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●昭和町議会で山学大生が政策提案発表会
~若者目線で地域の課題解決策を提案~
~危機状況下での町政・議会の在り方を検証~

山梨学院大学学生による昭和町議会への「政策提案発表会」が12月18日、昭和町議会議場で行われた。2008年に昭和町議会が先進的な議会を目指す地方議会改革の一環として山梨学院大学ローカル・ガバナンス研究センターと全国初となる連携協定を締結。その後は毎年、地域や議会が抱える課題や問題点を学生と議員とのワークショップや住民も参加した議会活動報告会などにより連携を深め、課題解決に努めてきた。今回の「政策提案発表会」には法学部政治行政学科・江藤俊昭ゼミ、日高昭夫ゼミ、外川伸一ゼミが参加。昭和町議員を前に5グループに分かれ政策提案を発表した。提案内容は、「危機状況下に対応したコミュニティ・スクールの運営」「危機状況における議員・議会の動向」「若者目線で議会広報の在り方を考える」「ウィズコロナ時代における防災・危機管理」「ウィズコロナ時代における『新しい生活様式』の支援」の5案。地域や議会の抱える喫緊の課題を若い感性で切り込んだ提案がなされ、発表後には議員からコメントや質疑応答が行われた。議員からは、コロナ禍の中、制限を抱えて行ってきた学生たちの調査・研究、考察に対し、総じて高評価する意見が述べられ、これからの町政に反映したいとした。
 
■開会・主催者挨拶
今年で3回目となる昭和町議会議場で行われた「政策提案発表会」はコロナ禍の密を避けるために前半(江藤ゼミ、日高ゼミ)・後半(外川ゼミ)の2回に分けて行われた。前半に発表を行う江藤ゼミ、日高ゼミの学生たちは、午後1時30分の開会に向け午後1時前から議会事務局の職員と機材テストなど入念な準備を進め開会に備えた。昭和町からは議員13人が参加し、学生たちはそれぞれに緊張した面持ちで臨んだ。開会式では主催者の昭和町議会・石原高明議長が「コロナ禍の中、皆さんは(対面)授業がしっかりできないなど、色々苦労したと思います。その中で昭和町のためという思いで政策提言をしていただくわけですが、ローカル・ガバナンス研究センターとの関わりの中で、こことは別に地域交流センターでも学生の皆さん、昭和町の関係各位は色々な団体の方と協議・議論を重ねていただいて提案をいただいてきました。今回私たち議会にとって関心のあるBCP(事業継続計画)は、町ではすでに作成してありますが、議会ではまだ作成しておりませんので皆さんに議会を叱咤激励する意味でも提言をお願いします」と挨拶。また、山学大ローカル・カバナンス研究センター長の江藤俊昭教授は「連携を結んでから昭和町との関係は研修を重ね、一方的な研修から自分たちで勉強しながら提言を出していけるようなアクティブな動きをするなど変化してきているなと感じています。学生についても議場で行うということを重視しています。日頃はこのような議場に入ることはなかなかないので実践的な勉強ができると思っています。日高先生が提唱するアクティブ授業の原型の一つがここにあるなと思っています。今回はコロナ禍にあって学生たちは十分な調査・研究ができず、私の指導も限られていて不十分なところはあるかもしれませんが若い学生的感覚を持って提言をしていきたいと思っています。それが少しでも昭和町の住民、議員の方々の役に立ってもらえたらと思います」と挨拶した。
 
