●第95回箱根駅伝 復路区間
~負のスパイラル修正できず、3年連続の予選会に~
~今が茨な道でも躊躇せず新しい山学のチームを~
「第95回東京箱根間往復大学駅伝競走」復路区間が1月3日、箱根芦ノ湖から東京大手町の読売新聞本社前までの5区間109.6kmのコースで行われた。よく晴れわたった箱根芦ノ湖畔の向こうには雪を頂いた富士が顔を覗かせスタートを見守った。午前8時、前日の往路優勝した東洋大学からタイム差で次々とスタートした。今季の山梨学院大は出雲駅伝、全日本大学に出場できず、目標を箱根駅伝シード権獲得に照準を絞った。10月の箱根予選会では10位と本戦出場を手にしたが、厳しい戦いは予想された。山梨学院大は2日の往路でニャイロを欠く布陣は序盤、流れに乗れず22位と苦しい往路となった。シード権ラインの10位には10分46秒差と、復路での躍進次第ではシード権獲得に僅かな可能性は残された。出遅れた山梨学院は6区山下りの走りがポイントと箱根初出場の池田眞臣(4年)に復路の流れを託した。池田は、一つでも順位を上げようと懸命に前を追い、二人を抜いた。続く7区川口竜也(3年)、8区山田大輔(4年)、9区森山真伍(2年)10区片山優人(4年)も懸命に前を追走したがシード権争いに加われず総合成績21位でゴールした。昨年の雪辱を果たせず3大会連続のシード落ちとなった。次回は再び予選会からの挑戦になる。往路の優勝は東洋大にゆずったものの、東海大が往路2位から逆転、復路優勝の青山学院の5連覇を阻む総合初優勝を飾った。
今回、山梨学院はシード権獲得を目標に臨んだ。エースのニャイロが故障で走れない不運もあり、“自分が”という力みから、多くの選手が前半オーバーペースで入り、後半失速する負のスパイラルに陥ってしまった。普通に走っていればシード権争いに加われる時代は終わった。どのチームもスタミナとスピードを兼ね備えた選手の育成が鍵となる“スピード新時代”に突入した。序盤にそのスピードの流れに乗れなければ強豪校といえどもシード圏外へ弾きだされる。今回の箱根駅伝は、早稲田大を初め昨年の上位校3校が苦しんだ。
往路の流れの悪さを乗り越えられなかった復路選手の声と指導者の声を競技終了の報告会から拾った。
■復路109.6km
◆6区 池田眞臣(4年)[20.8km 箱根芦ノ湖 ⇒ 小田原中継所]
往路で出遅れた山梨学院はエントリー変更なしで臨んだ復路で巻き返しに挑んだ。6区山下りの重責を任されたのは箱根初出場の池田眞臣(4年 長崎・鎮西学院高)。箱根芦ノ湖畔をトップの東洋大から10分後に一斉スタートで他の7チームとともに小田原中継所を目指してスタートした。レース後の報告会で、池田眞臣選手は「今回の自分の走りは、自分が思っていた目標タイムよりも程遠く苦しい走りとなりました。皆さんが沿道で声を掛け続けてくれたおかげでどうにか二人抜くことができました」とレースを振り返った。区間記録は20位、総合では22位と往路からの順位は変わらない。
◆7区 川口竜也(3年)[21.3km 小田原中継所 ⇒ 平塚中継所]
7区の川口竜也(3年 鹿児島・鹿児島城西高)は、昨年往路の4区を個人18位で走っている。22位で襷を受けた川口竜也選手は「自分はまずメンバーから外れた出木場さん、藤田さんの思いを継いで、メンバーに入ったニャイロさんを含める他の6人の人たちの思いを繋いで走りました。ですが意気込んで走った割には不甲斐ない結果で申し訳ないと思っています」。シード権ラインから16分32秒と芦ノ湖からの時間差を広げられシード権争いから一歩後退した。自身の成績は区間19位、前のチームとの差は縮めるも総合では22位。シード圏内からの差は広がった。
◆8区 山田大輔(3年)[21.4km 平塚中継所 ⇒ 戸塚中継所]
