●第90回日本学生氷上競技選手権大会 最終日
~スピード女子団体2種目で2位。フィギュアも健闘~
~4年生後輩に山学の伝統を託し涙のラストラン~
長野県軽井沢町で熱戦が繰り広げられてきた「第90回日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)」は最終日1月8日を迎えた。この日は、スピードスケート競技とフィギュアスケート競技が行われ、5日間の大会を通じて選手たちは、今自分が持っている力の限りを尽くして母校のため、チーム、自分のために滑った。スピードスケート競技最終日は、インカレ対抗戦の花形、4人で滑る男女2000mリレーと3人一組で滑るチームパシュート(団体追い抜き)が行われた。最初の種目、女子2000mリレーは、1走・原茉畝(3年)、2走・高山菜摘(4年)、3走・持田あかり(2年)、4走・虫狩光桜(3年)の力のこもった滑りで2位に入り表彰台に上った。男子は2走、3走のバトンの受け渡しで接触があり、失格となり記録なしとなった。続いて行われた男女のチームパシュート。男子は3人一組でリンクを8回、女子は6回周回する。女子は、原田梨央(4年)、高山瑞穂(3年)、川上琴子(3年)のメンバーで臨み、3人の息の合った滑りで2位を獲得した。男子は、入賞できなかった。この結果、山梨学院のスピード部門(ショート、スピード)で女子総合成績は1位となり昨年から大幅に躍進、男子は総合成績9位と昨年より順位を落とした。すべての競技終了後、山学大はスケート部全員でラストラン、花束を手にした7人の4年生は、一人ひとり4年間のスケートへの思いをいつも陰で支えてくれた保護者、監督・コーチ、後輩の前で述べ、溢れ出る涙を拭い、感謝の気持ちを伝えた。夕方から行われたフィギュアスケート競技女子FS(フリースタイル)で河西萌音(1年)、藤本梨乃(1年)は初のインカレに挑み22位、18位となりフィギュアスケート部門のSP(ショートプログラム)との総合成績は9位となった。
■《最終日 1/8 午前10時 曇り 軽井沢町風越公園屋外スケートリンク》
◆女子2000mR(リレー) 2位 原茉畝・高山菜摘・持田あかり・虫狩光桜
◆男子2000mR 失格 岡田崚・青木雅弥・赤神諒・渡邉晟
8日最終日、4日間晴れが続いた天気から一変、どんより曇った朝を迎えた。最初の種目女子2000mRは、1人が500mを滑り4人がバトンリレーで繋いでいく競技。スピードの速いスケートはバトンの受け渡しが非常に難しい種目。僅かのミスが致命的になる。
チームが一つになる団体戦はインカレの華。各大学の滑走者は母校の名誉と誇りを懸けて滑り、控えの選手、保護者など応援するものは滑走者に思いを託して熱い声援を贈った。リレーメンバーの第1走者・原茉畝(3年 北海道・帯広三条)「山梨学院行くぞ!」の大きな掛け声でスタート。2走の高山菜摘(4年 北海道・駒大苫小牧)、3走持田かおり(2年 北海道・白樺学園)、4走虫狩光桜(3年 北海道・池田)の4人でバトンを繋ぐ。レースは、原の力走で流れを作るとバトンの受け渡しもスムーズ。第4走の虫狩が信州大のエースをしっかり抑え、結果は2位になり、今回2つ目の表彰台を決めた。第1走者の原茉畝選手は(写真は左から持田あかり・原茉畝・高山菜摘・虫狩光桜)「去年と同じメンバーだったので、自分は1走をずっとやっているので自信を持って4年生最後の菜摘先輩に繋げました」。2走の高山菜摘選手は「インカレが始まって最初で最後のレースで今までで一番良い滑りができたと思います。結果は思っていたより2位といういい結果が出て本当にうれしいです」と最後のレースで力を発揮した。3走の持田かおり選手は「いつも以上の力を発揮できたと思います。1500mと1000mを滑ってきて、あまり緊張もなくできたので良かったです。昨年は涙しかなかったので今回は、笑顔で終われてよかったと思います」と話した。アンカーの虫狩光桜選手は「個人レースよりは緊張はなかったのですが、相手は自分より上と分かっていたので多少のプレッシャーはありました。でもみんなが後ろと差をつけて滑ってきてくれたので自分も安心して昨日と一昨日の調子いい状態で滑りやすかった」と晴れ晴れとした表情で話した。
