●山学大生、“租税教室”実施に向け税理士が直接指導
~東京地方税理士会山梨県会と連携した教育プログラム~
~太郎良ゼミ13名が課題解決し、実践授業に取り組む~
山梨学院大学経営学部で11月9日、税理士を講師に迎えた連携授業が行われた。山学大では、東京地方税理士会山梨県会と「租税教育の推進と充実」に関する協定を締結しており、相互に連携して租税教育に携わる人材育成を行っている。経営学部・太郎良留美教授の専門演習Ⅱ(3年次配当科目)では、学生たちが租税について調査・研究を行い、成果として小学生を対象にした「租税教室」を実施している。学生たちは「租税教室」実施に向け、各グループで準備を進め、日々のゼミや自主学習で顕在化した課題等の解決にも取り組んでいる。この日は、協定に基づく租税教育プログラムの一環として甲府支部から2名の税理士が講師として参加し、甲府支部が普段実施している租税教室について学生たちに解説を交えて実演指導を行った。講師からは、小学生向けに税の種類や集めた税の使い道などの基本的な事柄をパネルを使い、分かりやすく理解してもらう方法やポイントなど具体的な説明の仕方が指導された。学生たちは、地域で実務に携わる専門職から直接指導を受け、これまでのグループ研究や自主学習などを通して得た知識を活かし、12月に予定されている山梨学院小学校5年生に行う租税教室に向け、本格的な準備に入る。
国が国民に社会の構成員として正しい判断力や健全な納税者意識を育てるという目的のため、2016年、税務署と地域の税理士会と教育機関と連携して租税教育に関する方針が打ち出された。連携協定に至るきっかけは、甲府税務署からの打診により、5月に東京地方税理士会山梨県会と「租税教育の推進及び充実」に関する協定を締結した。租税教育は、次世代を担う児童・生徒が租税の意義や役割を理解し、健全な納税者意識を養うこととしている。太郎良留美経営学部長/教授は連携協定の意義として、「甲府支部の先生方と一緒に2016年にこのプログラムを立ち上げました。私も租税が専門ですが、学生たちが租税について気軽に取り組めないイメージもありましたし、人前で話すとか発表するとか、コミュニケーション能力を養う体系化されたプログラムが必要であると考えていました。その中で、租税教室開催に至るプログラムを効果的に活用できないか、また税理士会や税務署など専門的知見を有した社会人の方たちとの交流・実践的指導が学生たちへの刺激や社会人としてのマナー醸成に活用できると考え、継続して協力していただいています」と租税の知識ともに学生の人格形成の成長につながると語る。
9日に行われた「租税教室」実践授業では、太郎良ゼミ13名が出席。初めに東京地方税理士会甲府支部の浅川尚樹租税教育推進部長が「人に何かを教えることはその何かについて自分自身が深く理解しておく必要があります。また、理解していてもそれを相手に伝えるための何かが必要となります。本日はそのヒントを掴んでいただくために『租税教室』の実演と解説を行います」と挨拶。続いて12月中旬、山梨学院小学校5年生に実施する「租税教室」の実演を指導する甲府支部・田中健介税理士のもと“模擬教室”が行われた。学生たちが生徒役になり、甲府支部が制作したシナリオに沿って授業が進められていった。田中税理士は学生たちとクイズを交え、税金の種類や市民税など自治体が集める賦課課税、自分たちが申告して納める所得税などの申告納税の違いを次々とパネルとボードで示し説明。さらに納めた税金がどのように使われているか、グループワークで学生たちの意見を聞きながら小学生に分かりやすく、理解してもらうポイントを挙げながら進行して行った。田中税理士は最後に租税教室の大事な事柄として、①税理士は税金の専門家②皆さんの公共施設や学校生活に税金が使われている③税金の無駄使いは、必要なものが使われなくなる、と3つのポイントを強調して実演は終了した。
実演の後を引き継いだ浅川部長は租税教育の目的を「申告納税制度の理念や納税者の権利及び義務を理解し、社会の構成員としての正しい判断力と健全な納税者意識を育てる。そして、民主主義国家の構成員として積極的な参加意識を伴う、納税者意識を育むためには、『税金の集め方・使い方』を考えさせた上で、自分たちが選んだ代表(国会議員)を通じて自分たちで決めるのである。それは、自分たちで決めたルールであるがために、『税金は取られるものではなく納めるものである』ことを認識し、納税者として集められた税金が正しく使われているか関心を持ち、しっかり監視しなければならない」と学生たちに税金の対する向き合い方を述べた。
初めて「租税教室」の指導を受けた松本尚樹さん(経営学部3年)は「お話の中で税金は身近ものだなと改めて感じ、民主主義の基本や自分たちにとって大切なものだなと思いました。『租税教室』はやったことがないので、税理士の方が実演していただいたのでイメージできました。このシナリオを見ていても(小学生には)まだ結構堅苦しいなと感じたので面白く分かりやすく簡単に伝えたらなと思います。本番に向けて自分たちもしっかり準備して頑張ります」と語った。指導する太郎良教授は「毎回、学生は相手が小学生でも結構緊張していまして、私も見ていてドキドキします。1つのチームがクラスごとに2回やりますが、1回限りの本番なので終わった後に、もう一回やりたい、リベンジさせてほしいと毎年聞きます。そのため4年生が違う県内の小学校に行って、今度は税務署の広聴官の方たちにも協力していただいてもう一度、租税教室にチャレンジすることをやっています。この取り組みは教員側からの誘導ではなく、これまでのプログラムを通じ、自主的に準備を進めているところです」と税に対する学生たちの意識がこのプロジェクトを通じて向上していることに手応えを感じている。
12月に予定されている「租税教室」の授業では、学生たちがこれまで習得してきた租税への理解をより深め、税理士からの指導をもとに、想定される課題をクリアし、小学生が理解しやすいように独自の租税教室用のシナリオ案を制作。より自分たちのオリジナリティを出した授業を展開すべく、12月23日への実践に向けて準備を本格化させる。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2021.11.10