●第43回 全日本選抜ST選手権大会2日目(最終日)
~山名 全日本選抜総合優勝の栄誉に輝く!~
~全日本ST選手権に女子3人男子2人出場~
第43回 全日本選抜ショートトラックスピードスケート(ST)選手権大会2日目(最終日)が11月24日、神戸市立ポートアイランドスポーツセンターで行われた。山梨学院勢の山名里奈が、総合トップの渡邉碧(トヨタ自動車)に21点ビハインドで挑んだ1,000m決勝と3,000mスーパーファイナル。山名がアクシデントを回避する堅実な戦法で2種目ともに2位として渡邉に8点差をつけ、初の総合優勝の栄誉に輝くとともに、山梨学院へ女子初の栄冠をもたらした。山名は「今年度はインカレ、そして東日本と優勝でき、この大会で1,500で優勝し、その上に総合優勝できて本当に嬉しい」と喜びを噛み締め、「ISU四大陸ST選手権大会派遣選手に選ばれて海外大会初、自分のできることを一つ一つして、海外で吸収したことをチームに還元できるようにしたい」と謙虚に述べた。山梨学院勢の12月開催の全日本ST選手権出場権利取得選手は女子が総合優勝 山名里奈、9位 田中冴実、19位 中野あやめ。男子が23位 塩川和音、27位 伊藤隼人の計5人の選手となった。
◾️〈試合前インタビュー〉◾️
▶︎川上隆史監督は「山名には500mの転倒を確り受け止めて、次のステップに踏み出してくれ、1,000mで巻き返し世界の代表となる目的を達成してもらいたい」と期待を寄せる。「他の選手も今日初日の結果を受け止めて、その与えられた課題と向き合い実り多い最終日にしてもらいたい」と述べた。
▶︎篠原祐剛コーチは昨日「山名については総合2位を確り取りに行く作戦で、展開によって優勝と総合優勝を狙うと策をさずけた」と述べた。現在の女子総合順位は1位 渡邉碧55点、2位 山名里奈34点、3位 横山世奈22点、4位南里塔子(帝産クラブ)15点、5位 長森遥南(新神戸スピードゼミ)13点、6位 島根くるみ(阪南大学)11点、7位 吉田凪歩(神奈川大学)10点、、8位 松山雛子(立教大学)8点、9位 金井莉佳(SC上尾)3点、10位 上田ゆりあ(帝塚山学院高校)2点、11位 田中冴実(山梨学院大学)1点となっている。
⬛︎〈2日目最終日 山梨学院勢戦績〉⬛︎
神戸市立ポートランドスポーツセンタースケートリンクはフィギュア・スピード・アイスホッケー等の国際競技仕様。60m×30m(氷厚11cm)。サブリンク併設、18m×28m(氷厚11cm)。電光掲示板設置。観客席つきスタンド併設。公式練習が7:30から8:30まで行われ、競技開始が9時00分から女子1,000m、男子1,000m、女子3,000mスーパーファイナル、男子3,000mスーパーファイナルが行われる。いよいよ女子1,000mの予備予選が開始される。場内アナウンス「女子1,000m予備予選1組を行います」と会場に流れ試合が開始された。
●1,000m(9周)決勝●
篠原祐剛コーチは「試合前に山名に、このレースで四大陸が決まる。島根選手が出てくるが慌てずに、総合2位以上を確り狙っていこう」と山名を送り出した。島根くるみ(阪南大学)が優勝した場合、山名が2位だと10点上回る。3位だと3点逆転され総合3位となり1,500mの優勝の栄誉のみとなる正念場。場内アナウンスで「女子1,000m決勝を行います」と会場に流れた。選手5人が紹介され審判に促され「1位レーン8番 島根くるみ(阪南大学)、2レーン1番 渡邉碧(トヨタ自動車)、3レーン7番 松山雛子(立教大学)、4レーン2番 山名里奈(山梨学院大学)、5レーン6番 長森遥南(新神戸スピードゼミ)がスタートラインに着く。スターターの「Go To The Start」の声でスケーターはラインにブレードを合わせ立つ。「Ready」の合図でピストルが発射され13時17分にスタート。
▶︎2番 山名里奈はスタートで先頭を滑る8番 島根、2番手1番 渡邉、3番手7番 松山の後、4番手で滑走。2周目は1番 渡邉が先頭に立ち、2番手8番 島根、3番手7番 松山、4番手山名で滑走。山名は3周目で内から突く8番 島根の後を突き1番 渡邉を外に追いやり、すぐ先頭8番 島根の背後に付き滑走。ラスト3周目の正面スタンドのストレートで内から外に位置どった1番 渡邉の前に出て滑走し外からの追い上げを封じた。この攻防で1番 渡邉がカーブで大きくあいた内を6番 長森に突かれ4位に後退。レースはそのままの着順でゴール。山名は篠原コーチの想定どおりのレース展開を見事に実践し、四大陸を決めるとともに総合優勝を大きく引き寄せた。
