●日本経営倫理学会シンポジウム
~山学大を会場にスポーツと経営倫理について議論~
~スポーツ組織の在り方やガバナンスを考察~
日本経営倫理学会第26回研究発表大会が6月23・24日の両日、山梨学院大学を会場に開催された。日本経営倫理学会は1993年に設立され、実務家・研究者の立場から経営学を視点にビジネスエシックス(企業倫理、経営倫理)を研究している。今回、カレッジスポーツ振興に注力している山学大が会場となり、また近年では、スポーツ組織における経営倫理やガバナンスに関する諸問題、スポーツ指導における倫理問題も社会的関心が高まっていることから、初日の統一論題シンポジウムのテーマは「スポーツと経営倫理」が設定された。シンポジウムでは、山学大スポーツ科学部の寺本祐治教授らによる基調講演や各界の有識者によるスポーツ組織や運営、ガバナンスに関するパネルディスカッションが行われ、企業とスポーツ組織双方に有益な経営倫理について考察が行われ、企業や教育機関等の社会的責任についても深く議論された。
■基調講演
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科の佐野毅彦准教授が「スポーツは公共財なのか」をテーマに講演を行った。佐野准教授は、オリンピックの理念や歴史をひもとき、“アマチュアリズム”をキーワードに国内外のスポーツ事業や法整備、関連産業について解説・考察。また、スポーツの市場規模拡大にともない発展・誕生した運営組織の例として「Jリーグ」を紹介し、組織作りや運営の在り方について説明を加えた。結びとして慶應義塾の小泉信三元塾長が示した“スポーツが与える3つの宝” 「練習によって不可能を可能にす」「フェアプレーの精神」「友」を紹介し、スポーツの持つ価値や可能性について言及した。佐野准教授に続き、山学大スポーツ科学部の寺本祐治教授が「トップアスリートを育成する組織と指導」について講演。寺本教授は、ホッケー競技の歴史や特徴を紹介し、山学大ホッケー部の創部から現在までの軌跡を辿った。さらに、“チャレンジできる環境作り”として日本代表でのコーチ経験や山学大での指導経験をもとにチーム作りや選手育成のポイント、社会との関連性について解説し、参加者は企業運営や組織人育成、リーダーシップ(主体性)など共通点を見い出していた。
■パネルディスカッション
基調講演者の佐野准教授、寺本教授に加え、山学大スポーツ科学部・笠野英弘准教授、虎ノ門協同法律事務所・望月浩一郎弁護士、ウェルネス・システム研究所・村松邦子代表が参加し、パネルディスカッションが行われた。冒頭で、新しく加わったパネラーがそれぞれ問題提起や参考となる事例を紹介。笠野准教授は、「日本における全国スポーツ組織の現状と課題」について問題を提起。全国スポーツ組織の体制や現状、課題について言及し、企業や学校とスポーツについての関係についても考察した。望月弁護士は、スポーツ団体の不祥事事案を例に、企業のガバナンスの参考となる、スポーツ団体のガバナンスや企業倫理に関連する事例を紹介した。村松代表は、Jリーグの参与という立場から、Jリーグやスポーツ団体のガバナンス・コンプライアンス、社会連携について解説を行った。各パネラーの話に続き、フロアが開かれ参加者から意見や質問が寄せられ、スポーツにおける経営倫理やガバナンスの在り方、社会的責任にについて議論が交わされた。
文・カメラ(Y.Y)2018.6.26