●山学中高「新型コロナウイルスの感染症対策」
~中高全校生徒17日から『遠隔授業』開始~
~スタディサプリやYouTube等で複合発信~
山梨学院中学校と山梨学院高等学校(山内紀幸校長)は4月17日、新型コロナウイルス感染症対策の休校解除が見通せない状況を打開するために、中高の全生徒を対象にチャット機能がついている双方向のスタディサプリなどを導入し遠隔授業を開始した。吉田正中学・高等学校副校長は「3月2日から生徒一人ひとりに学習教材を数多く提供してきた。また高校特進コースのIB系生徒は自宅のパソコンで、Web会議ツールのZoom(ズーム)と仮想学習環境のSchoologyを使用して国際バカロレアの授業を行なっている。このIB系生徒と同じようにリアルタイムのオンライン授業を試行錯誤したが、①生徒数が多いことと、②パソコン保有率の問題と、③生徒の自宅インターネット回線環境を考慮すると負荷がかかりすぎ画面が止まったりするなど、現状では難しいという結論になり断念した。そこでスタディサプリを導入するとともに、オリジナルのYouTube動画などを複合発信することで遠隔授業の環境が整えられたため本日、中高の全生徒にスタディサプリのIDを送付した」と述べた。
【緊急事態措置】
山梨学院中学校と山梨学院高等学校は、安倍総理が4月7日官邸で、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を『埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・大阪府・兵庫県及び福岡県の区域に対して発出した。不要不急の外出及び、密閉空間・密集場所・密接場面『三つの密』が重なる状況を避け、自己への感染を回避するとともに、他人に感染させないよう徹底するために、4月7日から5月6日まで外出自粛を強く要請する緊急事態措置を実施した。また、安倍総理は16日この感染症の全国的かつ急速なまん延により、これまでの7都府県に40道府県を追加して、全都道府県に拡大して緊急事態宣言を発令した。対象期間は7都府県と同じ5月6日までとなる。山梨学院中高は長崎幸太郎山梨県知事の要請を受けて5月10日まで休校延長することを決定した。
【経緯経過インタビュー】
▶︎吉田正中学・高等学校副校長は「本学の中高は新型コロナウイルス感染症の影響で中高は3月2日から3月19日まで休校した。実は、中高で一番早く対応したのは高校特進コースのIB系で、国際バカロレア・ワールドスクールとして認定を受けている関係から、生徒は3月2日から自宅のパソコンで、Web会議ツールのZoom(ズーム)と仮想学習環境の学習管理システムSchoologyを使用して国際バカロレアの授業を行なっている」と明かす。その他の生徒は「当初は、登校日を設けて担任が課題などをプリントや冊子を印刷し手渡して回収していたが、それもままならない事態となった」と顔をしかめる。「そこで協議を重ねて、送付回収という案が出されたが保護者に送料負担を強いることになると取り止めになった。4月3日の始業式をZoomで各教室にオンラインで配信したところリアル感があって良い」と評判となり、「『対面授業の代替えとして、教科書に沿ってオンラインで遠隔授業をしょう』と、IB系と同じようにZoomを使用してリアルタイムのオンライン授業を試行錯誤したが、①生徒数が多いこと、②パソコン保有率の問題と、③生徒の自宅インターネットの回線環境では負荷がかかりすぎ画面が止まったりするなど、現状では難しいという結論になり断念した」という。
▷そこで「高校生は、チャット機能がついている双方向のスタディサプリを導入し、チェックテストなども併用して遠隔授業を行うこととした。さらに、特進コースでは、オリジナル授業をYouTube動画で配信するとともに、例年、授業終了後にそれぞれの教室に配信して授業の補完的・発展的な学習ツールとして活用してきたサテライン講座(大手予備校の授業)をも活用し、複合的に学習支援を行う。IB系はSchoologyとZoomを使用して遠隔授業を継続する」という。
▷中学校では4月1日から授業コンテンツのYouTube動画の作成に取り掛かり、4月9日から生徒が教科書で学習するスタイルに加えて20分間のYouTube動画を配信したところ、生徒や保護者から『面白いし、先生方の気持ちが伝わってくる』などと多くの反響があり、先生方が自信を得て、一日おきに英語・数学・国語と理科・社会を交互に配信している」と振り返る。
▷「先生方と生徒・保護者の協力で、中高ともに対面授業の代替えとして、教科書をベースにチャット機能がついているスタディサプリで先生方が生徒の質問や相談に対応できるようになり、またYouTube動画などと複合発信することで遠隔授業の環境が整えられたため本日、中高の全生徒にスタディサプリのIDを送付した」と述べた。
