●第92回日本学生競技選手権大会(ST)最終日
~山学女子学校対抗競技で3連覇14度目の優勝!~
~3,000mRで10年ぶり0Gの大会新記録塗替え~
第92回日本学生氷上競技選手権大会ショートトラックスピードスケート競技最終日が10月27日、長野県の帝産アイススケートトレーニングセンターで行われた。山学大は女子が学校対抗競技で3連覇14度目の優勝を成し遂げた。山学大は学校対抗のクライマックス3,000mRで篠原祐剛コーチが「『引き離し作戦』で、1,500m3位・1,000m5位の田中冴実を第1滑走者に、1,500m優勝・1,000m優勝と2冠の山名里奈を第2滑走者に、500m3位・1,000m7位の中野あやめを第3滑走者に、500m4位・1,500m7位の冨吉葉月を第4滑走者として配置」。その結果、田中がスタートダッシュをかけ他校が1周でタッチする中で差を広げて、山名・中野・冨吉とつないで行き、アンカーの山名が2周を激走し、4分27秒850の大会新記録を樹立し優勝。山学大は、OGが2009年にマークした4分29秒871の大会新記録を10年ぶりに塗り替えた。1,000mでは山名が優勝し、3,000mR優勝と昨日の1,500m優勝を合わせての3冠を達成。女子総合順位は1位 山梨学院大93点、2位 神奈川大学53点、3位 阪南大学33点となった。
◾️〈試合前インタビュー〉◾️
▶︎山学大は篠原祐剛コーチが「女子は3連覇14度目の優勝がかかっている」と頷く。今日の女子の競技は「1,000m、3,000mRが行われる」。「1,000mはうちの得意種目で昨日、表彰台に上がった3人が出るので優勝してもらいたい」と頷く。「リレーはお家芸なので、平常心で持っている全ての力を出し切って戦ってもらいたい」と3連覇14度目の優勝に自信をのぞかせた。
◾️〈女子学校対抗競技〉◾️
《 女子試合 》 | ||
⬛︎ 1,000m(9周) ⬛︎ 【準決勝】 |
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1組2レーン | 3位 田中 冴実 | 1.36.248 |
1組4レーン | 4位 中野あやめ | 1.36.411 |
2組1レーン | 1位 山名 里奈 | 1.36.410 |
【決 勝】 | ||
4レーン | 1位 山名 里奈 | 1.45.231 |
3レーン | 5位 田中 冴実 | 1.46.317 |
▶︎山梨学院勢は山名里奈と田中冴実の2人が決勝に進出した。1レーン神奈川大、2レーン阪南大、3レーン田中、4レーン 山名、5レーン立教大がスタートラインに立った。ピストルがなりスタート、お互い牽制し合いゆったりとしたスタート。1周目、神奈川大、立教大、阪南大、山名、田中と続く。2周目、神奈川大、立教大、山名、阪南大、田中。3周目は後方の田中がスピードをあげて4周目にトップに踊り出て、神奈川大、内に山名里奈、外に立教大、遅れて阪南大。5周目、田中が引っ張り、神奈川大、山名、立教大、阪南大と帯状。6周目の手前で神奈川大が内から、山名が外から先頭の田中を追い上げる。6周目の第1カーブで神奈川大が田中の内の隙間を突きトップに、外から神奈川大の後ろに付いた山名、そして立教大も内から第2コーナーで入り込み、田中は外に追いやられる展開。第3コーナーで山名がスピードを上げ前を行く神奈川大を抜き去りトップに躍り出ると、さらにスピードを加速させて、7周目には2位の神奈川大学を離し、後方から上がって来た阪南大が3番手に、そして立教大、田中と帯状。そのまま8周目を通過し、山名を神奈川、阪南が追い上げるも差はたいして縮まらない、山名はラスト9周目も快調に飛ばし、そのまま神奈川、阪南を振り切りゴール。着順は1位 山名里奈、2位 神奈川大、3位 阪南大、4位 立教大、5位 田中冴実となった。
⬛︎ 3,000mR(27周) ⬛︎ 【メンバー】 (大会新記録4分27秒850) |
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2レーン赤帽 | 田中 冴実 | 2周・1.5周×3回・1周(計7.5周) |
赤帽 | 山名 里奈 | 1.5周×4回・2周 (計8.0周) |
赤帽 | 中野あやめ | 1.5周×4回 (計6.0周) |
赤帽 | 冨吉 葉月 | 1.5周×3回・1周 (計5.5周) |
