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●やまなし学研究2020後期コース『山梨の農業と食』
~対面とオンラインで受講ハイブリッド型で開講~
~初回『山梨の風土とここから生まれる農産物』~

山梨学院生涯学習センターは9月16日、やまなし学研究2020後期コース『山梨の農業と食』をハイブリッド型で開講した。永井健夫センター長は「後期コースは今日の山梨における農業や食をめぐる問題・課題について論じていただく。まだ新型コロナウイルスが完全な収束が見込めない状況で20名に限り対面で他の方はオンラインで受講していただくハイブリッド型で開催することとなった」と挨拶。第1回は合同会社アグリB&Cサポート代表社員 伴野正明氏が『山梨の風土とここから生まれる農産物』をテーマに講義を行った。小笠原税理士事務所税理士の小笠原光規さん(36歳)は「『山梨の農業と食』を通して山梨をより理解したいと受講した。1回目を受講して、この狭い山梨で思いのほか産地や農作物がバリエーションに富むことに驚いた。オンライン受講もあったが臨場感あふれる対面での受講に決めた」と述べた。生涯学習センター主幹は「感染症予防のため、体温検査、消毒、換気、身体的距離の確保など徹底して開催した」と述べた。後期コースは7回であと『農業振興の基本要素』『農業経営の継続ー家族と農業ー』『食の安全と作物生産』『山梨ならではの農産物 1 ー果物食味ー、2 ーぶどうー、3 ー意外と知らない特産物ー』が行われる。
 
【感染予防対策について】
▶︎担当の金丸茂夫主幹は「生涯学習センター講義室でコロナウイルス感染症予防を行うための三密(密閉・密集・密接)を避けるために、スタッフとシミュレーションを行ったところ定員は20名が限度ということになった」と振り返る。「そのため会場に入れない方もいたが、前期コースの実績もあったためオンラインでも受講できるようにした」と明かす。「本日の開催にあたって、感染症予防のため、体温検査、アルコール消毒、複数台の扇風機での換気、座席指定(記帳)など徹底して開催した」と述べた。

【後期コース開講挨拶】
▶︎主催者の永井健夫センター長は「本日より『山梨の農業と食』をテーマとする後期コースを始めさせていただく。前期コースは『山梨の食の歴史』というテーマで、これも『食文化』や『農業』に関する内容だった。ただ、前期が歴史的・考古学的な観点からの話だったのに対し、後期コースは現代に視点が移り、今日の山梨における農業や食をめぐる問題・課題について、前期コースで全ての回でコーディネーター役を務めていただいた伴野正明さんに論じていただく。前期は新型コロナウイルスの影響でオンラインで実施したが、後期は従来どおりの対面でできればと願っていたが、完全な収束が見込めない状況で、この講義室では20名に限り対面で参加していただき、他の方はオンラインで受講していただくという、ハイブリッド型で開催することとなった」と挨拶。

