●「スイーツマイスター」山学短大独自の認定資格
~2年間で培ったパティシエ知識と技術で全員合格~
~「専門的実践力外部試験」も兼ねた作品に高評価~
山梨学院短期大学食物栄養科パティシエコースで1月26日、「スイーツマイスター」実技試験が行われた。「スイーツマイスター」は、2年間の学びで培った製菓に関する知識と技術の習熟度を測る山学短大独自の認定資格。試験は、山梨県産の農畜産物や加工品を活用してオリジナルスイーツを製作するというもの。2010年(平成22年)に食物栄養科フードクリエイトコース(現パティシエコース)が開設されてから10回目の節目の実施となる。今回は、食物栄養科パティシエコース2年生17人(1人欠席)と食物栄養科栄養士コース2年生1人が実技試験に挑んだ。また、「専門的実践力外部試験」を兼ねており、2016年(平成28年)7月に文科省の「大学教育再生加速プログラム」に選定された「卒業時における質保証の取り組みの強化」の事業計画の一つ、『学修成果を学内・学外の両輪で評価し社会に目に見える形で提示していく仕組み』として選定年度から行われ「スイーツマイスター」実技試験と同時審査された。「スイーツマイスター」の審査は、本学3人の審査員が行い受験者全員の作品が評価基準を上回り合格となった。外部専門家3人による「専門的実践力外部試験」の結果は、3月12日に行われる卒業式(3月15日)事前指導で発表される。
■山学短大独自の認定資格「スイーツマイスター」
「スイーツマイスター」実技試験とは、2年間の学びの中で『スイーツを知り』『スイーツを食し』『スイーツを探求し』『スイーツをつくる』の4つの要素の知識と技術を深め、安全で美しくおいしい洋菓子・和菓子・製パン技術と専門教育科目を修得した学生の集大成となる山梨学院短大独自の認定資格実技試験。2010年(平成22年)食物栄養科旧フードクリエイトコースが開設される時に、素材の探求やデザインの創造などスイーツの世界をより身近なものとするために設けられパティシエコースに継がれた。実技試験は、山梨県産の農畜産物、加工品を使い「オリジナルスイーツ」1点製作しその完成度を図るもの。
■2年間で培った製菓知識と技術を遺憾なく発揮
山梨県にはフルーツ王国を誇る桃、ぶどうやイチゴ、キウイフルーツ、柚子、ブルーベリー洋梨などの果実。豊かな大地が育んだ、大塚にんじん、あけぼの大豆、トウモロコシ、あけの金時、八幡芋、天空かぼちゃ。ほかにワイン、ジャージーミルクなど数多くの恵みが我々の食卓を潤している。今回学生たちが作品に使用した県産品は、柚子、レインボーレッド(キウイ)、イチゴ、洋梨、大塚にんじん、あけぼの大豆、トウモロコシが多く使用されていた。学生たちは、1週間前から試行錯誤の試作を繰り返しこの日を迎えた。午前9時前から事前に仕込みを終えた作品の仕上げに係った。製作には、洋菓子・製パン・和菓子担当のプロのアドバイスを受けながら細心の注意を払う真剣な表情で取り組んだ。結果、県産特産品をふんだんに使った、アイディアあふれる色とりどりのオリジナルスイーツが学生たちの技術によって素敵に仕上がった。完成した洋菓子12、製パン3、和菓子1の全16作品は、カフェテリア(レストランサービス実習室)の審査会場に並べられ写真撮影の後、「スイーツマイスター」認定資格実技試験は羽畑祐吾山学短大食物栄養科長、中川裕子食物栄養科教授、松野洋人保育科特任教授の3人の審査員。「専門的実践力外部試験」(後述)は外部審査員3人が担当した。
■実技試験の評価基準
①地域素材の活用、②独創性、③製菓技術(レシピ通りの製作 コストパフォーマンス)、④視覚性(美しさ・センス・好感度)、⑤味覚性(おいしさ)の5つの視点から評価され(100点満点)、それぞれA評価(優れている)20点、B評価(普通)15点、C評価(劣る)10点で採点。実技試験は、60%の得点率を持って合格となる。「専門的実践力外部試験」の評価は、3人の学外審査員の平均点とする。学生は、試験時に「製作したスイーツの名前」「材料・分量」「作り方」「作品の菓子の意図や食材に対する思い」をレポート用紙に記入提出して実技試験に臨んだ。調理時間が2時間と限られているため、焼く・蒸す・デコレーションなどの作業は設定時間内に行われなければならない。そのため、事前準備は許されているが、出来上がったものの持参は許されない。また、今回は初めての試みとして学生は、審査時に製作時の工夫点や思いなど、1分間のプレゼンテーションを行うと義務付けられた。
