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●山学大スポーツ科学部が県議会議員と意見交換会
~スポーツ科学部の有する学問的知見を議員と共有~
~山梨県スポーツ振興条例案作成の一助に期待~

山梨学院大学スポーツ科学部と山梨県議会・山梨県スポーツ振興条例案作成委員会は7月29日、スポーツ科学部棟において「スポーツ振興条例案」作成に向けた意見交換会を行った。この日は、委員会のメンバー10人とスポーツ科学部の教員19人が出席。意見交換に先立ち、遠藤俊郎学部長/教授が“スポーツを再考する”をテーマに、スポーツの定義や諸外国の実情、文化・学問としてのスポーツなどについて講義を行い、議員は改めてスポーツの意義や可能性について理解を深めた。その後、競技水準の向上や生涯スポーツの振興、スポーツ施設等の整備・活用などそれぞれの専門分野の教員が議員からの質問に答える形で解説を行い、意見を交わした。委員会では、この日の講義内容や意見交換を参考に、条例案作成作業を進めていく。
 
山学大スポーツ科学部では、これまで地域連携事業として甲府市の健康ポイント事業への協力や富士河口湖町での富士山マラソンの運営補助、テレビスポーツ教室へのコンテンツ提供(教員・学生出演、施設開放)などのスポーツ行政やスポーツイベント、生涯スポーツ分野の産学官連携に積極的に取り組んでいる。一方、山梨県議会では「スポーツ振興条例案」の策定に向け、「山梨県スポーツ振興条例案作成委員会」を今年4月に設置し、山梨県におけるスポーツ振興の現状や課題、各種施策の実施状況の視察・分析などを行っている。今回、条例案作成に向け、委員会の議員が山学大スポーツ科学部を訪問し、競技スポーツや生涯スポーツの推進、山梨県の自然環境やスポーツ施設の整備・活用などについての意見交換会が企画された。委員会を代表し、大柴邦彦委員長は「当委員会は10人の委員で構成され、スポーツの振興により、県民の心身の健康増進や健康寿命の延伸、活力ある地域社会の実現を目指し、条例案の作成に向け、調査・研究を行っています。本日は、条例案作成の参考に様々な角度から意見交換をお願いしたいと思います」と挨拶し、意見交換会に期待を寄せた
 
意見交換に先立ち、スポーツ科学部・遠藤俊郎学部長/教授が「スポーツを再考する」をテーマに講義を行った。遠藤学部長はスポーツの定義について言語分野から解説を行い、「スポーツは競技力(勝敗)だけで評価されがちだが、科学的・学問的にもアプローチすることができ、文化としての側面も有している」と語り、文化・学問としてのスポーツについて分析。また、諸外国の実情に触れ「日本のスポーツは学校教育の体育から培われており、非常に限定的になっている。一方、海外では、一般の体育館にも観客席や空調設備が備わっており、競技者以外の“見る人”のことが考えられている。椅子にもナンバリングがされており、日本の地方の体育館では、有料試合の場合、大会前にスタッフが席札を貼り付けたりしているが、海外では“支える人”(大会の準備・運営をする人)のことも考えられている。日本でも体育の狭い範疇ではなく、スポーツという広い視野で捉える必要がある」と語り、議員は改めてスポーツの意義や可能性、スポーツ行政・施設運営について理解を深めた
 
■意見交換(発言要旨・主なものを抜粋)
遠藤学部長の講義に続き、意見交換が行われた。議員からの質問に呼応する形でそれぞれの専門分野の教員が解説や他県の先進事例などを紹介した。
<競技水準の向上(競技人口の拡大・普及)について>
・他県や海外では、これまでの学校教育を中心とした指導者の育成だけは限界があるため、市役所や役場などの社会体育の中でも育成し、小学校・中学校などに派遣し、子どもたちに普及させている。(寺本祐治副学部長)
・群馬県では地域ごとにアカデミーを創設して競技レベルの向上を図っている。国でも同様の取り組みを行い、競技水準を上げるには幼少期の頃から競技に専念できる環境づくりが必要。山梨県でもアカデミーを導入することで、子どもたちの将来の可能性が広がり、そこを目指す選手がいることで、県全体の競技水準の底上げにもつながる(高田裕司教授)
 
