山梨学院パブリシティセンター

HOME

山梨学院パブリシティセンターニュースファイルイメージ画像

●山梨学院日本文化ワークショップ2017
~能の世界の基本を学ぶ 1回目~
~能楽師・佐藤寛泰氏が能の奥深さを解説・指導~

山梨学院生涯学習センターは、日本文化ワークショップ2017「能の世界の基本を学ぶ」と題して10月31日、山梨学院50周年記念館6階生涯学習センター講義室で第1回目の講座を開催した。山梨学院は、自国日本文化を深く理解し、国際的に活躍する人材を育成することを目指しており、今回のワークショップはその取り組みの一環として、12月までの3回講座で能に関する基本的な知識を体験的に学べるプログラムを実施する。今回の講師は、能楽師の佐藤寛泰氏を中心に第一線で活躍する方々を招いて行われる。約50人の参加者が集まった第1回目の講座は「能の基本」として能の成り立ち・歴史、能の決まり・しきたり、所作など能の楽しみ方をシテ方喜多流職分家12代目・佐藤寛泰氏が解説。興味深い話や祝言の謡曲「高砂」を佐藤氏の指導のもと参加者全員で体験した。また、最後には山梨県石和が舞台となった演目「鵜飼」を能独特の節回しで実演。参加者は一流能楽師の芸を目の当たりに体感、堪能していた。

山梨学院は、連歌発祥の地として文化の振興を図るために連歌を蘇らせ、山梨学院が母体となり酒折連歌賞の創設を行い、大学においてはiCLAでの日本を学ぶ体験型授業「日本文化研究プログラム」、古典芸能研究会の「山梨学院酒折能プロジェクト」、小菅信子ゼミでの「歌舞伎酒折座の旗揚げ公演」など日本文化の掘り起こしを積極的に行っている。山梨学院生涯学習センターでは世界に誇る日本文化を広く地域に発信する目的で日本文化ワークショップ講座を企画し、今回、「能の基本を学ぶ」では世界無形文化遺産に第1号登録された日本伝統芸能である能の世界を取り上げた。能の始まりは、680年前に観阿弥、世阿弥が起こした前身の猿楽からであり、その後は武家のたしなみとする芸事として庇護され各流儀が連綿と受け継がれてきた。日本が世界に誇る文化である。

第1回目となる「能の世界の基本を学ぶ~能の基本~」の開催に先立ち、参加者約50人を前に永井健夫生涯学習センター長は「今回生涯学習センターでは、単に鑑賞するだけではなく能についてじっくり学ぶ機会を設けたいと思いまして、今回のワークショップを企画しました。この企画を通して皆様たちに能について理解を深める有意義な時間になればと願っています」と挨拶した。それに続き能楽師・佐藤寛泰氏のワークショップが始まった。

若手能楽師として活躍する佐藤寛泰氏の佐藤家は、代々仙台伊達家のお抱え能楽師であった。現在、シテ方(主役)の流儀には観世、室生、金春、金剛、喜多と五つの流儀があるが喜多流は流儀最後の江戸時代初期に創立した。寛泰氏はシテ方喜多流職分家12代目として流儀を継ぎ、舞台公演をする傍ら、東京・岩手・仙台・甲府の稽古場で謡と仕舞いを教えている。山梨学院との関係も深くiCLAの非常勤講師も務め、学生鑑賞能やワークショップにも積極的に取り組み、山梨学院大の学生の指導も行うなど、若い人への能楽(能と狂言の総称)の普及に尽力している。

佐藤寛泰氏は、能の歴史やしきたり、決まりごと、鑑賞の楽しみ方などの解説を行い、「現在観ることができる能は680年ほど前にできたものがそのまま継続して観れることが他のものと大きく変わり、能にはアドリブというものが一切ない」と話し、「能での役割はすべて専門職で兼務することがないことが特徴。舞い方の所作も変わらないまま受け継いで実直にしていくことが能楽師の仕事。変わらない伝統を継続することに一切の妥協は許されなかった。各流儀で江戸時代から上演する曲目は流儀により節回しや扮装、演出が多少変わるものの、ほとんど共通。そのため、リハーサルなしで呼吸だけで合わせる」と説明。次々と興味溢れる解説に参加者は引き込まれた。さらに「能には演劇的要素はありますが、何かを考えて何かを自分に照らし合わせて昇華することが能の元々が持っている源流になります。今度能の舞台に観にいかれる方は、余り多くの知識を詰め込んでいきますと想像力が欠如してしまいますので、前もってあらすじを頭の片隅に入れる程度で、実際に見るとこのように表されているのかという楽しみ方、見方でいらっしゃるといいと思います。能という舞台は、皆さんの想像ひとつにより、非常に無限なる可能性を秘めているのが能の世界観になります」と鑑賞のコツを伝授した。講座の後半では、喜多流謡曲の祝言「高砂」を佐藤氏の指導で節回しなどを学び、全員で声を出して体験した。最後には山梨県の石和を舞台にした演目「鵜飼」の内容解説と佐藤氏の本物の謡いを目の前で堪能した。

講座を聴いた留学生7人の内、ベトナムからの留学生グエン・ティ・ホン・フックさん(大学院1年)は「私は日本の文化に興味があって、できるだけいろいろな体験ができたらいいなと今年の4月から(研究会)練習を始めたのですけど、このワークショップに参加できて能についての知識も少し深くなったと思っています。(謡について)日本の文化の深さを感じました」と話し、中央市から参加の主婦3人は「声が素晴らしいです。本物を間近かで聴けて良かったです。今まで実際には観たことがないですけど、今回話を聞いて舞台を見てみたいと思いました。日本人なので伝統文化を学んで周りにも伝えることができたらと思います。このような講座があればまた、足を運びたいです」と満足した様子だった。

これからの「能の世界の基本を学ぶ」は、第2回目、11月21日(火)。「衣装と能面」佐藤寛泰(シテ方喜多流)。第3回目、12月12日(火)。「囃子と謡」佐藤寛泰(シテ方喜多流)、佐藤陽(シテ方喜多流)、住駒充彦(小鼓方幸流)となっている。

文(K.F) カメラ(平川大雪) 2017.11.1