●第2期『ビジネススクール』(全12回)
~地域経済の担い手を育成する講座開講~
~1回目経営学の全体像をZoomで学ぶ~
山梨学院大学経営学部と山梨中央銀行は5月21日、地域経済の担い手を育成する第2期『ビジネススクール』をZoomで開講した。古屋光司学長は「この講座は修士課程で学ぶエッセンスを凝縮して月1回の講義で1年間学ぶ。ここで得た知見を業務に落とし込んで実践していただきたい」と、関光良取締役頭取は「経営者として必要な基本的且つ実践的なスキルを身につけ、山梨県を背負って立つ経営者に成長していくためのヒントをつかんでいただきたい」と挨拶。東秀忠経営学部教授が『経営学の全体像~なぜ経営学を学ぶのか?~』の講義を行なった。受講した株式会社アスカインデックスの鹿糠太一さん(44歳)は「オンライン講義だったが良く理解できた。力をつけ時代の変化を先取りし会社に貢献したい」と述べた。大学主催運営責任者の今井久教授は「新型コロナウイルスのため4月開講が本日となった。今回はビジネスパーソンとして経営の知識を身につけたい。将来、起業したいなどと思っている10名弱が受講。全12回で専門家の講義に加えて受講者参加型のワークショップを多く取り入れ現場で活かせる応用力を養う」と述べた。
⬛︎ビジネススクール講座⬛︎
●第1回講義(骨子)
第1回目は、山梨学院大学経営学部 東秀忠教授が『経営学の全体像~ なぜ経営学を学ぶのか? ~』のテーマでZoomにより講義を開始した。
▶︎皆さん、このような状況(新型コロナウイルス感染症)の中でオンラインで、普段と違う中で不安な部分がありつつ、むしろ車に乗ってこなくて助かったという声もあり、そうした考え方をする方もいるんだ。面白いなと思いました。経営学は座学で本を読んでわかるかというとそうではなくて究極は実践の学問。実践の学問の中で非常に特徴的。この講座を通じて皆さんの少しずつの変化を1年間ガイドしていきたい。
▶︎今日のキーワードは「未来を作るための創造的適用」。
▶︎今日伝えたいことは、1)経営学とは・・・?。①「企業」とその「経営」を、様々な視座・領域から理解する営みである。②戦略・管理・組織。2)あえて「座学」を受ける意義。①経験論の束から「論理」を導き出す。②「理論」は陳腐化するが、「論理」は色あせない。3)明日からの仕事にどう反映させるか?。①「勉強になりました!」で終わらせない、②マクロとミクロの視点を常に持ち合わせる、③未来を作るための「実践」に向けた試行錯誤であるということ。
▶︎今、新型コロナウイルスで「経営」に何が求められているのか。1)Creative Adaptation「創造的適応」が必要。2)今、リアルタイムで起こっている変化との向き合いかた。①「異常事態」と捉えて「元に戻そう」とするか?。②「新しい世界」と捉えて「適応しよう」とするか?。3)私のゼミ生で「NASAの職員になったつもりで授業受けてます」と楽しんで遠隔授業を受け、新しい世界が広がり始めて楽しくてたまらないという学生がいる。今、そうした考え方が重要になっている。より良い予測派と一旦予測は脇に置く適用派がいる。人間が絡んでいる社会は、今回の新型コロナウイルスのように予測には限界があると常に考えていなくてはならない。経営とマネージメントは発見と適用と創造が必要となる。
▶︎ビジネスを学ぶということ。1)個人の経験論はその裏の「論理」を探る探究心が大事。①同じ事例は存在しないが、「パターン」はある。2)先人の失敗・成功を理解し、将来の行動に反映させる。①「わかっていても失敗する」事例は山ほどある。②「傍目八目(おかめはちもく)」。組織の中からでは見えなくなる?。3)本当に大切な事は「探究心を喪わないこと」。なぜそれが重要でどういう意味をもつのかを理解すること。①大多数の理論は陳腐化する。中には次回アクティブ・ブック・ダイアローグする『ジョブ理論』のように陳腐化しないものもあるが、それは一握り。②「論理を見いだすプロセス」を手に入れる!ことが肝要。ジョブ理論とは何かを知るためには本の目次と序章を読めば大体わかるが、その理論がどう導き出されたかを理解することが肝要。出来上がった料理の手前のレシピを理解するのと同じ。経営は常に新しいお客様に新しいレシピの料理を出す仕事だと思えば良い。毎日毎日、刻々と変化する状況に対して、自分たちの持ちうる道具と材料と能力をどのように発揮したら良いのかというプロセスに他ならない。これを作っておけば安心とはならない。
▶︎「正解」は無いが、「論理」はある!。1)「イノベーションのジレンマ」C. クリステンセンの名著。①「優秀な企業が優秀さ故に失敗への引き金を引いてしまう!。②なぜ?どんなときに?じゃあどうすればいい?。③キーワードは破壊的イノベーション、資源配分、評価基準など。2)様々な事例が示す「パターン」。①小売業では百貨店→GMS(ゼネラルマーチャンダイズストアー)→Amazon(オンラインショップ)の時代に。②携帯電話ではノキア・NEC・富士通(ガラケー)→Apple、サムスン、HUAWEI(スマホ)。③カメラはフィルムカメラ→デジタルカメラ→スマートフォンと推移。これらは優秀な企業が足元をすくわれた事例といえる。
