山梨学院パブリシティセンター

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●甲斐の古道を歩く「甲州街道」
~歴史遺産を巡るフィールドワーク~
~秋風薫る犬目宿・野田尻宿周辺を散策~

山梨学院生涯学習センターは10月25日、「甲州街道」犬目宿・野田尻宿の文化財・歴史遺産などを巡るフィールドワーク体験プログラムを実施した。これまで“甲斐の古道”6古道のフィールドワークを行い、今回は第7弾として「甲州街道」編が企画された。甲州街道は、江戸幕府によって整備された五街道の一つで、江戸防衛のための戦略道路であり、県内には25の宿場が設けられた。この日は、上野原市の犬目宿を起点に野田尻宿まで約8kmを散策。新型コロナウイルス感染予防のため、参加定員を15人に限定して実施された。参加者は、講師の説明に熱心に耳を傾け、少人数開催のメリットを活かし、疑問点を積極的に質問するなど意欲的に学習。紅葉色づき秋風香る甲州街道を自分の足で歩き、地域の歴史の再発見を行った。
 
江戸時代の地誌『甲斐国志』には、「本州九筋ヨリ他州へ通ズル路九條あり・・・(中略)・・・皆酒折ヨリ路首を發起ス」と記述があり、山梨学院の所在する甲府市酒折地区が甲斐の古道の起点であったと記されている。甲斐の古道は九筋あり、駿州往還・中道往還・若彦路・鎌倉街道・青梅街道・秩父往還・穂坂路・棒道・逸見路の9路からなっている。学校法人山梨学院は創立70周年記念事業として「甲斐の古道プロジェクト委員会」を立ち上げ、山梨学院大学考古学研究会の協力も得ながら、古道の現況調査に取り組んだ。昨年5月には青梅街道・秩父往還の起点、甲州街道の分岐点として今にその姿を残している山崎三叉路の一画に「甲斐の古道歴史公園」を整備。これまで、青梅街道(山梨市・甲州市)、鎌倉街道(富士富士河口湖町・富士吉田市)、若彦路(富士河口湖町)、駿州往還(身延町)、棒道(北杜市)、秩父往還(山梨市)でフィールドワークを実施。今回の第7弾では、江戸時代の重要や戦略道路としてその役目を果たし、現在も文化財や建造物が数多く残る甲州街道の犬目宿・野田尻宿を舞台に開催された。
 
講師は地元の上野原市郷土研究会・長谷川孟会長と十菱駿武山梨学院大客員教授、保阪康夫山梨学院大客員教授が務めた。「甲州街道(甲州道中)」は、江戸幕府によって整備された五街道の一つで、江戸日本橋から中山道下諏訪宿までを結んでいる。この日は、上野原市の犬目宿に参加者が集合。犬目宿は現在の上野原市の西部に位置し、甲州街道20番目の宿場町。現在でも多くの文化財が残り、宿場近くの犬目峠からの富士山は葛飾北斎の富嶽三十六景や歌川広重の不二三十六景にも描かれており、古より風光明媚な場所としても知られている。参加者は以下の行程で犬目宿から19番目の宿場の野田尻宿までの甲州街道を散策し、文化財や歴史遺産、寺院などを見学した。
 
【行程】犬目宿→犬目峠・石畳→恋塚一里塚(県史跡)→宝勝寺(甲斐八十八ヶ所霊場六番札所)→奈良平助生家跡(天保7年甲州一揆の頭取)→座頭ころがし→荻野一里塚跡→西光寺(824年創建、甲斐八十八ヶ所霊場七番札所)→野田尻宿(伝統的建造物群)
 
各見学場所や道中では、講師の長谷川会長、十菱客員教授、保阪客員教授が歴史学や民俗学、地域の残る口承などを踏まえながらそれぞれの文化財・歴史遺産などの説明を行った。また、参加者は山中に現存している旧街道を実際に自分の足で歩き、街道から見える景色や起伏の激しさなど当時の人々の暮らしを慮った。長谷川会長は「甲州道中は江戸防御のための戦略道路でもあり、犬目や野田尻のあたりでは、容易に江戸に侵入させないよう意図的に峠や尾根を通るなど遠回りさせています。武田家臣団の一人の大久保長安が整備に関わっており、武田家時代からこの辺りの地形には熟知しており、十分に戦略的に計画された道路と言えます。犬目峠は、現在では山深く、容易に踏み入れることができず、幻の峠になっています」と解説を加えた。この日は、秋晴れで心地よい気候で葛飾北斎や歌川広重に描かれた犬目からの富士山もはっきりと見え、参加者は約8kmのコースを約4時間半かけて歩き、積極的に各講師に質問するなど意欲的にフィールドワークを行った。
 
企画した十菱駿武客員教授は「これまでフィールドワークを行った九筋は戦国時代までに作られた道で、今回の甲州街道は江戸時代に整備された道ですが、甲斐の古道にも含めることができます。この辺りは甲府から東側の区間(表街道)で一里塚や旅籠だった民家など一番建造物が多く残っており、当時を偲ばせる景観が良く残っている地域ですので、今回は犬目宿から野田尻宿までを選びました。この先、鶴川宿・上野原宿と続き、そちらも景観が良い所が残っていますので配布した資料などを参考にして自分のペースで街道巡りをしてみても良いかと思います。少人数ということもあり、参加者は積極的に質問などをしていただき、充実したフィールドワークになりました。全員が無事にゴールすることができましたので、成功だと言えます」と講評した。韮崎市から参加した70代男性は「昨年の棒道に参加し、講師の先生が分かりやすく説明してくださり、大変勉強になったので、今回も参加しました。現存している昔の街道や道の起点など一人では分かりませんが、説明してもらいながら散策することができて、大変良い機会となりました」と感想を寄せた。ご夫婦で山梨市から参加した60代女性は「前回の秩父往還に参加し、また参加したいと思い、応募しました。旧街道や山中など普段は歩けないところを先生のお話を聞きながら歩くことがとても気に入りました。歩くことが好きで、コロナ禍で外出自粛などもあり、きょうはリフレッシュできてとても良かったです」と話し、60代男性は「普段目にすることのないお寺の中や宝物などを見せていただき、とても勉強になり、楽しかったです。個人では普段なかなかできない経験ですので、次回も参加してみたいです」と笑顔で語った。
 
次回の甲斐の古道フィールドワークは同じく甲州街道編として、2月に北杜市白州町の台ケ原宿で開催を予定している。
文・カメラ(Y.Y)2020.10.25