●第99回全国高校サッカー選手権 準決勝
~山梨学院高が帝京長岡高をPK戦で制し決勝へ~
~王座奪還まであと1勝、決勝は青森山田高と対戦~
第99回全国高校サッカー選手権大会準決勝が1月9日に行われ、11大会ぶりの王座奪還を目指す山梨学院高は埼玉スタジアム2002で新潟県代表の帝京長岡高と対戦した。準決勝から完全無観客になったことで、山梨では、サッカー部員や代表生徒によるパブリックビューイング(PV)が行われた。試合は、開始21秒にMF石川隼大のゴールで山学が先制。今大会最速での鮮やかな先制で、PV会場は興奮に包まれた。その後は、激しく攻守が入れ替わり、序盤は山学が試合を優位に進めたものの、30分過ぎからは帝京長岡が攻勢を強める。1対0で折り返した後半5分、山学はDF一瀬大寿のヘッドで2点目を追加。山学は2点をリードしたものの、その後は帝京長岡のパスワークが冴え、主導権を握られる。山学は14分、33分に失点し、試合は2対2の同点となり、勝負の行方はPK戦に。先攻の山学はGK熊倉匠の好セーブで流れを作る。2対1で迎えた5人目のMF谷口航大がゴール右隅に決め、3対1で試合終了。PV会場も歓喜に包まれ、11大会ぶりの決勝進出を喜んだ。
山梨学院は、10大会ぶりに勝ち進んだ準々決勝で、Jリーグ内定選手4人を擁する昌平高と対戦。山学は、立ち上がりからハードワークとハイプレッシャーで相手の猛攻を抑え、前半序盤の1点を守り切り、11大会ぶりの準決勝進出を決めた。対する帝京長岡(新潟県代表)は、プリンスリーグ北信越に所属し、3年連続8回目の選手権出場。準々決勝では選手権優勝5回・全国総体優勝9回を誇る市立船橋高(千葉県代表)と対戦し、前半2点を先制し、後半ATに得点を許したものの2対1で勝利し、2大会連続の4強入りを果たした。大会はこれまで新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に一般観戦は認めず、部員や保護者などに限って観戦を認めていたが、緊急事態宣言が発令されることを受け、完全無観客での実施を決定。山学では、準決勝は登録外のサッカー部員と生徒会、応援団、チアリーダー部、吹奏楽部の代表生徒によるPVを実施し、約150人が山梨からエールを送った。決勝の舞台まであと1勝、山学イレブンは、山梨で応援する仲間の想いも背負い、試合に臨んだ。
第99回全国高校サッカー選手権大会 準決勝 ≪山梨学院高VS帝京長岡高≫ 2021.1.9 会場:埼玉スタジアム2002 |
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〇 山梨学院高校2 | 前半 1-0 後半 1-2 PK 3−1 |
2 帝京長岡高校 ● |
山学得点者:石川隼大、一瀬大寿 |
■山学が開始21秒で先制に成功
この試合のオープニングシュートは山学のFW野田武瑠(3年 インテリオールFC)のロングシュート。FW野田のシュートはポストに弾かれたものの、そのこぼれ球をFW久保壮輝(3年 FC.GIUSTI世田谷)が再びシュート。今度は相手GKに弾かれたが、こぼれ球をMF石川隼大(2年 GRANDE.FC)が押し込み先制。開始21秒での得点は今大会最速記録。開始早々での先制で、山梨のPV会場は興奮に包まれた。その後は、攻守が激しく入れ替わる試合展開で一進一退の攻防。山学はハイプレッシャーやセカンドボールへの素早い対応でボールを奪取し、守備から攻撃を組み立てる。15分には、MF廣澤灯喜(3年 湘南ベルマーレU-15小田原)のボレー、28分にはMF新井爽太(3年 FC深谷)がシュートを打つが、決定機に欠き追加点ならず。30分過ぎからは帝京長岡がテンポよくショートレンジでボールをつなぎ、攻勢を強め、山学の守備の時間が増える。45分には、山学がロングカウンターからFW久保がシュートを打つが、ボールはゴール左へ。山学守備陣は、度々帝京長岡に攻め込まれたが、今大会ここまで1失点の堅守を披露し、得点を与えず1対0で前半を折り返す。
