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●天皇杯全日本レスリング選手権 最終日
~世界王者乙黒拓斗が圧倒的強さで天皇杯を獲得~
~日本一を決める大会で山学大勢現役OB大活躍~

“天皇杯”平成30年度全日本レスリング選手権は最終日の23日、東京・駒沢体育館でフリー65㎏級などの決勝戦が行われた。史上最年少の19歳10か月で世界選手権王者となり、自身の最年少記録を塗り替えられた高田裕司監督をして“平成の怪物”と言わせしめた乙黒兄弟の弟乙黒拓斗が、平成最後の日本一を決める大会の決勝で、前年優勝者を開始わずか33秒で下す圧倒的強さで日本選手権初優勝の称号を獲得、大会最優秀選手に贈られる天皇杯をも手中にした。乙黒兄弟は10月の世界選手権に兄弟そろって出場、兄の圭祐は前日のフリー70㎏級で3位の表彰台を獲得。ともに飛躍を遂げた一年となった。20日から4日間にわたり開催された年末の大一番で、山学大勢は現役・OB合わせて、優勝3人、準優勝1人、3位3人と大活躍した。

こういうことを電光石火というのだろう。フリー65㎏級決勝の乙黒拓斗(2年 JOCエリートアカデミー 帝京高)は、昨年の優勝者高谷大地(自衛隊体育学校)を開始12秒でタックルしてバックを奪い、そのまま足首をつかみローリングを4回連続決めて、たった33秒でテクニカルフォール勝ちした。駒澤体育館を埋め尽くした大観衆がどよめきの歓声を上げたあっという間の圧勝劇となった。乙黒拓斗選手は笛吹市石和町の出身、ものごごろがついた時にはもう父の指導で兄の圭祐選手(4年 JOCエリートアカデミー 帝京高)とともにレスリングをしていたという何歳で始めたのか自分では分からないというレスリングの申し子。山梨ジュニアレスリングクラブ時代に練習を見た高田裕司監督がその才能を見抜き、兄弟をJOCエリートアカデミーに推挙、中学からは全国から集まってきた有望選手と寝食を共にして力を磨き、高校は帝京高に通った。東京五輪出場を胸に兄を追い恩師が率いる山学大に進学した。6月の明治杯全日本選抜で優勝、高谷大地とのプレーオフに勝ち10月の世界選手権に初出場、高田監督が1974年大会で作った「20歳6か月」の記録を44年ぶりに塗り替える「19歳10か月」の日本男子史上最年少世界選手権覇者となり、一躍脚光を浴びる存在になった。高田監督をして「彼のレスリングは異次元、投げられた時にも猫みたいに回転するのは天性で、平成の怪物」と舌を巻く才能に加え、人一倍練習する練習の虫。ただ、世界選手権で右足首を負傷し、満足に練習できたのは大会の直前、この日もテーピングをきつく巻いて出場した。「まだ痛みがある状態で65%のコンディション」でありながら圧勝劇を演じて見せた。やはり異次元の怪物なのかもしれない。だが、大学キャンパスを普通に歩いていたら、華奢で気弱そうにも見えるだろう彼には驕る心は微塵もなかった。決勝戦の前に行われたセレモニーで、今年度の最優秀選手に選ばれるとともに、父親の正也さん(45歳)と「ペアレント賞」を受賞した。セレモニー後の決勝戦でも上がることなく強敵を33秒殺で制し、最高栄誉の天皇杯の栄冠をも手にした。乙黒拓斗選手は「父にも、兄にも、高田監督にも、小幡コーチにも指導してもらい感謝しています、恩返しはここではありません。ここは通過点、東京五輪で金メダルを取ることが恩返しです」と胸に秘めていた思いを優勝後に口にした。「上を目指して1年間全力で取り組んだことがこういう結果につながったと思います。お正月は少し休んで体力回復に努め、年が明けてから又、練習に取り組みます」と淡々と漂々と話す姿勢には慢心はない。自己管理に努め、東京五輪に向かうつもりだ。

各階級の日本一を決める天皇杯に、今年の山梨学院大勢は創部史上最高の22人(現役12人、OB10人)を送り込んだ。最終日に乙黒拓斗が天皇杯を獲得したのを始め、F74㎏級藤波勇飛(4年 いなべ総合)が圧勝で大会2連覇を達成。山学大を拠点に東京五輪を目指すOBのF57㎏級高橋侑希(25歳 ALSOK)が決勝は苦しんだが大会3連覇を達成。F125㎏級OB金澤勝利(29歳 自衛隊体育学校)がライバル荒木田進謙に惜敗準優勝。F92㎏級の新星大津拓馬(1年 長崎・島原高)・F70㎏級乙黒圭祐・F57㎏級OB小栁和也(22歳 自衛隊体育学校)の3人が3位の表彰台に上がった。いずれもが、来年の世界選手権代表、東京五輪出場を目指す。また、年末恒例の大一番には社会人になってからも現役を続けているOBが数多く出場した。31歳になった9年前の主将奈良部喜明(筑西広域消防本部)、金澤と同じ29歳の有薗拓真(ALSOK)、26歳の鴨居正和(自衛隊体育学校)、24歳の吉川裕介(自衛隊体育学校)、藤波と同じ階級で五輪を目指す23歳の木下貴輪(クリナップ)、同じく23歳の貝塚賢史(茨城県競技力向上対策本部)と西村拓真(田布施農工高職員)が狭き門の出場権を勝ち取り戦いに挑んだ。現役学生は表彰台に上がった藤波、乙黒兄弟、大津の他、G60㎏級の高橋三四郎(3年 山梨農林高)が5位と健闘した。他の7人は初戦・敗者復活戦で敗れたが、明日への糧となる貴重な経験を得た。4日間の戦いを振り返り小幡邦彦コーチは「優勝した3人は、東京五輪に向かう最初の関門を突破した。次の明治杯に勝たせ、まずは来年の世界選手権出場を決めさせたい。今回は勝てなかった選手にもチャンスはある。それぞれが次を目指して頑張ってもらいたい」と年末決戦を総括した。山学大レスリング部の部員たちは、現役学生もOBも、それぞれの競技人生を向上させる研究心を胸に、それぞれの道を一歩一歩切り開いて行く。

文(M.I)、カメラ(磯 裕文)2018.12.23

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