●内閣総理大臣杯全日本大学レスリング選手権
~3連覇ならず。乙黒兄弟がまさかの無得点~
~70㎏級木下、74㎏級藤波の3連覇も実らず~
レスリングフリースタイル大学日本一を決める平成29年度「第43回内閣総理大臣杯全日
本大学レスリング選手権大会」が11月11・12日に福井県・おおい町総合運動公園体育館で行われた。この大会は来年の国体が福井県で開催される「福井しあわせ元気国体レスリング競技プレ大会」として行われた。この大会の出場枠は参加大学から1階級1人として8人が出場でき、個人の成績のポイントによる大学対抗戦として争われる。山梨学院大は、今大会では3年連続6度目の優勝に挑んだ。1日目は、97㎏級アルメンタイ・バグダウレットが優勝、57㎏級の小栁和也(4年)は3位、125㎏級の貝塚賢史(4年)が7位入賞し得点を獲得したが、61㎏級の国体王者で優勝候補の乙黒拓斗(1年)が3回戦で負傷棄権の波乱があり、得点を獲得できずに大学対抗得点5位とつまずいた。12日、最終日は65㎏級、70㎏級、74㎏級の3階級が行われ、この日も65㎏級優勝候補の乙黒圭祐(3年)が2戦目で敗れ得点を奪えず、70㎏級の木下貴輪主将(4年)、74㎏級の藤波勇飛(3年)が3連覇を飾り追い上げたものの、6年ぶりの団体優勝に輝いた拓殖大に僅か4.5点届かず2位に終わった。3連覇、東日本学生リーグ戦とともに3年連続二冠を目指したが及ばなかった。総合成績は優勝・拓殖大、準優勝・山梨学院大、3位・日大、4位・国士舘大、5位青山学院大となった。勝負は蓋を開けてみなければ分からない。大方の予想では山梨学院の圧勝と言われてきたが、苦戦を強いられ苦い経験となった。なお、最優秀選手賞に藤波勇飛が選ばれた。
まさに悪夢に見舞われた。山梨学院の3連覇は堅いという大方の予想を裏切り準優勝に終わった。勝負に「たら。れば」は禁句だが、そう言いたくなる今大会だった。
◆1日目。61㎏級乙黒拓斗負傷、途中棄権。大学対抗得点に誤算。
1日目上位ポイントが確実視されていた61㎏級乙黒拓斗(1年 東京・帝京高)の3戦目、7-0でリードし勝利間違いなしと思われた時、左膝を負傷し無念の途中棄権。無得点に終わる波乱があった。10月の国体で優勝し、今大会でも優勝を有望視されていただけに山梨学院にとって痛手となった。1日目は、他に57㎏級小栁和也(4年 山梨・韮崎工高)も優勝を狙いながら小学生・中学校からのライバル、この階級優勝した長谷川敏裕(日体大)に準決勝で敗れ、敗者復活戦に回り3位となった。小栁和也選手は「長谷川戦は勝ったり負けたりしている相手ですけど、自分は体力が切れてしまい、最後に点を取られてしまった。悔しいです。減量がきつくて、ばててしまいました。去年と今年は全部3位で準決勝の壁を乗り越えられなく本当に悔しいです」と話した。1日目唯一優勝を果たしたカザフスタンからの留学生97㎏級、アルメンタイ・バグダウレット(1年 カザフスタン)は、優勝までの5試合で3ポイントをとられたものの、3つのテクニカルフォール(TF)と万全の試合で頂点に立った。6月の東日本学生春季新人選手権に続いての優勝を飾りひとり気をはいた。アルメンタイ・バグダウレット選手は「大事な試合だから最初は緊張したけど、優勝できたしチームに貢献できて良かった。日本に来てスタミナも付いたし力も付き、日本のレスリングも勉強になります」と喜びを表した。(今年卒業したボルチン・オレッグさんが通訳した)125㎏級の貝塚賢史(4年 茨城・霞ヶ浦高)は7位入賞。86㎏級横山凛太朗(1年 三重・いなべ総合学園高)は2戦目で敗退した。1日目は、乙黒拓斗のアクシデントで出遅れ大学対抗得点は5位となった。
■2日目最終日。ここでも番狂わせ乙黒圭祐が2戦目で敗退。得点獲得に貢献できず。
2日目は、国体65㎏級で優勝し、この大会でも優勝を有望視されていた乙黒圭祐(3年 東京・帝京高)が2戦目で敗れ、波乱が続いた。第2ピリオド終盤までリードしていたものの、減量苦から追いつかれラストポイントで悔しい敗戦となった。期待された大学対抗得点に貢献できなかった。世界選手権銅メダル、国体優勝の実績を携えた74㎏級の藤波勇飛(3年 三重・いなべ総合学園高)は、初戦から準決勝まですべてTF、第1ピリオド内で対戦相手を退けた。特に準決勝は今年の全日本学生選手権の優勝者奥井眞生(国士舘大)を僅か43秒でマットに沈めた。決勝は、拓殖大の吉田隆起を第2ピリオド早々に下した。藤波は65㎏級、70㎏級、74㎏級と階級を上げ、3階級にわたり無類の強さを発揮した。ポイントを1つも取られない圧倒的強さで優勝した藤波勇飛選手は「まあ、普通というか自分の動きができました。決勝で最後1ピリオド掛かってしまったのは心残りですけど」と淡々と語った。藤波は、今大会最優秀選手賞に輝いた。70㎏級の木下貴輪主将(4年 鹿児島・鹿屋中央高)も決勝までの5試合中、準決勝まで4試合すべてでTFで勝ち進み危なげなく決勝に進んだ。決勝では8-2で優勢勝利し、夏の全日本学生選手権と二冠に輝いた。一昨年の70㎏級、昨年の74㎏級に続いて3連覇を成し遂げた。山梨学院はこの日の2階級優勝で大学対抗得点を追い上げたが、1位の拓殖大48.5点に4.5点届かず44点で2位に甘んじ、3連覇を逃した。木下貴輪主将は「3連覇が懸かった大会でしたが、怪我があったり、思うように勝てなかったり、普通の団体戦と違って組み合わせなどで左右される大会なので、そんなに簡単に3連覇できるような甘くはなかったです。自分自身にはプレッシャーはなかったです。自分はただ自分の階級で優勝することだけを考えていました。あまり動きは良くなく試合内容としては全然駄目な試合でした。もっと楽に勝てる試合もありしました」。後輩に向けては、「来年はこの悔しさをバネに、この内閣もリーグ戦も勝って悔いのない試合をして欲しい」とエールを送った。
小幡邦彦コーチは「前評判はうちが優勝候補と言われていたのですが、実際に試合は何があるか分からないというのか、勝ってくれる選手は勝ってくれましたが、怪我してしまったりミスが出てしまったり、その辺りが今回2位になった課題かなと思います。優勝した拓大は優勝者がいなかったですがトータル的に高い点を取っていたので、この大会は全部を平均的に点を取らないと勝てないと改めて団体戦の難しさを知らされましたし、選手たちはリーグ戦に優勝して、余裕もあって今年は選手も揃っているので3連覇できるだろうと思っていただろうし、まあいい薬になったと思います。この結果は、同じようにならないよう、しっかり鍛え直してきます」と捲土重来を期す。
文(K.F) カメラ・取材(今村佳正) 2017.11.15