●令和元年度「全国高等学校駅伝競走大会」
~山学高女子1区で好位置も、あと続かず~
~男子入賞目標も万全な状態で臨めず苦戦~
「男子70回・女子31回全国高等学校駅伝競走大会」が12月22日、たけびしスタジアム京都(京都市西京極陸上競技場)を発着点とする、男子7区間42.195km、女子5区間21.095kmで行われた。都道府県の予選会に優勝した男女47校と男子は70回の節目の大会にあたり各地区代表11校を加えた58校が出場。女子は10時20分にスタート、5区間でレースが行われた。山梨学院高は1年生の中嶋千沙都が11位と好走。流れをつくるお膳立てをするも、強豪校の力に圧倒され、その後は徐々に順位を下げ32位でゴールした。12時30分にスタートした男子は8位入賞が目標。長距離で力を発揮する漆畑徳輝(3年)が1区に起用され期待されたがハイペースの展開に序盤こそ先頭集団につくも、上りがきつくなるとともに遅れだし39位とレースの流れをつくれずに出遅れた。続く各区間の選手も苦しみながらもタスキを繫いだが44位でゴール。男女とも万全な状態ではない中、臨んだ全国大会での敗北。この試練を打ち破る名門山梨学院高復活へのチーム作りが急務となった。
◆女子5区間21.0975km
午前10時20分、曇り空、気温約10度。風もほとんどない駅伝日和の京都・西京極陸上競技場。女子のスタートの号砲が鳴った。全国都道府県代表47校の女子選手たちの5区間21.0975kmの熱い戦いが始まった。
■第1区:中嶋千沙都(1年) 6km(西京極陸上競技場~平野神社前)
区間=11位 20:01 総合順位=11位 合計タイム=20:01
女子1区は、5区間の中で最長区間の6km。各チーム力のある選手が揃う『花の1区』。中間点あたりから始まる上りは、残り1kmで約20mを駆け上る。力のある選手がどこで仕掛けるかが注目される。1区に起用されたのは普段はトライアスロンチームに所属する1年生の中嶋千沙都にレースの流れを託した。中嶋は今年の6月のアジア女子ジュニアトライアスロン大会で優勝、8月末の世界ジュニア大会では6位入賞の実績を持ちランを得意する。レース序盤、中嶋は先頭集団の中ほどに位置し、周囲の様子を窺う。中嶋千沙都選手は「1区はチームの流れをつくる重要な区間なのでスタート前はとても緊張しました」と話し、3kmあたりから始まる上りの対処には「後半に仕掛けてくる選手も多いので、前半は落ち着いて入り、後半にばてないように考えて臨みました」。残り1kmの厳しい上りには「最後の力を振り絞って何人か抜きました。自分の走りはできたと思います」。トライアスロンで鍛えた強い足腰とスタミナで11位と健闘。大役を見事に果たし、2区で待つエースの伊藤夢(3年)にタスキを繫いだ。
■第2区・伊藤 夢(3年) 4.0975km(平野神社前~烏丸鞍馬口)
区間=42位 14:27 総合順位=22位 合計タイム=34:28
中嶋から11位でタスキを受け取った伊藤は唯一3年連続都大路に出場。すべて2区を担当。コースを熟知した強みで前との差を少しでも縮めるべく走り出した。中継所から1km付近までは、1区からの激しい上りが続き、その後、長い下りが続き、第2中継所までは4ヶ所のカーブを曲がる難しい区間。留学生やエース級が揃いハイレベルなレースが展開する。上りが弱いという伊藤は、走り始めの上りで苦しんだ。伊藤夢選手は「下りでペースを上げようとしたけれど後半上げられなくて」と悔やんだ。「結果は全然ダメでしたけど全力で走ることはできたので今持っている力はこれなのかなと思いました」。体調不良からの完全復帰には至らず順位を22位に落とした。
■第3区:米原千尋(3年) 3km(烏丸鞍馬口~室町小学校前折り返し~北大路船岡山)
区間=43位 10:46 総合順位=27位 合計タイム=45:14
3区は、タスキを受け取るとすぐに折り返しがあり、2区の下りがここでは上りになる。3区・4区は3kmと短い距離なのでスピードのある選手が起用できるかが勝負のポイントとなる。昨年はアンカーを担当し、下りが得意な米原千尋選手は上りの3区を任された。「1週間前に言われました。最後の1kmの上りがきつかったですが、それまではあまりきついという感覚はなく、しっかり前を見て追っていけたので」と納得する。さらに「すべてここのために準備もしてきて、結果とかタイムを見ると良くなかったですけど自分ができることはやってきたので後悔なくやりきることはできました」と清々しく話した。
