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●2019年シニア・レスリング 世界選手権プレーオフ
~乙黒が世界選手権決定で東京五輪へ前進~
~皆んなの協力があって勝てて、凄く感謝~

2019年シニア・レスリング 世界選手権プレーオフ6試合が7月6日、和光市総合体育館メインアリーナで行われた。65kg級で天皇杯 全日本レスリング 選手権覇者の山梨学院大 乙黒拓斗が、明治杯 全日本選抜レスリング選手権覇者の樋口黎と対戦し5ー0で完勝。乙黒は、第1ピリオド、コーションを奪い1ー0。第2ピリオド、激しい組み手争いで右手の指を痛めての確認の開始直後、素早く両足タックルを仕掛けバックを奪い4ー0として試合を決めた。勝利者インタビューで「皆んなの協力があって、勝てて、凄く感謝している。このチャンスを絶対掴む」と、感謝と決意を述べた。乙黒がこの世界選手権でメダルを獲得すると、東京オリンピック出場が内定する。

⬛︎フリースタイル級65kgプレーオフ⬛︎
山梨学院大の乙黒拓斗(3年)は、2019年シニア世界選手権(カザフスタン)の日本代表になり、この大会で2連覇して東京オリンピック出場を内定し、オリンピック金メダリストになることを目指している。乙黒は2018年12月に行われた天皇杯全日本選手権65kg級で優勝し王手をかけて、2019年6月に行われた明治杯 全日本選抜レスリング選手権大会に臨んだ。乙黒は、VTRなどで徹底研究し秘策を練って参戦した樋口黎(日体大助手)に、奇襲の一本背負いと片足タックルなどで5対15のテクニカルフォールで負けた。これで、今日の世界選手権代表選考プレーオフとなった。ルールは世界レスリング連盟(UWW)ルールが適用され、一部、日本レスリング協会が定めたものを適用するルールで行われる。
▶︎13時08分、場内にファンファーレが鳴り響き、場内アナウンスに促されメインマットに乙黒が入場、続いて樋口が入場すると場内から拍手が沸き起こり、「赤、天皇杯優勝山梨学院大学乙黒拓斗選手。青、明治杯優勝 日体大助手 樋口黎選手」とアナウンスされると、拍手と応援の嵐に包まれた。レフェリーが両選手を直径1mのサークルに呼び寄せ、点検と指示を行い両選手に握手をさせ、ホイッスルを吹き試合を開始した。
【第1ピリオド(3分)】
乙黒は相手より低い姿勢で構え、組手の攻防から相手の右肩を左手で押さえ相手との距離をとり、右手を床に垂らし相手を牽制する。右に左に円を描くようにし、時折タックルを仕掛ける。相手に1回目のパッシブ、2回目のパッシブでアクティビティタイム(30秒間)が告げられ27秒後の残り3秒、樋口が乙黒の右腕を手繰り一本背負いを仕掛ると会場が響めいた。前回は奇襲で決められたが、乙黒は余裕を持って相手を潰す。3秒後コーションを奪い1ー0とした。その後も乙黒は相手との間隔を取り続けタックルを仕掛ける。レフェリーのホイッスルが会場に響き第1ピリオドが終了した。
【インターバル(30秒間)】
乙黒はコーナーでタオルを片手に待つ小幡邦彦コーチ迎えられ、汗を拭われながら耳元で「3点差は必要なので、自分で取りに行かないと、後半追い込まれるので、セーフティーリードを意識するように」とアドバイスをする。30秒が経過しレフェリーに中央サークルに呼び寄せられ、両選手が握手し、レフェリーのホイッスルで第2ピリオドが開始。
【第2ピリオド(3分)】
乙黒は一段と激しい両者の組み手の攻防から、相手の左腕の関節を右腕で抱えて小手でいなし、両手で相手の首根っこを右腕で抑えるなどして、相手のバランスを崩す。相手に2回目のパッシブでアクティビティタイム(30秒間)が告げられ、樋口が前に出てくる。それをうまく左右に回り相手の突進を交わしながら攻め、残り1分47秒コーションを奪い2ー0とした。2秒後の1分45秒、乙黒が右手の指を痛めてタイムを取り主催者のトレーナーの確認を受ける。小幡コーチは「残り2分、熱くならないで頭を整理して、冷静にポイントを取りに行け」と声を掛けた。プレー再開直後、乙黒は素早く両足タックルを仕掛けて、必死で抵抗する相手のバックを奪い残り1分40秒で4ー0とした。乙黒は前に出てくる相手をあの手この手でいなしながら反撃し一進一退の攻防、残り27秒で相手に左腕で右腕を右手で左首を決められ、がぶり寄られマットに両膝をつく、それでも両手をマットにつき、左膝を立てて四つん這いになり、後ろに体を移動させ左に回り込み相手を崩し、一気に場外に押し出し5ー0としたところで試合終了のホイッスル。乙黒は陣営のセコンドに両手を掲げ両人差し指を天空に突き上げ勝利を誇った。
▶︎乙黒は勝利者インタビューで「皆んなの協力があって、勝てて、凄く感謝している。このチャンスを絶対掴む」と、感謝と決意を述べた。