男子リレーメンバーは2組目の滑走。同走は女子と同じく信州大。第1走者の岡田崚(2年 北海道・釧路江南高)はやや遅れるも、2走青木雅弥(2年 北海道・池田)に繋いだ。青木はショートの疲れも見せず、伸びのあるスケーティングでリードして3走の赤神諒(3年 北海道・釧路北陽高)にバトンを繋ごうと近づいた時、青木の左足と赤神の右足が接触。二人が転倒。赤神が起き上がり必死に前を追った。バトンを受け取った4走の渡辺晟(4年 福島・郡山商高)はゴールするも、3走のオーバーゾーンのため失格となり、得点を獲得できなかった。
◆女子チームパシュート 2位 原田梨央・高山瑞穂・川上琴子
◆男子チームパシュート 10位 山本大平・山本大生・渡邉晟
続いて行われたのは、今大会最後の種目「チームパシュート」。チームパシュート(団体追い抜きとも呼ばれる)は、3人一組で滑り、男子はリンクを8周(3200m)、女子は6周(2400m)でのタイムを競う。2チームがメインストレートとバックストレートの中央から同時にスタートし、3人目の選手のブレードがゴールしたタイムで勝敗を決める。スピードスケート競技や自転車競技などで採用されている。2006年のトリノオリンピックからオリンピック種目に採用された。個人選手と違い、強い選手が弱い選手を引っ張り全員が一団となって滑ることが大事。先頭は空気抵抗が掛かり、体力を消耗するために、3人がコーナーで先頭を入れ替わりながら滑走するといったチームプレーの戦略が鍵になる。
山梨学院のメンバー(左から川上、原田、高山)の先頭はこのレースが最後の山田梨央(4年 北海道・白樺学園)。3人が息を合わせ、先頭を変わりながら滑る。残り2回で信州大をリードしてゴールした。この時点でトップに立ったが、その後、高崎健大にタイムで抜かれ2位となった。原田梨央選手は「この2日間あまり記録を残せなかったので後輩の力も借りて最後いい結果を残せたらいいなと思ってレースに臨みました。想像していたよりも良くてうれしいです」。高山瑞穂選手は「自分が先頭に行った後に離れないようにするというのが一番でしたが練習よりは大丈夫でした。高崎健大には勝てないかなと思っていたので2位という結果は良かったです」。川上琴子選手は「高崎さんには勝てると思っていなかったのでまずまず良かったかなと思います。日体には総合では今負けているので、リレーとパシュートで勝てれたらなと思い滑りました。大学入ってから結構スランプで記録も出ていなかったので、今年はすごく調子も良くなってきて記録としても自分の自信に繋がるものが、このインカレでも得られたかなと思います」とそれぞれが感想を述べた。
この大会、今一つ波に乗れない山梨学院大男子最後のレース。メンバーは山本大平主将(4年 青森・八戸西高)と弟の山本大生(3年 八戸西高)、渡辺晟の構成で臨む。山本大生と渡辺の二人は山梨学院勢男子の中で入賞を果たしている。スタート時の先頭は渡辺が担当。渡辺はこの日の2000mRにも出場。疲れが残る中でのレース。序盤はややリードされるが、中盤はほぼ互角の戦い。残り2回にはリードするも、最後に僅差で敗れ結果は10位となった。
レース後、川上隆史監督は「スーパースターといいますか、たくさん点を取る選手がいない今回のインカレで、ベストタイムを出す選手がたくさん出てきたということは、男子も女子もそれぞれ全力を出し切ったインカレでした。今回卒業する4年生もチームワーク良くまとめてくれました。今回の成績結果をしっかり受け止めて、そのチームワークの力で来年以降さらに進化するチームを作る原動力にしたい」と大会を総括した。