見た目の美しさや味の美味しさ(試食)、安全性、独創性などについてコロナ下における厳正な時間内で審査が行われた。「スイーツマイスター」の審査結果は、いずれも60%以上の評価を獲得し16人全員が合格と認定された。2年間で習得した技術を遺憾なく発揮した。
■「スイートマイスター」実技試験の審査委員講評
審査後、初めに羽畑祐吾山梨学院短大食物栄養科科長・審査委員長がスイーツマイスター実技試験に16人全員が合格したことを報告。「スイーツマイスター」の講評では審査委員の松野洋人保育科特任教授は「今年はコロナ禍にあって十分な勉強ができない中でありましたが、2年間で本当に立派なスイーツが作れるようになって大変うれしく思い、感動しました。甘い物は無条件に人を笑顔にしたり幸せにしたりするわけで生活の中でせっかく磨いた技術を生かして自分の周りの人たちを幸せにすることを願っています」と述べた。また、中川裕子食物栄養科教授も「今日、いろいろな地域食材が使われていて学びを活かしてもらえたことが大変うれしく思いました。皆さんが作ってくれたスイーツを味わって私も本日幸せです。これからも精進していろいろな形で、場面で皆さんが幸せにする人材として社会に育ってくれればと思っています」とエールを送った。また、審査を見守った遠藤清香山梨学院短大学長は「後ろの席でパクパク試食していただく幸せなポジションで参加させてもらいました。一つずつ食べながらすごく感動して2年間でここまでと泣きそうなくらいです。みんなとても私を癒してくれる作品だったなと思っています。本当においしかったです。これから人を喜ばしたいなという気持ちにさらに技術を加えたり、自分らしさ加えたりと。どんどん成長行くんだろうなと思うととても楽しみです」と感想を述べた。
■「専門的実践力外部試験」
また同時に行われた「専門的実践力外部試験」は、2016年度(平成28年)文部科学省「大学教育再生加速プログラム」に申請した「学外助言評価委員会設置」などの事業計画が選定され、「卒業時における学修成果を学内外の両輪で評価し、目に見える形で提示していく仕組み」で専門職として社会に貢献できる力を学生が確実に身につけられたかを、外部の専門家が評価することを目的にした取り組み。「スーツマイスター」実技試験と兼ねて選定後に始まり今回が5回目となる。
今回実技試験に臨んだ16人の学生に対して「卒業後の質の保証」という2年間の学びがどのように成果となって表れているかを専門的分野の審査員が評価。審査は、審査委員長の山梨学院短大学外助言評価委員会委員・小川義美山梨県洋菓子協会会長と小野曜山梨県製パン協同組合理事長、山梨学院短大食物栄養科卒業生でオーナーパティシエの廣瀬和代氏の3人が行った。小川義美審査委員長は「毎年お菓子をよく考えて作られているという印象です。今日私が試食させていただいて一番うれしかったのは、そのまま商品になるものがいくつかあると思いました。デザインとかテクニックはこれから現場で勉強して技術の向上は図れますが少しアレンジすればそのまま商品として、そしてお客様からお金を頂戴できるものがいくつかありました。これからも思いのこもったお菓子をどんどん作り続けて行っていただきたいと思いました」と高評価の言葉を送った。小野曜氏は「素材を上手に使いたいという思いはひしひと伝わってきました。ただそれをバランスよくやりすぎて何の味か分からないというものもありました。もう少しバランスばかりではなく個性を、私はこれを作りたい。これを食べていただきたい。というものをもう少し強調してもいいかなと思っています」とアドバイスを送った。廣瀬和代氏は「私たちの仕事は、すべて一から作る仕事なんですよね。