●山梨学院中「パーソナルプロジェクト2017」
~個人の興味・関心を1~3年間かけ研究論文に~
~各学年3人の代表者、9人が研究成果を発表~
山梨学院中学校は「パーソナルプロジェクト」全校発表会を2月16日、山梨学院ルネサンスホールで行った。山梨学院中は教科の学習と並行して、学びの大きな柱となる「プロジェクト」という自主学習の積極的な取り組みを行っている。実体験から学び経験を積むことで思考力や表現力を身につけることを目的としている。数人から十数人のグループに分かれて課題を探求するのが「チームプロジェクト」。「パーソナルプロジェクト」は、1年から2年、3年間を通じて個人の興味・関心に従ってテーマを決め調査・研究をし、その成果を論文にまとめプレゼンテーションの形で発表するもので今回4回目。この日は、クラス発表と学年発表で優秀と認められ、最終選考で選ばれた各学年3人、9人の生徒が研究テーマを全校生徒248人の前で発表した。発表後、山内紀幸校長は「今回の発表では単年度で終わらなくて、中学校の2年、3年間を懸けた研究が増えたことがとてもうれしかったです」と講評の中で述べた。各賞の発表、表彰は後日行われる。
山梨学院中学校が、グローバル社会を生きるために取り組む新たな教育プロジェクトに国際バカロレア(IB)がある。国際バカロレア(IB)は、世界共通の大学入試資格とそれに繋がる小・中・高校の教育プログラムで「パーソナルプロジェクト」は中学生(MYP)を中心とした生徒の個人的なプロジェクトを指す。「パーソナルプロジェクト」に求められるのは、自らテーマを設定し、十分な調べ学習において知識を理解・応用し、実験、開発的な活動を通して、自分なりの考えを論文にまとめる力を養うものとしている。
山梨学院中の「パーソナルプロジェクト」は、4月に科学系、自然系、文化系、医療系、国語系、社会系、英語系など7系列の中から個人の興味・関心に沿ってテーマを自身で決め、計画書を基に調査・研究を進め、最終的な成果として論文の形にする。1年間で研究結果をまとめることも、同じテーマに2年、3年間を費やし取り組むも自由。自ら研究資料を収集したり、調査対象の現地に足を運び、聞き取りを行ったり、観察・実験をしてその結果を3年生が5000字、2年生が4000字、1年生が3000字以上の研究論文にまとめ、様々な方法で修正を加えながら、完成させていく。今年度は全校生徒248人全員が研究を進めてきたテーマをクラス内発表を経て、各クラス3人ずつの代表が各自の研究成果を学年全体の前で発表するなど準備を進めてきた。2月16日、集大成となる今年度の「パーソナルプロジェクト」の発表は、特に優秀だった各学年代表の3人がそれぞれパワーポイントやアイパッドで作った資料をスクリーンに映し出し、限られた時間の中で全校生徒の前で研究成果を披露した。
日常生活で気になったことを研究テーマにした「服に付いた汚れを簡単な方法」は、ラー油、しょう油、油性ペンなどで普段の生活で付きやすい5種類の汚れを、液体洗剤、固形石鹸、クレンジングなど6種類の汚れを落とすものを使い、同じ条件で実験結果を発表するものや昨年と同様にロケットの製作に挑戦した生徒は、前回より飛距離を伸ばすために2段式ロケットに取り組み、打ち上げに成功した様子を早回し映像やBGM、打ち上げ時の効果音を使い巧みなプレゼンテーションで会場を沸かせた。また、同じくよりレベルアップを目的に2年続けて小さく軽いアマチュア無線づくりに取り組んだ生徒は、夏休みをほぼ費やして複雑な基盤づくりに苦労したことや、その後の修正にも時間を掛けたが思い通りの結果にならなかったことをグラフ、イラスト、写真、動画を駆使して発表した。他にもそれぞれが挑んだ研究成果を発表した。
◆パーソナルプロジェクト最終選考9つのテーマ(発表順)
学年 | 氏名 | 系列 | プロジェクトテーマ |
1年 | 清水 優圭 | 科学系 | 服に付いた汚れを簡単に落とす方法 |
1年 | 渡邊 甲斐 | 科学系 | 家の中で一番汚いところを探す |
1年 | 窪田 美咲 | 科学系 | 1本のシャープペンの芯で書ける長さ(良いシャープペンの芯を探す) |
2年 | 小俣 慶祐 | 社会系 | 廃材を活用したピザ窯作り |
2年 | 岩瀬 香凛(体調不良欠席) | 科学系 | 効率良く発電する風車 |
2年 | 丹澤 公誠 | 科学系 | ロケットの歴史と2段式ロケットの製作 |
3年 | 小林 ほの香 | 科学系 | 食物の皮を使った和紙の作成~より本物の和紙らしくするには~ |
3年 | 小槙 創 | 科学系 | 名探偵コナン中の「DBバッジ」の開発と比較・評価 |
3年 | 中山 創平 | 自然系 | 汽水域を再現したビオトーブにおけるアサリの飼育実験:完結編 |
昨年はキャベツ、玉ねぎの皮を使用して作った和紙で『鶴』の折り紙づくりに失敗した小林ほの香さん(3年)は今回、「食物の皮を使った和紙の作成」で実用性のある和紙を必要のないもので作ることを目標に2年続けての和紙作りに挑んだ。小林ほの香さんは「昨年は失敗しましたが、今回は『鶴』がきれいに折れたので自分的には上手くいったと思っています」。和紙作りに挑戦したきっかけは「初めは和紙の歴史や文化を学んだのですけど、自分でも作ってみたかったのと、他人と同じようなものは嫌だから野菜の皮でやってみました」。パーソナルプロジェクトに対しては「すごく楽しかったです。自分で工夫して物事を進めていくのもそうですし、発表するのもそうですし、面白かったです」と振り返った。発表が全て終わり、講評に立った山内紀幸校長は「全校発表をとても楽しみにしていました。今日発表した皆さんに共通して研究に対してある一定のレベルを超えていました。中でも今回の発表では単年度で終わらなくて、中学校の2年、3年間を掛けた研究が増えたことがとてもうれしかったです」とプロジェクトに向かう生徒の姿に喜びを表した。プロジェクト担当の一瀬大輔教諭は、4回目になるプロジェクトについて、「自分たちで物を作って実験によって確かめるという研究が非常に多く、例年ですと調べ学習が各学年いるのですけど、年々そういう生徒が減ってきて自ら試してみる生徒が多くなってきています。失敗から学んでレベル的にも高くなっています」と成果を語った。
後日、今日の発表者の中から各学年1人ずつに学年最優秀賞が授与され、その1人に全校最優秀賞が贈られる。
文(K.F) カメラ(平川大雪)2018.2.17