山梨学院パブリシティセンター

HOME

山梨学院パブリシティセンターニュースファイルイメージ画像

●やまなし学研究2018 開講
~市民ら80名が「道」の意義を考察~
~『甲斐國志』から甲斐九筋を読み解く~

山梨学院生涯学習センター主催の「やまなし学研究2018」前期コースが、4月25日開講された。前期コースは、「甲斐の古道を訪ねて」をテーマに全7回実施され、この日は山梨学院大学法学部政治行政学科の保坂康夫非常勤講師が「古道の文化史-甲斐の古道概論-」と題し、第1回目の講座を行った。会場となった山梨学院生涯学習センター講義室には、80名の市民や学生が集まり、保坂講師の話に耳を傾けた。保坂講師は『甲斐國志』から甲斐の古道(甲斐九筋)を読み解き、古事記や日本書紀に記載されている酒折の歴史的価値を解説。さらに、旧石器時代から近世にかけての土木工事や道路建設から甲斐の交通路の成り立ちについて、図表や写真をもとに説明を加え、「道」の意義について詳説した。市民らは真剣な表情で保坂講師の話に聞き入り、時折熱心にメモを取るなど甲斐の古道について理解を深めていた。

山梨学院生涯学習センターは、“地域文化の創造拠点”として「学びの場(機会)」の地域開放を使命として一般市民などを対象とした様々な講座を年間を通じ開講している。このうち「やまなし学研究」は2004年度に始まった人気講座の一つで、今年度前期コースは募集を開始すると翌日には定員に達し、市民のこの講座に対する関心の高さが伺えた。「やまなし学研究」は、学部学生に対しても総合基礎教育科目として開講。前期コースは山梨学院創立70周年記念事業の「甲斐の古道プロジェクト」と連携し、「甲斐の古道を訪ねて」をテーマに甲斐九筋や酒折宮とヤマトタケル伝承、古代・中世の軍道など全7回の講座が組まれている。第1回目は山梨学院大学法学部政治行政学科の保坂康夫非常勤講師が講師を務め、「古道の文化史-甲斐の古道概論-」と題し、学生を含めた市民80名を前に講座を行った。

保坂講師は、1956年、山梨県甲府市生まれ。広島大学文学部史学科考古学専攻卒業。専門は考古学(旧石器時代)で、これまで山梨県立考古学博物館次長を務め、在職中に書きあげた「日本旧石器時代の礫群をめぐる総合的研究」で広島大学から博士号(文学)の授与を受けた。山梨県考古学協会委員長、山梨郷土研究会編集委員長、身延山大学仏教学部非常勤講師などのほか、「甲斐の古道プロジェクト」の委員としても活動している。

講座の冒頭では、江戸時代の地誌『甲斐國志』を読み解き、「本州九筋ヨリ他州へ通ズル路九條あり・・・(中略)・・・皆酒折ヨリ路首を發起ス」の記述を紹介し、江戸開府前の徳川家康による街道整備の状況も取り上げ、大学が所在する酒折の歴史的価値や酒折が起点とされる甲斐九筋(甲斐の古道)の概要について解説。さらに、旧石器時代から近世にかけての交通路の成立や土木工事、道路建設の概況について図表や資料を提示。保坂講師は「道」の意義について「古代・中世・近世に<道>があったからこそ人や物の交流が生まれ、支配が行き届き国として成立した。<道>は国の成立や発展に必要不可欠なものだった」と説いた。その上で、甲斐の交通路成立までの歴史的背景を詳説し、「『甲斐國志』に九筋の起点が酒折にあることを敢えて記述していることから、酒折は重要な場所であったことが伺える。酒折は、端境の場所で<巷>として、他国へ出る起点となる場所で経済的にも人や物が集まる場所であったと推測できる。考古学的視点から見るとまだ謎はあるが、酒折には歴史的価値がある。また、『甲斐國志』には200年以上の甲斐の歴史が刻まれ、地域の素晴らしさを手にすることができる」と語り、講座を結んだ。終了後には、質疑応答の時間も設けられ、受講した市民から積極的に質問が挙げられ、時間の許す限り議論を深めていた。

「やまなし学研究2018」前期コースは、4月から7月まで行われ、後期コースは9月から12月まで「山梨の地場産業」をテーマに開講される。

文・カメラ(M.K)(S.C)2018.4.26

「やまなし学研究2018」前期コース


| アルバム1 |