●山学大生が甲府市に中心市街地活性化策を提言
~学生による地域課題総合研究の成果報告会~
~山梨学院大、甲府市との連携事業として開催~
山梨学院大学が地域課題の解決を目指すことを目的にした「地域課題総合研究」の授業として行ってきた「中心市街地活性化策」を提言する成果発表会が1月11日に甲府市役所で行われた。山梨学院大と甲府市は昨年1月に包括的連携協定締結しており、ともに地域課題を考えることとして昨年、山梨学院大が「移住定住促進策」を研究テーマに提言しており今回は2回目となる。山梨学院大では2016年9月後期授業として「地域課題総合研究」科目を開講。自治体と学生がともに地域の課題を研究しようとするもので、今回、その一つとして「中心市街地活性化」を後期授業の研究テーマに設定、成果を提言することで授業を展開してきた。報告会は冒頭、担当教授の今井久山梨学院大学現代ビジネス学部長が趣旨説明を行い、続いて法学部法学科・政治行政学科、現代ビジネス学部現代ビジネス学科の3学科、2年生以上の学生30人が6つのワーキンググループに分かれ、どのような取り組みが中心市街地の活性化に繋がるかを研究した。「甲府の街を豊かにするために」「学生が集まる街「レンタルスペースの可能性」などをテーマに成果報告を行った。
モータリゼーションの進展とライフスタイルの変化により、利便性の高い郊外型大型商業施設に人の流れが変わり、中心市街地の空洞化が一気に進んだ。甲府市では平成12年より「中心市街地活性化基本計画」を策定し、これに基づき中心市街地活性化に取り組んできた。山梨学院大では、2016年9月、各地方大学や経済団体が取り組む文部科学省の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の一環の授業科目として「地域課題総合研究」を開講した。この科目は地域が抱える諸問題を自治体と学生がともに研究していこうとするもので、今回は、甲府市に対して「中心市街地活性化策」を提言した。山梨学院の「地域課題総合研究」による自治体に対しての提言は、一昨年の笛吹市、昨年度甲府市に実施した『移住定住策』、続いて今年度は甲府市からの委託で地域課題として長年抱える「中心市街地活性化」についての研究発表を行った。学生たちは、昨年9月より「地域課題総合研究」の後期授業としてこれまで甲府市の出前授業や地域課題の調査・分析などのフィールドワークやワークショップを行い、それを基にグループでアイディアを練り上げていった。15回目となる今回の成果報告は授業の集大成となる。
成果報告会では、最初に今回の担当教授今井久山梨学院大学現代ビジネス学部長が趣旨説明を行い、続いて6つのワーキンググループが研究に取り組んだ成果を発表した。初めに「甲府の街を豊かに」を発表したグループは、甲府の街で今以上にお金を使ってもらう場所が必要と考え、魅力的な店の誘致や地図、掲示板の増設、駅での広告で周知を図り、甲府駅や中心街を軸とした商業施設の展開。アクセスが容易な街づくりや昼の時間帯に若者を増やす取り組みが必要と提言した。「甲府に住む人が、幸せになりますように!」のグループは、甲府市を活性化させるためではなく、甲府市に住む人が幸せになるために甲府市を活性化させることが重要と述べ、そのアイディアを披露。そのためには仕事を充実させることが重要でサテライトオフィスの誘致を提案。「学生が集まる街」のグループでは、高校生や大学生が少しの空き時間でも気軽に寄れる町になってほしいと、個々で思いのままに過ごしてもらうスペースを提供するスペースを提案。高校生たちの小遣いで入れる『ALL300円CaFe』の仕組みを説明。続いて「眠らない町~昼はイオン、夜は中心~」グループは、雰囲気的に明るい街、夜に中心街を歩いている人が多くなる街、大人が安全にお酒を飲める街をコンセプトに、甲府市と同規模の他県の具体事例を示しながら提案した。「レンタルスペースの可能性」グループは、『山梨県の顔として今以上に誇れる街になってほしい』をテーマに活気のない中心市街地にレンタルカフェやレンタルルームの設置を提案、人と人がつながりを持てる場所の可能性について言及した。最後の「リニア周辺の開発」グループは、中心市街地の活性化をリニア開通により『安心して子育てをしてほしい』とのコンセプトで話を進めた。都会への所要時間の短縮や他県の停止駅と比べて、山梨の停止駅周辺の医師・歯科医師・薬剤師の数の多さを示しながら安全安心の暮らしやすさをアピール。そこに自然の豊かさを組み入れ移住・定住を考えている若い人をターゲットに、リニア駅周辺から中心街活性化につなげると提言した。
若い学生ならではのアイディアに富んだ視点からの提言を受けて岸川仁和甲府市副市長は「どちらかというと皆さんは、自分たちの目線で立っているところがあるので行政で政策を提案していく場合は、他の利用者のこと、他から来る人、使う人はどんな人がいるんだろうということも考えてくれるとさらに面白いかなと思いました」と感想を述べた。『甲府市に住む人が、幸せになりますように!』の発表を行った中央市在住の清水晟大さん(法学部政治行政学科3年)は「甲府の街は楽しいところがたくさんあるので実際に行って楽しんでもらうことが大事で、結果的に活性化につながるかなと思います。市と連携するということは、自分たち政治行政学科で普段から行政の仕事ということを勉強させていただいているのですけど、その中で実際に仕事をしている方と接してこのような発表会をすることですごくいい経験になって、もし仮に自分たちが甲府市や他の行政職になろうと思った時にプラスになるいい授業だと思います」と話した。リニア駅が甲府中心街に近いというメリットを活かすと提言したグループの長野県松本市在住の増澤あかりさん(現代ビジネス学部現代ビジネス学科3年)は「甲府に住んでいる人たちがすごく良い町であるのに地元に対してのプライド、自分の町を“甲府の町は良いところだよ”と胸を張って言える人が少ないのではないかなと思います。他の県の人たちに良さを伝えることが大事」と自分の街を大切に思う気持ちから活性化が始まると示唆した。学生たちは地域の課題に主体的に取り組むことによって、その地域の良さを再発見する効果を感じていた。
今井久現代ビジネス学部長は「最初に何で活性化したいのか。どういう町になってもらいたいのか、ということをしっかり考えるところから始まりました。こじつけ的なところもあったりもしましたが、それぞれより具体的な提言でしっかりしたところもあれば抽象的なところもあるのでそれが課題かなと思っています」。地域課題を研究することに学生に意識の変化については「授業の中では、最初から自分事と捉えるようにやっているのですけど、このような最後に発表する“場”というところがありますから最終的に意識が高くなってきますが、最初から意識の高い状況で取り組んでもらうかが今後の課題かなと思います」と話した。担当者たちは、学生たちが地域の課題に主体的に取り組むことによって、その地域の良さを再発見すると同時に地元就職への意欲を掻き立てる効果を生むことを感じていた。山梨学院大では、来年度も甲府市を含めた他の自治体と連携し、地域の課題を研究していきたいとしている。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2019.1.11