●夏の甲子園山梨大会、山学高準決勝で敗れる
~後一本が出ず、富士学苑に9回の攻防で敗れる~
~先制するも相手投手の変化球に惑わされる~
「第103回全国高校野球選手権山梨大会」準決勝2試合が21日、山日YBS球場で行われた。大会は準々決勝から有観客で行われ、この日も山梨学院からは生徒会や3年生、教職員を合わせ約230人、保護者、控え選手160人ほどがチームに声援を送った。山梨学院の対戦相手は18日行われた準々決勝で春の県大会優勝で今大会第1シードの駿台甲府高を終盤逆転勝利し、勢いに乗る富士学苑高。試合は、山梨学院高榎谷礼央(2年)と富士学苑河村大翔(3年)、両エースの投げ合いになった。1回裏、甚野赳生(3年)が先制した山梨学院は相手投手のスローカーブに翻弄され得点を重ねることができず、4回表、相手の堅実な攻撃に2点を返され逆転を許す展開になった。5回裏、相澤秀光(2年)と鈴木斗偉(2年)の連打で2-2の同点に追いつく。その後の中盤後半に1点をどう奪うかが勝敗のカギになった。7回・8回と疲れの見えてきた榎谷に8回途中から準々決勝でも好継投した宮下龍希(3年)がマウンドを繋いだが9回表、先頭打者1番に安打で出塁されると、内野、バッテリーミスが続き1安打で2点を献上した。9回裏、山梨学院の攻撃は一死後、2四球と代打杉浦寛太(3年)の安打で一打同点の満塁とするも、後が続かずそのまま試合終了。ベスト8の壁を破り頂点を狙えるところまできた山梨学院は惜しくも準決勝でこの夏を終えた。
21日、夏の甲子園山梨大会も準決勝、決勝を残す2日間となった。梅雨も明け、この日も猛暑日になるとの天気予報が出される中、有観客になった大会に多くの人たちが駆け付けた。山梨学院からは生徒会や教職員を合わせ約230人、保護者、控え選手160人ほどがチームに声援を送った。試合前、チアリーダー部の広瀬莉音愛副部長は「選手が頑張れるようにしっかりエールを送りたい」と選手の活躍を願いスタンドでチアリーダー部26人の仲間と力いっぱい選手を鼓舞した。
■山梨学院先制するも、相手投手の軟投に手を焼く
午前8時30分始まった準決勝1戦目。試合ごとに成長がみられる2年生・1年生中心に3季ぶりにベスト8の壁を破り5連覇を狙う山梨学院高と2019年に続く夏のベスト4入りで11年ぶりの決勝進出を目指す富士学苑高が激突した。両チームとも打線が好調でどちらかが先に主導権を握るかが注目された。試合は富士学苑が先攻。山梨学院は2年生エースの榎谷礼央(2年)が先発した。1回表、榎谷は130キロ後半の速球で2番・3番を空振り三振で三者凡退の立ち上がり。1回裏、山梨学院打線は2連続三振後、3番・4番が四死球で二塁一塁の一打先制の好機をつくると、5番甚野赳生(3年)がすかさず中前適時打で期待に応えた。榎谷は2回・3回も富士学苑打線を危なげなく抑え、ゲームをつくる。富士学苑河村大翔(3年)も1回に1点を許したものの、2回表に下位打線に3者連続空振り三振を奪い山梨学院打線を抑え味方の援護を待つ。4回表、榎谷は富士学院先頭打者を四球、犠打で走者を二塁に背負うと5番打者に2塁手のグラブを弾く中前適時打で同点とされた。なおも二死二塁で変化球を軽く合わせられ左前適時打となり1-2と逆転された。山梨学院打線は富士学苑河村の90キロ台のカーブと120キロ台の直球で打ち気を外した投球に苦しめられ追加点が奪えずに来た5回裏一死後、1番相澤秀光(2年)が130キロ前半の直球を弾き三塁線を抜く二塁打を放った。けん制暴投で三塁へ進むと3番鈴木斗偉(2年)の内野安打で2-2の同点に追いついた。
■8回を終わり同点のまま9回表、山梨学院のミスで失点。決勝進出逃す