【第1回『山梨の風土とここから生まれる農産物』】
▶︎進行役の今井久経営学部教授から講師の合同会社アグリB&Cサポート代表社員 伴野正明氏が紹介された。
▶︎伴野正明講師は後期コースは『山梨の農業と食』をテーマに7回シリーズで行います。38年間山梨県庁で農業技術職に携わり、その中で農業技術指導を17年間させていただきました。仕事で関わった地域は北巨摩・南部・長坂など様々な所で、そこでいろいろな勉強をさせていただきました。そして、農業大学校で農業教育に合計12年携わり、その後に市場調査などの仕事をしてきました。今回は農業普及の仕事で色々な方々に教えていただいたこと、そして現場で認知したことなどのお話をさせていただく。
▶︎今回のキーワードは、『山梨』『農業』『食』『風土』『農産物』の5つ。よくよく考えると山梨てなんだろうと広辞苑第6版で調べてみたら、中部地方南東部、内陸の県。甲斐国を管轄。県庁所在地は甲府市。面積4465km²。人口88万5千。全13市だということ。農業とはなんだろう、地力を利用して有用な植物を栽培耕作し、また、有用な動物を飼養する有機的生産業。広義では農産加工や林業を含む。食とはなんだろう、くうこと。たべること。たべもの。食事の回数や分量の数える語。風土とはなんだろう、その土地固有の気候・地味など、自然条件。土地柄。特に住民の気質 や文化に影響を及ぼす環境をいう。農産物てなんだろう、農業による生産物。穀物・野菜・果物・鶏卵・家畜の類であることが分かった。
▶︎山梨県で栽培されている穀類・豆類は、『食用作物』で米(水稲)の「主食用」はコシヒカリ、あさひの夢、ヒノヒカリ、農林48号、ミルキークイーン。「加工用」はあさひの夢、朝紫(紫黒米)。「酒造好適米」は山田錦、夢山水、ひとごこち、吟のさと、玉栄。麦は小麦がきぬの波、ゆめかおり。大麦がファイバースノウ。大豆はあやこがね、ナカセンナリ、コスズ、あけぼの大豆。そばは在来種、信州1号。雑穀はアワ、キビ、ヒエ、タカキビ、キノア、エゴマなど。『工芸作物(特用作物)』は茶がやぶきたが主流、普通煎茶となっている。
▶︎山梨県で栽培されている果樹は次の通り。果樹を分類すると、常緑果樹と落葉果樹そして熱帯果樹。『常緑果樹』はユズ、レモンなど。『落葉果樹』は温帯系がブドウ、モモ、スモモ、カキ、キウイフルーツ、日本ナシ、クリ、ウメ(甲州小梅)ブルーベリー、ポポー。寒冷地系がリンゴ、サクランボ(オウトウ)。『熱帯果樹』はマンゴー、アボカドなど。環境条件の良さは、扇状地(水はけが良い)、降水量が少ない、気温の年較差・日較差が大きい、風が弱い、東京(大消費地)に近い、冬の日照時間が多い(ハウス栽培可能)、冬の寒さと乾燥(枯露柿加工)。『ブドウ』は甲州、デラウェア、マスカットベリーA。甲斐路、ロザリオビアンコは植原葡萄研究所(甲府市)が開発。『モモ』は枝変わり(芽状変異)の発見、県内各地域から。山梨県果樹試験場の育種。『スモモ』は貴陽・皇寿は南アルプス市。『かき』は甲州百匁となっている。
▶︎山梨県の野菜指定産地は、『[品種]トマト』、[作型]夏秋トマト、[指定産地目名]八ヶ岳、[JA及び地域]JA梨北(北杜市、韮崎市)。[作型]冬春トマト、[指定産地目名]釜無川、[JA及び地域]JA南アルプス市(南アルプス市)、JA山梨みらい、中央市)。『[品種]キュウリ』、[作型]夏秋きゅうり、[指定産地目名]釜無川、JA南アルプス市(南アルプス市)。[作型]夏秋きゅうり、[指定産地目名]東八代、JAふえふき(笛吹市、甲府市旧中道町)。[作型]夏秋きゅうり、[指定産地目名]韮崎、JA梨北(北杜市、韮崎市、甲斐市)。[作型]冬春きゅうり、[指定産地目名]釜無川、[JA及び地域]JA南アルプス市(南アルプス市)、JA山梨みらい、中央市)。『[品種]ナス』、[作型]夏秋なす、[指定産地目名]甲府市・笛南、[JA及び地域]JA甲府市、JAふえふき、JA山梨みらい(甲府市、笛吹市、中央市、昭和町、市川三郷町)。『[品種]キャベツ』、[作型 夏秋キャベツ、[指定産地目名]富士北麓、[JA及び地域]JA鳴沢村、JAクレイン(鳴沢村、富士吉田市)。過去の指定されていた産地は塩山夏秋トマト、山梨夏秋きゅうり、八ヶ岳春レタス、韮崎春レタス、北富士夏ダイコン、塩山夏秋ナスがあげられる。
▶︎山梨県で栽培されている野菜は、『果菜類』ナス、トマト、キュウリ、スイートコーン、イチゴ(施設園芸が主)、カボチャ、ユウガオ、トウガン。〈在来〉茂倉ウリ(早川町茂倉)。
「作型」ナス(夏秋・抑制[秋])、トマト(促成・半促成・簡易雨よけ・夏秋・抑制)、キュウリ(促成・半促成・夏秋・抑制)、スイートコーン(ハウス・ミニハウス・二重トンネル・一重トンネルと湯たんぽ、一重トンネル・半露地・露地・高冷地抑制)、イチゴ(促成・短期株冷・半促成・長期株冷抑制・露地)が栽培されている。
▶︎山梨県で栽培されている野菜は「葉茎菜類」レタス、キャベツ、つけ菜、青菜、ホウレンソウ、コマツナ、ブロッコリー、ハクサイ、ホウレンソウなどで施設による周年栽培もある。[地域在来]鳴沢菜、大野菜、長禅寺菜、水かけ菜。「根菜類」ナガイモ、ヤマトイモ、ゴボウ、ニンジン、ダイコン、サトイモ、ジャガイモ、サツマイモ(あけの金時)、ショウガ、ヤツガシラ。[地域在来]おちあいいも、つやいも、富士種、その他。
