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●山梨学院大学『地域課題総合研究』の授業
~笛吹市と連携『石和温泉街の活性化』提言~
~「『どう反映させるか』課題をもらった」~

山梨学院大学『地域課題総合研究』の授業(担当今井久教授)では1月17日、広報スタジオにおいて笛吹市観光担当副主幹の竜沢真弓氏らを招き、『石和温泉街の活性化』のプレゼンテーションを行った。今井教授は「この授業では、自治体職員など地域に密着した職を目指す学生が、笛吹市と連携し、アクティブ・ラーニングの手法で、調査や解決策の検討などを行った」と説明。学生の3チームが『温泉手形の導入とSNSを利用した広報』『五感で女性受けする街づくり、お風呂カフェと出店(でみせ)』『“ALL”山梨で立ち向かう』などの提言を行った。総評で竜沢真弓氏は「学生は我々が課題と考えている石和の現状をよく捉え提言していた。特に『“ALL”山梨で立ち向かう~石和温泉の活性化~』はよくまとめ上げていた。これらを、どう反映させるか課題をもらった」と大きく頷いた。学生の溝口恭平君(3年)は「就職は自治体職員を目指しているので貴重な体験ができた」と声を弾ませた。今井教授は「授業で地域の直面している具体的な課題に本気で取り組むことは、学生たちの未来を拓く確かな扉となる」と述べた。

◾️先駆けインタビュー◾️
山梨学院大学 今井久 教授は「地域課題総合研究の授業は、自治体職員、地元企業、地域密着型NPO、コミュニティ・ビジネスなど地域に密着したサービス職を目指す学生のための科目として開講している」と頷く。授業は「学生自らが主体的に参加する問題志向型のアクティブ・ラーニングの手法を取り入れて行っている。第1回目は笛吹市『移住定住』、2回目が甲府市『移住定住』、3回目が甲府市『中心街活性化』、そして本年度の4回目は笛吹市と再び連携し『石和温泉街の活性化』について行っている」と、その実施内容は「受講学生によるワークショップ形式での課題の調査分析、論点整理、解決策の提示などを行って来た」と熱心に語る。「今回の授業で、指導を受けた笛吹市役所産業観光部観光商工課観光担当副主幹 滝沢真弓氏、同笛吹市観光物産連盟事務局 荻野誠亮氏、Jruro J-goods代表取締役社長 土橋八恵氏を招き、法学科3年の田中優成君と依田耕司郎君チームによる第1プレゼン『石和温泉活性化に向けて』、経営学科2年の齋藤亜美さん、田村あずささん、八代彩花さんチームによる第2プレゼン『石和温泉を元気にする』、政治行政学科3年の溝口恭平君、森田陽君チームによる第3プレゼン『“ALL”山梨で立ち向かう~石和温泉の活性化~』を行う」と述べた。

■【第3プレゼンテーション要約】■
『“ALL”山梨で立ち向かう~石和温泉の活性化~』
法学部 政治行政学科3年の溝口恭平君・森田陽君チーム
▶︎私たちは今井 久教授のご指導のもと、石和温泉の活性化をテーマに、①石和温泉街のフィールドワーク、②笛吹市の荻野誠亮氏による講義、③Jruro J-goods代表取締役 土橋八恵氏土橋八恵氏による講義などで、実態に即した課題解決について研究を行ってきました。「ALL山梨」を目指すための協働体制の構築、「ALL山梨」石和温泉エリアが取り組むべき最優先事項の、2つの観点から提言を行います。