◾️ポイント獲得者は1位 島根くるみ(阪南大学)34点、2位 山名里奈(山梨学院大学)21点、3位 長森遥南(新神戸スピードゼミ)13点、4位 渡邉碧(トヨタ自動車)8点、5位 松山雛子(立教大学)5点。
◾️この結果3,000m(27周)スーパーファイナル出場選手は女子総合順位7位までの渡邉碧(トヨタ自動車)63点、山名里奈55点、島根くるみ(阪南大学)45点、長森遥南(新神戸スピードゼミ)26点、横山世奈(トヨタ自動車)22点、南里塔子(帝産クラブ)15点、吉田凪歩(神奈川大学)13点、松山雛子(立教大学)13点となった。
●女子総合順位3,000m(27周)スーパーファイナル●
篠原祐剛コーチは「試合前に山名に、特に島根選手をマークして、2位狙いの指示を出した」。場内アナウンスで「女子3,000mスーパーファイナルを行います」と会場に流れた。選手7人が紹介され審判に促され「1位レーン2番 山名里奈(山梨学院大学)、2レーン8番 島根くるみ(阪南大学)、3レーン3番 南里塔子(帝産クラブ)15点、4レーン6番 長森遥南(新神戸スピードゼミ)、5レーン5番 吉田凪歩(神奈川大学)、6レーン7番 松山雛子(立教大学)、7レーン1番 渡邉碧(トヨタ自動車)スタートラインに着く。スターターの「Go To The Start」の声でスケーターはラインにブレードを合わせ立つ。「Ready」の合図でピストルが発射され13時51分にスタート。
▶︎2番 山名里奈はスタートでインから飛び出し先頭にカーブで急にスピードを殺し、後で滑走して来た8番 島根とディフェンディングチャンピオン5番 吉田を前に出した。すると山名は先頭で滑走する8番 島根の背後にぴたりと付き体力を温存する。すると、外から5番 吉田が先頭に出てレースを引っ張り、2番手で8番 島根、そして3番手で山名と縦一列、総合トップの1番 渡邉は最後尾で様子を伺う滑走。先頭の5番 吉田が7周目でスピードを上げ8周目にはおおよそ10m先を単独滑走。その後を2番手で8番 島根、3番手で山名、最後尾に1番 渡邉と一列。9周目に先頭の5番 吉田がスピードを緩めて、10周目には一団が追いつき立て一列となった。2番手を付けていた8番 島根が再び先頭に出るが、山名は3番手で滑走。16周目で5番 吉田が再び先頭に出て、2番手以降との差を広げる。17周目で2番手に3番 南里が上がり、その後に8番 島根、2番 山名、1番 渡邉が付いた。19周手前で吉田に異変、急にスピートが落ちる。20周目で8番 島根が2番手に上がり、外に7番 松山、内に3番 南里、6番 長森、山名、後尾に1番 渡邉。先頭を滑る5番 吉田の足が止まり外にコースをとり他の選手のために内をあける。吉田は22周目で8番 島根一団に抜かれ最後尾に下がった。23周目で外から再び3番 南里が先頭に出る。2番 山名は6番手で力を貯めて戦況を伺う。25周目、先頭の3番 南里が加速、2番手6番 長森、3番手8番 島根、4番手に山名、5番手1番 渡邉が位置取る。山名は26周目バックスタンドのストレートで外から加速し、27周目にバックスタンドのストレート入り口で、2位に躍り出てマークしていた8番 島根、1番 渡邉を振り切り、そのまま2位でゴールし総合優勝を勝ち取り篠原コーチとハイタッチを交わした。
◾️ポイント獲得者は1位 南里塔子(帝産クラブ)34点、2位 山名里奈(山梨学院大学)21点、3位 島根くるみ(阪南大学)13点、4位 渡邉碧(トヨタ自動車)8点、5位 吉田凪歩(神奈川大学)5点、6位 長森遥南(新神戸スピードゼミ)3点、7位 松山雛子(立教大学)2点となった。
◾️最終女子総合順位は1位 山名里奈76点、2位渡邉碧71点、3位 島根くるみ(阪南大学)58点、4位 南里塔子(帝産クラブ)49点、5位 長森遥南(新神戸スピードゼミ)29点、6位 横山世奈(トヨタ自動車)22点、7位 吉田凪歩(神奈川大学)18点、8位 松山雛子(立教大学)15点、9位 田中冴実(山梨学院大学)3点、10位 金井莉佳(SC上尾)3点、10位 上田ゆりあ(帝塚山学院高校)2点、11位 篠原理沙(小海高校)1点となった。
