●山梨学院大生が甲府市に移住定住促進策を提言
~学生による地域課題総合研究の成果発表会~
~自治体と学生がともに地域課題を考える~
山梨学院大学が地域課題の解決を目指すことを目的にした授業、「地域課題総合研究」の一つとして行ってきた「移住定住促進策」を提言する成果発表会が1月19日に甲府市役所で行われた。山梨学院大では2016年9月後期授業として「地域課題総合研究」科目を開講。自治体と学生がともに地域の課題を研究しようとするもので、その一つとして「移住定住促進策」を研究テーマに設定、その成果を最終的に自治体に対して提言することで授業を展開してきた。昨年1回目として同時期に笛吹市に対し研究成果発表を行い、今回の甲府市は2回目となる。発表会の冒頭、担当教授の今井久山梨学院大学現代ビジネス学部長が趣旨説明を行い、続いて法学部法学科・政治行政学科、現代ビジネス学部現代ビジネス学科の3学科、2年、3年生の学生12人(留学生4人)が4つのワーキンググループに分かれてそれぞれ発表を行った。どのような取り組みが移住定住による人口増に繋がるか、市の担当職員に現状や課題を聞き取り、甲府市の移住者に行ったインタビュー調査などをまとめた移住定住を促進するアイディア、「移住者Xつながり」「農家を営む方の移住」「留学生の目に映る甲府での生活」「Uターン移住者を増やそう!」を4つの案として提言した。視聴した20人ほどの市職員は熱心に学生の提言に耳を傾け、メモを取っていた、最後に甲府市・依田幸二企画部地域振興課長が学生たちの提言に感想を述べ、前向きな検討を約束、謝意を述べて閉会した。山梨学院大では、来年度も甲府市を含めた他の自治体と連携し、地域の課題を研究していきたいとしている。
地方都市の人口減に歯止めが掛からない現状に地方自治体の多くが頭を痛めている。その中で各地方大学や経済団体が取り組む文部科学省の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」がある。その一環の授業科目として山梨学院大の「地域課題総合研究」が2016年9月に開講した。この科目は地域が抱える諸問題を自治体と学生がともに研究していこうとするもので、昨年同時期に初めて笛吹市に移住定住促進策を提言した。2回目の今回は、甲府市に同課題策の研究発表を実施した。現在、甲府市は約190,000人(2018年1月1日現在)の人口に対して2025年には約178,000人強、2035年は約163,000人と予測されるため、深刻な問題としてさまざまな施策に取り組んでいる。そのひとつに『移住定住』が挙げられ、今回、甲府市は学生たちの若い視点を施策に反映しようと学生と協同で取り組んできた。学生は甲府市の職員の授業を受講したり、市役所に出向いて打ち合わせを繰り返して情報を得たり、すでに市内に移住している人にインタビューなど実地調査を進め、県内外の成功事例なども調べたりしながら、それを基にグループでアイディアを練り上げていった。
発表会では、最初に今回の担当教授今井久山梨学院大学現代ビジネス学部長が趣旨説明を行い次に日高昭夫山梨学院大学副学長・法学部教授が挨拶に立ち、「これから自治体と大学との関係もこのような仰々しい場ではなく、日常のいろんな形で学生たちも忌憚なく意見を言って、また市の職員の皆さんや市民の皆さんと様々な形で交流して課題を共有し合う場をフランクに作っていくきっかけに今日がなれたら良いなと思っています」と述べた。
続いて、4つのワーキンググループに分かれて、研究に取り組んだ成果を発表した。初めに「移住者Xつながり」を発表した4人のグループは、まずヒアリング調査の結果として甲府市と移住者とのつながりが乏しく、移住者の相談相手がいないことを課題として挙げ、希望者には甲府見学ツアーと希望者同士の交流会を行うなどの促進案を提言。最後に甲府市を好きになってもらうことが大事と結んだ。「農業を営む方の移住」は、移住を決断しても住まいや畑、農機具の提供の情報がないことを挙げ、そのためには甲府市をあらかじめ知ってもらうためのホームステイ企画の実施や農家と行政のつながりを強化することと発表を行った。「留学生の目に映る甲府での生活」では、韓国からの留学生3人とベトナム人留学生1人が発表した。留学生から見た甲府での生活の良い面、良くない面を挙げ、留学生を移住希望者と置き換えて魅力と感じることに取り組むべきだと提案した。最後のグループの「Uターン移住者を増やそう!」は、Iターン希望者を呼び込むのではなく、ターゲットを故郷に戻って生活してもらうUターン移住希望者に絞ると提案。そのためには甲府市の移住情報サイトの提供が少なく、呼び込むための工夫やPRが不足していると辛口の提言をした。
若い学生ならではのアイディアに富んだ視点からの提言を受けて依田幸二企画部地域振興課長は「みな違う視点からで面白い提言でしたが、なかなか政策立案まではいけないかも知れませんが、日々の実務の中でいろいろなキーワードもあったので、どんどん取り入れていければと思っています。もう一つお願いしたかったのは、人口流出を考えると、甲府にいる若い人が外に行かないためのはどうするかという視点も入れてほしかった」と総評した。発表を行った小林太地(現代ビジネス部3年)さんは「甲府市に住んでいるんですけど、新しい発見があったのでこの授業を受けて良かったと思っています。ヒアリングした人がたまたま農業をしている人だったので農業にテーマを絞りました。また、機会があったらいろいろ話を聞いたり考えさせてもらえたら」と話した。同じく甲府在住の渡辺智宏(法学部政治行政学科2年)さんは「甲府市は、何もないというイメージだったんです。今回の取り組みで“いやいや、いっぱいあるじゃん”、甲府市に限らず山梨県にはいろいろあるじゃんと気が付いたので、また、こういう活動があるならばやってみたいです。何を言われるか分からないですけど、言いたいことはどんどん提言したいです」と、学生たちは地域の課題に取り組むことによって、その地域の良さを再発見する効果を感じていた。
今井久現代ビジネス学部長は「この授業は、『移住定住』にこだわっているわけではないのですが、大きな課題として今回も引き続き協力してもらいました。山梨県をよく知ってもらうことと社会で通用する力を育成することを目的にしていますが、今回はいろんな方にインタビューをしたり、また学生が積極的に甲府市へ来て調査したり、2年目で昨年よりさらに深く踏み込めたかなと思います。甲府市さんには、授業にも来ていただき全面協力していただきました。将来的には、こういうものをきっかけに山梨県や甲府に興味を持って地元だから甲府に住むとか、県外だけれども甲府に住むというふうに繋がっていけばいいなと思います」と話した。今回の発表でこの授業は終了するが、この後グループの提言と、個別の提言を冊子にまとめて甲府市に提出する。山梨学院大では、来年度も甲府市を含めた他の自治体と連携し、地域の課題を研究していきたいとしている。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2018.1.20