●関東大学女子バスケットボールリーグ戦 入替戦
~“常勝常笑”軍団、課題克服で悲願の1部昇格~
~5度目の挑戦、ようやく勝利の女神が微笑んだ~
令和初の「第69回関東大学女子バスケットボールリーグ戦」1・2部入替戦が、11月2日、埼玉・戸田市スポーツセンターで行われた。山梨学院“常勝常笑軍団”はリーグ戦11勝3敗の2位で1部・2部入替戦に臨み、5度目の挑戦で悲願の1部昇格を果たした。前4回の入替戦は昇格のチャンスはあったものの、1部の壁の厚さにはね返され続けた。創部12年目、1部昇格はチーム積年の悲願。対戦相手は、2017年度入替戦で敗れた松蔭大学。元々1部で上位を争ってきた強豪と再び。第1P(ピリオド)、山梨学院は先制を許すも得点を奪い合う激しい攻防がかわされ17-20で第2Pへ。リバウンドの支配率、ディフェンスで優位に立ち、多彩な攻撃も相手を凌駕。序盤で追いつくと、さらに得点を重ね第3P終了までに60-42とリードした。最終第4Pに入ると松蔭大も1部の意地を懸け猛反撃、6点差まで攻め上がった。残り4分、嫌な流れをタイムアウトで断ち切った山梨学院は、気迫のプレーで相手を突き放し79-63で勝利。創部12年目、5度目の挑戦でついに悲願の1部昇格を手にした。
■コートに山梨学院選手の歓喜の輪が広がったー
ついに待ちに待った瞬間が訪れた。「やったー!」試合終了とともにベンチの選手が両手を上げてコートの5人に駆け寄った。選手たちは、互いに抱き合い、涙と笑顔で喜びを全身で表した。勝利に沸く選手たちの傍らにひとり歓喜の涙に浸っていた林五十美監督は胴上げで祝福された後、「長かったです。本当に悔しい思いをしてきたのでうれしいです。選手たちはずっと強い気持ちでやってきてくれたので本当に感謝しています。本当に頑張ってくれました」と選手を労った。林監督は、創部から指揮を執ってきた梅嵜英毅前監督を長年コーチとして支えてきた。梅嵜前監督が今年3月で退任後、監督に就任し前任の悲願でもあった1部昇格を勝ち取り感慨もひとしお。
“常勝常笑軍団”山梨学院大バスケットボール部女子は、2008年創部、強化指定クラブに認定され、僅か3年目の2010年に4年生のいないチームで1部入替戦に専修大と対戦。55-68で敗れ1部の壁の厚さを味わった。その後、2014年、2015年と続けて順天堂大と対戦、65-69、57-59と後一歩のところで涙を飲んだ。創部10年節目の2017年度には『今年こそは』と臨んだ松蔭大との対戦に、ミスが目立ち自滅する形の大差で1部の夢は破れた。山梨学院は、関東の大学一を決める「関東大学女子バスケットボール選手権大会」に2014年、2部校では初の優勝の快挙を達成、直近の2018年・2019年には4位・5位と安定した成績を残し、ここでも今回再び入替戦で対戦する松蔭大では勝利を収めており順位も上に位置し1部校に遜色ない実績を残している。
■関東大学女子バスケットボールリーグ戦2部Aブロック
8月31日から10月27日まで行われた2019年度リーグ戦2部Aブロックのチームは1位の日本体育大学、2位山梨学院大、続けて順天堂大、日本女子体育大、共栄大、立教大、江戸川大、日本大の8チームで構成され、山梨学院は大会2日目の江戸川大2戦目で不覚を取った。そこからチームを立て直しどこに向かうのか選手全員の意識の統一が成された。
その後1位となった日本体育大に2敗を喫したものの、他のチームには2戦勝利し11勝3敗の2位となり5度目の1部・2部入替戦の挑戦権を手にした。
■1・2部入れ替え戦 VS松蔭大学に挑むー
対戦相手は、1部8チーム中7位の松蔭大学。強豪ひしめく1部リーグで準優勝4回を誇る1部常連チーム。山梨学院はリーグ戦を3年、2年生を中心に若いチームで臨んだ。試合前、林五十美監督はベンチ入りの選手に「選手全員の45人の思いを背負ってプライドと自信を持って戦ってほしい」と送り出した。また、今年4月にコーチに就任したバスケット部女子1期生のOG外村悠貴は勝機を「リバウンドとディフェンス、あとは逃げないでゴールに向かうこと」ときっぱり。午後5時に両チームのボールタップで始まった試合は、第1P(ピリオド)、先制した松蔭大を追いかける展開にも4番G・山本由真主将(4年 千葉・昭和学院高)を中心にゲームを組み立て、16番C・橋口樹(2年 福岡・東筑紫学園高)の長身を生かしたミドルシュートやゴール下からのポストシュートなど多彩な攻撃で追いすがるも、終了間際に相手6番の3P(ポイント)シュートが決まり17-20とリードされ第2Pへ。リードされても落ち着いて徐々に追随。山本主将のターンオーバーから持ち込み3Pシュート、続けて18番F・浅野瑛菜(福井・足羽高)のシュートで逆転に成功。山梨学院は終始、鉄壁なディフェンス、山本美空(2年 千葉・昭和学院高)など、身体を張ったリバウンドでゲームを支配し相手の攻撃を阻止。その後も17番F・大澤来菜(3年 北海道・帯広南商高)のドライブシュート、12番F・高木志歩(3年 福岡・東筑紫学園高)が得点を重ね39-31とリードした。第3P、サイドが変わっても山梨学院の攻撃の手は緩まず、高木の3Pシュート、大澤のフックシュートで勢いに乗ると、15番C・石川明日香(3年 山梨・韮崎高)のドライブシュート、ポストプレーで得点60-42にさらに差を広げた。第4P序盤、山梨学院は、石川などのシュートと松蔭大の3Pシュートの応酬で均衡するも、差を広げたい山梨学院は、勝利を意識するのかシュートがなかなか決まらず、一方の松蔭大は1部校の意地を懸け、立て続けに3Pシュートを決め6点差まで詰め寄った。残り4分弱、山梨学院は嫌な流れを断ち切るためにタイムアウトを取った。それが功を奏した山梨学院の攻撃は、途中出場の7番G・佐々木純麗(4年 青森・柴田女子高)が気迫あふれるプレーで連続7得点を奪い14点差まで広げ、さらに浅野が得点を加え79-63とし松蔭大を振り切った。山梨学院は、創部12年目、5度目の1部・2部入替戦で悲願の1部昇格を勝ち取った。