▶︎1.石和温泉における現状の理解について、①国内からの来訪客減少、②笛吹市と石和温泉のイメージ乖離、③人があまり歩いていない、④温泉街らしさがない、⑤昔の面影に囚われすぎている。笛吹市における観光客の宿泊客数の推移は平成元年の約180万人から平成30年には約150万人と30万人減少している①③に合致。長野県で石和について尋ねてみると、20代男性は「石和ってどこ?」①③に合致、50代男性は「歓楽街が主で、温泉は二の次」②④⑤に合致、60代の男性は「今でも歓楽街で栄えているイメージ」②④⑤と合致します。石和温泉は歓楽街(夜の街)として栄えたものの、今ではかつての誇りが負の遺産化しているとヒアリング調査の結果が出ました。
▶︎2.協働体制(ALL山梨)の構築について、1)笛吹市の観光の現況は、観光客数が平成28年約213万人、平成29年約208万人と前年に比べ約5万人減、平成30年は約217万人と平成28年に比べ約4万人増と増減はあるもののほぼ横ばい。宿泊客数が平成元年約180万人から平成30年約150万人と約30万人減少傾向で、日帰り観光はやや増加しているものの、既存の石和温泉および笛吹市単独での集客方法では行き詰まりとみます。従って周辺市町村との協働が必要。2)石和温泉は歓楽街としてのイメージが今なお残り、本来の温泉地をウリにすべく、イメージの転換期にきています。そのために県内温泉地との協働が必要と考えます。
▷(1)石和温泉が取り組むべき課題として、周辺市町村との協働が不可欠です。①山梨セントラルエリアにおける宿泊地の核として、甲府近郊のビジネス客需要を取り込む、②山梨県内において観光客が増加傾向である「富士山麓エリア」および「八ヶ岳山麓エリア」との協働体制構築、③ワインツーリズムエリアでの協働体制確立(笛吹市・山梨市・甲州市)。先例として長野県諏訪地域の6市町村が協働した観光誘客プロジェクトの『謎の国諏訪の国プロジェクト』はで、観光資源を点ではなく面として繋げ、諏訪地域全体の活性化を目指しています。
▷(2)協働により得られる効果は、① 既存の誘客姿勢からの脱却。石和だけで頑張ってもダメ、② 山梨県の各地域が補完関係を構築し、ライバル意識が低減、③ 複数の観光地や内部資源の組み合わせが可能、④ 単一目的地の観光から、山梨を目的とする観光への転換日帰り型へ。そして周遊型、滞在型、半移住・定住へと繋げていくことが肝要と考えます。
▷(3)県内温泉地の協働『温泉郷やまなし』として、石和温泉郷、富士河口湖温泉郷、湯村温泉郷、下部温泉郷、芦安温泉郷、西山温泉郷が考えられます。その課題は、① 温泉郷同士のネットワークがない、② 温泉街より温泉宿の魅力が大きい、③ 単独での周知活動に行き詰まりがあるがあげられます。
▷(4)県内温泉地との協働プログラムとして『やまなし泊まってけしプロジェクト』(仮称)の始動を石和温泉郷が先頭に立ち、山梨県における温泉を活用した協働体制を築き上げ、旅館目的から温泉郷目的への転換を考案。①各温泉郷の強みを活かした、山梨での宿泊プランの見える化、②山梨の温泉郷を一つのモノと考え、オール温泉郷で広報活動をする、③温泉組合同士での繋がりによる滞在型観光の推進。これらが推進できると、石和温泉が負の遺産からの脱却の解決策となると考えます。
▶︎3.笛吹市への提言について、1)動線の改善と新たな広報手段の模索について、現状から考える問題点は、①JR石和温泉駅からさくら温泉通りへの徒歩でのアクセスが困難。何処が正規ルートか分かりづらい、②さくら温泉通りが地域住民の抜け道となっており、速度超過かつ危険な車両も見受けられ、観光客へのマイナスイメージとなりかねない、③JR石和温泉駅にクローズアップしすぎていて、高速道路や一般道などからのアクセスにも目を向けるべきではないか。
