●レスリング世界選手権代表選考プレーオフ
~山学フリー3人が世界選手権出場権獲得の快挙!~
~65㎏級乙黒弟、70㎏級乙黒兄、74㎏級藤波~
レスリング世界選手権代表権を懸けたプレーオフが7月7日、埼玉県・和光市総合体育館で行われた。プレーオフは、昨年12月の全日本選手権と先月行われた全日本選抜選手権の優勝者が異なる階級が世界選手権代表権を争う。山梨学院大から、65㎏級フリースタイルに乙黒拓斗(2年)、70㎏級(同)乙黒圭祐(4年)、昨年の世界選手権70㎏級銅メダルの藤波勇飛(4年)が74㎏級(同)に出場した。乙黒拓斗は、6月の全日本選抜で初優勝し世界選手権挑戦権の切符を手にした。兄の乙黒圭祐は、昨年12月の全日本選手権に優勝し勝てば世界選手権出場権を獲得する全日本選抜決勝で、脳震とうで負傷棄権した。藤波勇飛は、全日本選抜の優勝も確実視されていたが、5月上旬に負傷した顔面骨折の大事を取り棄権。それぞれにプレーオフに出場権を懸け臨んだ。試合は、65㎏級の乙黒拓斗が最初に登場。全日本選手権の覇者、高谷大地(自衛隊)と対戦。乙黒が序盤から低い姿勢から攻め込み安定した戦いで第1ピリオドTF(テクニカルフォール)勝ちで世界選手権の切符を手に入れると、続く70㎏級、兄の乙黒圭祐は、先月の全日本選抜で敗れた相手に手こずりながらも、先攻したリードを守り切り5-3で勝利。兄弟揃って世界選手権代表に内定した。次の74㎏級では、棄権した全日本選抜の雪辱を圧倒的な強さで晴らし、2年連続の世界選手権代表を確実にした。山梨学院レスリング部から現役選手が3人同時に世界選手権日本代表に選出される快挙を成し遂げた。山梨学院関係では先に出場を決めているOBで57㎏級の高橋侑希(ALSOK)、61㎏級小栁和也(自衛隊)の2人を加えて5人。世界選手権10階級のうち実に軽・中量級5階級を占め、他を寄せ付けない強さを示した。
10月、ハンガリー・ブタペストで行われる世界選手権代表はすでに20階級で内定しており、全日本選手権と全日本選抜選手権の優勝者が異なる男女10階級の代表を決める代表選考プレーオフが埼玉県・和光市総合体育館で行われた。プレーオフはこの会場で開催されている全日本社会人選手権1日目が終了した午後4時から行われた。代表を決める試合とあり、多くの観客が集まった。プレーオフ第1戦は、男子65㎏級フリースタイルから始まった。山梨学院の笛吹市出身の乙黒拓斗(2年 東京・帝京高)が6月行われた全日本選抜選手権で初優勝し、昨年12月の全日本選手権優勝者で3月のアジア選手権で2位となった高谷大地(自衛隊体育学校)と対戦した。第1ピリオド、乙黒は、低い姿勢から獲物を射るような俊敏な動きから相手をサークル外に押し出し先制すると、その後も素早い動きで一方的に攻め続け、難なく1分55秒に11-0のTF(テクニカルフォール)で勝利。19歳10か月で世界選手権の切符を手に入れた。試合後のインタビューで乙黒拓斗選手は「明治杯から2週間位しかなかったですけど、目標としていた世界選手権の切符が取れてひとまず一安心しました。差はたまたま開いただけであって、実力差はそんなにないと思うので勝てて良かったです。世界はあまり甘くはないと思うので世界選手権の10月までにまたチームで世界チャンピオンになれるように練習します」と決意を新たにした。
続いて行われたのが70㎏級。乙黒拓斗の二つ上の兄、乙黒圭祐(4年 東京・帝京高)がプレーオフに臨んだ。全日本選手権で同門の木下貴輪(現クリナップ)を退けて優勝し、全日本選抜選手権に臨むも、試合中、相手選手と激突、脳震とう負傷し無念の棄権敗退。因縁の同じ相手、基山仁太郎(日体大)と再び対戦した。乙黒は、相手が年下で負けたというプレッシャーから立ち上がりの動きが堅かった。それでも第1ピリオド、先に攻める姿勢から1分、狙っていたタックルからバックを取り先制した。その後は相手選手もタックルで応戦。力と力が、技と技がぶつかった。中盤に乙黒は外に出されポイントを失い2-1で第2ピリオドに入った。ここでも乙黒が先制、中盤までに5-1と優位に進めるも、残り1分乙黒が攻勢をかけたところをカウンターでポイントを奪われ5-3に、嫌な流れが感じられるも、互いに残り時間、死力を尽くし乙黒はそのまま逃げ切り、弟に次いで世界選手権代表を呼び込んだ。乙黒圭祐選手は「うれしいです。高田先生に先制点を死守して戦えと言われて、自分の中でも先制点が重要だと思っていたのでその通りでき良かったです。弟がいい流れで来ると分かっていたのでその次の勇飛にもつなげるために頑張ろうと思いました。世界選手権は、小さい頃から目標にしていた大会の一つなので何としても勝ってやろうという思いです」と意気込む。
74㎏級の藤波勇飛(4年 三重・いなべ総合学園高)は、昨年の世界選手権70㎏級で銅メダルを獲得し、12月の全日本選手権で74㎏級に階級を上げ初優勝した。その時の決勝で破った相手の保坂健(自衛隊体育学校)と再び相まみえることになった。藤波は、5月の東日本学生リーグ戦直前の練習中に左目下陥没骨折し、大会にはチームのために限定的に出場したが、その後の回復が思わしくなく、全日本選抜選手権を回避。プレーオフに回った。試合は、藤波の強さが際立った。激しいタックルで相手にプレッシャーを掛け、相手の攻めにはカウンターで返し第1ピリオドを5-0で折り返えした。第2ピリオドにも相手攻撃を力と技で押し返しポイントを重ね、残り1分に14-2の大差でTF勝ちを収めた。2年連続世界選手権代表を引き寄せた。藤波勇飛選手は「今年も世界選手権を狙っていたので、ほっとしています。動きは悪くて、これでは世界で戦えないと思ったのでもっと身体を引き締めます」。ワールドカップで74㎏級を経験して、「やはり力が強いなと思いましたし、オリンピック階級なので皆死に物狂いで結構レベル高いですし、(有名な選手がいる階級)そこに勝たないとオリンピックでの優勝は絶対ないのでとりあえず今年はそこのレベルに食い込めるようにやっていきたい」と抱負を語った。
大会後、小幡邦彦コーチは「ほっとしています。今まで最高は3人だったので今回は最低限の目標の5人(OB2人含む)が取れたので、とりあえずはノルマが達成できて良かったと思います。藤波にしても弟にしてもまだ修正点はあるので世界選手権に行ったらもっと強い相手と戦うので残りの期間、修正していきます。今までで最高のメンバーでメダルも狙えそうなので最低でもみんなメダルを取って帰らせたいなと思っています」と世界選手権の活躍を思い描いた。
世界選手権出場権を獲得した山梨学院勢は大会を通じ、さらにたくましく大きくなって帰ってきてほしい。目指すのは、2年後の東京五輪出場とメダル獲得だから。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2018.7.8