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●山梨学院小で哲学プロジェクト「子どもとの哲学対話」
~6年生が教育哲学者と討論。哲学の考え方を体験~
~問いを立て、考えることの大事さを学ぶ~

山梨学院小学校が授業の一環として進めている「哲学プロジェクト」の一つとして10月5日、教育哲学者を招いて「子どもとの哲学対話」を行った。これは山梨学院短期大学において10月5日から7日に開催された「教育哲学学会第61回大会」の特別企画で、大会1日目に学会の初めての試みとして、小学6年生と教育哲学者らが山梨学院小学校で哲学対話を行った。前半の1部は、“問いの素”と呼ばれる、画像や統計的な資料などからゴミが及ぼす自然環境についての問いを子どもたちが考えだし、共通の哲学対話のマナーをもとに教育哲学者が対話者として参加、哲学討論を行った。後半の2部は、子どもたちが「哲学プロジェクト」を通じて感じた疑問やさらに深めたい問いへの考え、日常生活の中で生じている疑問について、子どもの代表者10人が教育哲学者に質問した。子どもたちはさまざまな考え方やものの見方に触れることで問いを深めるヒントを感じ取っていた。

子どもの哲学と呼ばれる対話型の哲学の授業が、世界各地の小中学校で行われてきている。日本の小中学校でも哲学授業の試みも散見されるが、まだまだ理論的・実践的に深められている状況ではない。山梨学院小学校では「哲学プロジェクト」として、6年生が年数回の授業を実施している。戦国時代の武将の生き様を学ぶ中で、「本当の意味での勝利とは何なのか」「命の重さは人によって違うのか」などといった問いに対して、友だちと対話を通じて考えを深め合ったり、「なぜ生きるのか」「なぜお金は大切なのか」「恋って何だろう」等など、子どもたちなりのさまざまな疑問をギリシャの哲学者たちがそれをどのように考えてきたのか、調べた子どもたちもいた。

この日は、山梨学院小学校の「哲学プロジェクト」の一つとして、10月5日から7日まで山梨学院短期大学で開催された「教育哲学学会第61回」において初めての試みとして、山梨学院小学校が授業の一環として行っている「哲学プロジェクト」で子どもたちの中に教育哲学者が加わった学会員参加型の対話型ワークショップを実施した。これにより、日本の学校現場における哲学授業の在り方を検討していくための一助となることを目的とした。

10月5日、教育哲学学会の1日目、田中智志(前山梨学院小校長、現東京大学大学院教授)、山内紀幸(山梨学院短期大教授、山梨学院小校長)が企画した特別企画「子どもとの哲学対話」の前半第1部は、5・6年生の教室を使い、「哲学の時間~問いをつくり、共に考え言葉にする時間~」と題して、6年生全員が教育哲学者や学会員らと約20人の4グループが円陣をつくり、子どもたちがファシリテーター(進行役)、記録者も担当した。それぞれに自然・環境の中のゴミを主テーマに子どもたちが、「ゴミを捨てるのをなぜ、見て見ぬふりをするのか」「ゴミとゴミではない境界線とは」「人間がいなかったらゴミはないのか」などの問いを考え、子どもたち同士と教育哲学者たちが互いに意見を出し合い議論した。

後半第2部は、場所をカフェテリアに移し、「哲学者に聞いてみよう~疑問や問いを深めるヒントを見つける時間~」として、子どもたちが「哲学プロジェクト」を通して感じた疑問やさらに深めたい問いへの考え、日常生活などで生じている疑問を教育哲学者に質問した。
子どもたちの質問は「善とは何か。人によって良いこと、悪いことが違うのはなぜか」「本当の意味での『ふつう』とは何なのか」「大人と子ども、どちらが自由が大きいか。そもそも自由とは何なのか」「『心を大切に』や『心がこもっている』という言葉を聞きますが『心とはどういうものなのか』」や戦争のこと、差別のこと、人間の自然に対する驕りなど抽象的な物事を追求する問いを投げかけた。それに対して教育哲学者からさまざまな意見が述べられ物の見方にいろいろな捉え方があることを子どもたちは学んでいた。教育哲学者の一人は「人それぞれいろんな考え方がある。私たちは答えを知っているわけはない。だから研究している」との印象に残る言葉を述べた。

今回、この企画をした山内紀幸校長は「学校の問いは答えが一つですけど哲学の問いはすごく開かれていて、何が答えか分からないんです。その時によりいい答えを求めていくためには、みんなの議論、討論が必要で共同作業なんです。この作業自体こそが探求していくことの柱になっていくし、これから子どもたちにとっていろいろな未知の問題に取り組む時の一つの学び方としてすごく大事な実践であると思っています」と考えを述べた。前半の1部を見て、「一番は答えを急がせないでじっくり相手が話すのを待つという雰囲気が良かったです。聞き合うのが哲学の基本です。哲学の一番難しいのは問いを立てることなんです。日頃の授業は問いに答えて問いを自分で立てることはないんです。そこを子どもたちが一生懸命どういった問いが本当に議論に値するかということを考えていました。面白いです。今の学校教育にはないので『哲学プロジェクト』の授業の中では時間は掛かりますが私たちはそこを一番大事にしています」と山梨学院小独自の教育の方向性を示した。

2部の代表質問者の一人、保坂諒君(6年)は「とても素晴らしい経験でした。一人で考えることでは絶対に得られることができない体験ができたと感じています。先生一人一人が素晴らしい答えを返してくれました。それぞれの意見の中には『あ、そうか違うのか』と感じる部分もたくさんあり、その気づきが新たな研究の第一歩かなと思いました」と話し、本間千然さん(6年)は「哲学というのは一人で考えても考えきれないという部分がたくさんあって、だからこそいろいろ有名な哲学者に聞くことで、自分の目の前だけだったのが周りまで見える考え方になって、それがすごく良かったなと感じました。ヒントっていうか、哲学者の方々がこれから生かせることばかり教えてくださったので、そういうことを生かしながら考えて常に哲学ということを大事にしていきたいと思っています。授業(哲学プロジェクト)は、どの授業よりも好きで、答えがないから掘っても掘っても続けられるテーマがあることが楽しいです」と目を輝かせた。子どもたちは、初めて教育哲学者と討論する経験を得たことで、一人一人の意見が違うことがあってもいいことを知り、自分の意見を探求することの大切さを学んだ。

文(K.F) カメラ(藤原 勇) 2018.10.7

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