8区の山田大輔(3年 長野・南安曇農高)は、初の箱根駅伝出場を果たした。大きな成績は残せてないが安定した走りに定評がある。山梨学院は山田の走りで総合では21位と順位を一つ上げた。個人は19位となった。山田大輔選手は「15km付近までは区間一桁で行きましたが、得意の上り坂で足が止まってしまいました。何故だか分かりません。駅伝には流れがあるので、これからの1年間考えて練習していきたい」とリベンジを図る。
◆9区 森山真伍(2年)[23.1km 戸塚中継所 ⇒ 鶴見中継所]
9区にエントリーされたのは、長身の森山真伍(2年 群馬・樹徳高)。昨年11月の記録会で10000mの自己ベストを47秒も縮める伸び盛りで伸びのある走りを期待された。森山真伍選手は「初めて箱根駅伝を走ってレベルの高さを痛感しました。自分は2年生ですがここにいる1年生、2年生にも箱根駅伝でも走れるんだということを証明したくて区間一桁を目標に走りました。結果としてそれを証明することができなくて悔しいです。しかしこの悔しい気持ちを前向きに変えて、1年後に強くなって戻ってきます」と強い決意を述べた。森山は、区間20位、総合は21位と変わらなかった。
◆10区 片山優人(4年)[23.0km 鶴見中継所 ⇒ 東京大手町]
2年連続最終区10区を任された片山優人(静岡・藤枝明誠高)は、スピードはないが20kmの長距離を安定して走る走力を持つ。昨年の全日本大学駅伝6区13位。箱根駅伝4区を走り18位。一斉スタートの襷を掛け、それでも山梨学院の誇りを胸に、一つでも順位を上げようと走った。片山優人選手は「今回も9人が繋いできた襷をかけて走ることはできませんでしたが伝統あるプリシアンブルーの襷を掛けて走る喜び、また、沿道の声援を受けて走る気持ち良さを感じながら最終学年として走ることができました。目標を達成することはできませんでしたがこれまで4年間頑張ってきて良かったと思います」と悔いはない。片山は、昨年同様区間14位、総合成績21位で大手町のゴールを切った。
山梨学院の■総合成績21位 総合成績:11時間24分49秒
往路成績:5時間44分16秒 22位 復路成績19位 復路成績:5時間40分33秒
再び報告会で永戸聖主将は「僕たちが掲げたシード権獲得という目標を果たすことができませんでした。ここにいる走った選手も座っている選手も全員が悔しい気持ちです。この気持ちを1週間後、1か月後、半年後とどれだけ持っていられるかが来年のこのチームの結果につながると思います」と後輩に思いを託した。大崎悟史コーチは「上位との力の差を改めて痛感しました。やらねばならないことをスタッフも選手も課題を感じたと思います。もう一度強い山梨学院を作れるように来年に向けてやっていきたい」と述べた。飯島理彰コーチは「年々レベルが上がっている箱根駅伝に対して我がチームのレベルアップ、底上げが遅れているのが現状です。上位校と同じ考え、同じ取り組みではだめなので、まずはそこからテコ入れをし、この舞台に帰ってきたい」と述べた。麻場一徳陸上競技部部長は「来年は強い山梨学院を皆さんにお見せできるように、選手の皆さんは今の気持ちを忘れないように努力をしてほしいと思います。皆さんの頑張りは見ています。その頑張りに工夫を加えて来年にここに戻ってきていいところを見せたいと思います」と選手に語りかけた。上田誠仁監督は「昨年も強くなって帰ってくると誓い合ったのに、このような結果しか残せなかった。監督としても非常に悔しいし情けない気持ちでこの2日間運営者に乗っていました。でも君たちなら新たな一歩をスタッフたちとともに歩んでくれると信じています。今が茨な道であっても躊躇することはできません。心一つにしてまずは箱根の予選会、本戦に向けて新しい山梨学院大学のチームを作り上げていきましょう」と皆に奮起を促し呼びかけた。最後にチーム全員で円陣を組み来年の活躍を誓った。来年こそは、プリシアンブルーのユニフォームの躍動を誓う。
文(K.F)カメラ(平川大雪・藤原稔・今村佳正・小池裕太・Y.Y)
2019.1.3