【授業収録とインタビュー】
▶︎中学3年担当の白須千尋進路主任学年主任のiPadでの収録が始まった。白須教諭が自身で板書した前に立ち「今回は、学びて時に之を習ふー論語ー『雍也』の授業です。論語は孔子が弟子とやり取りした問答を、弟子がまとめた章句です。今回の単元には『知る』『好む』『楽しむ』という流れがあります。目に見えない価値観を、より知る、知るより好む、好むより楽しむということで、孔子は人びとに教えを説いています」と概説をはっきりとテンポよく収録した。
▷その収録後、白須千尋進路主任学年主任は「生徒は自宅で教科書を手元に置き、20分間の動画を見ながら進めていくと原則45分で終了するように制作する」という。「具体的には、『ここで動画を止めてノートに書き取ってください』とか、『考えましょう』とか、宿題を出したり、宿題を小テストし答え合わせをする。これで25分の尺が埋まる」と頷く。大切なことは「まず、伝えなければならない内容は全て網羅すること。今回であれば、『雍也』の学びの目標や漢文の模範読や白文『子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者』をレ点や一二点で訓読文に、『子曰く、之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。』と書き下ろし文に、『あることを理解している人は知識があるけれど、そのことを好きな人にはかなわない。あることを好きな人は、それを楽しんでいる人に及ばないものである。』と現代語訳にする。また、日本にある『好きこそものの上手なれ』という諺と同じで、『物事の知識がある人であっても、好きな人には叶わない。さらに、好きな人であっても、それを楽しんでいる人にはかなわないということを言っている言葉です』と展開して理解を深めていき、『知より好を、好よりは楽をと念願した孔子の心境と思われる』という具合にまとめ収録すること」と説明。「生徒や保護者から『45分の授業の後、20分のYouTube動画を何回も繰り返して見れて、聞き逃したところや理解できなかったところがチェツクできて便利』などとメッセージをもらうと、次の収録は緊張する」とはにかむ。「国語科は1年・2年・3年の担当3人で作成している。今回は週末で忙しくiPadで制作したが、余裕のある時はデジタルビデオカメラで撮り動画のアプリでテロップなどを入れたりして制作している」という。「気遣うことは生徒のモチベーションを下げないようにすること。20分の中で、色んな知的な遊びを取り入れたり、斎藤孝の『声に出して読みたい日本語』を読み上げたり、さらに余裕があれば、生徒向けの論語のビジネス本になっているものを紹介したりして探究心を養う」と工夫する。「自分の授業を生徒の目線で傍観者的立場で教育評論家の立場で、客観的に見られたのは参観授業とか限られた機会しかなかった。皮肉にも、この事案で授業改善につながっている」と深く頷き、「今まで当たり前だったふれあいの対面授業に対して、教師は教えることの尊さ、生徒は学べることの尊さを知った」と神妙に述べた。
【山学その他設置学校の現況】
▶︎大学は4月6日(月)から、iCLA(国際リベラルアーツ学部)がZoomと教育セッションのワークショップ資料にアクセスしたり参加者と交流ができるEdvance(エドヴァンス)を使用して、また、健康栄養学部がクラウド型の教育支援サービスのmanaba(マナバ)、Zoom、Mail(メール)、LINE(ライン)を使い遠隔授業を行っている。そのほかの学部は、特別休講期間が追加となり、授業開始は対面授業・オンライン授業ともに5月11日(月)となっていてる。
▶︎短大は4月15日から、2017年から対面授業の学習補助活用としてラーニング・マネジメント・システムのWebClass(ウエブクラス)を導入していたが、それを使用して、学事日程と授業時間割に従って遠隔授業を行なっている。
▶︎小学校は4月7日(火)から5月6日まで臨時休校。その間は授業動画をYouTubeで配信。また、週1回程度自由登校日を設け、課題の解説・説明や対面での生活面のケアを行なっている。さらに、電話での相談にも応じている。
▶︎幼稚園は4月9日(木)から、送迎バスの運行停止、給食なしで自由登園となっている。休園している園児もいるので、保護者と園児用に4月15日(火)からWeb連絡帳にYouTube動画で先生の紹介も兼ねて手洗いやマスクの仕方を配信。今後は幼稚園の遊具の使い方や手作りクッキング、折り紙などのコンテンツをアップロードする予定としている。
◾️生徒の人間形成を図る上で、教職員と生徒そして学ぶもの同士のふれあいのなかで行われる対面授業やクラブ活動が極めて重要で必要不可欠。早い新型コロナウイルス感染症の終息を願わずにはいられない。
文(H.K)、カメラ(平川大雪) 2020.4.17