●山学大健康栄養学部「差をつける食生活講座」開催
~学部4年生が講師や運営担当として栄養教育を実践~
~スポーツに取り組む学生にたんぱく質について講義~
山梨学院大学健康栄養学部は「地域の食と栄養活動実習Ⅱ」(地域食育活動)の授業の一環でスポーツ栄養に関する公開講座を6月12日に実施した。この科目は、将来管理栄養士として地域の健康増進に寄与し、適切な栄養管理を行うために必要とされる知識、技術の統合を図ることを目的とした必修の実習科目で、市民を対象にした公開講座の開催を目標としている。授業では、地域の健康・栄養に関する課題探求、講座の実施計画の策定、テキスト・レシピの作成などを行い、講座当日の講師役も担うことになっている。今年度の公開講座は全3回企画され、初回は「差をつける食生活講座~たんぱく質摂取の鉄則~」と題し、コロナ禍で実施人数や運営方法についても検討を重ね、参加者を学内の学生に限定し開催された。講義ではたんぱく質を中心に競技力向上に必要な栄養素について学び、たんぱく質摂取に効果的な献立の調理実習も行われた。第2回目は骨、第3回目は貧血をテーマに講座が行われる。
山学大健康栄養学部は県内唯一の管理栄養士養成施設として健康の保持増進と食育の推進に貢献できる人材の育成を行っている。「地域の食と栄養活動実習Ⅱ」(地域食育活動)は、4年生を対象とした専門教育科目で、実践活動を通した統合的な学修として地域の健康・栄養における課題を解決するための企画立案をもとに、市民を対象とした公開講座を実施。昨年度はコロナの影響でオンラインでの実施となったが、今年度は参加者を学内に限定し、参加人数(定員12名)や教室規模など十分に検討を重ね、感染予防策・運営方法を策定。講座開催に向け、地域課題(身近な栄養に関する問題)を調査・研究し、栄養指導のためのテキストやレシピの作成、模擬授業なども行うなど準備を進めてきた。公開講座は全3回企画され、健康栄養学部4年生を3グループに分け、各グループがそれぞれの講座の運営を担当。第1回目は、スポーツ科学部や運動系クラブなどでスポーツに取り組んでいる学生12名が参加し、たんぱく質を中心としたスポーツ栄養講座を実施した。
■第1部【講義・演習】
講義では、筋肉とたんぱく質の関係性について図表をもとに説明。食事摂取量と筋肉の合成・分解、筋肥大のポイントを分かりやすく解説した。また、筋肉づくりや筋肉の維持に必要なビタミンや糖質などの栄養素やバランスの良い摂取方法、オフとトレーニング期に必要なエネルギー量(ご飯の量)や参加者の体重などに応じた1日のたんぱく質必要量についても算出。たんぱく質源となる食品のたんぱく質含有量についても確認し、実際に参加者自身が食事メニューの組み合わせを考えるなど、スポーツでベストパフォーマンスを発揮するバランスの良い食事やたんぱく質の摂取について参加者は理解を深めた。
■第2部【調理実習】
調理実習では、効率的にたんぱく質を摂取できる献立の調理を参加者が実際に行った。この日は、「鶏むね肉とパプリカの甘酢丼」「小松菜・卵・ミニトマトの3色サラダ」「フローズンブルーべリーヨーグルト」の3品を調理。各参加者に健康栄養学部の学生が調理補助に入り、新型コロナ感染防止のため、通常4~5名程度で使用する調理台を2名で使用し、密を避けた。また、レシピ集には食中毒予防のポイントや使用した食材の栄養素の解説、調理をする上でのワンポイントアドバイスやアレンジレシピも掲載され、講座後にも復習に役立てられるよう工夫がなされていた。30~40分で調理は完了し、この日はコロナ対策として調理後の喫食は行わず、テイクアウト用の容器に盛り付け、お弁当として各自が持ち帰った。
この日は大きなトラブルもなく、無事に講義や調理実習が終了。参加したスポーツ科学部3年で陸上クラブに所属している上野咲久哉さんは「去年の冬に怪我をしてしまい、その反省を踏まえ、もう一度栄養学を学びたいと思い参加しました。講義も分かりやすく、普段の食事でエネルギーが足りず、たんぱく質を多く摂取している傾向があることが分かったので参加して良かったです。きょう学んだ料理は手軽に作れるものが多かったので、また自分で作ってみたいと思いました」と講座を振り返り、普段から筋力トレーニングが趣味という法学部4年の小松優さんは「たんぱく質の効率的な摂取について興味があり参加しました。講義を聞いて、自分が思っていたよりエネルギーを摂取しなければいけないと思い、たんぱく質も色々な食品から摂れることが分かり、勉強になりました。普段から料理をしていることもあり、簡単に作ることができました。これから睡眠もしっかりと取り、バランスの良い食事を心掛け、筋力トレーニングに励みたいと思います」と感想を語った。
今回の講座のリーダーを務めた健康栄養学部4年の細川貴帆さんは「講義の最初は参加者の反応が薄く不安でしたが、各自でメニューを考えるワークや調理実習ではスタッフとも楽しそうにコミュニケーションが取れていたので、全体的には良かったと思っています。一方で反省点として参加者の栄養素に関する知識や理解度に差があり、進行する上での作業時間の取り方や指導方法(対応方法)などには難しさを感じました」と講座運営について振り返り、この授業科目について「4月の最初の頃は、ただ作る・こなすだけでしたが、模擬授業を重ね、テキストの見やすさや分かりやすさ、参加者とのコミュニケーションや運営方法など改善することができ、自分たちとしても成長できたと感じています。将来、管理栄養士として栄養指導する際は、自分たちの持っている知識を最大限にお伝えすることはもちろん、相手を思いやり、寄り添った分かりやすい指導ができることも重要だと思いますので、この授業は凄く活きてくると感じました」と述べ、課題は残るものの、管理栄養士の卵として、実践を通じ確かな手応えを感じていた。
「地域の食と栄養活動実習Ⅱ」(地域食育活動)の公開講座「差をつける食生活講座」の2回目は6月19日に“強くなるための「骨(コツ)」”と題し、カルシウムと骨の関係や効率の良いカルシウムの摂取方法について学び、3回目は6月26日に“GOOD BY貧血”と題し、貧血のメカニズムや貧血予防に効果的な栄養素を学習する。いずれも1回目同様に講義や演習、調理実習が行われ、1回目に担当したグループとは別のグループがそれぞれ運営を担当し、栄養教育に関する実践力を高めていく。
文・カメラ(Y.Y)2021.6.12