■5グループによる政策提案(各25分)
◆第1提案「危機状況下に対応したコミュニティ・スクールの運営」江藤ゼミA5人
前半の議事進行を進める議長役を江藤ゼミの村松るりこさん(3年)が務め、最初の発表グループを紹介。Aグループの発表ではまず、現在の昭和町の地域と学校が一体となり特色ある学校づくりを推進するコミュニティ・スクール(CS)の意義・方向性を説明。現在のコロナ禍でのCSの仕組みが正常に機能していないと分析。分析結果を基に改善点を洗い出し考察した。また実際にオンラインを活用している三鷹市や西宮市の事例を参考に研究。感染症に備え①ICTを活用した地域住民と学校間の情報共有(オンラインで学校運営協議会を開催)、②オンデマンド型CS授業の開講(ICT機器を導入したオンデマンド型CS授業)が可能と考えた。CSの運営を可能にするためには関係当事者だけではなく地域住民の存在が必要不可欠との結論を導き出し提案発表した。終了後に議員のコメントや質疑応答が行われた。(以下同じ)発表後Aグループの一人中澤孝輔さん(3年)は「初めて議員さんの前での発表で緊張しましたが、いい経験ができました。コロナ禍で調べる段階でインターネットだけの情報しか得られなくて、限られた状況で資料を探すのに苦労しました。これからもどこかで提言など発表する機会があると思うのでこの経験を積極的に活かしていきたいです」と語った。
 
◆第2提案「危機状況における議員・議会の動向」江藤ゼミB6人
昭和町は2018年2月に自然災害時のBCP(事業継続計画)を作成、今年4月には新しくコロナウイルス感染症対応のBCPを作成した。一方、BCPを持たない議会では災害時議員行動マニュアルしかないため、議会・議員の役割を明確にしたBCPを今回Bグループが提案した。提案に当たっては、どのような危機状況下にあっても議会としての機能を止めてはいけないという議会運営の重要性から独自の調査、資料収集、他県での実例を参考にしながら提言を構築していった。災害時における議員の役割分担、感染症にも対応できるもの、策定により期待できる効果などを研究することで提言を導き出した。学生たちは①議会も住民代表として活動するための昭和町議会BCPの作成の必要性、②非常事態時、通常時でのオンライン会議の有効的な活用(規制・条例の作成)を議員たちに熱く語った。発表者の市岡はるかさん(3年)は調査や資料収集の難しさがあった中、仲間との協力でできたことを喜び「後期授業が始まってすぐから準備を始め、情報不足で苦労しましたが、実例でも上げた取手市の議員さんにZoomで意見を聞くことができたので良かった。初めて学んでみて解ったことが多かったので、コロナ禍の状況下で自分たちができることや議会や町政の動きなど実際の現場を理解することができたので、この経験を就職活動にも繋げられたらいいなと思います」と実践で学ぶ重要性を語った。
 
◆第3提案「若者目線で議会広報の在り方を考える」 日高ゼミ12人
昭和町の議会広報誌「議会だより」は、2011年度全国町村議会広報コンクールで最優秀賞に輝き、2014年度には全国町村議会議長会より特別表彰を受けたことから全国でも注目された。しかし時代の変化とともに多種多様なメディアツールの出現により広報誌に対する魅力が薄れ、日高ゼミでは、「議会だより」の見直しや議会広報のあり方を再構築すべく、いかに目に付く広報誌で議会の情報を発信できるかを考えた。まず、広報誌制作の活動内容と周知方法から課題を拾い上げ、関心が薄い若者を意識した情報発信を主眼に、若者の特徴を分析。YouTuberの活用、QRコード・SNS、ポスター等を活用し、いくつかの市町村事例などを参考に議会の視覚化を図ることを提案した。発表者の齋藤黎人さん(2年)は発表の内容について「見てつまらないというスライドは作りたくないと考え、イラストを多めに作ったことで分かりやすくて質問も多かったのが良かったです。一方で、質問に対して適切な答えの勉強が必要だったと感じました。今までは広報活動に対して関心が強くなかったですが、今回の政策提案を通して大人だけではなくて若者の自分たちがもっと行政活動に対して関心を持って学ばないといけないと感じました」と自省を込めて語った。
 