▷(1)JR石和温泉駅からの動線。(2)JR春日居町駅からの動線。(3)一宮御坂ICの動線の改善と新たな広報手段の模索について、(1)R石和温泉駅からの動線は、「自然と歩いて温泉街へ行きたくなる」ルート確保。①石畳の歩道、ベンチを整備して歩きたくなる工夫を・周囲に軽食やお土産を購入できる店舗を並べる、②自然豊かな「山梨県」を肌で感じてもらうきっかけにする、③「温泉街らしさ」を醸し出す。例えば湯気や「温泉〇〇」と言ったものの開発。(2)JR春日居町駅からの動線は、「山梨を五感で感じ、癒しを求めて石和温泉へ」ルート確保。①ルート内の農家さんと連携し、農業体験を実施を検討、②共に育て、共に収穫、共に頂くを合言葉に計画を、③大規模温泉街では困難な、顔の見える関係構築を図る、④最後は石和でもてなされ、最高の気持ちで帰路についていただく。(3)一宮御坂ICからの動線について、「通過点」から「目的地」へ。JRに加えて連携強化、①高速道路利用者に向けてのNEXCO中日本などと連携しPRの強化、②釈迦堂PA・境川PA・談合坂SA等での広報の検討、③他の中央自動車道沿線の観光地域との連携強化、④ドライブプランのさらなる広報と活用促進。それら3つの動線の改善と新たな広報手段の模索についてを提言します。
▷2)食・宿の改善で満足度UPを図るについて、現状から考える問題点、①全世代への「一昔前の石和温泉」イメージ転換が急務、②温泉街を歩いても、「山梨・石和感」を感じにくい、③ふらっと立ち寄れそうな宿や店舗が少ない、④ワインやもも・ぶどうの有名どころとして知名度は高いが、「ラーほー」のさらなる知名度アップが必要、④若者が「来たい」と感じられる工夫が足りないのではないか。市を挙げた新たな「おもてなし」の検討が必要だと考えます。
▷(1)『山梨らしさ・石和らしさ』の見える化について、①前提として「一昔前の石和温泉」のイメージからの脱却、②石和&笛吹感を、さらに『見える化』するための手法。身近に見える・触れるところでぶどうやももの栽培はどうか。長野県塩尻市「塩尻駅」では、駅構内に日本で唯一ぶどう棚が存在。また、秋はぶどうの香りを堪能しながら電車を眺め、待つ楽しみがある。高速道路×温泉×ぶどう・もものコラボも方法としてはありではないか。
▷(2)『ラーほー』のさらなる可能性。①ラーほーを今以上に全国へPRしラーメン好きへ届け、ラーメン好きに笛吹市に食べに出向いてもらう、②ラーほーのレパートリー増と提供店舗の拡大を。日中に食べたくても提供している店舗が数少ない、③「ラーほー課」発足によって官民一体の周知を目指す、④「めんすたぐらむ」等の活用で全国へシェア確保へ。山梨県でも『麺の国やまなし』を運用して広報中です。
▷(3)山形県南陽市「南陽市役所ラーメン課」について、①人口10万人あたりのラーメン店数全国トップの山形県、②一般市民から「ラーメン課員」を募集して協働を図る。マップ、SNS、フォトコンなど様々な企画を実施、③一番の目的は、ラーメンを食べた後に、温泉や果樹に親しんでもらうこと=ラーメン主役の地域活性化。家系、二郎系、淡麗系、汁なし系等のラーメンの可能性は無限大です。若者世代への新たな「ほうとう文化」を広げるチャンスだと提言します。
▶︎3)新たなターゲット・宿泊のあり方の模索について、①かつての社員旅行から家族や少人数旅行の場イメージへ。一昔前の「社員旅行とかで行く石和温泉」から「家族(三世代旅行など)やカップルで行く石和温泉」への転換はいかがか、②そのためには、「映え」と「思い出」が必要ではないか。一緒に育てたぶどう、一緒に食べた〇〇などの開発提供、③落ち着いてくつろげる場・宿を市としても創り出す。例えば、通行規制、ベンチ・遊歩道、自転車道、絶景ポイントなどを創設することもあせて必要である。