7回・8回と両チーム譲らず無失点、同点のまま9回表、富士学苑は8回途中から継投した宮下龍希(3年)から先頭打者が中前打で塁に出ると、続く打者の三塁前犠打を二塁に素早い送球も遊撃手の足が離れ、無死二塁一塁の危機を招いた。一死二塁一塁にするも、次打者の4球目、バッテリーミスで捕手が後逸する間に二塁走者が一気に本塁ベースを突き1点を追加。さらに一塁走者が三塁に進塁。打者も四球となり、なおも一死三塁一塁の危機が続いた。次打者は内野ゴロに仕留めるも、その間に1点を追加され4-2とされた。後がなくなった山梨学院は、一死後進藤天(1年)、代打山元丈輝(3年)が連続四球、続く代打杉浦寛太(3年)が左前打で満塁に追いすがり、代打針尾俊佑主将(3年)の起死回生の一打同点を待った。しかし、ここでまさかの三塁牽制死。二死二塁一塁となり、最後の希望を針尾の一打に託したが、打った打球は遊撃手の前に。二塁に送られ試合終了。決勝進出と5連覇の夢は断ち切られた。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
富士学苑高 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 |
山梨学院高 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
山梨学院高
[投手]榎谷⇒宮下 [捕手]佐仲⇒笠井陽介(3年)
榎谷7回1/3 投球数119 被安打8 四死球4 三振8 失点2
宮下1回2/3 投球数 24 被安打1 四死球0 三振0 失点2
[打撃] 安打6《二塁打=相澤》 四死球5 三振8
試合後、吉田洸二監督は選手全員を集めこの大会までを総括。その中で3年生に「最後まで一生懸命厳しい練習もやってきて、君たちの3年間の成果は県大会ベスト4だったということ。どこか心の中で悔いの残るものがあれば次の人生のステージで悔いの残らないような活動をやってくれればと思います」と語りかけた。その後のインタビューで吉田洸二監督は「相手ピッチャーが良かったですね。うちはミスだらけで甲子園に行くようなチームのプレーではなかったですよ。『私も勝たせてやる』と言ったけど無理でした。私も反省はしますけれど、当たり前のプレーをしてアウト取れる時に取らないと話にはならない。甲子園に行くには力をつけないと」と力不足を吐露した。精一杯の好投も実を結ばなかった榎谷礼央投手は「先輩たちが点を取ってくれて、自分で点を取られて厳しい展開に持って行ってしまったので自分のせいで負けたという感じです」とうなだれた。「監督からはエースで行くと言ってくれたので初回から飛ばそうと思い切って投げました。ピンチで打たれたところもあったですけど、2点取られたあとからも何としても抑えるという気持ちで投げれたのでそこは良かったですけど、やっぱり負けたので悔しいです。今日は自分たちのミスで先輩たちの夏を終わらせてしまった」と悔しさを滲ませた。最後に「先輩たちから『夏と春も負けずに甲子園に行けよ』と言われたのでもう二度と負けないで甲子園に行って自分たちの代は甲子園で終われるようにしたい」と3年生が成しえなかった甲子園行を誓った。最後の打者で大会を終えた針尾俊佑主将は「本当にやれることができなかったというか、できることを徹底できなかったことが負けた原因だと思います。今大会は2回戦、3回戦といい形で勝ってきて油断とかはなかったんですけど相手の思う壺にはまってしまい、取れるアウトが取れなくてランナーを溜めてしまい点に結びついてしまった」と試合を振り返った。明日から新チームになる後輩たちに「後輩がいなければ自分たちはここまで来ていなかったと思うので、これからもこの経験を生かして秋と夏と負けないで甲子園に行ってほしい」とエールを送った。
■あとがき
山梨学院高野球部は昨秋県大会、今春の県大会ベスト8を受けて、夏の甲子園出場へ向け新生野球部を始動させた結果、2年生と1年生中心のメンバーで決勝を狙えるまでの成果が今大会で発揮できたものの、若いチームならではの粗さやミスが準決勝で命取りになった。野球はチームプレーではあるが、それを昇華させるためには個々の力量が必要になる。厳しい練習に耐え、苦楽を共にした仲間との競争や連携と技術のレベルアップのための精進。甲子園常連校と言われるようになった今、ライバル校の突き上げを真正面から受け止める王道を目指し、さらなる復活を吉田洸二監督に託す。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2021.7.21