●甲斐の古道を歩く「秩父往還」
~歴史遺産を巡るフィールドワーク~
~秋の足音近づく川浦(三富)を散策~
山梨学院生涯学習センターは9月28日、甲斐の古道の一つである「秩父往還」や周辺の文化財・歴史遺産などを巡るフィールドワーク体験プログラムを実施した。これまで青梅街道や鎌倉街道、若彦路、駿州往還、棒道の5古道のフィールドワークを行い、今回は第6弾として「秩父往還」編が企画された。秩父往還は、甲斐と秩父を結び、古代には日本武尊が東征の際に通ったとされ、中世では、武田氏の重要拠点として山梨側・埼玉側それぞれに関所が置かれた。この日は、山梨市三富(川浦)周辺の歴史遺産や自然遺産を見学。参加者は、講師の説明に耳を傾け、地域の歴史や自然を再認識し、古代の歴史ロマンに思いを巡らせていた。
江戸時代の地誌『甲斐国志』には、「本州九筋ヨリ他州へ通ズル路九條あり・・・(中略)・・・皆酒折ヨリ路首を發起ス」と記述があり、山梨学院の所在する甲府市酒折地区が甲斐の古道の起点であったと記されている。甲斐の古道は九筋あり、駿州往還・中道往還・若彦路・鎌倉街道・青梅街道・秩父往還・穂坂路・棒道・逸見路の9路からなっている。学校法人山梨学院は創立70周年記念事業として「甲斐の古道プロジェクト委員会」を立ち上げ、山梨学院大学考古学研究会の協力も得ながら、古道の現況調査に取り組んだ。今年5月には青梅街道・秩父往還の起点、甲州街道の分岐点として今にその姿を残している山崎三叉路の一画に「甲斐の古道歴史公園」を整備。これまで、青梅街道(山梨市・甲州市)、鎌倉街道(富士富士河口湖町・富士吉田市)、若彦路(富士河口湖町)、駿州往還(身延町)、棒道(北杜市長坂町・小淵沢町でフィールドワークを実施。今回の第6弾は、山梨市三富を舞台に「秩父往還」編が企画された。
講師は地元の山梨市観光課の温井一郎課長(山梨水晶会議参与)と山学大の十菱駿武客員教授、保坂康夫客員教授が務めた。秩父往還は、甲府市酒折を起点に青梅街道から山梨市小原西で分岐し、笛吹川に沿って北上し雁坂峠を越えて埼玉県秩父市大宮に向かう古道。古代には、日本武尊が東征の際に使用したとされ、中世・武田信玄の時代には、軍事的防衛のための関所(口留番所)や烽火台を設け、国境を警備した。軍道としての顔を持つ一方で、金峰山や三峯山、秩父観音霊場などへの信仰の道や米穀や繭、水晶の交易道としてなど人々の生活道路としても利用された。29人の参加者は、以下の行程で山梨市三富・川浦周辺に残る石造物などの文化財や歴史遺産、自然遺産を約5時間かけて見学した。
【行程】山梨市役所三富支所→名瀑一之釜→釜口→お伊勢の宮→川浦口留番所→馬頭観音道標 (昼食)→旧番所跡→川浦温泉山県館→雷集落→雷の不動滝→清水渓谷→三富支所
各見学場所や道中では、講師の温井課長や十菱客員教授、保阪客員教授が歴史学や民俗学などの視点から文化財・歴史遺産の説明を行った。また、今年6月には、甲武信ヶ岳一帯がユネスコエコパークに登録され、一行は名瀑一之釜や清水渓谷などの自然景勝にも立ち寄った。道中コスモスなどの秋の草花も出迎え、参加者はメモや写真などに記録し、ふるさと山梨の歴史や自然を再認識していた。
文(Y.Y)、写真提供(里吉達美)2019.9.30