●秋季関東高校野球山梨県大会・山学高2年ぶり優勝
~序盤相手投手に苦しむも、終盤一気に突き放す~
~関東大会狙うは選手の夢、選抜甲子園の切符~
10月3日、山日YBS球場で行われた「第74回秋季関東高校野球山梨県大会」決勝戦で山梨学院高校と帝京第三高校が対戦。2校は昨日の準決勝に勝利し、10月30日開幕の関東大会出場を決めているが関東大会(茨城県)山梨第一代表を懸けて戦った。試合は、先攻の帝京が1回表にいきなり小気味の良い攻撃で1点先制すると、山梨学院もその裏、1番の鈴木斗偉(1年)の本塁打と相手の失策が絡み2点を奪い逆転した。帝京も2回表に3連打を集めすぐさま同点に追いついた。その後も帝京が毎回のように塁を賑わし主導権を握るが山梨学院も継投で要所を締め同点で凌ぐ展開に。5回表、山梨学院は失策絡みで1点を献上するも、その裏再び鈴木の三塁打で3-3と振り出しに戻した。流れを変えたい山梨学院は6回表二死からエース榎谷礼央(2年)を投入すると打線が奮起。7回裏、ここまで好投を続けた帝京・山﨑楓也投手(2年)を攻略1点リードした。さらに8回に継投した帝京エース三上大貴投手(2年)を攻め立て、打者一巡の5点を加え9-3と試合を決定づけた。投げては榎谷が7・8・9回をきっちり抑え、山梨学院は2年ぶり8回目の優勝を飾った。関東大会への出場は11回を数える。
■屈辱からチーム再生への道ー
山梨学院は昨年出場予定だった全国選抜野球大会が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け中止になり春・夏の県大会も中止。かろうじて選抜の代替試合が夏の甲子園で交流試合として行われたが、それ以降新しいチームで昨秋の大会と今年の春大会で戦うもベスト8止まり。このままでは夏の甲子園での出場が危ぶまれ、チームの立て直しが喫緊の課題となった。今夏の県大会では今までのチームを見直し2年生、1年生を多く起用し準決勝へ進むも2死満塁の好機に三塁走者がけん制で刺され得点を奪えず5連覇を阻まれベスト4に留まった。その試合後、吉田洸二監督は「うちはミスだらけで甲子園に行くようなチームのプレーではなかった。当たり前のプレーをしてアウト取れる時に取らないと話にはならない。甲子園に行くには力をつけないと」と力不足を実感。それから夏休みに基礎から叩き上げる猛練習が始まった。相澤秀光主将は「かなり厳しく、身体もボロボロでその中でメンタル面や技術面を鍛えてくれ、あとは『やるだけ』と自信はついてきた」と秋季大会に向かっていった。
■苦しい猛練習に結果がついてきたー
その成果が表れ、秋季大会、山梨学院は巨摩高校との初戦。10-0の5回コールド勝ち。2戦目日本航空高戦では10-1の7回コールド。準々決勝の甲府工業戦は9-0の8回コールド。10月2日の東海大甲府高戦の準決勝では11-1の5回コールドと4試合わずか2失点で決勝に駆け上がった。迎えた3日の決勝戦。対戦するのは今夏の夏大会でコールド勝ちを収めている帝京第三高校。ここまで4試合のうち3試合をコールド勝ち失点3と、投げては好投を続けてきたエース三上大貴を擁する侮れない相手。試合は午後12時、すっきり晴れ上がった山日YBS球場で始まった。試合直前先発メンバーの発表には両チームとも今大会公式戦初先発の投手の名があった。先攻の帝京第三に対して山梨学院の先発は左腕古川秀将(2年)。1回表、開始を告げるサイレンが鳴る中、先頭打者に投じた初球は快音を残して左前打となった。犠打で送られ一死二塁で迎えた3番打者は遊撃手として出場の帝京第三のエース三上大貴(2年)。古川の5球目を一振、鋭い打球は右翼の上を抜く適時打で1点を先制。追う展開となった山梨学院1回裏、帝京第三の先発は右の山﨑楓也(2年)。1番の鈴木斗偉(2年)は4球目のやや外寄りのストレートを速いバットスイングで強振するとボールは右翼頭上を越え芝生席に飛び込む先頭打者本塁打で同点に追いついた。その後安打と送球ミスで1点を追加2-1とリードした。2回表には古川は二死後、2本の鋭い当たりの安打を浴び降板、さらに代わった右腕の宮崎海翔(1年)も適時打を打たれ同点とされた。3回も宮崎は3安打を打たれ満塁のピンチを何とか凌いだが、山梨学院投手陣は4回までで9安打と相手に主導権を握られ防戦を強いられた。好機は何度もつくる帝京第三の拙攻に助けられ同点のまま推移した。これまでの試合、打撃好調の山梨学院打線は2回以降4回まで好投する帝京第三山﨑に抑え込まれ1安打と沈黙。5回表、4回から継投した右腕山田悠希(2年)は四球とWプレーを焦った内野守備の送球失策で二塁得点圏走者を残した。その直後、勝ち越し適時打を打たれ均衡を破られたが、その裏、山梨学院も一死一塁から再び鈴木が右中間を破る三塁打で1点を返しまたも3-3の同点と粘り強く追随した。
