1、松尾1、山本1
広瀬1、栗尾1》 四球6 三振7
[交代] 中尾(左)→(H)丹沢海輝(左) 栗尾(一、投)→五十嵐(捕、一)→(捕)山本
丹沢(左→右)→五十嵐(一→左)
試合後、五十嵐寛人選手は「初回の1点でしたら東海戦でもあったので問題なかったですけど、3回の5点は痛かったです。吉松の状態は打たれる度に悪くなっていたので、どうしようか考えているうちに甘い球を打たれてしまった。自分の責任でもあります。最後にこれだけ投手陣が崩壊して負けてしまったので今までさんざんリードを買って出していただいた監督さんたちには申し訳ないと思いますし、悔いはないと言ったら嘘になります」と唇を噛んだ。栗尾勇摩主将は「相手はボールの芯に当てる技術が高くて、1点で抑えるところを連打されて2点3点4点と取られたところが差になってしまい。それでも離されても粘り強くしがみついていくということはできたと思うので失点は多かったですけど、自分たちの野球はできたと思います、全力でやった結果がこうだったので悔いはないです」と清々しく語った。吉田洸二監督は「12点も取られるというのは予定外過ぎて、四球(13)も多くてうちの投手があんなにもコントロールが悪いのかと思うくらいでした。想定外で一番こういう展開は考えていませんでした。これが甲子園かもしれませんが。何故こんなに大味な試合になってしまったか、不思議です」と首を傾げた。新チームに向けては、「いいところはしっかり継承して、改善するところはチームとして進化するように。こういうことを繰り返しながらチームとして成熟していかねばなりません。この貴重な苦い体験ですけど、こういうことを味わって人は頑張って成長できると思うので今日の悔しさを忘れないで練習していければ」と前を向いた。
◆選手の力に成れ、2000人を越える大応援団
3塁側のアルプススタンドは全校応援の生徒、生徒会、教職員、OB,野球部保護者会など2000人を超える大応援団で埋め尽くされた。応援団の中心はベンチ入りできなかった野球部員。それをサポートするのは応援団部長の田中ともかさんと副団長の深澤菜月さん(左から)、。吹奏楽部の志村和奈部長(3年)を初めとする吹奏楽部、チアリーダー部の志村桃華部長と部員の面々生徒会の役員が一丸となり応援を盛り上げた。試合前、志村桃華さんは「甲子園となると声が届きにくくなってしまうので、選手たちに私たちの声が届くような、楽しくないと応援ではないので皆が盛り上がれるような応援ができたら」と答えた。野球部保護者会の広瀬好伸会長は「県大会同様に今までやってきたことを出せれば、結果は付いてくると思います。一つひとつしっかり勝ってもらいたいというのが今の気持ちです。選手の力に成れるような、まとまった応援で後押ししたいと思います」と話した。しかし、力のこもった応援もむなしく、力及ばず初戦敗退、県民の夢も来年に持ち越した。体調が悪い中、最後まで皆を鼓舞した田中ともか応援団長は「昨年から頑張ってきた姿をいっぱい見てきたので、勝ち進んで欲しかったなという気持ちで悔しいです。だけど負けたけど選手たちが輝いている姿を甲子園で見られたので悔いなく終われたかなと思います」と涙をこらえて話した。志村和奈吹奏楽部部長は「選手たちは精一杯頑張ったと思いますけど、選手が辛い時とか苦しい時にスタンドの制服組とか生徒会、チア、吹奏楽、保護者の方もたくさん来てくださったのですけど、その応援が選手の力になっていたのならすごくうれしいことだと思いますし、負けてはしまいましたけど、選手が甲子園に連れて来てくれたことに一番感謝しています」と話した。
山梨学院高野球部は初戦で、目標にしていた山梨学院の歴史を書き換えることはできなかった。しかし、多くのサポートに支えられ、この大きな夢と希望を多くの人たちに与え、眩い光とともに至福のひとときに誘ってくれた。夢は、次の後輩が現実のものに叶えればいい。楽しませてくれてありがとう。
文(K.F) カメラ(平川大雪・藤原稔・今村佳正・K.F) 2017.8.9