●2018山梨学院小「スポーツフェスティバル」
~子どもたちで考えた独自のスポーツプロジェクト~
~IBの理念を取り入れ今年のテーマは「OLYMPIA」~
山梨学院小学校の一大行事「スポーツフェスティバル」が5月26日、古屋記念堂で開催された。準備は5月14日から始められ、2週間の期間をかけて『スポーツプロジェクト』の集大成として行われた。今年は「OLYMPIA~古代ギリシアの風~」のテーマが採用され、国際バカロレア(IB)の教育理念を取り入れ、企画・立案・運営を全て子どもたちが仲間と協同して作り上げた。スポーツプロジェクトは1つのテーマを事前に学習し“走る”“蹴る”“跳ぶ”“投げる”“踊る”の運動要素を取り入れたオリジナルな全身表現や運動競技が繰り広げられる。山梨学院小では、さまざまなプロジェクトを実施しているが、秋に行われる「オクトーバープロジェクト」、冬の「アカデミックプロジェクト」とともに3大プロジェクトと呼ばれ、通常の授業とは別に時間を設け、学年の壁を取り払い一つのテーマを協同で追求していく山梨学院小独自の課題探求型学習。「スポーツプロジェクト」は年ごとに大きなテーマ、「大航海時代」、「古代文明」、「太陽系」、「宝石」、「地球」、「Discovery 発見」、「VIVA」などを掲げ実施してきた。今年は、1チーム約100人の4チームに分かれ、古代ギリシアの様々な要素をイメージした18の競技種目で総合成績を競った。2階の観客席は我が子の成長を見守る保護者が大きな声援を送っていた。
山梨学院小学校は、幼稚園とともに9年間のプログラムを提供する「国際バカロレアPYP候補校」認定されたことを受け、国際バカロレア(IB)の理念に基づく新たな教育カリキュラムを取り入れ、山梨学院の伝統である「プロジェクト」を継承しつつ、学園を挙げてグローバル化に対応した教育に取り組んでいる。IBの学習者像には「探求する人」「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「挑戦する人」など10項目が設定されている。山梨学院小の今回の「スポーツプロジェクト」にはその要素がふんだんに含まれている。
今年度のプロジェクトテーマは「OLYMPIA~古代ギリシアの風~」。全校生徒が4チームに分かれてスポーツで競うチーム名は、子どもたちが事前授業で学んだ古代ギリシアの歴史、文化など様々な事柄から5、6年生が『アテナ』『スパルタ』『コリントス』『テーベ』などポリスという都市国家名から決めた。2週間に及ぶ「スポーツプロジェクト」通して、時代やオリンピアの成り立ちを学び、Tシャツのデザインやプログラムのロゴマーク、壁画の製作。また、競技ルールや練習方法も全て子どもたちがアイディアを練った。ナレーションや音楽(BGM)、効果音なども子どもたち自らが考えた。スポーツプロジェクトリーダーの吉田瑞希教諭は「2020年の東京五輪に向けて、昨年は『VIVA』リオ五輪を取り上げ、今年は、五輪発祥の古代ギリシヤにスポットをあて歴史や文化、世界遺産を勉強して、それを競技に活かしています。古代オリンピアで行われた競技をアレンジしている種目もいくつもあります」と見所を挙げた。「このプロジェクトはテーマを学習することも大事だが縦のつながり、多学年の関わりも大事にしており、特に5、6年生のマネジメントタイムという“係活動”がすごく充実していて低・中学年の競技を高学年が手伝ったり、勉強も子どもたちが教え、それに対して低学年も意欲を持って自ら学習していることがこの学校の特色でもあり、プロジェクトの良さでもある」とプロジェクトの趣旨を話した
■南米五輪から東京五輪へ。五輪発祥古代オリンピアへ思いをはせる。さあフェスティバルの始まりだ。
会場は5、6年生の美術活動係35人が2週間かけてパルテノン神殿を基にして描いた装飾彫刻の「巨大壁画」を掲げ、古代オリンピアの雰囲気を演出した。演出係が取り組んだ『OLYMPIA』の幕開けは、ステージ上のスクリーンや古屋記念堂の天井に映し出すプロジェクションマッピング映像を駆使、児童による臨場感あるMCのナレーションと音楽で、会場の保護者らを徐々にその時代に誘った。一転、会場が明るくなると“古代ギリシア”をイメージした全校生徒による一糸乱れぬ表現運動で、プロジェクトのイメージを伝えた。
競技は18種目。古代オリンピックで行われた陸上競技の名を冠した短距離走ビーチフラッグ「2018YGES・スタディオン走」、ギリシア神話に登場し、いくつもの難行を打ち破ったヘラクレスの苦行をハードルに見立てたハードル走「ヘラクレス12の難行」。古くからある競技の一つ、やり投げを模した「怪物たちの戦い」。バトンリレー「YGES・ディアウロス走」、当時の競技を参考に「走る・跳ぶ・投げる」の3つのエリアをクリアする障害物競走「YGES・ペンスタロン」、神話にも登場する戦車競技をイメージした騎馬戦「激戦Chariot Racing」などと次々に熱戦が繰り広げられ会場のボルテージは上昇。スポーツフェスティバル最後のプログラムは恒例の中距離競技の駅伝「聖火を繋ぐ2019スポーツプロジェクトへ」で最高潮に盛り上がる。スポプロは南米からヨーロッパへそして、2019のスポプロの学習の舞台へ聖火をつないだ。子どもたちは練習の成果を精一杯体現し、協同した仲間も声を嗄らし声援をした。2週間を通して活動したプロジェクトの集大成「スポーツフェスティバル」を心からの喜びと感動で満たした。
プロジェクトを生徒の先頭に立ってまとめてきた中村実優児童会長(6年)は「勝ち負けもそうなんですけど、みんなが楽しめたり、みんなの団結力が深められたら良かったと思っています。オープニングや競技の練習で意見が食い違って言い争うこともあったのですけど、みんなで協力して問題も解決できたし、できる限りのことができました。応援もいつも以上に良くできていたし、みんなが盛り上がって楽しんでいたと思います」と笑顔で答えた。
エンディングは、演出の児童がスポーツプロジェクトで経験したことを映像とナレーションで振り返った。「一人では決して成しえることのできない喜びが満ちていた。『それは学び合う喜び』『競い合う仲間がいる喜び』『互いに尊重し合える喜び』(中略)これから私たち一人ひとりは、自ら輝く星となり山梨学院小という大きな夜空に輝きを放ちます。そしてここにいるみんなで力を合わせた時、そこにはどんな星座という名の物語が生まれるのでしょうか。ギリシアから東京へ2020年、オリンピックで私たちの国を中心に世界がつながります。世界をつなぐ学習も始まったばかり。2019年、スポーツプロジェクトの学習の舞台は、どこに行くのでしょうか。そこには、まだ見ぬ、探求の扉が待っています」と来年のスポーツプロジェクトの実施を期待してフェスティバルを結んだ。
IBの理念の10項目(学習像)を意識した取り組みを学校側はプロジェクトと融合した。子どもたちは与えられる学習から興味・関心を取り込みながら自らが探求する学習へと自然に移行する。山梨学院小学校が培ってきたプロジェクト教育システムは、さらに進化する。来年はどんな『スポーツフェスティバル』を見せてくれるのだろうか。
文(K.F) カメラ(藤原 稔) 2018.5.26