●全日本学生レスリングインカレ・フリースタイル
~首の手術から復帰、61㎏級・榊優勝。服部も3位~
~結果に物足らずも、1・2年生の台頭に今後を期待~
「文部科学大臣杯2021年度全日本学生レスリング選手権大会」(インカレ)は、10月13日、14日の2日間行われ、14日にフリースタイル10階級の3回戦から決勝戦までが実施された。国内の学生レスリング最高峰に位置する大会は、男子フリースタイル、男子グレコローマンスタイル、女子フリースタイルの3種目で行われ、この2日間の男子フリースタイル以外は後日に実施される。山梨学院大勢は9階級に28人がエントリーした2日目は、1日目のベスト16までに勝ち残った12人が2日目に優勝を目指した。その中で、同門決戦を期待された61㎏級の服部大虎(4年)と榊流斗(3年)は、服部が準決勝で敗れたため対決は見れずも、榊は落ち着いた試合ぶりで勝ち上がり、決勝では2-1の僅差の勝利を収め初優勝を飾った。また、125㎏級對比地旭陽は1年生ながらベスト4に残り3位となり表彰台に上った。優勝を期待された86㎏級山田修太郎(4年)は、ライバルの白井達也(日体大)に決め手のないままロースコア1-2と3戦目で敗れ、ベスト8に終わった。山梨学院勢の最終成績結果は3人の表彰台とベスト8が8人、ベスト16が4人となった。終了後、小幡邦彦監督は「結果は1位一つ、3位が二つとうちのメンバー的には良くないですけど世界選手権に行っている2人も出てないですし、今回、1、2年生が思ったより活躍してくれたのでこの頑張りを今回手応えとして感じられた」と、これからの飛躍に期待した。
今回のインカレは、例年の男子フリースタイル・グレコローマンスタイル、女子フリースタイル3種目同時開催を男子フリースタイルと男子グレコローマン、女子フリーとに分け分散開催される。まず、男子のフリースタイルが13日・14日の両日、東京・駒沢公園体育館で行われた。13日の1日目には、10階級のベスト16までを実施。9階級に28人をエントリーした山梨学院大は4人の棄権を含め16人が2日目に進めず、残る12人が2日目に上位を目指して試合に臨んだ。試合結果は、全階級中72人ともっとも出場者数多い激戦区61㎏級・榊流斗(3年)が初優勝を飾ったのを初め、同階級の服部大虎(4年)が3位、125㎏級の對比地旭陽(1年)は準決勝でこの階級優勝者に敗れたものの1年生で3位と健闘し表彰台に上った。優勝候補に挙げられていた86㎏級山田修太郎(4年)は準々決勝で敗れベスト8に沈んだ。65㎏級の青柳善の輔(2年)は準々決勝で優勝者の国士館大の選手に1ポイント差の惜敗でベスト8、61㎏級の須田快晴(1年)も準々決勝で決勝に進んだ拓殖大の選手に1-2の僅差で敗れベスト8だった。70㎏級鈴木大樹(1年)、JOCエリートアカデミー出身の74㎏級森川陽斗(3年)、57㎏級後藤玲空(3年)、125㎏級小林龍太(3年)、山田康瑛(1年)もベスト8に次が期待される8人が入った。
■首の手術から1年半のブランクから復帰したアジア選手権銅メダリスト・榊流斗―
2020年2月のアジア大会で銅メダルを獲得した61㎏級・榊流斗選手(3年)。今大会で唯一の優勝を山梨学院大にもたらした榊は、首の椎間板ヘルニアの手術後のリハビリから回復し、約1年半ぶりのマットへの復帰になった。榊流斗選手は「まったく動けない状態でこんなんでレスリングやっていけるのか強くなれるのか不安はあった」とマットに上がった。1回戦、「足が動かなかったり、力んでしまったという感覚はあった」。2回戦、3回戦と試合が進むうちに普段の動きが戻り無難に勝利を収めていった。準々決勝、難敵小川航大(日体大)と対戦。前半、1ポイント(1点)先制されるも逆転で2-1。後半中盤、2点返され2-3にされると果敢に攻め、4-3と盛り返し逆転、さらにローリングで6-3と勝利に近づいた残り僅か、相手タックルからの逆襲を受け投げられ、大技4ポイントの逆転かと思われたが2点の判定に相手はチャレンジ(ビデオ判定)を要求も、認められず榊に1点が加えられ7-5で逃げ切った。