▷4)『寛ぎの諏訪の湯宿 翠 Sui-諏訪湖』について、①「日常の喧騒から離れ、大切な人と集う場」としてPR、②その地域の「日常」を「非日常」へと変えて思い出のおもてなしを行っている。
▶︎以上、1.石和温泉における現状の理解について、2.協働体制(ALL山梨)の構築について、3.笛吹市への提言について、プレゼンテーションを行いました。ご清聴ありがとうございました。

■なお、法学科3年 田中優成君と依田耕司郎君チームによる第1プレゼン『石和温泉活性化に向けて』は、温泉巡り自体を観光資源とする温泉手形の導入とインスタグラムなどのSNSを利用した広報を提言。経営学科2年 齋藤亜美さん、田村あずささん、八代彩花さんチームによる第2プレゼン『石和温泉を元気にする』は、石和温泉全体で協力して、五感で女性受けする街づくり、まずは共通回数券で連携し地元から愛される街全体をひとつの旅館にしていくことと、お風呂カフェと出店を提言した。
◆プレゼン講評◆
▶︎笛吹市役所の 荻野誠亮氏は「3グループ、それぞれの若い世代の目線で石和温泉をフィールドワークしてもらい、それぞれの学科で学んでいる専門的な着眼の良い意見や改善点を上げてもらってもらいとても参考になった。素晴らしいプレゼンだった」と褒めた。
▶︎Jruro J-goods代表取締役社長 土橋八恵氏は「3グループともに良かったが、経営学科の女性グループの『お風呂カフェ』これはとてもユニーク。来年からでも資金を調達して起業したら良いのでは、学生の起業はアメリカでは珍しくない」と絶賛した。
◆プレゼン総評◆
▶︎笛吹市の竜沢真弓氏は「学生は我々が課題と考えている石和の現状をよく捉え提言していた。特に『“ALL”山梨で立ち向かう~石和温泉の活性化~』はよくまとめ上げていた。これらを、どう反映させるか課題をもらった」と大きく頷いた。

◾️プレゼン終了後のインタビュー◾️
▶︎学生の溝口恭平君(3年)は「私自身、就職は地元の自治体職員を目指していることから、この授業を選択した」と頷く。「今回のプレゼンは森田陽君と一緒に、石和温泉だけの周知活動には限界があると考えて、今回はALL山梨協働での取り組みで石和温泉を活性化させていこうと提案内容を絞り込み提言した」と明かす。「森田君と私は長野県出身で、地元も石和と同じ温泉街の観光があるので、住み慣れた街を外から見る視点を大事にして、長野の実例と山梨の実例を比較しながら、石和温泉の活性化を具体的に思い描いた」と振り返る。「今回は私の地元の課題解決に通ずる発見もあり貴重な体験ができた」と声を弾ませた。「今では、この授業で様々な実地調査やヒアリングなどを通して修学したことで、街を見る目に変化が生まれ楽しい」と述べた。
▶︎今井教授は「受講した学生が当初は石和温泉街についてあまり詳しくなかったが、フィールドワークで温泉街に足を運んだり、笛吹市の方や観光広報に携わっている土橋氏などの話を聞いたりして地域課題を理解し、自分事として捉え、そして解決するための提言に繋げたことは評価できる」と頷く。第1グループは「全国の事例を調査し温泉手形の導入を提案し、温泉ではタブー視されるSNS広報を取り上げたのは良かった。」第2グループは「女性目線と経営学部の学生らしい消費者目線で考えた提言だった。温泉組合や旅館組合などの方にも是非聞いてもらいたい。」そして、第3グループは「政治行政学科の学生らしい視点の提言だった。笛吹市長や、できれば山梨県知事にも聞いてもらいたい」と熱望。「授業で地域の直面している具体的な課題に本気で取り組むことは、学生たちの未来を拓く確かな扉となる」と述べた。

文(H.K) 、カメラ(平川大雪) 2020.1.22