●全日本学生柔道体重別団体優勝大会
~チーム力で競う7階級 山学男女・紙一重の敗退~
~女子優勝、男子ベスト4の目標に届かず~
「2021年度全日本学生柔道体重別団体優勝大会」が12月8日開幕。北海道から九州まで9地区の予選を勝ち抜いた男子53校、女子21校が兵庫県尼崎市ベイコム総合体育館に集結した。9日までの2日間、男女合わせて約1000人の精鋭たちが技を競う。1大学1チーム7人制、トーナメント方式で大学日本一を争う大学対抗戦で男子23回、女子は13回となる。大会1日目、女子は1回戦から準決勝まで、男子が1回戦から3回戦までが行われた。山梨学院大女子は初戦の2回戦、近畿大と対戦し4勝0敗3分けで完勝。3回戦準々決勝は前回大会(2019年)優勝の東海大との対戦に先鋒から中堅まで4試合を引き分ける拮抗した展開に5人目三将に先制を託すも、指導の反則負け。続く6人目副将も優勢負けで0勝2敗4分け、ここで2017年以来3度目の優勝の夢は絶たれベスト8となった。男子も2回戦から登場。初戦早稲田大との対戦は、2勝1敗4分けで勝利。3回戦に第1関門、2018年度大会の覇者・日体大と対戦。2人目次鋒で技あり、4人目中堅で1本負けを喫し、0勝2敗2分け。残り3人で逆転勝利を目指すも5人目三将、6人目副将が引き分け、最後の大将が一矢を報いたが1勝2敗4分けで惜敗。ベスト16で終わった。
全日本学生柔道体重別団体優勝大会は、全国9地区、男子53大学、女子21大学が集結。男女とも7階級1大学1チーム7人制でトーナメント方式により大学日本一を争う対抗戦。各階級2人までのエントリーが許される。昨年は新型コロナウイルス感染防止のため中止となり、2年ぶりの開催。山梨学院大柔道部はこれまで女子は2度の優勝。男子はベスト8が最高位だが、女子は2017年度の優勝を最後に2018年3位、2019年ベスト8と決勝戦に進めずにいる。男子はここ2大会ベスト16で足踏みしている。先月行われた全国学生柔道優勝大会(5人制)では女子3位、男子ベスト16と悔しい大会で終わり、今年度学生大会最後に有終の美を目指して臨んだ。
■女子1日目。配列先鋒63㎏級、次鋒78㎏超級、五将70㎏級、中堅78㎏級、三将57㎏級、副将52㎏級、大将48㎏級、2日目は変更される。
1日目、山梨学院大女子(関東)初戦の2回戦、1回戦を勝ち上がった近畿大(関西)と対戦。
◆1日目女子初戦2回戦《山学大VS近畿大》12/8 兵庫・尼崎ベイコム総合体育館
山梨学院大(4勝0敗3分け)勝利
配列 | 先鋒63級 | 次鋒78超 | 五将70級 | 中堅78級 | 三将57級 | 副将52級 | 大将48級 |
山学大 | 岡田 萌④ | 高橋瑠璃③ | 多田純菜③ | 森心晴➀ | 渕田萌生③ | 児玉風香④ | 古賀若葉② |
引き分け | 〇合わせ技 | 引き分け | 引き分け | 〇縦四方個 | 〇縦四方個 | 〇合わせ技 |
〇中数字は学年
試合は、先鋒の岡田(4年)が相手を崩して寝技に持ち込み攻勢を掛けるが決めきれず引き分け。次鋒78㎏超級の高橋瑠璃(3年)は11月の全日本柔道体重別優勝大会(個人)で優勝。調子を上げてきており合わせ技で1本勝利。続く70㎏級多田純菜(3年)も体重別優勝大会で優勝。気を良くして大会に臨み初戦を引き分けた。中堅78㎏級を任された森心晴(1年)は耐えて引き分け、勝利に貢献した。三将57㎏級の渕田萌生(3年)は1年生の前回大会で優秀選手に選ばれており、先の体重別優勝大会でも優勝に輝いている。試合は渕田ペースで進み、縦四方固めで勝利。副将52㎏級の児玉風香(4年)も終了間際に縦四方固めを決めここでチームの勝利を決めた。最後の大将48㎏級では2020年グランドスラム・パリで銀メダル、2021年同大会で優勝に輝くなどジュニア時代からいくつもの実績を持ち将来を有望視されている全日本B強化指定を受ける古賀若菜(2年)が登場。無難に合わせ技で相手を下した。初戦を4勝0敗3分け、幸先よいスタートを切った。
■3回戦準々決勝戦は、2019年前回大会優勝。今年11月の全日本学生柔道優勝大会(5人制)に2連覇を飾り今大会も優勝候補筆頭の東海大(東京)と対戦した。
◆1日目女子準々決勝《山学大VS東海大》12/8 兵庫・尼崎ベイコム総合体育館