榊は「持ち上げられたときにすごく焦って背中から落ちることを避けよう」と難を逃れた。準決勝ではテクニカルフォールで退け、決勝に進んだ。この大会最後の決勝戦のマットに榊は立った。相手は長身で手足の長い森川海舟選手(拓殖大)と対戦。前半、榊は相手の投げをかわしバックを取り2点先行。後半、一進一退の攻防に残り15秒を切った時にサークル外に出され1点を失うも2-1で勝利。初優勝を飾った。榊は勝利後、「皆に迷惑と不安を掛けた分、優勝という形で払拭できたかなと思います」と感謝した。前出の74㎏級森川とJOCエリートアカデミー同期の榊は「国内で一番にならなければ意味がない」と次のパリ五輪出場を視野に入れる。
■同門の決勝を楽しみにしていた服部、ベスト8で終わった優勝候補・山田ー
一方、61㎏級3位になった服部大虎(4年)は、決勝で榊と戦った森川選手と準決勝で対戦。互いに決め手がなく、前半に服部がコーション(消極的警告)で1点を取られ、後半には相手と自身のコーションで1-2となり、残り1分逆転したい服部は激しく攻め立てるも逃げ切られ、決勝進出を逃した。服部大虎選手は「反対ブロックの榊と決勝をやると話していたんで悔しいですね」と開口一番、口にした。「相手は強い選手だったですけど、負ける相手ではなかったです。大学最後になる大会かもしれない状況で、ここで一つタイトルを獲りにいきたかったんですけど残念な結果になってしまった」と肩を落とした。
2020年2月のアジア選手権86㎏級で初優勝に輝いた山田修太郎(4年)は2018年のこの大会を1年生で制覇しており、今回も優勝を期待されていた。1回戦フォール、2回戦をテクニカルフォールに退けた。2日目の3回戦準々決勝で宿敵・日体大の白井達也選手と対戦した。試合は、前半、0-1とリードされ後半、山田は積極的に攻め相手にコーションを与えるも、ポイントを得ることができず、逆に相手の落ち着いたプレースタイルに決め手を欠き、精彩を欠いた。終了両間際に1点を返すも、逃げ切られベスト8に甘んじた。山田修太郎選手は「いつも彼とは同じ展開で勝ったり負けたりしているんですけど、相手はああいうレスリング(ゆったり攻める)が持ち味で自分はどちらかというと点を多く取ることを持ち味にしているんですが、ロースコアに抑えられてしまったので戦い方を見直していきます」と振り返った。「次は11月の大学選手権ですけど、今回4年生はあまりいい成績じゃないので団体戦は4年生でチームを引っ張っていきたい」と借りを返すつもりだ。今後について、「卒業してもレスリングを続けていくので次のオリンピックを目指そうと思っています」と3年後を目指す。
試合後、小幡邦彦監督は榊流斗選手の優勝について、「今回は本人に負けてもいいと試合の感覚を掴むために出場させたんですけど、実力通りに勝ってくれたんでほっとしています。これでもう少しマットに上がれば調子も上向いてくるので12月の天皇杯に向けて調整させたいなと思います」。この大会での1位、2位の選手は天皇杯出場の権利を獲得した。また、フリーの試合を総括して、「結果は1位1人、3位2人とそんなにうちのメンバーからしたら良くないんですけど、世界選手権の2人も出ていないですし、それでも今回、1、2年生の頑張りを手応えとして感じられたので、本人たちも強い選手といい勝負ができていたので自信になったと思います。東京が終わって(12月の天皇杯)新しいチームになるので十分パリを目指せる選手もいますし、来年いい選手が入ってくるのでそれを含めてリーグ戦とか狙っていきたい」と抱負を話した。
インカレフリースタイルの2日間が終わり、男子グレコローマンスタイル及び女子フリースタイルは11月4日、5日の両日、山口県周南市・周南総合スポーツセンターで開催される。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2021.10.15