●大学生が昭和町議会に新たな政策を提案
~担当課へのヒアリングや現地調査を実施~
~他の自治体での運用状況など事例も紹介~
山梨学院大学法学部政治行政学科のゼミ生による政策提案発表会が12月12日、昭和町議会の議場で行われた。2008年に山学大ローカルガバナンス研究センターと昭和町議会が全国で初となる連携協定を締結。締結以降、教員による議員研修や学生とのワークショップなどを行い、それぞれの知見を広め、地域課題の解決に努めており、今回の政策提案発表会は、連携協定の一環として実施された。この日は、政治行政学科の外川ゼミ、日高ゼミ、江藤ゼミの学生が参加し、各ゼミが昭和町議会議員を前に人口減少対策や新しいふるさと納税制度、空き家対策などについての政策提案を行った。この日出された政策は、さらに、議論や検証が重ねられ、今後の町政運営の参考にされる。
山学大と昭和町議会は2008年の連携協定締結以降、山学大の教授陣による議員研修や新しい政策を議論するワークショップ、町民参加型の提案政策学習会などを実施。学生は生の町政・議会運営を学び、自治体の課題解決に取り組み、議員は専門知識の習得や若者らしい着眼点や調査・研究から得られた他の自治体の先進事例を町政に反映するなど両者で連携取りながら相乗効果を高めている。学生による政策提案も大学や議場を会場に実施しており、議場での政策提案発表会は、昨年度に引き続き3回目。最初はリラックスした表情の学生も、開会後は議場独特の厳粛な雰囲気に、緊張した様子で発表に臨んだ。普段は議員が座る席に学生発表者が座り、町執行部側の席に、議員が座り、対面する形で政策発表が行われた。発表会冒頭に主催者を代表し、昭和町議会の石原高明議長は「この連携事業も10年を超え、ワークショップや政策提案など貴重な意見を参考に、議会での一般質問や条例・要綱の制定などを行ってきました。大きなものとして「昭和町議会災害対策本部設置要綱」「昭和町総合計画の策定と運用に関する条例」を制定いたしました。きょうも多くの政策提言をいただけるとのことですが、お互いが有意義な時間となるよう期待しています」と挨拶し、山学大ローカル・ガバナンス研究センター長の江藤俊昭教授は「地方分権改革の中で議会の役割は飛躍的に高まっています。議会の監視能力・政策提案能力などの議会力アップや学生のアクティブ授業を目的に議会と大学とが全国で初めて提携をいたしました。学生の提案が議会や町政に活かされ、学生も生の現場で勉強ができるなど色々な経験ができています。きょうは貴重な機会ですので、日頃勉強したことをしっかりと提言し、議員のみなさんと意見交換をしていただければと思います」と学生や議員に語りかけた。
学生は今回の政策発表を前に、課題等の洗い出しや解決策を調査。実際に町の担当課へのヒアリングや現地でのフィールドワーク、国内外の同様事例の調査や比較検討を実施した。この日は3ゼミ6グループがそれぞれの研究成果から導き出した政策を提案した。
外川ゼミAグループ【人口減少(自然減)対策について】
出生数の増加を目指し、学校教育により早い時期から親としての意識醸成及び子育て環境の改善、支援センターの設置などにより母親に寄り添った長期的な支援環境の充実。
外川ゼミBグループ【人口減少(社会減)対策について】
流入(転入)増加に向け、アプリの開設やSNSの活用による町の魅力発信及び県の移住相談支援センターとの連携(ブース設置)。転出抑制策として地域ポイントの導入や空き家バンクを活用した創業支援。
日高ゼミ【ふるさと納税について】
返礼品競争からの脱却を図り、ふるさと納税の寄付金の使途をより具体的にプロジェクト化した住民参加型・社会問題解決型のクラウドファンディング「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」の導入。
江藤ゼミ主権者教育班Ⅰ【議会だより改革による住民自治の促進】
議会・住民の双方向からの情報発信源となるよう議会だよりの作成を議員と住民との協働で行い、議会だよりを「議論の起爆剤」とし、「主権者教育」の教材として活用。
江藤ゼミ主権者教育班Ⅱ【政治分野における男女共同参画計画策定及び女性議員増加の促進】
女性の政治参画を促すため、主権者教育による理解促進及び選挙管理委員会と協働した女性議会の運用、相談窓口の設置。
江藤ゼミ【空き家利活用と啓蒙活動について】
空き家予備軍対策のセミナーや勉強会を実施、在留外国人への貸し出し、リノベーション(リフォーム)費用の補助、短期移住者や移住希望者への貸し出し。
提案にあたっては、関連する法令や要綱などの精査を行い、実際の運用がイメージできるよう他の自治体での運用状況や成果などの紹介も併せて行い、実現可能性や着手の容易さなどが担保できるよう検証を行った。学生側からの提案を受け、呼応する常任委員会などの担当議員が町政の現状や将来構想を説明するとともに、提案内容の今後の取り扱い・方向性についてコメントした。最後に6グループからの提案を受け、議会を代表し石原一好副議長が「昭和町の議会・行政の課題に対して6つの政策提案をいただき、これからやっていかなければならないことは山積みであります。提案を受けた内容の中には、現在進行中・実施予定の事業もありますが、みなさんの提案を活かしながら一般質問や行政と力を合わせながらより良い昭和町を作り上げていきたいと思います」と総括した。
文・カメラ(Y.Y)2019.12.12