全てのスピード競技を終えた各大学チームは、部員全員で4年生を送るラストランを行った。山学大チームもショートトラックの菊池哲平、松島ジョアンナ瑤子も加わり、一列に隊列を組みリンクを周回、別れを惜しんだ。挨拶した川上隆史監督は「山梨学院はインカレ50回大会からの参加で40回目となります。4年生は1年生から続けてきた最後のインカレということで特別な思いがあると思います。皆は3年生以下今回の成績を含めて今後も頑張ってほしいと期待をして4年生は卒業していきます。これから新しい1年生を迎えて41回目のインカレに向けて頑張っていってくれると思います。それが歴史であって伝統だと思います。その伝統を引き継いでインカレの一つの区切りとして送り出したい」と言葉を贈った。4人の4年生はじっと耳を澄まし、涙を浮かべ聞き入っていた。伊藤潤二コーチは「これから社会に出るともっといろいろなつらいこととか厳しいこととかあるかもしれないですけど、このスケートで培った体力とか精神力などが必ず活きていくと思いますので、まだまだこれからの人生の方が長いです。頑張ってください」とはなむけの言葉を贈った。
今大会、力を出し切れずに終わった男子の主将山本大平選手は「山梨学院のスケート部のために貢献できるように頑張ったんですけど、少し力不足なところがありました。自分では全力出して完全燃焼できたかなと思っています」と話し、「監督やコーチの支えがあって、さらにチームメイトが皆ついてきてくれたので、自分も結果として残すこともできましたし、キャプテンとして、しっかり役目を果たすことができたと思います。今までのスケート人生で一番充実していた4年間だったと思います」と振り返った。ムードメーカーとして皆を引っ張った女子主将・原田梨央選手(4年 北海道・白樺学園高)は「この4年間は思うような結果が出なくて本当に苦しかったですけど、周りでたくさんの人が支えてくださって、この4年間最後まで頑張ることができて本当に良かったです」と感謝の言葉を述べた。4年間チームの中心にいて今回、リレーだけの出場に留まった高山菜摘選手は「自分より速い人がレースに出て結果を出せば、悔しい部分はあるんですけどうれしいとかありがとうとかという気持ちもあって、自分が出なくてもポイントを取れる人がいることはレベルが上がっているなと実感しています」と話した。
◆フィギュアスケート競技最終日 FS(フリースタイル)藤本梨乃18位、河西萌音22位
この日、スピードスケート競技がすべて終わり、隣接するアイスアリーナで女子7・8級クラスの決勝、FS(フリースタイル)が午後3時過ぎから行われた。山梨学院からの出場は昨日のSP(ショートプログラム)で河西萌音(1年 山梨学院高)は12位、藤本梨乃(1年 山梨学院高)15位の二人が決勝のFSに挑んだ。夕方5時前に藤本が11番滑走で登場。眩しいい青色(シアン)のコスチュームを身にまとい、ディズニーの「シンデレラ」の曲に合わせて4分間の演技をした。最初のコンビネーションジャンプを決め、トリプル、再びコンビネーションを決め順調に演技を進めたが、4本目のジャンプを転倒、続くジャンプも失敗した。滑走後、藤本梨乃選手は「フリーに残れると思っていなかったので、フリーの準備がしっかりできていませんでした。いつもよりスピードが出てなくて、明るい曲なのでもっと笑顔で滑らないといけないなと思いました。4本目飛ぶ前に力が入り過ぎてタイミングがずれてしまい、でも4本目は飛びたかった」と悔いた。結果は18位となった。SPで12位となった河西萌音の演技は、藤本の後、整氷後に行われた。鮮やかな黄色のコスチュームに上半身にスパンコールをあしらった衣装で、「美女と野獣」の曲に合わせ滑り出した。冒頭のコンビネーションジャンプ、トリプルと決めると、続く2回目のコンビネーションがずれると、次のジャンプも両足着氷、転倒と失敗を重ねた。スケーティングが良かっただけに悔やまれる演技で評価を落とし22位と順位を下げた。河西萌音選手は「全日本でいろいろな選手を見て、刺激を受けたり追いつかなければいけないという気持ちの焦りもあったのと、もっと上を目指そうとして、今あるものをちょっと甘く見ていたのかなと思います。今できているものを何もしなくてもできるかなというふうにちょっと思っていた気持ちの緩みがいけなかったかなと思います」と反省した。山梨学院のフィギュアスケート競技の大学対抗順位は9位となった。
大会の結果、スピード部門(ショート含む)男子の大学対抗得点は1位日大、2法政大、3位専修大。山梨学院大は11位、総合成績得点では15位。女子のスピード部門大学対抗得点は1位山梨学院大、2位高崎健大、3位日体大となり、フィギュアを含めた総合成績得点では3位になった。
文(K.F)カメラ(平川大雪)2018.1.8