■エースを投入。試合が動いた終盤、山学一気に畳み込む
再び同点で迎えた6回表、山梨学院は投手山田が二死を取ってから4人目に右のエース榎田礼央(2年)を投入。130キロ中盤の直球とカットボール、チェンジアップの変化球を織り交ぜ、相手を抑えると守りからリズムが出た山梨学院打撃陣が目を覚ました。7回裏に一死一塁・二塁に2番進藤天(1年)が左翼フェンス直撃の適時二塁打を放ち値千金の勝ち越し打で1回以降久しいリードを奪った。8回裏には帝京第三は好投山﨑を代えてエース三上を送り込んだが、山梨学院打撃陣がようやく奮起。先頭の5番相澤が二塁打で火を点けると続く渋谷剛生(2年)がバットの先端で右前に運んで無死一塁・三塁と追加点の好機をつくり、代打の岳原凌河(1年)が執念の片手打ちで右前に落とし1点をもぎ取った。さらに榎谷の2点適時二塁打、進藤の2点適時打で2点、この回10人の猛攻で一挙5点を奪い9-3と突き放した。最終9回にベンチは榎谷から川口龍己(2年)に代える余裕を見せ、川口は2球でしっかり試合を締め、勝利した山梨学院は2年ぶり8回目の県大会優勝を飾り山梨県第一代表として関東大会に出場する。狙うは選手の夢、選抜甲子園の切符。
■《決勝戦 10月3日 甲府市・山日YBS野球場》
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
帝京第三高校 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
山梨学院高校 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 5 | × | 9 |
山梨学院高:〔投手〕古川秀将⇒宮崎海翔⇒山田悠希⇒榎田礼央⇒川口龍己 (捕手)佐仲大輝
古川:1回2/3 投球数26 打者8 被安打4 自責点2
宮崎:1回 1/3 投球数27 打者8 被安打4 四球1 三振1
山田:2回2/3 投球数43 打者10 被安打3 四球1 三振1
榎谷:3回1/3 投球数33 打者9 被安打1 三振4
川口: 2/3 投球数 2 打者2
〔打撃〕安打14《長打=本塁打:鈴木 三塁打:鈴木 二塁打:進藤・相澤・榎谷》四死球3
三振3 〔交代〕星野泰輝(右)⇒(H)岳原凌河⇒(R)北原秀喜(右)
試合後、吉田洸二監督は試合を振り返り、「関東の切符を取るまでは選手を試すことができなかったので、ピッチャーがどれくらい通用するか試して見たが、やはり試合をもたつかせてしまいましたね。山田、榎谷でやっておけばもっとすんなり勝てたと思います」と投手の継投の意味を明かした。榎谷の登板については「チームは活気づいたと思いますけど、相手の勢いが止まりましたね」と流れを変えるきっかけとうなづく。関東大会に向けて、「今日のような競った時に送りバントができないというのは関東では負けるチームの典型なパターンなのであと3週間で頑張れたら」と課題も挙げた。さらに「優勝は狙って取れるほどの実力はないと思いますけどベスト4は狙える実力はあると思っているので全力で、選手の夢なので甲子園は頑張れたらと思っています」とほほ笑んだ。8回表、猛攻のきっかけを作った相澤秀光主将は「序盤はかなり厳しい試合ではあったんですけど、去年からベンチに入ってる選手が多いので『落ち着いてやるぞ』という声掛けは皆でしていました。榎谷はエースらしい投球をしてくれ、そこから守備からリズムを作って後半の打撃は良い感じでできたので、榎谷が空気を変えてくれたと思っています」とチームメイトに感謝した。「関東優勝を目標に夏スタートしたのでまずは関東出場を果たしました。2つ上の小吹さんたちの代が準優勝しているのでそれを超えられるよう優勝を目指します」ときっぱり。1点リードされた1回裏、すぐに本塁打で同点にした鈴木斗偉選手は「本大会で初出場のピッチャーが先発したので、点を取って援護してあげようという意識で初回の打席に入ったので結果につながった」と強い気持ちが乗っていた。相手の先発の投手には「自分たちはエースの三上選手が来ると思っていたんですけど、違う投手だったですけど、みんな意識したり焦りはなかった」と5回にも同点三塁打で気を吐いた鈴木選手には余裕があった。
関東大会は今月30日から茨城県で開幕。来春の選抜甲子園出場を懸け、東京を除く関東7県の代表15校が激突する。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2021.10.4