●第91回選抜高等学校野球大会(初戦)
「~札幌第一 に24最多安打タイ記録で大勝 ~ 」
「~野村2本塁打 個人1試合本塁打タイ記録~」
山梨学院野球部は3月25日、センバツ大会3日第3試合で札幌第一戦に挑んだ。山梨学院は、打撃陣が1回裏2番・菅野秀斗の右越え先制本塁打を皮切りに、大会先発全員安打、大会先発全員打点、大会最多24安打タイ記録の猛打猛攻。守っては、左腕エースの相澤利俊(4回)が先発し、5回表には右腕エースの佐藤裕士(4回)が中継ぎ、9回表には右腕・中込陽翔(1/3回)と左腕・木村渓人(2/3回)の継投で、相手強力打線を失点5に抑え、選手が一丸となって札幌第一に24対5と大勝した。山梨学院は第66回大会以来25年ぶりとなる初戦突破を果たし、2回戦(第7日第3試合)へと駒を進めた。個人記録は3番・野村健太が1回裏に中越の3点本塁打と8回裏に中越え本塁打を放ち、個人1試合2本塁打タイ記録者となった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
札幌第一 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 |
山梨学院 | 10 | 2 | 0 | 3 | 2 | 2 | 0 | 5 | × | 24 |
【山学本塁打】菅野秀斗1号(大会3号)、野村健太1号・2号(大会4号・5号)
▶︎後攻の山梨学院は、マウンドに主将で左腕エースの相澤利俊(3年)が上がった。先発は「監督から昨日の練習の時に言われた」。マウンドに行くまでは「とても、緊張したが、マウンドに上がると意外と落ち着いていた」。先頭打者に「結果として、四球を与えてしまったが、自分の狙いどうりに球が切れて、その上にコントロールもされていた」と、左腕エースはこれで浮き足立つことはなかった。「高めの真っ直ぐを投手ゴロに打ち返されたが、落ち着いて1ー4ー3の併殺に打ち取れた」。続く4番打者に中前二塁打されるものの「不安はなかった」と、5番打者を外角へのチェンジアップで空振り三振に仕留めた。監督は「初回の守備で0点で終わったので、攻撃にいい感じで入れた」と相澤を称えた。
▶︎1回裏、切込隊長の渡邉が中飛に倒れ、2番打者の菅野秀斗(3年)は「1回裏、先頭の渡邉が倒れたので、自分まで討ち取られると攻撃の芽が摘まれると思い、今までになく凄く集中して打席に入った」と無の境地で相手投手と対峙した。1ー0からの「やや高めの真っ直ぐを無心で打ち返した。感触が良かったので、走りながらスタドに入ってくれと願ったら、右スタンドに消えたのを見て一瞬、頭が真白になった」と感慨無量な面持ちでダイヤモンドを回った。これで、山梨学院の快進撃の幕が切って落とされた。3番 野村健太(3年)は「アウトコースのストレート」を中前安打、4番 相澤利俊(3年)のヒットエンドランが中適時打となり0対2。5番 岸本捷汰(3年)の右適時打で0対3、右翼手の後逸失策で一死二塁。6番 高垣広大(3年)が四球を選び一死一二塁。7番 栗田勇雅(2年)が右越え適時打で0対4一死一三塁。8番 宮崎一樹(3年)の二ゴロの間に三塁走者が生還し0対5二死二塁。9番 小吹悠人(2年)が中適時打で0対6二死一塁とした。ここで相手監督はたまらず投手をエースに交代した。相手投手の1球目で9番 小吹が盗塁して二塁へ。1番渡邉嵩馬(2年)は四球となり二死一二塁。2番 菅野秀斗(3年)はフルカウントから左前適時打で0対7二死一二塁。続く3番 野村健太(3年)は「チームバッティングに、徹しようと打席に向かった」。相手投手が投じた「インコース甘めのストレートを無心に叩くと、打った瞬間に手応えを感じた」と中越え3点本塁打を放ち0対10とした。初回チーム一丸となっての、怒涛の攻めで試合の主導権を手中に収めた。
▶︎5回の表、監督は相手チームが佐藤対策様のオーダーで戦っていることを承知で、敢えて佐藤をマウンドに送った。「佐藤が今年になって左バッターに強くなっていたので何の躊躇もなかった」と言い切った。監督に信頼されている右腕エース佐藤は「3回に監督から5回表に行くぞと言われ、ブルペンでゆっくりキャッチボールを行い、回を追うごとにベスト投球に近づけていった」。佐藤は緊張より「投げれる喜びに感謝」し、先頭打者9番をツーシームで三振に切って取った。続く1番打者に右安打され一死一塁。2番打者を直球で空振り三振に仕留め二死一塁。好打者3番に投じた高め直球を左フェンス側に弾き返され、変わったばかりの左翼手の落球失策を誘い3対16とされた。
