●第91回選抜高等学校野球大会(2回戦)
「~息詰まる熱戦 ! 再三のサヨナラ逃し3対2負け~ 」
「~春夏初の8強入り逃すリセットしチームづくり~」
山梨学院野球部は3月29日、センバツ大会7日第3試合で筑陽学園戦に挑んだ。山梨学院の吉田洸二監督は筑陽学園戦(2回戦)、1回戦で好投した右腕エース 佐藤裕士をマウンドに送った。山学は1回表4番打者に左前適時二塁打で1対0と先制されるが、その裏3番 野村健太の右前適時打で瞬く間に同点とする。5回裏の二死満塁追加点のチャンスで無得点。援護射撃がないままの7回表、右腕 佐藤の直球が甘く入り2対1と再びリードされだところで、山学は左腕エースの相澤利俊を投入。その相澤が8回表に左前適時打され3対1と引き離される。山学はその裏、一死満塁一打逆転の好機で、内野ゴロで3対2と追い上げる息詰まる熱戦もこの1点止まり。後のない最終回の9回裏、再び満塁として逆転の契機をつくるが、後一本が出ず3対2で競り負けた。山学は相手チームを上回る10安打を放ったものの打線につながりがなく、春夏初めての8強入りを逃した。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
筑陽学園 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 3 |
山梨学院 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 |
▶︎山梨学院の吉田洸二監督は、1回戦で4回打者15人に対して1安打4三振失点1と好投した右腕エース 佐藤裕士をマウンドに送った。1回表、佐藤は筑陽学園(福岡)の1番打者を捕飛に打ち取り落ち着いた立ち上がりを見せたが2番打者に中前安打される。3番打者を中飛に打ち取り二死一塁としたが、4番打者にスライダーを左前適時二塁打され1対0と先制された。
▶︎1回裏、切込隊長1番 渡邉嵩馬が、先発のエース西雄大から初球を叩き中前安打で出塁。猛打2番 菅野秀斗の二ゴロ4-3で渡邉が進塁。一死2塁、主砲3番 野村健太は「負けていたので、思い切り振っていこう」と打席に立ち「 ストレートに食い込まれ詰まってしまったが、思い切り振り抜いたので、良く外野に飛んでくれたラッキー」な右前適時打となり、渡邊が二塁から生還して1対1の同点とした。
▶︎2回表から右腕エース 佐藤は二死一二塁とされながらも低めにコースをつく丁寧な投球で1番打者を二ゴロに仕留めると、3回・4回にはリズムよく投げ3者凡退に切って取る。
▶︎好投する佐藤に打撃陣は、5回裏一死から1番渡邊が初球を左二塁安打を放ち一死二塁。筑陽は好投西から左腕の菅井一輝にスイッチ。2番 菅野が四球を選び一死一二塁。筑陽は主砲3番野村を迎えて菅井から本格派右腕の西館昂太に投手交代。3番野村は「相手のストレートが130中盤のスピードが出ていたので振り遅れないようにと」意識しすぎて1-2からの4球目の「フォークボールで崩され」三振。続く主将 相澤は「西館投手は好投手と聞いていたので、なんでも食らいついていこうと打席に立ち向かった」。1-2からの4球目「ボール球の変化球を上手く捉え」遊安打し二死満塁の一打逆転のチャンス。しかし後続が遊ゴロに倒れ好機を逸した。
▶︎右腕エース 佐藤は6回表にもテンポよく三者凡退に打ち取り好投。その佐藤が7回表に先頭の6番打者に直球を右中間二塁打。7番打者を空振り三振に打ち取り一死二塁。続く、8番打者に直球を弾き返され一死一三塁。二死一三塁後、1番打者の5球目を一塁走者に盗塁された3-2のフルカウント、佐藤の直球が甘く高めに入り左前適時打され痛恨の失投。佐藤は2対1と再び1点リードを許したところで、主将で左腕エースの相澤利俊にマウンドを譲った。相澤は「ピンチだったが絶対抑えてやろう」と、後続を打ち取り火消し役を務めた。
