山梨学院広報課

HOME

山梨学院パブリシティセンターニュースファイルイメージ画像

●山学大生が昭和町議会へ政策提案発表会 
~現在の課題や将来を見据えた中長期の改善策を提案~ 
~若者目線で調査・研究を重ねた5提言で議会を動かす~ 

2008年に山梨学院大学ローカル・ガバナンス研究センターと昭和町議会が先進的な議会を目指す地方議会改革の一環として全国初となる連携協定を締結してから13年。これまでに双方が課題を持ち寄る実践的研修会の実施や、地域が抱える課題や問題点を学生からの提案を基にしたワークショップを行うなど連携を深めてきた。その中のひとつが4年前から始まった学生による「政策提案発表会」。今年も12月17日に昭和町議会議場で開かれた。大学側から法学部政・外川伸一ゼミ、江藤俊昭ゼミ、日高昭夫ゼミが参加。5グループに分かれ昭和町議員14人を前に政策提案を発表した。提案内容は、「女性の政治参加」「若者の政治参加」「地域防災力を高める政策~住民、行政、議会の役割に着目して」「昭和町の少子化対策について」「昭和町が導入すべき景観政策について」の5案。現在昭和町が抱える課題や将来を見据えた中長期改善策を約6ヶ月の限られた期間内に調査・研究を重ね、練り上げた提案を行った。提案を受けた議員は真剣に耳を傾け、質疑応答では活発な意見交換が行われ、これからの議会や運営委員会で検討が重ねられていく。 
 
今年で4回目となる学生による「政策提案発表会」が昭和町議会議場で行われた。この発表会は、2008年、山梨学院大学ローカル・ガバナンス研究センターと昭和町議会が連携に関する協定締結によるもの。山学大法学部の外川伸一ゼミ、江藤俊昭ゼミ、日高昭夫ゼミが専門的知見の学習・研究、学習成果の地域課題への反映などを目的に4年前から昭和町議会に若い感性で新しい風を送るものとして実施されている。今年、町政50周年を迎えた昭和町にあって議会が果たしてきた役割は大きく、その一助として山学大ローカル・ガバナンス研究センターがこれまでに昭和町議会に対し研修・政策提言・コンサルティングなどを行い議会改革を支援してきた。 
 
■主催者代表挨拶 
午後1時30分、「政策提案発表会」は初めに主催者の昭和町議会・石原高明議長が挨拶。「私どもは山梨学院大学の学生の新鮮な取り組み提案について議会として町に提案したり、また議員提案として条例の制定をしています。これまで江藤先生指導のもと、いろいろな企画をやりその甲斐があり全国表彰されたり県からも一目置かれ、全国からも視察が来るなどしています。そんな中、皆さんの今回の提案についても、しっかり勉強した中での発表ですので私たち議員も通常の議会と同じように質問をさせていただきます」と述べ、続けて同じく主催者の外川伸一ローカル・ガバナンス研究センター長は初めに協定後の活動経過を説明。「ゼミによって期間は多少違いますが約半年をかけた政策なので今日は素晴らしい発表をしてくれると思います。今まで練ってきた提案を積極的にプレゼンを行い、有終の美を飾れるよう皆さんの頑張りに期待します」と述べた。 
 
■各ゼミ5グループの政策提案発表(持ち時間各25分) 
議事進行を進める議長役を外川ゼミの渡邊裕次郎さん(政治行政学科3年)が務め、最初の発表グループを紹介。続いて政策提案発表が開始された。 
 
◆第1提案(江藤ゼミAグループ7人)「女性の政治参加の提案」 
発表ではまず、3つの企画提案を提示した。1つ目として議会は男性の職業という固定観念の払拭を目指す。そのために講座・セミナー等の実施し議会を身近なものにする。2つ目に介護や育児があり家庭生活との両立が難しく立候補を断念するなどの理由から議会に参加できるようなオンライン議会の実施。3つ目にハラスメントを未然に防ぐ基準を設けた条例の策定など先進例を示しながら課題の重要性や論拠を提示説明した。終了後に議員との質疑応答が行われた。(以下同じ) 発表後、リーダーの今村洋介さん(政治行政学科3年)は「研究の成果をしっかり伝えることができました。今、実際に何が問題なのかを考えた時に、私たちの観点からでは違った見方でネットやニュース、新聞を見ることで様々な価値観があることを知ることもできました。またアンケート結果からも多くの大きな事を学べ、今日の成果や成長につながったと思います」と実践で学ぶ重要性を語った。 
 
