●山梨学院日本文化ワークショップ2019
~能の仕舞と謡を学ぶ(その2)発表会~
~日本文化を知識だけではなく演技体験~
山梨学院生涯学習センターは12月14日、山梨学院メモリアルホールで山梨学院日本文化ワークショップ2019 能の仕舞と謡を学ぶ(その2)の受講生10人による曽我物語『小袖曽我』の発表会を行った。受講生たちは「曽我兄弟が父の仇討を決意し、母への最後の暇乞いに行く。勘当の身であった弟のために兄が才覚し、母は涙ながらに勘当を解いて小袖を与える。その小袖を着て門出の祝いに舞う」という四番目物を、連吟と仕舞で演じた。永井健夫センター長は「グローバル化だからこそ日本文化をよく知ることが大切。日本文化を知識だけではなく演技体験する中でより深く知ってもらおうと昨年に続き企画した」。喜多流能楽師の佐藤寛泰講師は「能の講座を通して、身のこなしの『所作』や『姿勢』だったりとかが、受講前よりは見違えるように上達した。また、講座を通じて日本文化『能』を理解していただけたと思う」とこの上なく誉めた。受講生は発表会終了後に舞台で喜多流能楽師の佐藤寛泰講師と独吟の佐藤陽氏を囲んで記念撮影を行った。
◾️日本文化ワークショップ2019について◾️
山梨学院生涯学習センター 永井健夫センター長は「グローバル化においては外国のことを知ることは勿論ですが、グローバル化だからこそ日本文化をよく知ることが大切」と力説する。「そこで、今から650年も前からある世界に誇れる日本文化『能』を、知識だけでなく演技体験する中でより深く知ってもらおうと、2018年に第一線で活躍する能楽師の佐藤寛泰氏を講師にお招きし、今年はその2となります」と頷く。「受講生には10月から4回の講義とリハーサルで2か月間で『小袖曽我』(こそでそが)に、取り組んでもらい発表会となりました」と振り返る。「発表会では、練習の成果のみならず、演者としての演技経験をすることによって、より深く日本文化『能』を学習してもらいたいと」と述べた。
◾️《発表会》◾️
喜多流能楽師シテ方の佐藤寛泰講師は「今回のワークショップは、親の仇を打つという『曽我物語』の最初の方で、能では『元服曽我』(げんぷくそが)、『調状曽我』(ちょうじょうそが)などがあるが、その中で『小袖曽我』(こそでそが)を選んだ」と頷く。「物語は曽我兄弟が父の仇討を決意し、母への最後の暇乞(いとまご)いに行く。勘当の身であった弟の五郎時致(ごろうときむね)のために兄の十郎祐成(じゅうろうすけなり)が才覚し、母は涙ながらに勘当を解いて小袖を与える。その小袖を着て門出の祝いに舞う」という四番目物。「発表会では、詞章全体を2人以上で謡う連吟と、能の一部を面や装束をつけずに、紋服・袴のまま素で舞う仕舞を演じてもらう」と説明。いよいよ開演される。
▶︎『小袖曽我』発表①で、トップバッターで連吟を大森茂さんと和田潤さんの2人が息を合わせ、声をそろえて謡った。仕舞では喜多流能楽師の佐藤陽氏の独吟で、塚原理恵さん、宮崎美鈴さん、中村知佳さん、大森茂さん、長井悠衣さんがそれぞれ佐藤講師と舞った。
▶︎『小袖曽我』発表②の連吟で渡邉けさみさん・宮崎美鈴さん・長井悠衣さん・有泉はるひさん・宮下五月さん・小宮山千恵子さん・中村知佳さん・塚原理恵さん・和田潤さんが、9人の声を合わせて、声をそろえて謡った。仕舞は喜多流能楽師の佐藤陽氏の独吟で、小宮山千恵子・宮下五月・有泉はるひ・渡邉けさみさんが佐藤講師と舞、和田潤さんは1人で舞った。
▶︎番外仕舞として喜多流能楽師の佐藤寛泰講師が『羽衣』を上演。三保の松原に住む漁師の白龍(はくりょう)は仲間と春の朝、松の枝に掛かった衣を見つけ、家宝にするため持ち帰ろうとしたところに、天女が現れて「その羽衣を返して欲しい。それがないと、天に帰れない」と悲しむ姿に心を動かされ、天女の舞を見せてもらう代わりに、衣を返すことにする。羽衣を着た天女はお礼に舞い、さらには春の三保の松原を賛美しながら舞い、やがて彼方の富士山の高嶺に昇っていき、天の霞にまぎれて消えていく。受講生はその舞を食い入るように鑑賞し感動の拍手を送った。
▶︎受講生は650年も前からある世界に誇れる日本文化『能』を演じ、さらに『羽衣』を鑑賞し日本文化をより深く学習した。発表会終了後に舞台で喜多流能楽師の佐藤寛泰講師と独吟の佐藤陽氏を囲んで記念撮影を行った。
◾️発表会後のインタビュー◾️
▶︎受講2年目の公務員の和田潤さん(33歳)は「昨年初めて参加した。大学4年生の時に能を鑑賞し、体の使い方に興味を持ち、ずっとやってみたいと思っていたら、このワークショップを知り昨年から受講した」と動機を述べた。「昨年は『猩々』(しょうじょう)を学習したが、今年の『小袖曽我』の方が動きが複雑で覚えるのに時間が掛かった。その分、見所が沢山あって、踊っていて気持ち良かった」と振り返る。「昨年は初めてで分からなかったところも、今年は去年習ったことを生かしながら、舞では足の運びや目線だったり考えながら出来た。謡では高音の伸びと低音の響きについて気を使い声を張れた」と満面笑みで述べた。「まだまだ、課題はあるが気持ち良く出来て、爽快感を味わい堪能した」と述べた。
▶︎喜多流能楽師の佐藤寛泰講師は「今年は『昨年の受講生も何人か参加する』ということで、今回は昨年の『猩々』より、『ステップアップしたものを』という依頼があったので、難しい『小袖曽我』を選んだ」と振り返る。「昨年の経験者が喜多流の能の基礎となる謡(うたい)と能の中の動きとなる仕舞に積極的に取り組み、初めて参加される方も感化されて相乗効果があった」と大きく頷く。「仕舞の時には、1人て舞うものとシンクロして舞う2パターンある。和田さんには1人て舞う『小袖曽我』に取り組んでもらった」という。「能という芸能を短期間で全てを吸収することは非常に難しい中で、講座を通して身のこなしの『所作』や『姿勢』だったりとかが、受講前よりは見違えるように上達した。また、講座を通じて日本文化『能』を理解していただけたと思う」とこの上なく誉めた。
文(H.K) 、カメラ(平川大雪) 2019.12.14