◾️いよいよ競技もクライマックスを迎える。まもなく花形3,000mRが開始される。3,000mRはチーム4名で1周111mを27周する。山学大は篠原祐剛コーチが「1,500m3位・1,000m5位の田中冴実を第1滑走者で1回目2周の計7.5周、1,500m優勝・1,000m優勝と2冠の山名里奈を第2滑走者アンカーで2周の計8周、500m3位・1,000m7位の中野あやめを第3滑走者で計6周、500m4位・1,500m7位の冨吉葉月を第4滑走者で計5.5周」として配置した。篠原祐剛コーチが「この配置で『引き離し作戦』を仕掛けて他校を制し」、山梨学院大学に女子学校対抗競技の3連覇14度目の優勝の栄誉をもたらす。間も無く試合が開始される。
▶︎女子3,000mRの場内アナウンス「女子3,000mRを行います」と会場に流れた。各校の選手4を紹介の中、審判に促され各校の選手はリンク中央に集まり審判員のルールの説明を受ける。会場にホイッスルが鳴り響くと、各校が円陣を組み『頑張るぞ ! お~』などの気勢をあげ、審判員に支持されスタートラインに着く。「1レーン関西学院大学(白帽)、2レーン山梨学院大学(赤帽)、3レーン同志社大学(青帽)、4レーン神奈川大学(緑帽)」と呼名されると、各校の第一走者が手を挙げスタートラインに進んでいく。スターターの「Go To The Start」の声でスケーターはラインにブレードを合わせ立つ。スターターの「Ready」の合図でピストルが発射され各校スタート。山学大は篠原コーチの『引き離し作戦』で第1滑走者に抜擢された田中冴実がスタートダッシュをかけ他校を引き離す。1周目を滑走、そのまま田中がスピードに乗り2周目に、他校は第2滑走者につなぐ中、田中はぐんぐんスピードをあげ、リンク内では第2滑走者の山名里奈が田中のスピードに合わせタッチのため田中の前にするりと出ると、田中は両手で山名の腰を押しタッチし山名を加速させる。山名がスピードに乗り2位の神奈川大学を抜き去り1.5周し、第3滑走者の中野あやめの腰を両手で押してタッチ。第3滑走者の中野がさらに2位 神奈川大との差を広げ、第4滑走者の冨吉葉月の腰を両手で押しタッチ。第4滑走者の冨吉も順調に飛ばす。山学大は周回を重ねるごとに、周回遅れの大学の選手を次から次へと抜き去り順調に滑走する。篠原祐剛コーチが「各選手がハイペースで飛ばしているのを見据えて、中盤に選手4人に『大会新記録が狙えるぞ』」と指示を出し、選手たちがそれぞれ、さらに加速させ大会新記録を目指し滑走。山学は残り3周目のタッチを第4滑走者の冨吉から第1滑走者の田中が両手で押され新記録を目指して無我夢中で滑走する。田中からアンカーの第1滑走者の山名にチームの新記録を託しリレーされた。山名は「昨日『捲土重来』を胸に戦い」1,500mで優勝した。「明日は自分のできることを一つ一つしてチームに貢献し総合優勝をしたい」と述べたが、大会新記録という新たな課題を出され、果敢に攻めて力走する。場内の歓声と篠原コーチの叱咤激励、チームの選手の声援を受けて、周回遅れの選手たちを抜き去り激走。山名がスピードを緩めることなく加速させ、2位の神奈川大を約1周半引き離しゴールを滑り抜け、チームのチャレンジは終わった。山名が第1コーナー、第2コーナーをすぎた直線コースにいる篠原コーチにハイタッチし勝利と新記録を噛み締めた。着順は1位 山梨学院大学(赤帽)、2位 神奈川大学(緑帽)、3位 同志社大学(青帽)、4位 関西学院大学(白帽)となった。田中冴実、山名里奈、中野あやめ、冨吉葉月の4人は4分27秒850大会新記録を樹立し、篠原コーチから手渡された山梨学院のフラックを持ち撮影に応じ喜びを噛み締めた。4人は、OGが2009年にマークした4分29秒871の大会新記録を10年ぶりに塗り替える大会新記録を樹立した。
◾️なお、山学大男子はこの大会、総合で3位。1,000m 2位 塩川和音。3,000mR 3位 杉山敦郎・塩川和音・青木雅弥・塩川弦太。5,000R 2位 飯塚陸矢・塩川和音・青木雅弥・塩川弦太となり、それぞれ表彰台に上がった。
◾️試合終了後のインタビュー◾️
▶︎3,000mR・1,000mで優勝した山名里奈(2年)は「1,000mで優勝したいと思ったが、一番は順位に関係なく自分のレースがしたい」とレースに臨んだ。「残り4周でスピードを上げて、3周でトップに出た」と会心のレース。「今までは、初日良くても次の日が駄目だったとか、通して良かったのは今回が初めてで、去年がすごく悔しかったので、本当に嬉しい」と2冠を素直に喜んだ。リレーについて「楽しかった」と言い切る。「大会新は先輩が持っていた記録を10年ぶりに塗り替えられてすごく嬉しい」と白い歯を見せた。今大会、「良いところも悪いところも出たが結果が良かったから良いかなと思う」と3冠と皆んなで新記録をマークした自分を褒めた。「これから個人競技があるので、この結果に満足しないで、これを自信に変えて、さらに鍛えて高みを目指したい」と笑顔で述べた。
