●海なし県山梨から海を知る
~「海と日本プロジェクト」出前授業~
~山学小IB-PYPユニット学習に反映~
山梨学院小学校は9月10日、「海なし県山梨から海を知る!」と題し、日本財団「海と日本プロジェクト」の出前授業を行った。この出前授業は、「海と日本プロジェクトin山梨実行委員会」が企画。山学小では、6年生の児童が国際バカロレア(IB)のPYPユニットとして「水環境プロジェクト」に取り組み、SDGsの観点から海の生態系や海洋汚染などの調査を行っている。この日は、山梨県立博物館学芸課長や静岡県水産・海洋技術研究所伊豆分場長、気象予報士らが海に関連した自然環境、生物、海産物(加工・物流)などの授業を行い、児童らは「海の問題点」「海からの恩恵」の2つの視点で双方向から理解を深め、未来に海をつなぐために必要なことなどを考察した。
日本財団では、総合海洋政策本部(内閣府)と国土交通省と連携し、子どもたちを中心に海への関心や好奇心を喚起し、海の問題解決に向けたアクションの輪を広げることを目的に海に関する学びや体験の機会を提供する「海と日本プロジェクト」をオールジャパンで展開。山梨実行委員会では、海産物の消費量が全国的にも高く、山梨県が日本で第3位の「海好き県」でもあることに着目し、「海」から享受する恩恵、「山」・「森」・「川」と「海」との関わりの大切さを次の世代に受け継ぐ活動を産学官が連携して推進している。一方、山梨学院小では、IB認定校として、6学年のPYPユニットで国連が国際目標として推進する持続可能な開発目標(SDGs)の一つである「海の豊かさを守ろう」(持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する)に焦点をあて、様々な調査や探究を進めている。今年は、科学の時間に富士川から駿河湾の砂の中に含まれるマイクロプラスチックの量や種類の検出実験を行い、山梨県に住む人々の暮らしと身近な水環境汚染(海洋汚染)の実態を学習した。
この日の出前授業では、山梨県立博物館や信玄食品、静岡県水産・海洋技術研究所、日本ネットワークサービス気象情報室などの各界から専門家を招き、『海からの恩恵』をテーマに授業が行われた。
【出前授業テーマ】
①山梨と海について学ぼう:山梨県立博物館
山梨の風土(海尻線)や海(海産物)との関わりについて(物流・食文化)
②今と昔の煮貝:信玄食品
あわびの産地や製造(加工)方法、食べ方の今昔について
③海を学ぼう!(オンライン):静岡県水産・海洋技術研究所伊豆分場
煮貝に関連してあわび漁の方法、近年問題になっている磯焼けについて
④天気と海の関係を学ぼう:日本ネットワークサービス気象情報室
地球温暖化や自然災害、海水温の上昇(海の温暖化)、気象に関するクイズ
⑤各講師との対談・質問
⑥海のポスターを書こう:一般社団法人海洋連盟
児童らは、真剣な表情で各界の専門家の話に耳を傾け、講師から示される写真や図表などを食い入るように見つめ、それぞれノートに要点をメモしていた。質問コーナーでは、時間の許す限り講師に質問を行い、これまでの学習で感じた疑問の解決に努め、海から起因する自然環境の変化や自分たちでもできる水環境保護、生活改善などについて自身の生活を振り返り考察を行っていた。
出前授業が終わり、代表の男子児童は「普段から海の生き物に興味を持っていて6年生の卒業研究では、海の生物と生態系について研究しています。きょうは、普段接することのできない専門家の方々のお話を聞ける良い機会になりました。僕は天気と海の関係について興味を持ちました。様々な災害は海が影響していることを知ることができたので良かったです。きょう学んだことをこれからの卒業研究に活かしていきたいです」と語り、女子児童は「私たちは6年生になってから海の現状について深く考えてきました。マイクロプラスチックの検出実験などから人間の生活が海の生態系などに大きな影響を及ぼすことが分かりました。きょうは、海からの恵みや川を通してのつながりなどを考えることができました。今後も山梨には海がないから関係ないではなく、しっかり海のことも大切に考えていきたいと思います」と感想を語った。
今後、今回の出前授業の関連として実際に煮貝の製造体験会なども行われ、山梨と海との関係性(海からの恩恵)についてさらに探究を深め、PYPユニットへの反映・還元も行っていく。
文・カメラ(Y.Y)2020.9.10