■第4区:川下玲奈(3年) 3km(北大路船岡山~西大路下立売)
区間=36位 10:28 総合順位=31位 合計タイム=55:42
徐々に順位を落とし27位でタスキを受けた4区の川下玲奈選手は昨年、全国大会直前に大腿骨の疲労骨折で出場できなかった。「初めての都大路になります。今期も故障で練習不足ではありますけど諦めずにやってきて出場が叶って良かったですけど、皆の力になれなかった」と肩を落とした。4区は、スタートしてから1kmまでが上り坂だが、その後は、一気に下り坂となる。「中学校から上りをやってきたので下りの走りが慣れていなくて少し難しかったです。最後まで全力で走って“このみ”に少しでもいい順位で渡したかった」と順位を下げたものの、納得の表情を見せた。
■第5区:鬼頭このみ(2年) 5km(西大路下立売~西京極陸上競技場)
区間=27位 17:04 総合順位=32位 合計タイム=1:12:46
最終5区には、山梨県大会の1区で優勝の流れをつくった鬼頭このみ選手が初の舞台に臨んだ。「1区の中嶋が11位で持ってきてくれたのに、どんどん順位を下がってしまい、自分が何とかしなくてはと思いました」。5区はタスキを受け取ってから2kmは下り坂が続くが、その後はゴールの競技場まで平坦。下りが得意な鬼頭は、最初の1kmが目標タイムで通過。順調に走るも、途中の上りでタイムを落とし気持ちが揺らいだ。しかし繋いできてくれたタスキをゴールまでと。「順位はともあれ自分の最高のパフォーマンスをしようと走りました」と最後まで悔いなく全力を尽くしてゴールを走り抜けた。結果は総合順位32位。満足いかぬ結果となったが、部員数が少ない中、故障者がいる期間も長期にわたり万全な練習ができない状況で悔いの残らないように全力でタスキを繫ぎ、冬の都大路を走り切った。
レース後、足の故障で出場できなかった平塚莉珠主将(3年)は「もともと悪かったのですが関東大会の後、腓骨と脛骨の疲労骨折してしまいました。関東ではベストが出て3年間の中では一番調子が良かったので本当に悔しいです」と主将として貢献できなかったことを悔やんだ。そして、「今年はいい結果が出せなかったですけど満足はするわけではないですがそれなりに皆は力を出し切ってくれました」とチームメイトを労った。
依田崇弘駅伝部女子監督は「良かった区間もあり、予想したより苦戦した区間もあって、トータルしてみれば実力通りだったと思います。私が予想したタイムより若干良かったくらいなのでそれで32位とは純粋に実力不足なのでそこをしっかり受け止めて出直して来年さらに上にいけるよう頑張っていきたいと」とレースを締めくくった。
◆男子7区間42.195km
12時30分、雲が低く垂れ込め雨が心配になったが気温10度。午前の女子のレースより肌寒く感じる。全国都道府県代表47校と男子70回記念大会の地区代表校の11校を加えた58校の選手たちの7区間の戦いの火ぶたが切って落とされた。
■第1区:漆畑徳輝(3年) 10km(西京極陸上競技場~烏丸鞍馬口)
区間=39位 30:27 総合順位=39位 合計タイム=30:27
1区は女子同様、男子の最長区間の10km。『花の1区』と言われ、各校ともエースを起用してレースの主導権を狙う。女子の1区・2区をほぼ合わせたコースを走り、約5km付近から7km付近まで約50mの上り坂を一気に上り、その後は中継所まで交差点を曲がりながら3kmの下りが続く。山梨学院の第1区を任されたのは、長距離に安定した力を発揮する漆畑徳輝。漆畑は、スタート直後から集団の中ほどに位置し、速いペースにしっかりと追随。漆畑徳輝選手は「エースが多い中、最初からどんどん行こうと決めていた」。しかし、3km付近から始まる上りに徐々に遅れ始める。中間点で「取り残されるような形になって」上りの頂点の7km付近では先頭から36秒差をつけられた。「ものすごいハイペースの展開でその中でしっかり戦っていかなければならなかったのに自分はおいて行かれたのが悔しい」と唇を噛んだ。3年間連続で都大路を駆け抜けた漆畑にとって最後の大会で39位という結果を大学で晴らす決意を誓った。
■第2区:橘田 翔(2年) 3km(烏丸鞍馬口~丸太町河原町)
区間=32位 8:32 総合順位=38位 合計タイム=39:11
2区は、3kmと短い区間でほとんどが下り。1区で繋いだ位置から流れを作る重要な区間で力のあるスピードのある選手が鍵となる。39位と思いがけない順位でタスキを受けた2区の橘田翔は、前の集団に追いついて順位を上げようという気持ちで最初の1kmを入った。