▶︎3,000mRで3位となった田中冴実(3年)は「1,000mで5位と滑走が失敗して、すごく引きずっていた」と打ち明ける。「1,000mは思う結果が出ずに、せめてリレーは失敗しないで楽しく終われるように」と客観的にコントロールできる自分がいた。「それが逆にすごい落ち着いて、アイスでリラックスして普段どおりに滑れて、皆んなで新記録を出せて良かった」と笑顔を見せた。「これから大きな試合もあるので、練習をして伸ばせるところは伸ばしていって、自分が納得のいく結果が出せるように頑張りたい」と明るく述べた。
▶︎3,000mRで3位となった冨吉葉月(2年)は「自分は山梨学院チームの足を引っ張らないように貢献するしかない」と大会に臨み、「昨日も1,500mと500mで自分が目標とする順位は取れた」と貴重なポイントを稼ぎ出した。今日はクライマックスの中での「3,000mRなのでとても緊張した」と声を震わせた。「自分以外の3人が速いので、転けたり、失敗して足を引っ張らないように頑張らなきゃと思い、とても緊張した」と心境を明かす。「1周半を3回しラストは1周し、無我夢中で滑走した」と微笑んだ。「大会新記録が出たのは最初ぜんぜん分からなくて、大会新記録と聞いたときは『わーすごい』と思い、びっくりしました」と語気を強める。「これからの試合も精一杯頑張りたい」と笑顔で述べた。
▶︎3,000mRで優勝した主将・中野あやめ(4年)は「年に1度の団体戦で3連覇を目標に戦ったので、3連覇できて良かった」と主将の重責を果たし笑顔を見せた。リレーについて「他校とはチームの力量に差があったので、転倒と失格に気をつけ滑走すれば勝てる」と試合に臨んだ。「レースの途中でコーチから『大会新記録が狙えるぞ』と指示を受けて、皆んなそこからギアを入れ直して大会新記録を目指した」と明かした。「10年前に自分たちの先輩が出した新記録を、今年塗り替えられて良かった」と手放しで喜んだ。「これからは個人競技になるので、お互いに切磋琢磨して個人競技も頑張りたい」とさらに前を向いた。
▶︎篠原祐剛コーチは「選手たちが気迫を持って良く戦ってくれた」と褒めた。女子の1,000mについて「皆んな得意種目なので期待していた。その中で山名が順当に勝ち上がって優勝して、チームに貢献してくれた。田中は本調子でない中で5位と良く戦ってくれた」と振り返った。3,000mRは「チーム4名で1周111mを27周する。『引き離し作戦』で、1,500m3位、1,000m5位の田中冴実を第1滑走者に、1,500m優勝、1,000m優勝と2冠の山名里奈を第2滑走者に、500m3位、1,000mで7位の中野あやめを第3滑走者に、500m4位、1,500m7位の冨吉葉月を第4滑走者に配置した」と頷いた。「第1滑走の田中を2周滑らせて他校を引き離す作戦に出た。アンカーは絶好調の山名を2周で、山名8周、田中7.5周、中野6周、冨吉5.5周で27周を振り分けた」と明かす。「思惑どおり、田中がスタートダッシュしてくれて前に、他校が1周でタッチをしている間に2位以下を大きく引き離した」と序盤の作戦が的中した。「独走態勢で、選手の滑りがハイペースで進行していたので、中盤これは大会新記録を狙えると判断して、各選手に指示を出し、さらにペースを上げるよう」叱咤激励した。「各選手がハイペースを維持して、アンカーの山名が2周を激走してくれ、10年ぶりの大会新記録を樹立した」と振り返った。「選手たちは練習から比べたら10秒以上早い記録で滑走した。全選手が持っている以上の力を発揮してベストを尽くしての快走」と褒め称えた。今大会の総括は「チームのムードも良く、走った選手のピーキングもうまくいき、怪我で調整が遅れている中野はキャプテンとしてチームを良くまとめて、さらにチームのために専門外の500mを滑走してくれて3位と結果まで残してくれた。控えの選手もチームのために尽くしてくれた。チーム全体で勝ち取った3連覇。全てが噛み合った結果」とチーム共々称えた。まだ「シーズンは序盤、これから個人戦の大会が、東日本選手権、全日本選抜選手権、全日本選手権と続く。この大会をチームは、自信に変えて、さらに躍動して個々が納得のいく結果を出してもらいたい」と会場を後にした。
文(H.K) 、カメラ(平川大雪) 2019.10.29