▶︎8回裏、先頭打者3番 野村健太(3年)は「投手は連打連打されていたので、ホームランを狙っていた。やや低めのど真ん中、ストレートをフルスイングした」と打球は中スタンドバックスクリーン付近に吸い込まれ3対20と試合を決めた瞬間が、個人1試合2本塁打タイ記録者となった瞬間でもあった。監督は「野村にとっては普通のこと、何も驚かない」と顔色一つ変えない。
▶︎9回表には、右腕・中込陽翔(1/3回)と左腕・木村渓人(2/3)の継投で締めくくった。山梨学院は24対5で札幌第一を退けた。
▷大会3号の本塁打を含む5打数5安打と猛打賞の 2番・菅野秀斗は「試合が終わって、取材インタビューであと1安打で、1試合大会記録安打タイとなったと知らされ、知っていたらもっと気合を入れ6安打目を打ていたかも知れない。そしたら、歴史に残ったのに悔しい」と満面笑みで茶目っ気たっぷりに話すと、すぐに真顔に戻して「1試合に連続して5打数5安打は初めてで凄く嬉しい」と素直に喜んだ。次の試合も「自分が1回でも多く塁に出て、後に控えるバッターに繋げるように心掛けたい」と謙虚に答えた。
▷ 主砲3番 野村健太(3年)は大会4号、5号の1試合2本塁打の記録を聞かれると「ホームランとか記録とかは意識はしない」と憮然と答える。「あくまでも、自分の仕事は自分の前に出塁した選手を返すチームバッティングに徹して、集中するだけ」ときっぱり。次の試合について「相手は強いチームだと思うので、下から上がっていくチャレンジャーとして、貪欲に戦うことに心掛け、チーム目標の2勝を目指して、あと一つ勝ち学校の歴史を変えたい」と引きしまった顔つきで淡々と答えた。
▷ツーシームで3三振を奪った 右腕エースの佐藤裕士は「今日は直球、カーブ、スライダー、チェンジアップのコントロールが少し甘く、納得がいかないので、明日から修正したい。また、直球、カーブ、スライダー、チェンジアップの精度を高め、登板機会があったら自分の武器である低めを丁寧につくコントロール投球で相手をほんろうさせたい」とポーカフェイスで答えた。
▷主将で 左腕エース相澤利俊は「冬の長崎合宿で、峠を走ったり、トレーニングなどして、ハードな時期をこなした。これで下半身が鍛えられ、直球、カーブ、スライダー、チェンジアップが思うところにコントロールできるようになった」と頷く。それ以来「投球の幅も出来て安定してきた」という。決め球はと聞かれ「指導者からいただいた相手チームの打者のデータを頭に入れて、捕手の栗田とともに、相手に一番有効な球を投げるている」。強いて決め球はというと「相手が嫌がるボールが決め球になる」という。次の試合に向けて「今日は結果、失点2だったが、もっと点を取られてもおかしくは無かった投球内容だったので、明日から修正したい」と神妙。チームも「次はこんなに上手くいかないと思うので、明日の第一試合を見て、対策を練りたい」と深く頷いた。
▷ 吉田洸二監督は大量点について「たまたまです」と小さな声で答える。相澤が1回表を0点に抑えてくれたのが大きかった」と頷き、「それが、裏の攻撃を導いた」と、「先頭打者を四球で出塁させたものの『1ー4ー3』で切り抜けてくれた」軽く頷いく。「佐藤もよく投げてくれた。左を抑えることが上手な投手」、佐藤は監督の起用に見事に答え自ら証明した。24安打タイ記録について「どんな形であれ、歴史(高校球史)に学校の名を残せたことは率直に嬉しい」と笑みを浮かべた。「何としてでも、もう一つ勝って、山梨学院は甲子園で力が発揮できないという、昔からの世間でのうわさを払拭したい」と語尾を強めてボルテージを高めた。
文(H.K) カメラ(平川大雪・今村佳正・小池裕太)2019.3.25
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◆全校が一丸となった!約1,000人の大応援団が勝利を後押し。
