●秋季関東地区高校野球大会 決勝戦
~強い山梨学院高、惜しくも準優勝~
~打撃戦の激闘。明秀日立高に力尽く~
「第74回秋季関東地区高校野球大会」決勝が11月7日、J:COMスタジアム土浦行われた。昨日の準決勝で山梨学院は、強豪浦和学院と接戦になった一戦で、延長戦一挙7点の猛攻で勝利し、2年ぶりの決勝戦に進んだ。決勝は開催県の茨城1位の明秀学園日立高との対戦。山梨学院の先攻で始まった試合は1回表、打撃好調の1番・鈴木斗偉(2年)がこの日も、先頭打者安打で出塁。犠打で進塁した二塁走者を同じく好調4番・高橋海翔(1年)が適時打で先制点を挙げた。さらに2回表にも先頭打者の安打をしっかりつなぎ2番・進藤天(1年)が適時打で1点を重ねた。山梨学院は1回戦に先発した山田悠希(2年)が1回裏を無難に抑えたが、2回裏一死後、死球を挟んで5連打を浴び2-2同点とされた。その後は両チーム点を取り合う打撃戦となり、6-7と1点リードされた7回表、山梨学院の攻撃。1番・鈴木が再び先頭打者安打で出塁。続く2番・進藤も犠打で得点圏に進めると、3番・岩田悠聖(2年)が適時打で同点としたがこの日はあと一本が出ず後が続かない。山田、エース榎谷と継投してきた3番手芦沢幸輝(2年)にその裏、明秀は二死後、四球と安打の走者を三塁打で返し2点を勝ち越した。山梨学院は8回、9回と走者を出すも、併殺で好機をつぶし、そのまま7-9で敗退。2年前の準優勝を超えられず涙を飲んだ。
■決勝戦 明秀学園日立高と点を取り合う打撃戦の激闘ー
山梨学院高の決勝の対戦相手は、秋季関東大会に4年ぶり4回目の出場となる明秀学園日立高(茨城第1代表)。今大会は初戦準々決勝から登場。高﨑健康福祉大高﨑高(群馬第2代表)に11-4、2回戦準決勝で木更津総合高(千葉第1代表)を5-2で下して決勝に進出した。10月30日開幕した大会も熱戦が繰り広げられ11月7日、雲が多いものの穏やかな陽射しの下、5000人を上限としたJ:COMスタジアム土浦に多くの高校野球ファンや、応援団が集まった。午前10時、主審のプレーボールの合図で試合が開始された。先攻は山梨学院高。明秀日立高の先発は、これまで2試合先発のエース猪俣駿太(2年)が3度目の先発に立った。
※1回表、山梨学院1番・鈴木斗偉(2年)は準決勝の先頭打者本塁打に続き先頭打者安打で出塁すると2番・進藤天(1年)が犠打を決め2塁に鈴木を進めた。一死後、3試合連続3安打の好調4番・高橋海翔(1年)がフルカウントから中前適時打で1点を先制。幸先よいスタート。その裏、山梨学院は1回戦に続き山田悠希(2年)が先発し1安打無難に立ち上がった。
※2回表、先頭の7番・佐仲大輝(1年)が安打で出塁。8番・星野泰輝(1年)がここもきっちり犠打で送り、二死後、鈴木の四球で走者二塁・一塁に2番・進藤が左前適時打で佐仲が返り2点目を入れ勝ち越した。2回裏、リードされた明秀日立は一死後、6番から8番まで3連打満塁にすると9番打者の右前適時打で1点を返した。続く打者は押し出しで四球で1点を追加。なおも一死満塁に山梨学院はたまらず昨日の準決勝で10回完投したエース榎谷礼央(2年)投入。榎谷は2ストライクに追い込んだ5球目を中前に運ばれ2点を失い、この回、明秀日立に2-4と逆転された。明秀日立の連打はすべて2ストライクから繋いだ。
※4回表、鈴木が犠打とワイルドピッチで三塁の走者を内野適時打で1点を追加3-4。
※5回表、1点を追いかける山梨学院は、4回二死から継投した明秀日立の10番・高橋を先頭の相澤が4球目インコース高目直球を一振。今大会2本目の本塁打で同点。二死後、2本の安打と四球でつなぎ満塁の好機に2番・進藤が右翼線を抜く2点適時打で6-4と勝ち越した。その裏、山梨学院榎谷は昨日の140球を超える連投の疲れか本来の直球の勢いが感じられず、明秀日立打線の3番、5番に本塁打を浴び、6-6と再び同点とされた。激しい打撃戦が繰り広げられる。
《グランド整備》
※6回表、山梨学院は二死満塁の好機に1本が出ずに迎えた6回裏、榎谷が2本の二塁打で1点を失い6-7。先に明秀日立に勝ち越しされた。