山梨学院大(0勝2敗5分け)敗退
先鋒63級 | 次鋒78超 | 五将70級 | 中堅78級 | 三将57級 | 副将52級 | 大将48級 | |
山学大 | 岡田 萌 | 高橋瑠璃 | 多田純菜 | 吉田菜美 | 渕田萌生 | 児玉風香 | 古賀若葉② |
勝敗 | 引き分け | 引き分け | 引き分け | 引き分け | ●反則負け | ●技あり | 引き分け |
●反則負け=指導を3つ受けると1本負けとなる
先鋒の岡田は先手先手と攻め相手にプレッシャーを与え主導権を握るも決めきれず引き分けに持ち込まれた。次鋒の高橋は、実業団から東海大に入学し重量級のホープと期待されている児玉ひかり(3年)と対戦。高橋、児玉は全日本B強化指定選手同士のライバル。一回り大きい体格で圧力を掛ける児玉に対して高橋はがっちりと組み随所で足を狙いチャンスをうかがい攻めるが互角の一進一退が続き引き分ける。五将多田は落ち着いて相手と対するも互いに譲らず引き分け。中堅には主将の吉田菜美(4年)が満を持して登場。先制が欲しい吉田は組手争いから徐々に前に出て仕掛け技を繰り出し主導権を握るが攻め切れずに引き分け、4人が終わってすべて引き分ける拮抗した展開が続いた。続く三将渕田の相手は全日本B強化指定の富沢佳奈(4年)。渕田は何度か巴投げを狙って先手を打つも、激しく動く相手に手こずり指導3を受け反則負けを喫した。試合巧者にしてやられ悔し涙を流した。副将の児玉は前半、激しく攻め合う中、足技で相手を倒し技ありと思われたが流されチャンスを逸すると、中盤から相手も攻勢を掛け児玉が凌ぐ場面が目立った終了間際、一瞬の小内刈りを決められ山学は2敗となりこの時点で負けが決まった。大将の古賀は引き分け、山学はあと一歩の0勝2敗5分けで準決勝に進めず前回順位のベスト8止まりとなった。東海大はこの後の準決勝戦で環太平洋大に敗れた。
試合後、選手を集めて関根健寿コーチは「試合の内容はとても良かった。練習してきたこと、しぶとくやること全部できていた。でも負けた結果が現実。この負けを、良かった内容を次につなげるのは皆であり俺たち次第。この団体戦というのは個々の強さもあるけれども、それ以上にチーム力。これをいかに高めていくかこれからの団体戦に向けてどんな練習につながっていくか。今日の試合のことを一つひとつ忘れずにつなげていく。4年生は3年生にいいバトンを渡してくれた。4年生の仕事はここまで」と3年生にこれからの奮起を促した。
西田孝宏総監督は「今回の大会で東海大がチーム力でいうと一番優勝候補の筆頭なんです。実力校と3回戦で当たってしまって、でも勝てない相手ではないので何とかしようと行ったんですけど、結果的に2点取られてしまい、取りたいところで取れなかったその差です。負けた渕田の相手は全日本クラス、引き分けた高橋の相手も全日本で優勝してもおかしくない相手で頑張ったですけど仕方ないですね」と選手をかばった。吉田菜美主将は「実力的には向こうの方が上だったので、自分のところで取れなく流れを変えられなかったのが悔しい」と唇を噛んだ。そして続けて「自分のチームになってから大変で苦しかったですけど同級生や後輩が支えてくれ一緒に頑張ってくれたので結果は負けたけれど、皆で力を出し切りしっかり戦えたと思います」としっかりと前を向いた。
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■男子1日目。配列は先鋒73㎏級、次鋒60㎏級、五将100㎏超級、中堅81㎏級、三将100㎏級、副将90㎏級、大将66㎏級、2日目は変更される。
山梨学院は初戦2回戦に1回戦を勝ち上がった早稲田大(東京)を迎えて対戦。
◆1日目男子初戦2回戦《山学大VS早稲田大》12/8 兵庫・尼崎ベイコム総合体育館
山梨学院大(2勝1敗4分け)勝利
配列 | 先鋒73級 | 次鋒60級 | 五将100超 | 中堅81級 | 三将100級 | 副将90級 | 大将66級 |
山学大 | 熊谷一起② | 山科雄也➀ | 上林山雄斗④ | 山科良悟④ | 畠山竜弥④ | 林 大地③ | 川上武士④ |
勝敗 | 〇反則勝ち | 〇内股 | 引き分け | ●肩固め | 引き分け | 引き分け | 引き分け |