■勝利に導いた選手たちー
山梨学院のスターティング5(ファイブ)は、4番G・山本由真(4年)、14番G・山本美空(2年)、16番C・橋口樹(2年)、17番F・大澤来彩(3年)、18番F・浅野瑛菜(2年)の5人。その他、5番C・山本千加(4年 岐阜・中部第一高)、7番佐々木純麗(4年)、8番F・丸由梨乃(4年 千葉経済大附属高)、11番F・河野真奈(3年 福岡・中村学園女子高)、12番F・高木志歩(3年)、13番北越春香(2年 千葉・市立船橋高)、15番C・石川明日香(2年)が途中交代出場した。
◆1部・2部入替戦《山梨学院大VS松蔭大》11/2 埼玉・戸田市スポーツセンター | ||
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○ 山梨学院大 79 | 1P 17-20 2P 22-11 3P 21-11 4P 19-21 |
63 松蔭大 ● |
試合後、林五十美監督は「このためにいままで一生懸命やってきたので自分たちの持っている力をすべて出せば結果はついてくると思っていました。とにかく打たれてもいいからリバウンドを頑張りなさいと言ってきたので、40分間継続できて良かった」と勝因を語った。次期を見据えて「1部に上がることも目標だったのですけど、そこで戦うためにはもっと力を付けなければいけないですし、4年生が抜けた分をどれだけ補えるかというところを課題としていきたい」と話した。津金毅部長・経営学部教授・カレッジスポーツセンター事務長は「創部以来何回も入替戦に挑戦してきて、いつも1部の厚い壁に阻まれてきましたけど、今日は最初の入りが良かったので流れをずっとものにできた昇格できました、選手は本当に素晴らしかったです」と選手を讃えた。4Pの6点差に詰められたシーンについて「あそこは1部の意地を見せられました。あのままずるずると行ってしまうかと心配しましたけど、一瞬の光が射して攻め込む力があったことは1年間の結果が出たものだと思います」と最後の攻防を振り返った。信頼のキャプテンシーで選手たちの先頭に立った山本真由主将は「本当にうれしいです」と笑顔を見せた。「自分たちが2年生の時に同じチームにすごい負け方(58-85)をしたのでそれがしっかりリベンジ果たせたので良かった」と胸を張った。来年の1部での後輩のプレーに期待することは「2部とは全然違うと思うのですけど、1部でも通用できるようにしっかり練習をしてもらい、勝ってもらいたい」と1部残留を託した。山本主将とともにチームを引っ張った大澤来菜選手は「1部昇格を目指してやってきたのでとにかくうれしいです」と微笑んだ。「2年前にも松蔭とやってずっと悔しい思いでここまできたので、『今日は絶対勝つぞ』と強い気持ちで臨みました。チームとしても個人としてもリバウンドが課題だったのですけどそれは全体的に取れていたので良かったです」と振り返った。1部での抱負は「自分たちは初めての1部でチャレンジャーだから積極的に向かっていけたら」と前を向いた。第4Pで6点差まで詰め寄られた場面で流れを変えたプレーで勝利を呼び込んだ佐々木純麗選手は「春からずっときつい練習をしてきてここで成果が発揮できてうれしいです」と目を細めた。会心のプレーについては「4年生で最後ということもあって、軽いプレーをしていたらもったいないので強いプレーして相手はファールが多かったのでファールをもらえる強いプレーをしようと決めていました」と自分の役割を明かす。1部昇格へのこだわりは「昨年は、この場(入替戦)に来れなくて、ここに来ることがどんなにか大変かということを学んでやっとここに来られたのはチーム一丸になれた結果だと思っています」と謙虚に答えた。
試合会場には、保護者やOGが遠くから多く駆けつけ、山梨学院のプレーに大声援を送った。OGの4人(左から2期生・山下知美さん、1期生・羽田真実さん、4期生・伊藤唯さん、4期生・木村有紗さん)のうち羽田真実さんは「本当にOGたちの思いがこもった試合で良かったです。会場に来られないみんなにもLINEで実況中継して喜んでいました。選手の気持ちが伝わってきて声が枯れるまで応援しました」と後輩のプレーに興奮を隠しきれない。
1部・2部入替戦には2部Aブロック1位の日体大と2位・山梨学院大が1部昇格。1部7位の松蔭大と8位・桐蔭横浜大が2部に降格した。また、山梨学院大女子は、2部上位3位までに与えられる出場権を獲得し12月のインカレで日本一を目指す。
前回の課題を克服し、ようやく勝ち取った1部という称号は、強豪といわれるスタートに他ならない。行く手には大きな壁も待ち受けているだろうが、さらなる覚悟を持って高みを目指し“常勝常笑”軍団として大学バスケットボール界でのこれからの活躍に期待する。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2019.11.3