3グループの発表が終わり換気、消毒のための休憩を挟み後半の発表会が行われた。後半は外川ゼミが発表を行い、議長は外川ゼミの吉田廉さん(3年)が務めた。
 
◆第4提案「ウィズコロナ時代における防災・危機管理」外川ゼミA11人
初めに、現在昭和町において防災に対しての危機管理についてどのような対応を準備しているかを検証。それに加えて新型コロナウイルスに対応する危機管理政策を実施する必要性を説明。マニュアルがない状況で引き起こる問題として避難現場での混乱を問題点に挙げ、その対策として避難所以外の分散避難でリスクを回避することを提案した。避難場所や方法、施設の確保、行政上の手続きなどさまざまな角度から検証を加えた。グループリーダーの長崎光希さん(3年)は「コロナウイルスに対して何も対策ができてない状況で私たちも何かしらの対策をしなければ感染が広がってしまうと思ったので自分たちができることは何かないかと考えてきました」と感染症拡大を想定し危機感を持って案を作り上げた。現役の議員を前に提案発表する取り組みについては「普段経験できない場所で私たちの意見を述べることができたということは私たちにとって大きな成果だと思います」と話した。
 
◆第5提案「ウィズコロナ時代に『新しい生活様式』の支援策」外川ゼミB9人
続いて議長を秋山敏輝さん(3年)に代え、進行した。Bグループは、“支援”をキーワードに教育・企業・飲食と3つの分野で提案した。コロナ禍における教育面では、教育現場での遠隔授業の推進、生徒の心のケアや教員の感染症対応による業務負担を民間委託することで効率化を図るなど生徒と教員が安心して学校生活を送れるよう支援する。企業面については昭和町の2つの工業団地を中心とする企業など、感染症を広げないよう自治体による現状把握や費用支援。飲食面では町に点在する多くの飲食店を利用しやすくするための感染症対策やテイクアウト備品のサポート、テイクアウトイベントなどによる活性化支援策を提案した。提案には他の自治体などの先進事例など時間を掛けて調査・研究した資料・事例が盛り込まれた。Bグループの吉田廉さん(3年)は「例年ですと昭和町に対する政策提言は昭和町をもっと良くするという形だったのですが、今のコロナ禍だと経済支援や暮らしを日常に戻すというところで難しい部分はありました。しかし、私たち自身がこうなったら過ごしやすい日常になるだろうということを幅広い行政の業務の中でどうやって実行していくかを勉強できたことは良い経験になりました。今年の5・6月頃から昭和町について調べ始めましたが、僕たち学生側の新しい視点を議員さんが少しでも汲み取って、昭和町の運営がより良くなったらうれしく思います」と発表会の意義を話した。
 
5つの提案発表を通して議員らは、学生たちの若い柔軟な考えと入念に練り上げられた提言に真剣に聞き入りメモを取っていた。それぞれの発表後には、実直なコメントや質疑応答が続き予定時間を超える充実な発表会となった。議員の一人は「しっかりと研究された具体的な提言をありがとうございました。大きな市ですと職員数も多くて専門部署の職員を配置するなど対策がとれますが昭和町の人口規模ですと十分な職員配置がままなりません。今回の皆さんの提言はとても参考になりますし、今後の取り組みに活かしていきたいと思います」と学生の提言に高い評価を送った。
 
■閉会・講評
閉会の挨拶に立った金丸富一議会副議長は「令和2年度の連携による政策提案発表会はコロナ禍の中でありますが、無事開催することができました。政策提案として発表していただきましたがそれぞれが素晴らしい提案でありました。これまでも提案に対し昭和町議会の議員においては各委員会及び議員の一般質問の中にも提案内容を取り入れて発表・発言することが数多くあったと認識しております。昭和町議会議員としても若い考えと魅力のある政策提案をいただきましたので町民のための議会活動を進めるとともに議会改革においても取り組んでいきたいと思っています」と講評した。国の地方創生に関わる諸政策にも大学との連携が欠かせないことも求められ、ますます大学が地域の課題解決に果たす役割が重要視されている。
文(K.F) カメラ(藤原稔)2020.12.19