※7回表、明秀日立は投手を再びエース猪俣にスイッチ。先頭打者の鈴木は代わりばな、投球を見極め左前打で出塁すると、次の進藤はこの試合2本目の犠打を成功させ鈴木が進塁。これに応え、この大会調子が上がらない3番・岩田悠聖(2年)は奮起、中前に適時打を弾き返し、またも7-7同点とした。ここまで目まぐるしく点を取り合う7回裏、山梨学院はエース榎谷を代え14番・左腕の芦沢幸輝(2年)をマウンドに送った。芦沢は先頭打者を三球三振に打ち取るが、四球の走者をヒットエンドラン・盗塁と圧力を掛けられた二死三塁・二塁のピンチの場面に投じた一球を左中間深く運ばれる適時三塁打で2点を勝ち越され7-9とリードされた。
※8回表・9回表、追いかける山梨学院は走者を出すものの、ともに併殺で好機をつぶした。2019年の準優勝を超え、28年ぶりの優勝にあと一歩、届くことができなかった。
◆準決勝 山梨学院高VS明秀学園日立高 11/6(土) 茨城・J:COMスタジアム土浦
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
山梨学院高 | 1 | 1 | 0 | 1 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 7 |
明秀日立高 | 0 | 4 | 0 | 0 | 2 | 1 | 2 | 0 | × | 9 |
◆山梨学院高
[バッテリー]山田⇒榎谷⇒芦沢―佐仲大輝(1年)
[投手]山田:投球回数1回1/3 投球数42 被安打5 与四死球1 奪三振2 失点4
榎谷:投球回数4回2/3 投球数68 被安打6 与四死球2 奪三振4 失点3
芦沢:投球回数2回 投球数38 被安打2 与四死球1 奪三振2 失点2
[交代]芦沢⇒代打:18番・稲垣景大(2年)
[打撃]山梨学院高=安打17(長打=本塁打:相澤) 四死球7 三振3
明秀日立高=安打13(長打=本塁打2 三塁打1 二塁打2) 四死球4 三振8
■納得のいかない敗戦に憤る。出直すー
試合後、吉田洸二監督は「もうは反省ばかりで何も言うことがないです」と開口一番、肩を落とした。さら続けた。「相手の強さは感じなかったです。自分たちの未熟さが前面に出てしまった。特にバッテリーです。投げてはいけない球を投げたり配球がいけなかった。自滅です。同じ負けるにしてもこのような不甲斐ない嫌な負け方は本当に残念です」と憤った。5回に同点となる本塁打を放ち主将としての意地を見せた相澤秀光選手は「ヒットはうちの方が上回ってますが、チャンスで一本が出なくて相手は複数の走者がいる時に一本が出て、長打も向こうが多かった。配球の部分でやられてしまった。その差です」と唇を噛んだ。「夏の練習から関東優勝を目指してやってきて、負けたら何も残らない。冬にもう一度身体を一から鍛え直して、課題をしっかり埋めて一回り大きくなって春の選抜に勝てるように頑張りたい」と捲土重来を期す。今大会好調を維持し存在感を示した鈴木斗偉選手は「夏の5連覇を自分たちがつぶして多くの人に迷惑を掛けてしまい、とにかくこの関東で優勝して神宮大会へ行くことが最低限の仕事と思っていたので悔しいというか申し訳ないです」と3年生たちへの思いを口にした。「力の差はなく勝てる試合だったと思います。ピッチャーも榎谷の方が上だと思うんですけど、連投で打者が打って取らなければと思っていたんですけど、決勝で空回りする選手も多かったので、打者ひとり一人の役目がうまくできなかった」と敗因を語った。「打つだけではなく、バントやバント処理など細かいプレーを一からやり直していきたい」と次に向かう。
優勝した明秀学園日立高は9月20日から行われる明治神宮大会に関東地区代表として出場する。負けた山梨学院高は1993年以来、28年ぶりの2度目の優勝はならなかった。一度低迷したチームを一から見直し部内競争で勝ち抜いたメンバーで這い上がった夏の県大会準決勝では、ミスから決勝戦を逃した経験から新チームは夏の猛練習に耐え抜き掴んだ秋季関東大会県大会優勝、そして秋季関東大会出場。1回戦から3回戦、目を見張る躍進で本来の山梨学院の強さを証明したが準優勝で終わった。決勝戦は指揮官の言う「最低の試合」という言葉に選手たちは真摯に向き合い、冬を乗り越え、春の選抜甲子園、夏の甲子園に溌剌とした雄姿を見せてくれるだろう。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2021.11.8