●山学小「カルチャーフェスティバル」開催
~PYPの課題探究型授業プロジェクトの成果発表~
~文化的・芸術的活動について学年ごとに探究活動~
山梨学院小学校では独自の『課題探究型プログラム』として行われているプロジェクトの発表会、「カルチャーフェスティバル」が6月12日開催された。今回は、新型コロナウイルス感染防止受け、従来、秋に行われる「オクトーバープロジェクト」を時期と運営方法を一部変更して「カルチャープロジェクト」として行った。このプロジェクトは児童が興味・関心を抱いた文化的・芸術的活動について、探究活動するもので5月31日から6月12日までの期間で行われた。1学年から6学年の児童がそれぞれ学年テーマを設け、4学年は人形操作・背景・ナレーション、合奏などすべてを手掛けた「影絵劇」や6学年は山梨の伝統工芸品を肌で感じて体験製作した作品などを展示解説する「YAMANASHI JAPAN」。2学年は絵本「はらぺこあおむし」の“続きの物語”をモノクロームの世界からそこに色を付けて生まれる美しい造形空間を表現。3学年の「建物とそこで暮らす人々」では、寄せ木でつくった建物に工作用紙でつくった人型を組み合わせてアニメーションで表現する方法など“人は、さまざまな表現方法をすることができる”をテーマに各学年のスペースを使って発表された。参観は児童1人につき保護者1人、時間差を設け分散して行われた。
■PYPに裏付けられた山学小独自カリキュラム
2019年2月、山梨学院小学校は山梨学院幼稚園と9年間のプログラムを提供する国際バカロレア(IB)初等教育プログラム(PYP)の全国初の認定校となった。山梨学院小独自のプロジェクトカリキュラムは2004年の開校以来、IBの「自ら学ぶ力を身につける」ことを目標とする『探究する人・考える人・挑戦する人』など10ある学習者像を中核とする先進的教育プログラムとして位置づけている。プロジェクトはまさに「課題探究型」プログラムで数日から2週間にわたり、学年の壁が取り払われ、自由に自分がやりたい分野のチームを選び、1年生から6年生までの児童がチームで同じ研究テーマに取り組み活動する。その集大成を最終日に「フェスティバル」としてプロジェクトの成果を保護者や教育関係者などに発表してきた。毎年行われる、『スポーツプロジェクト』『オクトーバープロジェクト』『アカデミックプロジェクト』を三大プロジェクトと呼んでいる。
■新型コロナウイルス禍のなかで行われた「カルチャープロジェクト」
その一つ、今回行われたプロジェクトは、新型コロナウイルス禍における感染防止対策として毎年秋の「オクトーバープロジェクト」を初夏のこの時期に行っている「スポーツプロジェクト」と入替え、名称をあらたに「カルチャープロジェクト」として取り組んだ。文化的・芸術的活動については従来通りとし“人は、さまざまな表現方法をすることができる”をコンセプトにした。運営方法は学年ごとに探究テーマを設定、独自の活動にすることとした。
■各学年テーマ
学 年 | 活動タイトル ~どんな文化・芸術~ |
1学年 | 「THE SEED」 ~観察し描き語る中で~ |
2学年 | 「We are Artists!」 ~ようこそわたしたちのミュージアムへ~ |
3学年 | 「建物とそこで暮らす人々」 ~静と動~ |
4学年 | 「影 絵 劇」 ~音と光と動きの総合芸術~ |
5学年 | 「謎解き脱出ゲーム」 ~5年生になった子どもたちからの挑戦状~ |
6学年 | 「YAMANASHI JAPAN」 ~故郷の文化と芸術を世界へ~ |
■学年ごとの活動内容
◆1学年の活動は、アサガオの種をきっかけに色々な種に目を向けて「種⇒葉⇒花⇒葉」の変化を観察・記録した。特徴や変化を見ることで自然の仕組みを学んだ。その中でオリジナルキーホルダーづくりや画用紙を種に見立て特徴を表現したちぎり絵を展示した。
◆2学年は、「はらぺこあおむし」の絵本を読み、その続きをつくることで「あおむしたちの新たな冒険」を様々な素材と技法を使って表現した。モノクロームの造形世界からそこに色を付けることで生まれる美しさを表現した。展示スペースには紙コップで造形したモニュメントや壁に張られたモノクロ写真、あおむしが蝶に成長した色鮮やかな絵が飾られていた。
◆3学年は、寄せ木セットで作った建物と園芸資材で作られた庭などに工作用紙でつくった人型を組み合わせアニメーション制作。人間の基本動作などを活かした居住空間を表現した。
