●皇后杯JFA第41回全日本女子サッカー選手権
~山学大女子が本戦初出場、なでしこ2部京都と対戦~
~PK戦の末敗れるも、格上と互角に戦い大きな自信~
皇后杯JFA第41回全日本女子サッカー選手権大会が11月2日に開幕。初出場の山梨学院大は3日になでしこ2部のバニーズ京都SCと富山県総合運動公園陸上競技場で対戦した。試合は前半序盤から山学が押し気味に試合を進めたが、バニーズが少ない好機を確実に決め0対2で前半を折り返す。後半は拮抗した展開となり、山学は17分にMF肝付萌からのボールをMF浜田芽来が決め1点を返す。その後も山学は攻撃の手を緩めず、38分にPKを獲得し、MF浜田が決め同点に。試合は延長戦に入り、山学は何度か決定機を作るが、経験に勝るバニーズの守備を崩せず、試合の行方はPK戦へ。山学は序盤に相手GKの好セーブにあい、PK戦を1対3と激闘の末に敗れた。一方で、格上相手に互角に戦い、選手たちは大きな自信を得る試合となった。
皇后杯JFA全日本女子サッカー選手権大会は、中学1年生以上の登録選手を対象とした国内で最も権威のある大会で、女子サッカー日本一決定戦。各地区予選を勝ち抜いた28チームと「なでしこリーグ」の1部10チーム、2部10チームの計48チームが出場する。山梨学院大は県予選決勝でFCふじざくらを7対2で破り関東大会(上位6チームに本戦切符)に進出。関東大会では、初戦・2回戦を神奈川大に1対0と白星発進。初の皇后杯切符がかかる準々決勝を帝京平成大に1対0と競り勝ち本戦出場を決めた。山学大の快進撃は止まらず、準決勝を関東リーグ1位と格上の群馬FCホワイトスターに2対1で勝ち切り決勝に進出。決勝では、関東リーグ2位の早稲田大に1対2で敗れたものの関東第2代表として皇后杯出場切符を勝ち取った。
山学は創部6年目で現在社会人までを含めた山梨県女子リーグ1部で暫定首位、学生リーグの関東大学サッカーリーグ(関カレ)では、2部暫定2位と好調を維持している。今夏のユニバーシアードでは、MF鈴木日奈子(3年 常盤木学園高)とFW小山由梨奈(4年 ジェフ市原・千葉レディースU18)が日本代表に選出され、銀メダル獲得に貢献。田代久美子監督もコーチングスタッフとしてチームに帯同した。令和最初の皇后杯に関東第2代表として出場した山学大。初戦をバニーズ京都SC(なでしこ2部)と対戦した。
皇后杯JFA第41回全日本女子サッカー選手権大会 1回戦 ≪山梨学院大VSバニーズ京都SC≫(11/3)富山県総合運動公園陸上競技場 |
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● 山梨学院高 2 | 前半 0-2 後半 2-0 延長前半 0-0 延長後半 0-0 PK戦 1-3 |
2 バニーズ京都SC ○ |
山学得点者:浜田芽来2 |
前半立ち上がりは山学が素早いプレスやインターセプトからボールを奪い、押し気味に試合を進める。一方でパスの精度に欠きゴールチャンスを生み出すまではいかない。10分、バニーズに右CKからのグラウンダー気味のクロスを直接合わせされ先制を許す。先制したことで攻撃にリズムが生まれたバニーズはスペースを使い山学ゴールに襲い掛かる。山学守備陣は主将のDF生沼奈央(4年 健大高崎高)を中心に当たり負けしないフィジカルの強さを見せ得点の機会を与えない。28分には右中盤でインターセプトを許し、サイドチェンジから攻撃を組み立てられたがGK大城聖奈(3年 名護高)が落ち着いて飛び出し得点を与えない。しかしその1分後、左サイドからゴール前のスペースにクロスが入り、押し込まれ失点。反撃に出たい山学は、41分と44分にMF浜田芽来(1年 十文字高)が相手のボールを奪い、ドリブルでシュートまで持ち込み前線を活気づける。0対2で前半を折り返し、後半は立ち上がりから一進一退の攻防で試合は拮抗。後半17分、MF肝付萌(4年 藤枝順心高)が相手のパスを奪いドリブルでMF浜田につなぎ、MF浜田はドリブルから相手DFをかわしシュートし山学が1点を返す。続く、19分左コーナーからのDF生沼のヘッドは惜しくもゴールに右枠外へ。山学はMF浜田の得点でリズムをつかむとその後はバニーズ陣内で試合を進める。38分、山学はカウンターから攻め込みMF上田莉帆(1年 湘南学院高)がペナルティエリア内で倒されPKを獲得。これをMF浜田が落ち着いて決め、山学が同点に追いつく。
試合は90分ハーフでは決着がつかず、30分ハーフの延長戦に。延長戦に入ると山学はさらに攻勢を強めるが、経験に勝るバニーズの守備を崩せず我慢の時間が続く。山学は最後まで攻め続けたが、延長戦でも決着がつかず試合の行方はPK戦に。PK戦、先攻の山学は1人目、2人目が相手GKの好セーブで失敗。対するバニーズはしっかりと決め、3人目がそれぞれ成功し1対3。勝負の行方を担う大事な場面の山学4人目は主将の生沼。気持ちが込められた生沼のボールはバーの上に抜け、試合終了。山学はPK戦の末に敗れたが、なでしこ2部の格上相手に攻守に渡り互角に戦い、激闘を終えた選手たちは全てを出し切り、うつむくことなく、自信に満ちた晴れやかな表情でピッチを後にした。
試合後、田代久美子監督は「思ったより自分たちのやりたいことができた。ビルドアップからの流れは悪くなかったが、前半で簡単に2失点してしまい甘さが出てしまった。なでしこリーグとの違いを考えてみるとバイタルエリアでのクロスやシュートの質、フィニッシュの仕方に差があった」と試合を振り返り、関東リーグ最終戦に向け「これまで選手たちは精神的な脆さがあったが、きょうの試合でやればできるとういう自信につながった。次の試合もプレッシャーがかかる試合になるが、自分自身に勝ち、失敗を恐れず攻守にアグレッシブなプレーで優勝できるよう準備したい」と語った。攻守に渡りチームを支えた生沼奈央主将は「なでしこリーグのチーム相手に負けていた状態で2点追いつけたことは自分たちの成長した部分かなと思います。来週の関カレに向けて自信がつく試合になりました。全員で自分たちのサッカーを貫き通し、1部昇格できるよう頑張ります」と語り、この日2得点と躍動したMF浜田芽来選手は「格上相手にチャレンジャーとして戦い、少しは追い込めたという手ごたえはあります。関カレでは戦えない相手と戦えた経験は自分たちにとってはプラスになりました。先輩たちが繋いだ伝統を受け継いで、1部昇格の目標に向けて次の一戦(関東最終戦)勝てるように頑張ります」と述べた。
格上のなでしこチームと互角に戦い、自信をつけた山学イレブンは、11月10日に関東リーグ2部最終戦を迎え、順天堂大と対戦する。山学は現在暫定2位で1位の日本大とは勝ち点差1。日大は既に日程を消化し、山学が勝つか引き分け以上で山学の2部優勝、2季ぶりの1部昇格が決まる。山学はきょうの勢いそのままに1部昇格を目指し、最終戦に挑む。
文(Y.Y)、カメラ(平川大雪)2019.11.3