⬛︎試合終了後のインタビュー⬛︎
●樋口選手に完勝し東京五輪へ前進した乙黒拓斗(3年)は記者会見の代表質問で、今の心境について「3週間ぐらい前(明治杯)に負けて、負けには慣れてなくて、3週間すごい苦しんで、何をやっても、頭の中がわからなくなって」と苦悩したことを口にした。その間「いろんな方々に助けてもらって、サポートしてもらえて、こうして勝利できて凄く嬉しいです」と、微笑を浮かべ一気に感謝と喜びを語った。今振り返ると「今後に凄く生きる負けを、この前して良かった」としみじみと述べた。この3週間で考えたこと若しくは反映されたことは、ややもすると「今までは自分一人でやってる気持ちが少しあった。負けてからいろんな人に、いろいろ言ってもらったりして、自分一人では無いんだなと」改めて実感した。「今までも周りの人に感謝していたが」、それ以上に「周りの人に感謝することの大切さを知り」より痛感した。この期間「レスリンも格段にレベルが一段と上がった。前よりトレーニング面も食事も良くなった」と大きく頷いた。昨年、世界チャンピオンになって「最初はプレッシャーはないと思ったが、ありがたい事だが周りから世界チャンピオンと言われると、凄くプレッシャーがかかるのは感じた」と複雑な心境を明かし、「チャンピオンは誇りでもあるが、周りの選手が自分に勝つためにやってくるのが、モチベーションになったり、恐怖にもなったりする。今度の世界選手権では2連覇できるように頑張りたい」と胸の内を述べた。今日の勝利で東京オリンピックが近づいたと思うが「夢に見ている舞台、そこで優勝することが最近では1番の目標なので、一つ一つ世界選手権で勝ちあがり優勝して、東京オリンピックの代表をクリアして優勝できたらいいなと思うと」決意を述べた。それを達成するための課題は「体力面、技術面、ここまできたら相手の戦術を上回るレスリングをしなければならない。いつもどおりにやればいい結果がついてくる」と大きく頷き会見を終了した。
▶︎さらに囲み取材で、この前の敗戦で改善した点は「どんなに点が離れても、自分は勝てるという過信があった」と、また「周りがサポートしてくれているのに、自分勝手に、自分がやりたいように全てやっていた。まだ、ガキ(ガキ大将)だった」と苦笑い。「コーチをはじめ実兄や周りの方々」と、「メンタル的には試合中に熱くなり、イライラしたり、ちょっと喧嘩腰になってしまうことが良くあったので、3週間は冷静に集中することを心掛けて強化した」と自己コントロールできるように努め、また「技術的には相手を上回る対策をした」と完勝の秘策を明かした。
●セコンドに付いた小幡邦彦コーチは「乙黒は小学校のちびっこから世界チャンピオンまで負け知らずで来て、明治杯で樋口選手に負けて挫折を味わった。本人もこの3週間きつい時を過ごしたと思う。それを乗り越えて、対策を確り練って、勝てたのは本人も成長できたと思う」と褒めた。「樋口選手は片足タックルとアンクルホールドが得意、乙黒が樋口選手に勝ってきた試合は足を触らせない試合。前回負けた試合は乙黒がカウンターに行くところを足を踏まれタックルを取られていた」と振り返る。「世界水準の選手になると、足を触らせると得点されるので、徹底して足を触らせない対策を行った」と大きく頷く。第1ピリオドは「相手は体力があるので、乙黒の積極的な攻めに良く反応して躱していた。それでも、しつこく乙黒は攻め続けてコーションを奪い1ー0とロースコアで終わった。終始プレッシャーをかけていたのは乙黒で、相手は下がって戦っていた。練習で最初からプレッシャーをかける練習をしてきて、それが出来ていたので焦りはなかった」と振り返った。
▶︎第2ビリオドは「アドバイスどおり、ポイントを取りに行く中でのコーションを取り2ー0、コーションを取りに行くのではなくて、攻めてのコーション」を評価。「乙黒がなかなかポイントが取れない。そんな中、組み手の攻防で指をひねり痛めてタイムを取る場面があったが、相手は乙黒を熱くさせる駆け引きがうまい、前回は熱くなりすぎて相手の術中にはまったが、決して相手の挑発に乗らないように冷静に対処することを、練習から言い聞かせていた。乙黒は冷静に対応できた」と評価。「残り2分、熱くならないで頭を整理して冷静に行け」と声を掛けた。このタイムの直後、冷静に「相手の隙を狙い両足タックルで足を捕まえて、乙黒は相手の必死の抵抗にあうが、足を離さない反復練習も生き、相手のバックに回って4ー0。その後も攻め続けて5ー0で完勝した」ことを絶賛した。
▶︎今後、世界を目指す課題として「本人も今度の勝ちで満足していないと思う。これでやっと東京オリンピック出場のスタートラインに立てただけ、世界というもっとレベルの高いところで戦わなければならない。明日から気分をリフレッシュしてもらって、来週から9月まで練習と対策を練りたい」と頷く。「まずは今回の試合で出た課題の、正面からだと技が決めにくいので、入って捕まえてから相手の体の横に食らい付いて攻める練習、また、組み手が単発にならないこと、フェイントをかけて相手を幻惑させるなど、相手に技が何が来るのか読ませない攻め、崩し、構えなどの強化を図り、新しいスタイルを開発しバリエーションをつくり、世界のレスリングの駆け引きに対応できるように練習したいと述べた。
⬛︎乙黒は2019年9月カザフスタンで行われるシニア世界選手権でメダルを獲得すると、東京オリンピック出場が内定する。さらに東京オリンピックで金メダリストになることを目指す。日本中が乙黒の活躍に注目するとともに期待を寄せる。

文(H.K) 、カメラ(藤原稔) 2019.7.7