◆4学年は、美術と音楽の要素を取り入れた「影絵劇」をつくった。人物、背景、照明を工夫し、光と影を巧みに演出し、ナレーション、さらに生演奏を加え、雰囲気溢れる2つの作品を披露した。影絵劇に取り組んだ内藤みゆさん(4年)は「音と照明を担当しました。最初は上手にできるかなと緊張していたんですけど、本番でしっかりできて良かった。クラス全員というのはまとまりが大変で難しいかなと思ったりしたんですが良い作品ができたと思います。飾りをつくったりとか考えたり発表したりするのが好きなので。いい思い出になりました」とプロジェクトを楽しんだ。
◆5学年は、「伝説のサンタマリア島からの脱出」と題された完全オリジナルストーリーに挑戦。初めに保護者に謎解きの目的などがパソコンモニターで紹介され、5つのエリアをクリアして脱出するというリアル脱出ゲーム。各領域で学んだ内容に関する謎が仕掛けられる。
◆6学年は、山梨の伝統工芸をテーマに「和紙」「染物(武者のぼり)」「印章」「太鼓」「花火」など8つのチームに分かれ、職人さんや工芸館を訪ね伝統文化の歴史や作り手の思いを学習した。その成果を制作体験の成果を保護者に伝えた。伝統文化染物チーム・岩田十磨さん(6年)は「友だちと色々なものを再現したり、実際に見学に行った時も、そこの人たちから色々お話を聞けて伝統工芸品のことを今までよりも知れたと思います。跡継ぎの方がいなくて困っていると聞いて今ある伝統工芸品が無くならないようにすれば、より山梨のことを誇れると思います。自分たちが体験したものとプロの方の仕上がりが全然違くてすごいというか感心しました」と継承されてきた伝統工芸品の尊さを実感していた。
「カルチャーフェスティバル」での発表においては、コロナ禍における感染防止を受け、“密”を避けるために、児童1人につき保護者1人に限定。活動場所の分散・時間差での参観の措置を講じた。また、フェスティバルを行うにあたっては、最高学年の6学年児童がさまざまな部分でサポートしプロジェクトを盛り上げた。
■保護者・山学小のプロジェクトへの思い
3年生の保護者・望月舞さんは「本当に個性があってそれぞれの想像力が表現されていて面白かったです。みんながグループごとに工夫して作っているのがよく分かりました。また、子どもたちが自由にやらさせていただいているんだなと感じられました。普段の勉強とは違って、よりコミュニケーションが友だちと取られていて想像力が育てられていることが感じられ良かったです」と子どもたちの様子に満足していた。4年生と6年生の保護者・細倉真美さんは「子どもたちはこの2週間で家に帰ってきて息子(6年)は太鼓を叩いたんですが太鼓の歴史とか、娘(4年)は影絵をしたんですが家で同じような感じで作ってみたりとか、体験することで子どもたちは感性というか心が磨かれる部分がすごくあるというのを感じました。小学校の時期は身体を使って体験することが生涯の学びの形成とか生き方に繋がるのかなと思っているので子ども同士の関係の中で体験を通して獲得できるという点ではプロジェクトというのは子どもたちにとっては大きな意味を持っていると思います。座学も大事ですけどそこで得た知識をどう使うかということが今社会で求められているので学校の中で知識の活用の仕方までプロジェクトで教えてくれる学校全体の取り組みはありがたいです」とプロジェクトの効果を実感していた。
今回のプロジェクトリーダー・長田直美主幹教諭は「私が想像していた以上のものを各学年で考えてくれてそれを推し進めてくれました。今回、初めに自分で何を調べたいのか何に興味あるのかをしっかり決めて、その後に極めていくという探究学習ができていたので最終的に作り上げたものは色々な形で表現されていて、子どもたちが発信して表現するという今の国際社会における大事な発信力がこのプロジェクトで培われているのだなと感じられます。子どもたちが主体的に学んだことで最後に自信を持って発信するところまで変容しました。その変容ぶりに感動しました」とプロジェクトの意義を語った。
山梨学院小学校の1学年から6学年の児童たちは伝えることの大事さ、伝わることのうれしさ・喜びをこの2週間で仲間と協働で共有し、知識・技術・さまざまな表現する方法を精一杯学んだ。この日、保護者の前で自信を持って思いっきり発表した。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2021.6.13