先鋒の熊谷一起(2年)は積極的な攻めで相手から指導3を奪い反則勝ちで先制。次鋒山科雄也(1年)は互いに攻め合う中盤、山科の内股が決まり2勝目。五将の上林山雄斗(4年)は先手を仕掛けることで試合を優位に進めたが引き分ける。中堅山科良悟(3年)は先に技ありを決め主導権を握るも返し技からもつれ肩固めの寝技で逆転負けを喫した。三将畠山竜弥(4年)は11月の体重別優勝大会で3位に入った実力者。組手争いから足使いからチャンスを狙うも引き分けた。続く副将の林大地(3年)、大将の川上武士(4年)も一進一退の攻防を展開するが引き分け、先制した山学が2勝1敗4分けで初戦を突破した。
■男子3回戦は2018年度大会優勝、上位常連校の日体大と対戦した。
◆1日目男子3回戦《山学大VS日体大》12/8 兵庫・尼崎ベイコム総合体育館
山梨学院大(1勝2敗4分け)敗退
配列 | 先鋒73級 | 次鋒60級 | 五将100超 | 中堅81級 | 三将100級 | 副将90級 | 大将66級 |
山学大 | 熊谷一起 | 山科雄也 | 畠山竜弥 | 山科良悟 | 岩田歩夢④ | 林 | 川上 |
勝敗 | 引き分け | ●技あり | 引き分け | ●裏投げ | 引き分け | 引き分け | 〇送足払い |
先鋒の熊谷は切り込み隊長として激しく渡り合い指導2を受けながら頑張り引き分けに持ち込んだ。次鋒山科(雄)は互いに足でけん制しチャンスをうかがう中、中盤2つの指導の焦りからか首投げの技ありを決められ、必死に挽回を試みるも1勝を失った。五将畠山は重量級の力対力の争いに互いに譲らず引き分けた。続く中堅山科(良)に起死回生の1本を期待して送り出し、前半それに応えるように支えつり込み足で投げが決まり1本勝ちで同点に追いついたと思いきや、審判の判定が技ありに覆り試合は続行。その後、組んだところに身体を抱え込まれ逆転の裏技1本を決められ不運と形容しかない負けとなった。残り3人、挽回を託され三将の岩田歩夢主将(4年)、副将林が勝利を目指したが引き分けが続き、大将の川上が前半にすみ返しの技ありと後半の送足払いの技あり合わせ1本で勝利するも、時すでに遅し1勝2敗4分けで敗れ、2日目に進めずベスト16で涙を飲んだ。
試合後、西田孝宏総監督は、負けはしたものの健闘した選手を前に「7人の中でチャンスというのはほんのわずかだと思う。その分をしっかり取るようにしていかないと勝つのは難しい。4年生最後の大会で全員に頑張ってもらいたかったけど、やれることはやってきたので負けたのは仕方がない。もう少しレベルを上げないと」と課題を挙げた。今年の山梨学院男子は5月の関東大会で優勝しスタートダッシュを見せたが、「全国ではいい結果は残すことができなかった。でもお前たちがすごくいい背中を見せてくれたことが刺激になって後輩たちが頑張ると思うので。本当にご苦労さん」と4年生を労った。西田泰悟コーチは試合を振り返り「全体的に見ると日体大の力が上なんですけれど、こちらに流れを持ってくるようにイチかバチかのるかそるか、ちょっと勝負を懸けるような展開をしなければと思って」と日体大への作戦を明かした。西田コーチが“爆弾兄弟”と呼ぶ山科兄弟に勝負を懸けたが先に弟が負け、兄の良悟が逆転を負けを喫し、流れを呼び込めなかった。西田コーチは「兄の良悟がスコーンと投げて1本と言ってもらっても良かったところが取り消され、そこでやられてちょっと運がなかった。あそこで1本だったらこちらが勝っていたわけですから」と悔やんだ。「でも皆が頑張ってくれたのですごく気持ちのいい試合でした。言うことのない100点満点の試合でした」と選手の頑張りを称えた。岩田歩夢主将は「コロナで試合がなくなってしまった一つ上の先輩たちの本当にむなしい姿が心の中に残っていて、団体メンバーの4年生で先輩たちの思いも晴らそうという気持ちで1年間挑んできた結果負けてしまったんですけど、また後輩たちにつなげてもらえればと思います。ベスト4以上と目標を立て首一つ抜けて行こうという思いでやってきてちょっとしたところで駄目だったですが、でもそんなに差はないので16はどこがなってもおかしくないという16だと思います」。どこが勝っても負けてもおかしくない学生柔道界の群雄割拠の熾烈な戦いが続く。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2021.12.9