小麦粉とかお砂糖とかバターとか原料から作り上げる、とても人を幸せに変えられることができる仕事だと思っています。それを食べていて皆さんの思いが本当に伝わってきました」とそれぞれ講評した。特に3人は講評の中で全体的に素材を上手に使うことが良く考えられていたと評価した。最後に羽畑祐吾食物栄養科長は「このパティシエの試験の審査が始まると卒業のシーズンが近づいて来たと毎年思います。他の先生方もおっしゃってたと思いますが胸を張って社会に出てもらいたいと思います。この後、2月、3月卒業式まで皆さんと2年間のまとめをしたいなと思っております」と挨拶した。外部専門家3人による「専門的実践力外部試験」の結果は、3月12日に行われる卒業式(3月15日)事前指導で発表される。
■審査を終えた学生たちは
中央市旧豊富出身の込山怜菜さん(パティシエコース)は地元産のスイートコーンをアピールしようと「とうきびもんぶらん」を製作。高校生の時からスイーツづくりが好きで短大に進学するも周りのレベルが高く不安になったそうだが、実習の中で協力して作品を作る中でさらにスイーツづくりの楽しさが増した。今回の製作では「トウモロコシを使っただけでなく見た目もトウモロコシにすることでいろいろな人にインパクトを与えて特産品を食べてもらいたいと考えました」と独創性溢れる作品なった。全作品の中で唯一の和菓子作品「柚子大福」を製作した岡部紘斗さん(パティシエコース)は「最初は中に入れる餡をこしあんで試したんですが柚子の香りに負けてしまって粒あんに変えました。柚子の加減が大事で、後は餡の甘さと硬さにこだわりました。もう少しできたんじゃないかと思います」と思いを巡らした。将来は家業の和菓子店を継ぐと言う。「長く続く昔からの味を守りつつ、自分のできることをしていきたい」と意気込む。ホワイトチョコのミルククラウンが印象的なジャージー牛乳とワインゼリーを使用した「ムース・オ・ヴァンルージュ」を製作した小口香織さん(パティシエコース)は「私は長野県民ですが卒業なので最後に山梨の食材を使って作品が作れたらいいなと思い、試作期間も毎日朝早くから夜まで作業しました。良いものを作りたいという思いでやってました」と作品作りへの思いを明かした。作品の出来栄えについては「はい!上手くできて良かった」と笑顔で答えた。市川三郷町産のちぢみほうれん草を使用した画期的な作品「ガトーエピナール」を製作した長野県松本市出身の三沢彩奈さん(パティシエコース)は「2年間の集大成ですので今まで授業で教わったことを最大限に活かそうと思って習った技術を作品にすべて込めました。今日は審査員の方々に食べていただいたのですがそれがお客様みんなに食べていただくことになるのでどうしたら喜んでもらえるか考えながら地元の素材を使って新しいスイーツを作っていきたい」と抱負を語った。卒業後は地元に戻りパティシエを目指す。
今回、実技試験の運営を担ってきた関戸元恵食物栄養科専任講師は「半年間リモート授業でなかなか実習ができませんでしたけど、前期は学生自身が家でも技術を磨きましたし後期に入ってケーキコンテストなどで製菓技術のアップを目指して非常に学生の努力が見られる内容でした」と学生を称えた。2年間の学びは「技術は足りない部分はあるんですけどアイディアとか製品開発するためにいろいろ調べたり、今自分ができる技術を活かした製品を作っていたと思います」と若い向上力に手応えを感じている。「卒業時の質の保証」の部分については「初めパティシエコースとしてどう考えるかということを教員としても基礎を作っていかなければいけないところがありました。数年経ちますと教員側も学生の製菓技術とか質を上げることを1年生の日頃の授業から意識して取り組むようになっています」。一方学生は、「外部評価に対しては教員が評価するものと外の方が評価するものは視点が異なるのでそういった面では精査されるところはものすごく意識して学生自身も作品を仕上げていたと思います」と「専門的実践力外部試験」対する取り組みの成果を述べた。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2021.1.27