■後半は帝京長岡ペースで試合は進む
後半5分、MF新井のロングスローにファーサイドからニアサイドに走りこんだDF一瀬大寿(3年 VF甲府U-15)が頭で合わせ2点目を追加。山学が2点をリードしたものの、10分過ぎからは、帝京長岡のパスワークが冴え、帝京長岡ペースで試合は進む。14分、帝京長岡は中盤からボールをつなぎ、山学の左サイドの背後を取り、1点を返す。山学は、後半飲水タイム明けにロングスローやCKのセットプレーからピンチを招くが左SB中根悠衣(3年 FCラーゴ河口湖U-15)やGK熊倉匠(3年 FC東京U-15深川)が落ち着いて対応し、追加点を許さない。しかし、33分、PKを決められ2対2になり、試合は振り出しに。その後は両校譲らぬ展開で互いに得点を許さず、勝負の行方はPK戦に持ち込まれた。
■GK熊倉のブロックで流れをつかむ
先攻の山学は1人目のMF笹沼航紀(3年 FC東京U-15深川)が成功させ、帝京長岡の1人目は後半33分にPKを決めている主将の川上航立。今度はGK熊倉がコースを読みブロックし、リベンジ成功。GK熊倉のリベンジで幸先の良いスタートを切った山学が、2対1で4人目を迎えた。山学のDF一瀬のキックはブロックされたが、GK熊倉もブロックし、2対1のまま1点リード。山学5人目のMF谷口航大(2年 鹿島アントラーズジュニアユース)は落ち着いてゴール右隅に決め、3対1で試合終了。ゴールの瞬間PV会場は歓喜に沸き、山学の11大会ぶりとなる決勝進出を祝福した。
試合後、長谷川大監督は「どうにか勝つことができました。PK戦ではGKの熊倉が非常に落ち着きを見せていたので、信頼を持って臨むことができました。決勝に向けてもう一回気を引き締めて頑張っていきたいです」と話し、GK熊倉匠主将は「自分たちが目指しているのは優勝なので、次につながったので良かったと思います。自分はきょうなにもやれていなかったので、チームのために活躍するぞという気持ちでPKに臨みました」と試合を振り返った。準々決勝までは会場で応援し、準決勝からはPVでの応援となったサッカー部の応援リーダーの天沼優聖選手(3年)は「今までやってきたことを出し切れば勝てるとみんな信じていたので、それを信じて試合を見ていました。登録メンバーにはLINEなどで頑張れというメッセージを送り、選手からは任せろと返事があったので、絶対大丈夫だと信じていました。胸の星をもう一つ付け、後輩たちに繋げられるように、優勝して帰ってきて欲しいです」と話し、最前列で祈るような気持ちで試合を見つめていた応援団の芦川奈々恵団長は「選手一人一人が良いところを出せるように心の底から応援をしていました。一人一人が優勝に向けて着々と戦っている姿がとても格好良かったです。決勝では、最後の最後まで自分の力を出し切って全力でプレーして欲しいと思います」と現地の選手に向けてエールを送った。
11大会ぶりの決勝は、第88回大会と同じ組み合わせになり、青森県代表の青森山田高(24年連続26回目)との対戦が決まった。青森山田はスーパープリンスリーグ東北で今季優勝し、これまで選手権優勝2回・準優勝2回、総体優勝1回を誇る強豪。第88大会では、山学が碓井鉄平主将(現・カターレ富山)のゴールで1対0で勝ち切り、初出場初優勝を決めた。11年の時を経て、再戦が果たされる。全国制覇の証、3つ目の星獲得まであと1つ、山学イレブンは王座奪還に向け、最後の戦いに挑む。決勝は1月11日に埼玉スタジアム2002で14時05分キックオフで行われる。
文(Y.Y)、写真(平川大雪)2021.1.9