●日本文化ワークショップ 能発表会
~市民が生涯学習として能の仕舞と謡を学ぶ~
~講座の集大成として発表会で成果を披露~
山梨学院生涯学習センターは、9月から開講してきた「日本文化ワークショップ2018~能の仕舞と謡を学ぶ~」の発表会を12月1日、山梨学院メモリアルホールで実施した。この講座は、市民が能の仕舞や謡を学ぶ体験型講座で、シテ方喜多流能楽師の佐藤寛泰さんが講師となり、ガイダンスや発表会を含め全6回開講。最終回のこの日は、講座の集大成として公開の発表会が催された。受講生は普段の教室とは違い、ホールの大きな舞台とあって、一様に緊張した様子で開場ぎりぎりまで稽古に励んだ。発表会では、受講生がそろって連吟を披露したほか、受講生一人一人が仕舞を発表。発表を終えると、稽古の成果を全て出し切った清々しい表情を見せ、最後の記念撮影に収まった。さらにこの日は、番外仕舞として講師の佐藤寛泰さんが「八島」を上演。受講生は迫力ある舞台に間近で見入り、「体験」と「鑑賞」の両面から日本の古典芸能を肌で感じていた。
「日本文化ワークショップ2018~能の仕舞と謡を学ぶ~」は9月26日に開講。日本文化に触れる貴重な機会とあって、県内外から市民が受講した。各回の講座では、シテ方喜多流能楽師で喜多流職分佐藤家12代目の佐藤寛泰さんが講師を務め、発表会で上演する「猩々」(しょうじょう)の仕舞や謡を学習。佐藤さんに加え、同じ喜多流能楽師の佐藤陽さんや谷友矩さんも講師として指導を行った。受講生は講師から立ち方や座り方、構えなどの基本的動作から実際の舞い方や扇の使い方、謡の発声の仕方などの指導を受けた。通常の座学のみの生涯学習講座とは違い、今回は体験型講座として企画され、“発表する”ということが最終目標のため、受講生は毎回真剣な眼差して受講し、講師の一挙手一投足に注目した。自宅での反復稽古も必要となるため、今回はスマートフォンやタブレットでの動画の撮影が許可され、受講生は自宅でも時間を見つけて稽古に励んだ。発表会当日は、開演2時間前から最後の稽古に励む受講生の姿も見受けられ、ギリギリまで寸暇を惜しみ、仕舞の精度を高めていた。発表会では、揃って謡をうたう連吟と受講生一人一人の仕舞の発表が番組として構成された。男性受講生の連吟では、力強い謡が披露され、女性受講生の連吟では華のある謡がメモリアルホールに響き渡った。仕舞の発表では、講師として指導にあたった喜多流能楽師の佐藤寛泰さん、佐藤陽さんの二人が地謡を務め、受講生一人一人が仕舞を披露。受講生は一様に緊張した様子だったが、堂々とした舞を見せ、客席からは温かい拍手が送られた。最後には受講生全員で連吟を披露し、稽古の成果を出し切った。さらにこの日は、番外仕舞として講師の佐藤寛泰さんによる仕舞「八島」が上演され、受講生は迫力ある佐藤さんの舞台に熱視線を送り、「体験」のみではなく、「鑑賞」の両面から日本の古典芸能に理解を深めていた。
能を含めた日本の古典芸能に興味があり講座に参加した有泉はるひさんは発表会を終え、「先生方は何もわからない私たちに丁寧に教えてくださり、とても贅沢な講座でした。自分がこういう機会で発表できるとは思っていなかったので、凄くありがたかったです。最後に先生のお能を見て、経験したからこそ分かる素晴らしさがあり、言葉にならない、震えるような感動がありました。遅くまで講座をやってくださった先生方や大学のスタッフの方々に感謝の気持ちでいっぱいです」と興奮冷めやらぬ晴れやかな表情で語った。県内を中心に演劇活動を行い、自身の表現の参考のために古典芸能を学びたかったという石原伸さんは「短い期間で難しい部分もありましたが、楽しかったというのが正直な感想です。古典芸能の動きを参考にしている劇団などもあり、自分でも触れてみたいと思い参加しました。これを入口にして、今後も古典芸能に触れてみたいと思いました」と講座を通じてのさらなる目標を述べた。今回のワークショップを企画した山梨学院古典芸能研究会顧問の野村千佳子教授は「みなさん高い意欲や関心を持って参加していただきました。積極的に講座に参加し、できる限り吸収しようという姿勢が感じられました。各回の講座の終了後には、自主稽古する方もおり、稽古の度にみなさん能にのめり込んでいました。今回の講座を通じ、日本の古典芸能をはじめ、日本の素晴らしいものをみる足掛かりにして欲しいと思います」と講座を振り返り、指導した佐藤寛泰さんは「初めて能に触れる方もいて、今回6回という短い機会で発表会までというのは、普通のお稽古をしている方よりも期間は短いと思います。回数を重ねるにつれて声も出るようになってきて、“姿勢”については、特に大きく変わったと思います。日本文化の習い事の中では、特に能は所作事が大事とされています。姿勢などは核となる部分ですので、変化が顕著に表れる部分です。今回は、自分でしっかりと復習できるように録音や録画を許可しましたが、しっかりと自宅で稽古もされていたと思います。(猩々は)扇の扱いなど変化があり、いっぱい動くので難しい面もありますが、しっかりと最後は舞えていたので、無事に終わって一安心です」と総括し、今回のような体験型講座について「能は見たことない方には難しく感じるかもしれません。各地での稽古(教室)に加え、山梨学院大学のiCLAでも留学生らに講座を持っており、このように触れてもらう経験が能の文化が継承される上では大事なことだと思います。能の基礎を学ぶことで、今後稽古を重ねたり、能の舞台を見る際にも楽しさは増えると思います」と意義を語った。
文・カメラ(Y.Y)2018.12.3