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●「第十九回酒折連歌賞」表彰式
~大賞・渕上友美奈さんら上位5人喜びの声~
~表彰式後、連歌発祥の地・酒折宮を参詣~

「第十九回酒折連歌賞」の表彰式が2月18日、山梨学院クリスタルタワー7階広報スタジオで行われた。表彰式には、受賞者の5人のほか選考委員、主催者関係者、後援団体各賞授与者、報道各社が集まった。今回、酒折連歌賞への応募は国内外から総数30,973句が寄せられ、その中から一般部門大賞・文部科学大臣賞には高校生の渕上友美奈さん(三重県南牟婁郡)が受賞。表彰状と副賞が贈られ、昨年から設けた大賞杯も授与された。山梨県知事賞は山梨学院高校の内藤詩乃さん(笛吹市一宮町)、山梨県教育委員会教育長賞に古賀由美子さん(佐賀県唐津市)、甲府市長賞は最高年齢95歳の塔筋一春さん(大阪府岸和田市)がそれぞれ受賞、表彰状と副賞が贈られた。また、小・中・高校生を対象にしたアルテア部門の大賞・文部科学大臣賞は山本ひかりさん(中学3年 静岡県静岡市)が受賞、表彰状と副賞が贈られた。また、一般部門大賞同様、大賞杯が授与された。一般部門の大賞・文部科学大臣賞を受賞した渕上友美奈さんは「国語の『創作』という授業で歌会をしたのですが、この片歌は他のクラスメイトが最優秀に選ばれたのでまさか私がこのような賞をいただけるとは思いませんでした。本当にうれしく思っています」と受賞の喜びを語った。4人の受賞者(塔筋さんは高齢のため欠席)は、表彰式後、連歌発祥の地・酒折宮を参詣し、受賞を報告した。

◆酒折連歌賞とは

わが国の連歌発祥の地とされている『酒折宮』にちなんでつくられた酒折連歌賞は、1998年(平成10年)、多くの人が連歌に興味・関心と創作意欲を持つことで連歌の再興と普及により、文学の振興、文化の創造を推進しようと、山梨学院大学が母体になり創設された。「古事記」に登場する倭建命(日本武尊)と御火焼(かがり火役)の老人との問答にちなみ、五・七・七の『問いの片歌』に対して『答えの片歌』五・七・七で返す問答形式の歌遊び。文学形態上からも珍しく特色があるといえる。伝統を現代に活かそうという試みは、今回で第十九回を数え、一般部門では大賞の文部科学大臣賞を初め、山梨県知事賞、山梨県教育委員会教育長賞、甲府市長賞があり、また、小・中・高校生を対象に、斬新で若々しく将来楽しみな才能を見出すことを目的としたアルテア部門にも大賞・文部科学大臣賞が設けられている。これら上位5人の句のほか、入選10句、優秀賞12句、優良賞54句、アルテア賞佳作19句の合計100選を選出。選考委員は(右から)、選考委員長の三枝昂之氏(歌人)、宇多喜代子氏(俳人)、今野寿美氏(歌人)、井上康明氏(俳人)、もりまりこ氏(歌人)、辻村深月氏(作家)の6人が務めた。辻村氏は所用のため表彰式は欠席した。

表彰式では、主催者代表の古屋忠彦山梨学院大学長は、初めに受賞者に祝いの言葉を掛け、並びに多くの応募作品を審査する選考委員、酒折連歌賞に関心を寄せてくれる報道機関に謝辞を述べた後、「私たちの学園も創立70周年を過ぎました。決して古くはありませんが、その大学が主催する酒折連歌賞が地名の古さでは古事記、日本書紀に載っています。大学の名前はないはずですが、地名を大学の名に冠したところがいくつあるのだろうと思い抱かせるほど誇らしい名前だと、受賞者、関係者の皆様に改めてご認識をいただいて本学100周年を迎える時にも酒折連歌賞が連綿と続いていることを夢見ています」と挨拶した。続いて廣瀬孝嘉酒折連歌賞実行委員長が酒折連歌賞の特色を説明した。「『問いの片歌』を提示して『答えの片歌』を募集する、全国に例を見ない文学賞になっています。相手を受け止めた上での言葉選びにこの文芸の特長があり、鑑賞や創作を通して二人の心が触れ合い、通じ合いが生まれ、一人で作品を作っていることでは得られない、生きたコミュニケーションが形成されます。こうしたぬくもりの輪をさらに広げていきたいと願っています。酒折連歌は、人の心と言葉を繋ぐ、奥の深い、魅力ある文学です。来年度は20回という節目を迎えます。皆様方の一層のご支援、ご協力を改めてお願いします」と挨拶した。選考委員の三枝昂之委員長は「酒折連歌は日本の文芸の一番根っ子にあるのが片歌の問答で、それを今日に伝えているのがこの酒折連歌ということになります。古いことだけが文芸の価値ではありませんが今日の詩形となる努力があって初めて詩の力になるわけで19回重ねて3万句以上の応募があることは大切な実績であると思います」と評価。最近の近代文学全体の「自分の中に閉じこもる」引きこもり傾向と批評し「その中で改めて『私とあなたのコミュニケーション、問いと片歌のコミュニケーション』する文芸の酒折連歌はいよいよ大切になってくると思います。ですからこれからの文芸の一つの足場として酒折連歌のようなコミュニケーションの詩形というのはますます大きくなると皆さんの作品が教えてくださっている」と酒折連歌に思いを寄せた。続いてそれぞれの受賞5作品に講評を加え、それに応え受賞者が喜びの言葉を述べた。なお、甲府市長賞の塔筋一春さんは高齢のため欠席したがビデオレターで喜びを語った。