3月25日、「第91回選抜高校野球大会」3日目第3試合、山梨学院高校野球部は5年ぶり3度目の選抜甲子園のグラウンドに上った。1塁側アルプススタンドにはその雄姿を後押しするため約1,000人の山梨学院高応援団が陣取った。生徒、教職員の応援団は25日深夜3時30分に山梨学院大学駐車場から16台のバスに分乗して試合開始予定の午後2時に合わせて午後12時30分頃に到着。試合は第1・第2試合が延長のため、陽が陰り肌寒くなった午後2時45分にプレーボールとなった。試合は、山梨学院が初回から2番の菅野秀斗の本塁打などで相手投手を攻め立て10点を奪い、その後も点を重ね一方的な試合展開になった。その原動力の一つになったのは、山梨学院高伝統の全校一丸応援。生徒会の下、応援団・吹奏楽部・チアリーダー部が中心となり、生徒、教職員、保護者会がともに同じ方向に向かった。得点を加えるたびに圧倒的パワーを持ってスタンドを揺るがす。全員の母校への応援魂が一点に昇華する。山梨学院高の応援が評価される所以だ。
応援団を組織する生徒会は連日準備に追われていた。吹奏楽部が演奏する曲名と選手の名前のボード作りや応援に必要な小物の準備とチェック。他に応援する生徒の行動指針のしおり制作作業など多岐にわたった。井上小粋生徒会長(3年)は「結構大変でした。夏よりは準備期間が長かったですけど、先輩たちがいない中での準備だったので不安でしかなかった」。ここまでの生徒会、生徒会長としての重責を振り返った。応援団副団長を兼ねる井上さんは、団長の平山夏生さん(左から)とともに必勝の鉢巻とはかま姿で応援団を陣頭指揮する。井上さんは「生徒一丸となって応援できるように野球部、吹奏楽部、チアリーダー部をサポートしながらまとめていきたいですし、選手には山梨学院が全国に名を届かせるように頑張ってほしい」。平山さんは「初めての甲子園という大舞台なので二人でできることと、平成最後にできることを光栄に思っています。選手に向けての応援が精一杯できれば」と気を引き締めた。
生徒会の活動を支えるのは、いつもどこでも笑顔で元気なパフォーマンスで選手たちを鼓舞するチアリーダー部の大澤真珠部長は「今日のために振りを合わせる練習をたくさんしてきました。選手ひとり一人に力を出してもらうためにチアリーダー部全員、笑顔で大きい声で応援します」とはきはきした声で答えた。現役40人、OB7人で迫力ある全体応援の推進力を担う吹奏楽部・坂井さつき部長は「新しい体制になって初めての甲子園に来たので、うまく回せるか心配の部分もあるのですが、自分たちなりに野球部のみんなの力になれるように頑張ります。大きな音で迫力ある演奏をします。選手にはポジティブで笑顔忘れないで全力でプレーしてほしい」とエールを送った。アルプススタンドで選手たちを見守る二人の野球部マネージャーの青木あけみさんと渡辺愛深さん(左から)。青木さんは「かなり厳しい練習をしてきたのを見てきたので、やってきたことが今日結果に出せるように全力でプレーしてほしいです」。渡辺さんは「自分は今日、応援しかできないので選手みんなに届くような大きな声で応援をしたいです」と笑みを浮かべた。
ベンチ入りはできなかったが気持ちのこもった声援でチームメイトを元気づける野球部応援団長の大森開選手は「自分たちはきつい長崎合宿も越えてみんな一皮むけて成長しているので今日はいつも通りのプレーをしてもらえばいい結果につながると思う」と話し、自身は次のレギュラー争いで夏の甲子園を目指す。応援には家族の力も心強い。選手の優劣の分け隔てない結束の固い野球部保護者会の存在も欠かせない。相澤貴志保護者会長は高校球児の聖地に立てた気持ちを代弁。「本当に感無量の気持ちです」。「選手にはいつも通りの自然体で楽しくプレーし、勝ってもらいたいです。保護者会は選手と一体になって全力で応援します」とまずは1勝必勝を願った。試合は、24安打24得点と大会最多安打タイ記録を残した。応援した各人の思いを白球に乗せて勝ち取った快勝だった。
試合後、前応援団長の田中ともかさんは「代が変わっての甲子園で、みんな夏に一回経験したことがあるのでその分、応援もパワーアップしていたなと感じました。自分たちも楽しんで応援ができ良かった。次の試合には行けないので是非勝って、その次にはまた来たいです」と2勝目の期待を込めた。
アルプスタンドからの声援に勇気づけられ、多くの人に支えられた山梨学院高野球部は初戦を繋ぐ打線でそつなく先制、加点した。冬に守備力、打撃力をさらにパワーアップ。関東大会の感触そのままに、29日に初めての2戦突破を目指す。もちろん応援団は傍にいる。
文(K.F) カメラ(藤原 稔) 2019.3.25
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