▶︎8回表、左腕エースの相澤は先頭の3番打者に右前安打され無死一塁。続く4番打者の犠打で一死二塁。5番打者に右前安打され一死一三塁。6番打者に直球を左前適時打され3対1とされた。
▶︎8回裏、主将左腕エースの相澤はチェンジアップを中前安打し無死一塁。4球目相澤が盗塁し無死二塁、続く5番岸本捷汰が遊内野安打し無死一二塁。6番高垣広大の送りバントで一死二三塁。7番栗田勇雅は四球を選び一死満塁とした。8番小吹悠人の遊ゴロの間に三塁から相澤が生還し3対2と追い上げる。
▶︎9回表、主将左腕エースの相澤はリズムよく3者凡退に仕留め味方の反撃に希望を託した。
▶︎9回裏、再三切り込み隊長として好機を演出してきた1番渡邉、応援のボルテージは上がる。渡邉は0-1からの2球目の「低くめのカーブに中途半端な打席」となり倒れる。一死、2番菅野は一塁内野安打で出塁。3番野村が右前安打、5番相澤の右邪飛で菅野が三塁へ進塁し二死一二塁。5番岸本の死球で二死満塁としたが後続が倒れ、一打逆転サヨナラの幕は下りた。
▶︎再三の息詰まる熱戦、山梨学院は筑陽学園を8回・9回と追い詰めたが、後一本が出ず競り負けた。相手チームを上回る10安打を放ったものの、タイプが違う投手3人の継投で目先を変えられ、打線につながりがなく、春夏初めての8強入りを逃した。
▷切込隊長の1番打者の渡邉嵩馬は「是が非でも、ランナーに出ることだけを考え、好球必打で行こうと決めていた」と、相手投手のこの試合の1球目の「初球、真っ直ぐ好球がきたので中前に弾き返した」と出塁し野村の一打で生還した。「5回にはデータで配球グセがわかっていたので、初球カーブを待っていたらそのとおりきたので迷わずスイングした」と一死二塁とした。ただ一番大切な「9回先頭打者で低めのカーブに手を出し、中途半端な打席となり、自分の仕事ができなくチームに迷惑をかけた」と反省の弁。夏に向けて「このような場面でもしっかり一番打者として仕事ができるように鍛えていきたい」と静かに闘志を燃やしていた。
▷2番打者の菅野秀斗は1試合目に5打席連続5安打と猛打
を振るい臨んだ2回戦「接戦になって、緊張した場面でチャンスはつくれていたが、あと一本が出ずに自分たちの弱さが出た試合だった」と反省。「調子が上がらなかったので、球を良く見て好球だけに絞った結果、終盤2四球でつなぐバッティングをが出来た」と胸をなでおろす。最終回「仲間を信じて三塁に進塁出来たので、一打でホームに行けるし、パスボールでも行けるので、絶対ホームをついて同点にすると気迫を持ち三塁ベースにいた」が、結果は「試合終了となり。人生で1番悔しくて泣きそうになった」。「この悔しさを夏に晴らしたい。夏は他のチームもレベルアップしてくるので、自分たちもレベルアップしないと、夏に戻ってこれないので、そのためにスイングのスピードなどを上げていきたい」と誓った。
▷個人1試合2本塁打タイ記録と大活躍。今日も同点打を放つなど5打席3安打の主砲3番打者 野村健太は「普段どおりにやっていれば勝てた試合だった」と冷静に振り返る。「先制され焦りがあって、打ち急いでしまった」と表情が曇る。「勝てた試合だっただけに、凄く悔しい」と拳を握りしめた。夏に向けては「仕切り直しで、リスタートし、一から鍛え直し、夏は強いチームをつり再び甲子園に来て、今回の目標以上の結果を残したい」と、主砲は言葉を一つ一つ選びながら、どっしりと堂々と夏を見据えた。
▷主将で左腕エースの相澤利俊は「勝てた試合で、あと一本が本当に遠い試合だった」と振り返る。ピッチングについては「キーとなるチェンジアップが、今日は使いきれなく、真直ぐでカウントを取らなくてはならなくなり、その球を狙い撃ちされてしまった」と悔しさを滲ませる。夏には「この負けを、絶対に生かさないといけない」と、「夏はもっともっと厳しい闘いとなると思うので、チーム一丸となって必死に練習し、夏には絶対甲子園に戻ってくるんだと、強く思い1日1日を無駄にすることなく、全員でチームプレーを意識し妥協のないチームづくりをしたい」と強く己にフィードバックしていた。