◆上位5人受賞者の受賞の言葉と創作に込めた思い

◆一般の部 大賞・文部科学大臣賞 渕上友美奈さん
<問いの片歌(二)> 
森へ入る儀式のように小声でうたう
<答えの片歌>
動物にお邪魔しますと二礼二拍手
         
渕上友美奈さん(女性 高校3年生 18歳 三重県南牟婁郡在住)
「国語の『創作』という授業内で行った歌会では、別のクラスメイトの作品が最優秀賞に選ばれたので、まさか私の作品が文部科学大臣賞を受賞するとは思いませんでした。高校3年間を締めくくる良い思い出になりました。授業で問いの片歌を読んですっと浮かびました。『森』という言葉から、熊や虫などが浮かび、『儀式』という言葉からお参りのイメージがあったので、二礼二拍手が浮かびました。どこかへはいるときは、『お邪魔します』と必ず言うイメージがありました」。

◆一般部門 山梨県知事賞 内藤詩乃さん
<問いの片歌(一)>
百年を考えている夏目漱石
<答えの片歌> 
罪悪と言われし戀をまだ知らぬ我

内藤詩乃さん(女性 高校3年生 17歳 山梨県笛吹市在住)
「学校の授業の一環として高校1年生から取り組んできました。普通だったら連歌は文学史として学んで終わったかも知れないところでこの文芸賞があることで現代でも楽しんだり触れたりする点が良いと思っています。授業で『こころ』を読んで旧字体の『戀』という漢字がとても印象に残っていました。問いの片歌で夏目漱石を見たときにそれが思い浮かび作りました。まさかこのような賞をいただき驚きましたが、大変うれしいです」。

◆一般部門 山梨県教育委員会教育長賞 古賀由美子さん
<問いの片歌(五)>
ニホニウム113をはじまりとして
<答えの片歌> 
神様はあちらこちらでかくれんぼする

古賀由美子さん(女性 62歳 佐賀県唐津市在住)
「第6回から参加しています。大好きな公募です。募集期間中ずっと投稿していますので100句は出しているでしょうか。これまで百選に6回選んでいただきましたが、大きな賞は初めてで選んでいただきとてもうれしいです。問いの片歌と静かに対峙することが何より幸せです。『ニホニウム』、初めて聞く言葉でどうやって取り組んだらいいだろうと悩むことも多くありましたが、きっと神様が作ったのだと思いました。神様はとても気まぐれなので姿を現したり隠れたり、かくれんぼが上手です。理解できそうで分からないという気持ちを書いてみました」。

◆一般部門 甲府市長賞 塔筋一春さん
<問いの片歌(四)> 
十字路で迷子になったちいさな羊
<答えの片歌> 
迷うほど歩いてみたい自分の足で

塔筋一春さん(男性 95歳 大阪府岸和田市在住)
「大腿骨を骨折して入院してから自分の足で歩くことが難しくなりました。もう一度自分の足で歩きたいという思いがあり、その思いを切実に歌に込めました。受賞は予想外で上位の賞をいただけるのは夢のようでございます。飛び上がるほどうれしく思います。息子は『100%年齢加算』と言いますが、卒寿で九十歳半ばで人生残りも僅か、たそがれを生きる身に花を咲かせてくださいました」。

◆アルテア部門<小・中・高校生対象> 大賞・文部科学大臣賞 山本ひかりさん
<問いの片歌(四)> 
十字路で迷子になったちいさな羊
<答えの片歌> 
葉桜の木漏れ日揺れてみんなも揺れた

山本ひかりさん(女性 中学3年生 14歳 静岡県静岡市清水区在住)
「自分一人で作るのではなく、『問いの片歌』があって初めて完成するものなので問いの意味を考え、自分なりの表現で答えるということが俳句などよりも難しいと感じました。授業の一環で多くの賞に応募しましたが、大きな賞をいただいたことがなくとても驚いているとともにとてもうれしい気持ちでいっぱいです。十字路で迷子になったちいさな羊が今、受験生となり様々な選択肢の前で迷っている私たちの心境と重なり『大丈夫だよ。一人じゃないよ』という思いを表現したいと思いました」。

受賞者は表彰式後、報道の取材を受け、記念写真撮影などを行った。その後、連歌発祥の地・酒折宮を参詣し、受賞を報告した。

文(K.F) カメラ(平川大雪) 2018.2.18
100選の詳細及び選評は酒折連歌賞HP

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