橘田翔選手は「自分の実力以上のペースで入ってしまって最後足が動かなくなってしまいました。それでも1区でトップと1分49秒の差を25秒までに縮めた。「来年は1区を走り上位でタスキを持ってくる目標があるのでリベンジします」と反省と意気込みを口にした。区間32位、実力的には満足いかないものであろうが初めての都大路に「この大会のために一年間やって来たので楽しかったです」と笑顔を見せた。
■第3区:加藤聡太(3年) 8.1075km(丸太町河原町~国際会館前)
区間=40位 24:59 総合順位=39位 合計タイム=1:04:08
3区は、1区に次いで長い区間。全体的に上りが多い区間で、比叡山に向かって北上する。山からの向かい風が強くなるとランナーを苦しめる。留学生ランナーが多く走る。3区に起用された加藤は3年連続の出場となり昨年もこのコースを走っている。38位でスタートした加藤聡太主将(3年)は「上りが粘れても、上った後の平坦だったり、下った後に足が残っていなくてだめでした」と自分の走りに課題を挙げた。さらに「チームとしても個人としても思うようにいかなかった。昨年から全然変わっていないし進化していないことが悔しいです。3年間の最後は笑って終わりたかった」と主将として複雑な胸の内を明かした。チーム内でも期待された走りは結果を残せずに順位を落とした。
■第4区:額賀稜平(3年) 8.0875km (国際会館前~丸太町寺町)
区間=40位 24:22 総合順位=39位 合計タイム=1:28:30
3区とほぼ同じ距離を逆走。下り坂が多い区間。39位でスタートした4区の額賀は前を走る選手を一人ひとり捉えようと上を目指した。額賀稜平選手は「中間点あたりまで目標タイムに届くペースで走っていたのですけど、そこを過ぎてから腹痛が来てしまいかなり失速してしまい、結果的に個人順位も総合も悪く最後の舞台でこうなってしまったのは残念な気持ちです」と長い距離を任された期待に応えられず順位を上げられなかった。
■第5区:河野 瑛(3年) 3km (丸太町寺町~烏丸紫明)
区間=58位 9:51 総合順位=46位 合計タイム=1:38:21
2区の逆走区間。緩やかな上り坂が続き、この区間も山に向かって北上するため、向かい風が吹くこともある。5区を走った河野は、今月16日、練習後に左足に痛みを訴え、その後も回復しないまま今日を迎えた。河野瑛選手は「痛みは残っていて、それでも走らなくてはならないチーム事情があり、もっと好記録を狙いたかったですけど出し切れずにチームに迷惑を掛けてしまった」。走り出せば痛みはなくなると信じてレースに臨んだが無情にも次々に後続に抜かれた。
■第6区:大塚嘉胤(3年) 5km (烏丸紫明~西大路下立売)
区間=22位 14:57 総合順位=44位 合計タイム=1:53:18
ほぼ女子の3区・4区を合わせた区間。前半は上り、後半は急な下りで7区最終走者にタスキを託す。6区を走る大塚は、スタートすると順調にペースを上げて前を行く選手を追いかけた。大塚嘉胤選手は「2kmあたりの上りでタイムを落としてしまって、下りになってからは結構タイムを上げられたのでそこを粘っていればもう少しいい感じで走れた」とレースを振り返った。順位を2つ上げ、個人順位も22位と好走した。
■第7区:小松田有将(2年) 5km(西大路下立売~西京極陸上競技場)
区間=31位 15:00 総合順位=44位 合計タイム=2:08:18
女子の5区と全く同じのコースの男子最終区7区アンカーを託された小松田有将選手は「初めての大舞台で緊張もあったんですけど、思ったよりもペースをつくるのが難しくて自分の走りができなかった」とレースに臨んだ印象を語った。レースは3人の集団で小松田が引っ張る展開に3km付近で同走の二人に離されるも、トラックでは一人をかわし44位の順位を守った。4人の3年生が来年に向けて「次は自分たちの代になるのでトラックだけではなくロードにも強い山梨学院を自分がつくるという強い気持ちを持って新チームをつくっていきます」と強い意志を示した。
レース後、箱崎孝久駅伝部総監督は「1区がハイペースについていけなくて、やはり1区の順位を上げる力がないのと、7人のメンバーですと怪我もできない状態です。タスキが繋がっただけでも良かったです。思い切った練習もできませんし。うちが優勝した時のタイムが15番前後ですからハイレベルです。」とレースを振り返った。3年生が4人抜けたこれからは選手の確保が山梨学院高駅伝部の復活への喫緊の課題となる