。「その他」タマネギ、ニンニク、山菜(タラの芽、ワラビ)、マコモ。[地域在来]エダマメ(あけぼの大豆)があげられる。
▶︎山梨ならではの農産物、①環境は地域の自然環境を生かして、品質の高いものが栽培できる農作物。②品種地域で自家採種を続けてきた農作物や地域で品種登録した種苗など、地域から生まれたオリジナル品種品種群。③栽培技術地域の人たちの研究開発・技術交換etcによる独自技術。④地域の生活・文化との関連などで生まれた。
▶︎山梨県の環境条件で地理的条件は、「地理的条件」日本列島のほぼ中心。東京に近い。山地が多く、傾斜地が多い水はけが良い。低地から山地まで高低差が大きい。扇状地で水はけが良い土地。「気象条件」山地の多雨により、豊かな水源。農耕地域の降水量が少ない。日照時間が長い。冬場の晴天率が高い。気温の日較差、年較差が大きい。
▶︎山梨県の農耕土壌は森林、山地、丘陵地、台地、扇状地。沖積地低地。河川。土は黒ボク土。褐色深林土。灰色低地土。礫(レキ)が含まれる。
▶︎食糧需給バランスの変化への対応につていは、食用作物から園芸作物へのシフト。農業基本法S36(1961)年。農工の所得・生活水準の格差の是正。生産の選択的拡大=畜産・園芸の振興。構造改善。流通・加工・貿易対策。果樹農業振興特別措置法S36(1961)年国の基本方針を踏まえ、都道府県は果樹農業の振興に関する方針や目標等を定めた「果樹農業振興計画」を策定する。米の過剰対策。生産調整S46(1971年)から米作技術の進歩と米の増産政府米の買入制限、米価の据え置き、過剰米処理。米の生産調整・稲作転換対策。稲作転換パイロット事S44。稲作転換対策S46。水田総合利用対策S51。水田利用再編対策S53を行った。
▶︎生産基盤・環境の整備は、農業構造改善事業。「農業構造改善促進対策(S37~)(土地基盤整備、経営近代化施設整備)。「第2次農業構造改善事業(S44~)」(土地基盤整備、経営近代化施設整備)。「農業農村構造改善事業(S53~)新農構」(土地基盤整備、経営近代化施設整備、地域環境整備)。「農業農村活性化構造改善事業(H2~)」による。
▶︎産地の担い手づくり、現場からの技術開発は「農業改良普及事業S23~」普及事業の3つの柱(農業改良、生活改善、農村青少年の育成)。農村の民主化として底に流れる心、考える農民を育てる。(小作から自作農へ自らが経営者)。生産現場での課題解決、新品種の検討、技術普及のための展示、検討会。(果樹園芸会、果実連、JA、生産者と連携して推進)。農業改良普及所 → 技術普及センターと地域普及センター(改良普及員 → 普及指導員)。(指導 → 支援〈コーディネータ機能、コンサルタント機能の充実〉)。個々の農業者だけではできない生産技術の向上、経営の発展などの支援(農業は経験値の積み重ね。1年に1回の経験値をグレードアップのために)などを行った。
▶︎まとめとして、山梨の風土から生まれる農産物の要因として、①「山梨県の環境・立地条件」。②「品種を開発する力」果樹試験場・種苗業者、現場から新しいものを見つけ出す観察力今あるものを次世代へつなぐココロ(在来種)。③「栽培技術等」基盤整備事業へのいち早い取組、地域の人たちの研究開発・技術交換etcによる独自技術の開発、生産現場での観察力の鋭さ。④「地域の生活・文化との関連など」住んでいる人たちの価値観、地域のお祭りや食。東京からの情報収集力、先を見る目、ほかの人たちとの競争。②から④は人の要因では?。山梨の農産物は山梨の環境とここに住む人によって作られる。今日は『山梨の風土とここから生まれる農産物』をテーマに講義を行いましたと結んだ。
▶︎質疑応答が行われ会場受講者とオンライン受講者から多くの質問が寄せられ、伴野正明講師が一問一問丁寧に応答した。
▶︎次回からは9月30日『農業振興の基本要素』、10月14日『農業経営の継続ー家族と農業ー』、10月28日『食の安全と作物生産』、11月11日『山梨ならではの農産物 1 ー果物食味ー』、11月25日『山梨ならではの農産物 2 ーぶどうー』、12月9日『山梨ならではの農産物 3 ー意外と知らない特産物ー』が行われる。

【受講後インタビュー】
▶︎小笠原税理士事務所税理士の小笠原光規さん(36歳)は「『山梨の農業と食』を通して山梨をより理解したいと受講した」と頷き、「お客様の中にも農業経営者の方がいらっしゃるので、お客様の経営環境を踏まえてこれまで以上のサポートができるようになりたい。また、山梨の新たな魅力を見つけ出したい」と意欲に燃える。「実家が峡西地域(南アルプス市)の兼業農家で果樹栽培をしているので、果樹のことや地域の状況は見聞きしていたが、1回目を受講してこの狭い山梨で思いのほか産地や農作物がバリエーションに富むことに驚いた」と感心。「オンライン受講もあったが臨場感あふれる対面での受講に決めた。あと、6回で山梨の農業振興、農業経営、食の安全と作物生産、山梨ならではの農産物を学べるので、仕事が入らない限りは全ての回に出席したい」と述べた。
 
文(H.K) 、カメラ(藤原稔) 2020.9.17