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●甲斐の古道を歩く「駿州往還編」
~歴史遺産を巡るフィールドワーク~
~秋色深まる身延・下山宿周辺を散策~

山梨学院甲斐の古道プロジェクト委員会は11月11日、甲斐の古道の一つである「駿州往還」や周辺の歴史遺産などを巡るフィールドワーク体験プログラムを実施した。山梨学院の所在する甲府市酒折地区は、江戸時代の地誌『甲斐国志』に甲斐の古道の路首(起点)と記載されていることから、山梨学院では創立70周年事業の一環として「甲斐の古道プロジェクト」を発足させ、古道の現況調査や市民を対象としたフィールドワークを実施している。これまで、「青梅街道」「鎌倉街道(御坂路)」「若彦路」の歴史散策を行っており、今回の「駿州往還」は第四弾として企画された。当日は、富士川クラフトパークを起点に秋色深まる身延・下山宿周辺を散策し、煙硝蔵跡や上沢寺、本国寺、一之宮賀茂神社、南松院などの神社仏閣や歴史遺産を見学。参加者は、講師の説明に耳を傾け、メモや写真などで記録し、地域の歴史を再発見し、いにしえの人々の生活や街道の賑わいに思いをはせていた。

江戸時代の地誌『甲斐国志』には、「本州九筋ヨリ他州へ通ズル路九條あり・・・(中略)・・・皆酒折ヨリ路首を發起ス」と記述があり、山梨学院の所在する甲府市酒折地区が甲斐の古道の起点であったと記されている。甲斐の古道は九筋あり、駿州往還・中道往還・若彦路・鎌倉街道・青梅街道・秩父往還・穂坂路・棒道・逸見路の9路からなっている。学校法人山梨学院は創立70周年記念事業として「甲斐の古道プロジェクト委員会」を立ち上げ、山梨学院大学考古学研究会の協力も得ながら、古道の現況調査に取り組んでいる。委員会では、一昨年初めて市民を対象に、山梨市から甲州市にかけての青梅街道でフィールドワークを実施。昨年は、第二弾として富士河口湖町から富士吉田市にかけての鎌倉街道(御坂路)、今年6月には第三弾として冨士御室浅間神社を起点に若彦路のフィールドワークを実施した。

今回の第四弾では、甲斐国と駿河国を結ぶ「駿州往還」の下山宿周辺の歴史遺産を巡るフィールドワークが企画された。講師は身延町教育委員会生涯学習課の深沢広太主査十菱駿武山梨学院大客員教授が務めた。「駿州往還」は、甲斐国河内領を通ることから「河内路」や身延山久遠寺への参道でもあることから「身延路」とも称され、五街道の一つである甲州街道と東海道を結んでいた。五街道ともつながり、峡南地方の特産品である日本茶や花火、和紙、足袋、硯、印章などを各地へと運ぶ物流の道としても賑わいをみせていたといわれている。また、下山宿には室町時代には河内領を治めた穴山氏の保護のもと、大工の座(同業組合)が作られ、優れた建築技術を有した下山大工・番匠が誕生し、駿府城(静岡市)の城内普請にも参加。甲斐国内でも多くの神社仏閣を手がけ、現在でも重要文化財や登録有形文化財として残っている。講師を含め27人の参加者は、秋色深まる快晴の中、午前10時に富士川クラフトパークを出発し、以下の行程で下山宿に残る建築物や石造物、文化財などの歴史遺産を見学した。

【行程】富士川クラフトパーク→煙硝蔵跡(穴山氏館の火薬庫跡)→上沢寺(弘安4年日蓮手植えの樹齢700年のお葉つき銀杏(国天然記念物)、今秋の台風で倒木)→駿州往還→旧下山療院(国登録有形文化財)→本国寺(甲斐源氏加賀美光重により建立、日蓮手植えのお葉つき銀杏(国天然記念物)、本尊日蓮上人の大曼荼羅、宮殿形厨子は天明年間下山大工石川七郎左衛門制作)→本陣跡(下山宿の役人等の宿泊所)→番匠小路→一之宮賀茂神社(天平勝宝年間創立、河内領穴山氏の一之宮)→三之宮飯綱大明神(穴山信友により設置)→二之宮下賀茂神社→南松院(臨済宗妙心寺派、永禄9年穴山信君が創建)→富士川クラフトパーク切り絵の森美術館

各見学場所では、講師の深沢主査や十菱客員教授が歴史学・民俗学的視点から説明を行ったほか、各歴史遺産と日蓮聖人との関連や河内領を治めた穴山氏と武田家、徳川家との関係などについても解説を加えた。また、下山甚句保存会の遠藤輝昭さんも特別講師として参加し、下山大工が広めたとされる下山に伝わる民謡「下山甚句」を見学地で披露した。「下山甚句」は自然や日常、人物などが謳われ、130以上の歌詞が存在するといわれ、身延町の無形民俗文化財に指定されている。約6kmのコースを約4時間かけて巡り、参加者は講師の話に熱心に耳を傾け、メモや写真に記録し、点在する歴史遺産からいにしえの人々の生活、街道の賑わいの様子などに思いをはせていた。

企画した十菱駿武客員教授は「今回は駿州往還の身延路の一番ハイライトになる下山宿を中心に、下山大工の歴史や神社仏閣などコンパクトながら非常に歴史の要素がつまった場所を巡ることができました。皆さん熱心に説明を聞き、質問なども寄せられ、成功したと言えると思います。このプロジェクトでは、古道の歴史公園の開設準備もしていますが、来年もぜひフィールドワークを企画できるように願っています」と成果を語った。山梨市から参加した50代男性は「山梨学院の登山講座でパンフレットをもらい、歩くのが好きなので参加しました。狭い範囲にこんなにも文化財があるとは知りませんでした。普段は通り過ぎてしまいますが、詳しく説明もしてもらえたので良かったです」と感想を語った。また、甲州市から参加の70代男性は「説明を聞き、自分がこれまで調べたり、生活する中で得たものと結びつくものがありとても感銘を受けました。それぞれの建造物などが作られた時代背景なども詳しく教えてもらえたので、また機会があれば参加したいです」と話した。一方、地元・身延町から参加した60代女性は「地形を利用した建築方法など下山大工の職人としての気遣いや心意気というものを感じ取れました。後世に良いものを残すためには、こういった歴史を学ばなければいけないと思いました。行程は時間的にもちょうど良く、改めて自分のまちを知る良い機会になりました」と晴々とした表情で語った。

文・カメラ(Y.Y)2018.11.11

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