文(K.F)カメラ(平川大雪・藤原稔・今村佳正・磯裕文)2019.12.22
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全国高校駅伝・山梨学院高校応援団 ~寒さを吹き飛ばす熱い応援で選手を鼓舞~ |
全国高校駅伝のスタート・ゴール地点となった京都市・たけびしスタジアム京都のバックスタンドには、山梨学院高校の生徒や教職員、PTA役員などおよそ120人が陣取り、師走の都大路を駆け抜ける選手たちを熱い応援で後押しした。生徒会、吹奏楽部、チアリーダー部、応援団、PTA役員などは大会前日に山梨からバスで京都に入った。今年の全国大会の応援は、春のセンバツ甲子園、夏の甲子園に次いで3大会目。京都市内は、朝から気温が上がらず、厳しい冷え込みとなり、男子がゴールする時間帯からは雨にも見舞われた。また、時折団旗が大きくはためくほどの風も吹き荒れた。応援団は悪天候をものともせず、競技場から市内の中継所に移動する選手の名前をコールし、仲間を鼓舞。選手も手を振るなどこれに応え、仲間の声援を胸に健闘を誓った。男女のスタート時間が近づくと応援にも熱が入り、スタート直後は大きな声援を送り、仲間の力走を応援の力で後押しし、京都市街へ送り出した。沿道では、生徒会役員やPTA役員などがコースとなっている西大路通や堀川通、烏丸通などに分散し、都大路を疾走する選手たちに声援を送った。バックスタンドでも市内を走っている選手たちに思いが届くように応援を続け、男女のアンカー選手が競技場内に入ると応援の熱はさらにヒートアップ。選手に気持ちが届くよう、力のこもった応援を行い、最後の選手がゴールするまで応援を続けた。
厳しい寒さが競技場を包むこむ中、応援団の芦川奈々恵団長(2年)と井上小粋副団長(3年)は襷掛けの袴姿で応援をリードした。初めての都大路の応援となった芦川団長は「大きい応援は野球の関東大会に続いて2回目でした。初めての場所でしたが、みんなに助けてもらい、学ぶことも多かったです。最初はいつも見る景色とは違い、緊張しましたが、数を重ねるうちに徐々に慣れてきました。初めて生で陸上を見たので、仲間の走りから力をもらいました。今後は今までの伝統を引き継いでより良い応援ができるようにしたいです」と語り、この日引退を迎えた井上副団長は「3年連続で応援ができ、知っている同級生も走っているので、これまでの分も含めて気持ちが伝わるように応援しました。普段から厳しい練習風景などを見ているので一生懸命走っている姿に感動しました。他校の応援も参考になり、後輩にはさらに質を高めて全国の舞台で誇れる応援をしてもらいたいです」と期待を寄せた。また、音楽で応援を盛り立て、選手を後押しした吹奏楽部の田中美羽部長(2年)は「いつもの音量だと遠くまで音が届かないので音を大きく出し、一体感を持って演奏しました。市内を走る選手は直接見ることはできませんが、思いが届くように気持ちを込めて吹きました。選手の頑張りから力をもらい、さらに演奏にも力が入りました。これからも全国の舞台で応援する機会もあると思うので、チアや生徒会などと力を合わせて一体感を持った応援ができるように頑張りたいです」と述べた。一方、寒さをものともせず、笑顔で応援を続けたチアリーダー部の土橋マリア部長(2年)は部長として初めての全国大会を振り返り「一般の生徒より近い場所で選手を応援することができ、駅伝は年に1回しかないので感動でいっぱいです。直接姿が見えなくても気持ちが届くように応援しました。寒いと踊りが小さくなってしまうので、普段の練習から外で練習してきました。部員が多く、まとまりが出ないときもありますが、これからも選手を一番に考えて、日頃から厳しさを持って、選手に思いが届くように声の大きさなど気を付けていきたいです」と話した。
山梨学院高校応援団(生徒会・応援団・吹奏楽部・チアリーダー部)の今年の全国応援は都大路をもって終演となった。一方で、野球部が今週の関東大会で準優勝に輝き、来春のセンバツ甲子園出場の可能性を秘めている。全国大会の舞台で応援を披露する機会は限られ、応援団にとっても夢舞台。山学高応援団は野球部員とともに、1月24日のセンバツ出場校決定の吉報を待つ。この日の熱い応援の再演を甲子園のアルプススタンドでもう一度・・・。
文・カメラ(Y.Y)2019.12.22