<スポーツ施設の整備・活用について>
・単一競技やスポーツに特化した施設だと利用が限定的になってしまうため、複合的な施設にする必要がある。海外では、ショッピングモールの上にアリーナがある例もあり、整備には様々な可能性がある。(遠藤学部長)
・これからの日本のスポーツ施設の在り方として、体育館という視点ではなく、エンターテインメントにも活用できるアリーナという視点も求められてくる。Bリーグでも体育館ではなく、アリーナの建設構想が進められている。(小山さなえ教授)
・ハードの整備に加え、管理・運営のソフト面でしっかりとした運用計画を立て、マネジメントできる人材・体制も必要になってくる。(神田忠彦教授)
 
<山梨県特有の自然環境を活用したスポーツの振興について>
・山梨県の多くの子どもたちは自然での遊び方を知らない。長野県では、学校登山など自然と親しむ機会が制度として整っており、子どもたちは豊富な原体験を持っている。学校教育に全てを求めることはできないため、教育以外で子どもたちが自然環境に触れる機会を支援する制度(費用負担・補助など)があれば、自然への愛着形成を促すことができる。(東山昌央准教授)
 
<生涯スポーツの振興について>
・ここ20年ほどで高齢者の体力は10歳くらい若返っている。高齢福祉の視点でのサポートや競技(種目)を限定してしまう考え方ではなく、自発的に取り組んでもらう考え方の方がうまくいく場合がある。(三本木温副学部長)
・高齢者は関節機能に衰えが出るが、筋肉発達については、若い人と差はなく、安全な方法で運動を行えば、強化することができる。年齢に応じた表彰制度などを作れば、意欲的に体力強化に取り組むことができる。(岸邦彦准教授)
 
<スポーツと地域活性化・観光について>
・国内ではサッカーのまち○○のように地域で盛んなスポーツに特化して活性化につなげる方法とマラソンやトライアスロンなど全国的なスポーツイベントを実施して活性化させる方法がある。(柴田紘希助教)
・スポーツツーリズムとしてスポーツ施設・環境の活用や特に合宿地として受け入れることで若者世代を呼び込むことができる。その場合、他県との差別化や魅力づくりにも注力する必要がある。(遠藤学部長・笠野英弘准教授)
 
<eスポーツの現状について>
・障がい者スポーツではほとんど身体を動かさない競技種目等もあり、それらはスポーツとして認められており、eスポーツも目の動きや指の動きだけしか身体的な動きはないが、スポーツの定義として捉えることは可能。ある大学では、eスポーツを部活として世界的競技者の育成を行っており、様々な場面で需要は広がっていくと思う。(笠野准教授)
 
<子どものスポーツの推進について>
・地域のスポーツクラブなど遊びの延長線上で身近に取り組める環境づくりが必要。また、子どもたちが憧れるようなプロスポーツチームを核とした総合スポーツクラブの創設することで活動するステージも用意され、各年代が一体化した取り組みができ、スポーツで地域も活性化すると思う。(太田涼准教授)
 
■スポーツ科学部棟内視察
意見交換後には、スポーツ科学部棟の視察が行われ、トレーニング実習室や低酸素ルーム、情報分析実習室、医科学系実習室、多目的実習室などの見学が行われた。それぞれの見学場所では、専門とする担当教員が説明を行い、議員からも質問が寄せられ、議員らは最新のスポーツ科学分野の情報機器やトレーニング機材について理解を深めていた。
 
 
※なお、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、この日の意見交換会は、議員や教員、報道関係者など出席者全員が会場入室前の検温やアルコール消毒、マスクの着用、会場内の換気のもと進められた。
文・カメラ(Y.Y)2020.7.29