▶︎経営学の三要素は戦略・管理・組織。1)戦略は「利益獲得のための手段」。2)管理は「目標達成のためのPDCAなどの諸活動の調整」。3)組織は「人と人との協働のしくみ」といえる。究極的には人間模様に左右される。いろいろな人の能力をいかに発揮できるかの仕組みを考えることが大事。
▶︎経営を観る視座は地上・低空・高空。1)産業は上空10000m「地図」の世界の高空の視座。2)企業は社長室から本社ビル屋上の低空の視座。3)現場は床に立った人間の目から天井裏の地上の視座といえる。
▶︎戦略のための視座。1)全社戦略。長期的な経営的成功のためにリソースをどう使うか?。シナジーの設計(多角化戦略)、資源配分。組織設計があげられる。2)競争戦略。ライバル手の競争に勝ち抜くには何をすべきか?。価格戦略/マーケティング。ポジショニング戦略。「競争力」の強化が
▶︎組織のための視座。1)ミクロ組織論。①一人一人の構成員が存分に能力を発揮するには?。②モチベーション。③個人間の関わり合い。④リーダーシップ・フォロワーシップetc。2)マクロ組織論。①一人一人の構成員の活動をより良い成果に繋げるには?。②組織デザイン。③組織文化のパターンetc。
▶︎いま、何が求められているのか。1)これまでの延長線上に正解があるとは限らない。2)マクロな動きとミクロな動きを両立させる。①マクロは高空だけを観ていると、足下をすくわれる。②ミクロは地上だけを観ていると、間違ったゴールになる。3)「未来を作り出す」。①未来予測は意味をなさない。②意志を持った行動の集積が未来を作り出す。③ビジョンを持ち、実行し、確認し、修正する(PDCA)。④途中で投げ出さない。テスラ(電気自動車)やAmazon(オンラインショップ)は勝つまでやった。諦めずに失敗を恐れずにやり抜くことが必要。自分の立場でやってみる。新型コロナウイルスに、対面かオンラインどちらが正解ではなく、頑張って自分たちの意志を持った行動をとることが必要。この時代にあったものを強い意志で行うと、未来は出来上がってしまうもの。黄金の答えはない。
▶︎我々が未来を作っていく一つのピースだということを自分たちが認めること。誰かが決める未来に連れて行ってもらうのではなくて、自分たちの意思で未来に向かうことが必要。その時に地雷や土壺を上手にかわすために学問や契約がある。何を作り、何を生み出し、自分の未来を見せていくのか。みなさん自身が考えて実践しなくてはならない。だからこそ、ビジネスモデルやワークショップを沢山やる。それを現実のものにするために理論・論理を確り学び、より良いやり方を自分の中にもつ、そして実際にやり遂げる。みんなが積極的に未来に対して、イニシアチブを取れるように1年間かけて行いたいと結んだ。
▶︎意見交換で株式会社三井金物店代表取締役 三井弘文さんは「今日受講して、置かれた環境で何ができるか。今までにないことをやってみようと思う。楽しんで未来を作ってみようと思った」と感想を述べた。
◾️次回は6月16日、Zoomでクレイトン M クリステンセンの『ジョブ理論』をアクティブ・ブック・ダイアローグする予定。
⬛︎講義終了後「インタビュー」⬛︎
▶︎受講した株式会社アスカインデックス 東日本営業本部 副部長の鹿糠太一さん(44歳)はFaceTimeでインタビューに応じ「総務部長から次世代を担う経営者を目指してもらいたいと受講を勧められた。オンライン講義だったが良く理解できた。経営を観る視座は、現場の地上・企業の低空・産業の高空の目の話と、マクロな動きとミクロな動きの両立の話が印象に残った。虫の目ミクロ、鳥の目マクロ、魚の目潮流を読むに通ずる。学び実践しPDCAを行うなどして、力をつけ時代の変化を先取りし会社に貢献したい」と述べた。
▶︎この講座の大学主催運営責任者 今井久教授は「新型コロナウイルス感染症拡大防止のため4月16日開講予定が本日となった。ビジネスパーソンとして経営の知識を身につけたい。企業の幹部候補として期待されている。将来、起業したいなどと思っている10名弱が受講した。全12回で専門家の講義に加えて受講者参加型のワークショップを多く取り入れ現場で活かせる応用力を養う。そのために経営戦略やイノベーション、マーケティングを中心に学び、ビジネスを改善して新たな価値を創出するための思考力を鍛えていく。次回はオンラインで『破壊的イノベーション論』の提唱者である、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン M クリステンセンの『ジョブ理論』を参加者で担当ページを決め読み要約する。そして全員が感想を述べ、疑問については対話を行う予定。8月からは対面になる可能性がある。講座とは別に受講者間の情報交換などのコミュニケーションも図って行きたい。将来、地域経済の担い手となってもらいたい」と期待を込めて述べた。
◾️この講座は、主催が山梨学院大学経営学部・山梨中央銀行、協力が山梨学院生涯学習センター。原則毎月第3木曜日、19時~21時の2時間程度、2020年3月18日(木)まで全12回行われる予定。
文(H.K) 、カメラ(平川大雪) 2020.5.21