▶︎その他の山梨学院勢の総合順位は、女子が中野あやめ19位、水野葵由34位。男子が塩川和音23位、伊藤隼人27位、塩川弦太29位、青木雅弥45位となった。その結果、全日本ST選手権出場権利取得選手は女子が山名里奈、田中冴実、中野あやめの3人。男子が塩川和音、伊藤隼人の2人となった。
◾️川上隆史監督がチーム目標として「①ISU四大陸(ST)選手権大会の日本代表派遣選手の権利を獲得する。②来年度のオリンピック強化指定選手のポイントを取得する。③全日本ST選手権大会の出場資格を獲得する」の三つを挙げていた。篠原祐剛コーチと選手が一丸となりこの目標を見事に達成した。
《山名里奈の成績》
女子総合順位1位 山名里奈76点で総合優勝 | ||||||
1,000m | 決勝 | 1.35.286 | 準優勝 | 21点 | 総合2位 | 55点 |
3,000m | スーパー ファイナル |
6.06.336 | 準優勝 | 21点 | 総合1位 (総合優勝) |
76点 |
◾️試合終了後のインタビュー◾️
▶︎総合優勝に輝いた山名里奈(大学2年)は1日目の1,500mについて「落ち着いてレースができ優勝できて良かった」と満面笑み。500mの準決勝は「トヨタ自動車の横山世奈選手に抜かれて凄く焦って無理な角度から最終コーナーに入り転倒してしまった」と反省。今日のレースは「『優勝を狙って戦い、四大陸と総合優勝を決めたい』という自分の気持ちをコントロールできたのが良かった」と大きく頷いた。「今年度はインカレ、そして東日本と優勝でき、この大会で1,500で優勝し、その上に総合優勝できて本当に嬉しい」と喜びを噛み締め、「ISU四大陸ST選手権大会派遣選手に選ばれて日本代表選手としての海外大会は初なので、一つ一つ自分のできることを最大限発揮し思い切ったレースをしたい」と目を輝かせた。また「海外で吸収したことをチームに還元できるようにしたい」と謙虚に述べた。山名は1,500mと総合優勝して、今大会の四大陸、強化指定選手のポイント取得、全日本ST選手権大会出場権と、全ての権利を獲得した。
▶︎篠原祐剛コーチは1,000mについて「昨日、山名と『このレースで四大陸が決まる。総合2位以上を確り狙っていこう』と作戦を立てた。その上で「戦い方のパターンはマークする選手によって施策した」と明かす。決勝前に「山名に『このレースでは阪南大学の島根くるみ選手が優勝を狙ってくる。島根選手がトップに上がって来たらアクシデントを避けるために競り合いはやめて、2位でゴールするように』と指示を出した」と頷く。「山名は、前後・左右を睨みながら戦況に応じての滑走して、最後は昨日2人で立てたレースプラン通り2位でゴールし四大陸を手中に収めてくれた」と振り返った。3,000mスーパーファイナルについては「1,000mで2位に入り総合優勝も十分狙えるチャンスが来た。得点的に渡邉と島根に優勝をさらわれなければ、2位で総合優勝が決まる」と確信。「試合前に山名に、特に島根選手をマークして、2位狙いの指示を出した。山名は1,000mと同じく、戦術・戦略に対応できる能力があることを実証した。昨年のスランプから基礎に立ち返って努力し身につけた」とレース運びに感心して山名を絶賛した。
▶︎川上隆史監督は「今回大会は個人選手権で参加選手が、それぞれの想いで戦った大会だった。この全日本選抜は全日本ST選手権の登竜門としての大会でもあり、山梨学院は男女ともに4名中で、女子3名・男子2の計5名が出場権を得た」と頷く。「今大会で残念ながら出場を逃した選手も、出場権利を得た選手も、この試合の結果だけで一喜一憂することなく、良かったところ悪かったところを精査して、次のステージに向けて確り準備をしてもらいたい」と山梨学院勢のさらなる活躍を促した。その上で「今大会は、全ての選手が、それぞれの目標に向かって全力を出し切りクラブの目標を達成してくれた」と選手を褒めねぎらった。その中で「山名は、現役の山梨学院の選手としてショートトラックでは久しぶりとなる日本代表選手を勝ち取った。山名には個人選手としての自覚とあわせてクラブ代表としての意識を持って、カナダで行われる四大陸大会で世界を経験し得た知識や技術をクラブに還元してもらいたい。また、仲間の応援を追い風にして、結果を恐れず四大陸大会では思う存分戦って来てもらいたい」と述べ会場を後にした。
文(H.K) 、カメラ(平川大雪) 2019.11.25