▷試合終了後、吉田洸二監督は「5回から登板した西館投手がいい投手でしたね」と敗因を口にした。「九州で全然点数を取られていなかった。秋の大会だけを見るとベストスリーに入る投手と聞いていた。故障しているとも聞いていたが、対戦してみてやはり良いピッチャーでしたね」と敬意を表した。
試合の展開について、1回裏の攻撃は「一般的に見ると、悪くても送った形で良かったとなるところだったが」と言葉を呑み、「私たちの練習では、あそこは打たない」と何回も頷く。「1回裏無死一塁の場面で菅野が無理して打たなくても(エンドラン)、渡邉は盗塁を成功していた」と深く頷く。「渡邉が出て、菅野と野村でランナーを還さないといけないチーム。菅野には、あそこは無理して打たないで見逃して、相手投手と堂々と勝負して欲しかった」とため息。「今までは、あそこで畳み掛け攻撃し得点するというのがうちの流れ」と悔やんだ。
「5回の裏一死一二塁で、3番手で登板した西館投手は野村と対峙した場面で、フォークボールで仕留めたのは素晴らしかった。うちは8回、9回と満塁にしプレッシャーをかけたが、もう一本打たせてもらえなかった。普通の投手は浮き足立つところだが、西館投手は違った」と強さを認める。
特に「9回裏の二死一二塁。5番岸本への死球は、凄く痛手だった。岸本はこうしたシチュエーションにめっぽう強い選手だけに、期待できた場面だっただけに」と唇を結んだ。
先発の右腕 佐藤裕士については「7回表に直球が甘く高めに入り左前適時打され2対1と再び1点リードを許した。あの1球さえなければ100点の出来だった。あれで80点となった」と振り返る。しかし「佐藤は球をよく低めに集めて投げてくれた」と褒める。しかし「あそこで甘い球が行かないようにしなければならない」とも苦言を呈した。あとを引き継いだ左腕の相澤について「よく投げてくれた1点献上したものの、よく凌いでくれた」と褒めた。「相手打線は5対1になってもおかしくない相手。両投手はよくやってくれたと思う」と労った。
夏に向けて「このチームは、ミラクルのチームで関東大会を勝ち上がりセンバツの出場を果たした。この春は出場権を手中に収めた選手で戦ってきたが、夏はリセットして一から競争させる。チームメンバーがガラッと変わることも大いにある。このままでは、夏は勝てないことは、監督の私が一番わかっている。明日から、新チームづくりに本腰を入れていきたい」と一気に言い、闘将の夏を睨む目がキラリと光った。
文(H.K) 、カメラ(平川大雪・今村佳正・小池裕太) 2019.3.29
◆悲願の2回戦突破ならずも、思い出に残る甲子園に
高校野球では応援は不可欠。熱い声援によって、自分のためだけではなく、応援してくれる仲間、家族のため、持っている以上の力が発揮できる・・・。
3月23日開幕した「第91回選抜高校野球大会」で山梨学院高校野球部は、25日の1回戦で大会最高安打タイ記録の24安打で24点を挙げ快勝した。29日大会7日目、福岡代表の筑陽学園高校を相手に2回戦に臨んだ。全校一丸応援を掲げる山梨学院は1回戦と同じく午前3時30分に甲府市を出発。正午過ぎに甲子園に到着。生徒会、吹奏楽部、チアリーダー部、野球部、一般生徒、教職員、野球部保護者会、PTA、県人会など約1,000人で午後2時開始予定の試合に備えた。
1回戦を爆発的破壊力で勝利し、初の2回戦突破に意欲を燃やす野球部に応援団も燃える。ベンチに入れなかった野球部員とともにアルプススタンドで応援する田中信幸野球部育成部長は1回戦の様子を。「今までの甲子園のうっぷんを晴らすような試合で応援していて気持ち良かったです。結果的には注目選手が出ましたけど、いない中で総合力的な勝ち方ができて良かったです」。2回戦目の壁を突破するには「いつも通りのプレーができれば。今日は勝たなきゃと、変なプレッシャーにならなければ。元気にやってくれて次につながれば」と甲子園2勝目突破の期待を込めた。今月卒業した元野球部で昨夏の甲子園で応援団長を務めた羽鳥祐希さんは1回戦の勝利に「山学の冬練習は本当に厳しいものがあるのでその成果が表れている」と言い。1回戦後に「1勝目に満足しないで2回戦が大事」と伝えたという。また、野球部応援団については「春なのでまだのところはありますが、今年の応援団長の大森がしっかり引っ張っているので盛り上がっています。僕たちも応援頑張ります」。後輩とともに声を張り上げる。1回戦で本塁打を含む5安打で勝利に貢献した菅野秀斗選手の父親で野球部保護者会の菅野雄介さんは「胸躍りました」と我が子の活躍とチームの勝利を一言。「今日も精一杯に親も一緒に戦っているつもりで応援します」と勝利を信じる。
試合は1回、先攻の筑陽学園高が1点先制すると、その裏山梨学院も1番の渡辺嵩馬が先頭打者安打で出塁すると一気に声援が高くなる。3番野村健太が打席に立つとひと際盛り上がった。期待に応え野村が適時打で同点に追いつく。応援曲などを書いたボードで手際よく指示を出していた吹奏楽部の阪本紗弥さんは「情報は生徒会から回ってくるのでそれをより早く吹奏楽部や野球部員に指示できるように工夫しています。1回戦は、たくさん打って点を取ったのでボードを上げるのが大変でした。今日はできるだけ試合を見てしっかり上げられたら良いなと思います」と応援を支える。生徒会の樋口美月さんは「生徒会の仕事の一つとして勝ち進むほどに同じ荷物を積み直したり準備期間が短くなり大変ですけど、このように勝ち上がってくれることが本当に励みになり、一生懸命にやっていると選手も一緒に頑張ってくれる気持ちがうれしいです」とやりがいを強調する。5回裏、山梨学院高は満塁から勝ち越しのチャンスをつくり、応援のボルテージも一気に上がるも得点に結びつかず。アルプススタンド最上段で山梨学院高応援校旗を掲げる中村歩睦生徒会副会長は「惜しいチャンスを残念でした。良い風が吹いてきているのでこの校旗を見てみんなが頑張ってほしい。勝ち進んでほしいです」と勝利の印との願いを込めた。ひと際大きな声援を送っていたソフトボール部・中込向日葵主将らは「自分たちは先日の選抜は、1回戦で負けてしまったので私たちの分まで勝ってほしいです」。応援団全員が一丸となり応援を盛り上げる。2点リードされた8回裏、安打2本と犠打、四球で一死満塁。この日最高の見せ場に山梨学院応援団は最高の高揚感を選手に送った。しかし、1点を返すに留まった。意地を見せ、9回裏二死満塁に一打逆転サヨナラの最後のチャンスを迎え、アルプススタンドは必死の声援を送るも、最後の打者6番高垣広大が遊撃ゴロに倒れ試合終了。スタンドからは無念のため息が起こった。2-3の惜敗。山梨学院ナインは良く戦った。しかし、2勝の壁は高かった。
試合後、アルプススタンドで試合を見守っていた山内紀幸校長は「学校の歴史を変えることは難しいものだなと感じました。しかし、1回戦で山梨県、全国を盛り上げてくれてうれしかったです。2回戦もピッチャー二人が良い投球をしてくれて今までのうちの高校の負け方と違う、次を感じさせてくれるような試合でした。“本当に選手に頑張ってくれた”と、言ってあげたい」と選手を称えた。また、応援団に対しては「選手だけではなく学校すべての構成員の人たちにとって思い出に残る甲子園でした。夏も頑張ってほしいと思います」と次に期待を寄せた。
山梨学院高野球部は、今回も目標にしていた山梨学院の歴史を書き換えることはできなかった。しかし、常連校として記録とともに全国に名を馳せた。悲願の2勝突破から強豪校へ。さらに山梨学院高野球部の挑戦は続く。そして、全校一丸応援団はいつでも選手たちとともにいる。日本一の応援団と言われるように。
文(K.F) カメラ(藤原 稔) 2019.3.29
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