◆第2提案(江藤ゼミBグループ6人)「若者の政治参加の提案」 
学生たちが町政に参加できる場がないことを問題とし、学校の授業の一環として学校の選択授業で議会に提言できる環境を設置するとして他県の事例を紹介。議会ホームページに昭和町への要望を書き込めるアイディアBOXのようなページを作る。昭和町の将来に向け、地方創生の観点から生活アイディアを発表して競う合う若者政策コンテストの開催の3つの政策案を提言。政策案の具体案などを示し現状から見えた課題を一つずつ分析。まとめとして昭和町に若者を増やすためにできることは、若者を巻き込んだ町政の実施、帰属意識を高め、若者が参加したくなるような政策を実施し、若者であふれる街を構築することと結んだ。 
発表後Bグループのリーダーの板倉洋介さん(政治行政学科3年)は「議員の方々も『参考にする』という意見が出ていたので今までやってきたことがうまく発表できたと思います。若者を増やすという点で今住んでいる方とか高齢者の方とかに嫌な目で見られるマイナスの部分があると思ったのですが、反面プラスの面も大きくていかに地元愛を築けるかで昭和町の将来に関わってくると思ったのでそこを意識しながら調べました。これから就活とかもあるのでこれらの経験を活かしていきたいです」と語った。 
 
◆第3提案(日高ゼミグループ17人)「地域防災力を高める政策の提案~住民、行政、議会の役割に着目して~」 
日高ゼミグループは、初めに昭和町の地域防災を巡る現状と課題を紹介。まずはインターネットで他の自治体の防災対策情報を収集、そして昭和町で集めた災害・防災に関する情報を調査し、現状の疑問点を洗い出した。そこで導き出した提案は、住民に対しては「DIG」(参加者が地図を使って防災対策を検討する訓練)を用いた防災教育。行政には行政職員への継続意識の維持のために年一回の抜き打ち防災訓練の実施。議会には住民や行政職員を動かしリーダーシップを担うことで意識の底上げができるなどと提言。ここでのリーダーシップとは基本条例の災害・防災の項目に追加。将来は防災基本条例の制定を目指すことに積極的に動く役目と定めた。項目ごとに事例と特徴をチーム分けされた学生たちがそれぞれの対策を丁寧に説明した。リーダーの後藤悠さん(法学科2年)は「終わってほっとしています。ゼミで学んだことが議員の方にしっかりと納得してもらえたと思うので提案できて良かったです。この活動経験を地元(笛吹市)に活かせるようにしたい」。同じく北原一輝さん(法学科2年)は「調べることが多くて提案の制作期間は短かったですけれどもうちのグループは3つチームがあり、テーマを一つとしてまとめるのに苦労しました」と打ち明けた。 
 
◆第4提案(外川ゼミAグループ13人)「昭和町の少子化対策についての提案」 
初めに少子化が抱える問題点を提示。一つは経済的影響で労働力供給の減少、社会保障への現代世代の負担増。社会的影響の住民に対する基礎的サービスの提供が困難と2つを挙げ、少子化対策には合計特殊出生率の上昇が大切と考え、そのための具体的な施策を提示した。出会い支援、結婚支援、妊娠・出産支援、子育て支援の充実を系統づけ、フィンランドのネウボラ制度(妊娠~子育ての切れ間ない支援)を参考に昭和町版ネウボラ(上記の流れ)の推進政策を提示。それぞれの支援の内容を具体的に提案した。質疑応答では社会的問題の少子化対策とあり、議員から質問が集中、正規・非正規雇用の賃金格差や現在の社会構造によって金銭的な不足を財政難の町が支援する提案に厳しい発言もあった。グループリーダーの穂坂俊輝さん(政治行政学科3年)は「緊張しました。少子化対策を提案するにあたり少子化は幅広いことなのでどこに重点を置いて発表するのか、メンバーと議論を重ねながら行ったのですが絞り込みに時間が掛かりました。将来、県庁か市役所に勤めることが夢なのですが就職した際に議会に提案することもあると思うのでこの経験を生かしたい」と話した。 
 
◆第5提案(外川ゼミBグループ10人)「昭和町が導入すべき景観政策についての提案」 
続いて議長を外川ゼミの穂坂俊輝さん(政治行政学科3年)に代わり進行した。 
最後のグループは昭和町に景観条例を策定し、その中に盛り込む政策を前提として提案した。「自然と調和のとれた街づくり」をキーワードに「統一感のある家並みの創造」「公共施設・公共空間等の統一的景観づくり」「商業施設等の統一的景観づくり」の3つを中心に政策体系図を基に話を進めた。いくつかの地区の写真を示しながら現在の情景の特徴を分析、住宅の素材や色彩の統一感の欠如などいくつかの課題を挙げた。公共施設・公共空間の整備・改修、環境緑化事業、商業施設等における外観、色彩、ロゴ・看板などさまざまな統一感に関する問題点などを拾い上げ現地調査、資料収集など地道な作業で大きな課題と対峙してきた。そこで導き出した政策は、景観政策は数年でできるものではなく、10年、20年掛けて行うもので現段階ではどこまでできて、数年後はどこまでできるのか細かい目標を立てることが必要と結論付けた。Bグループリーダーの渡邊裕次郎さん(政治行政学科3年)は初めに議長を務めた感想を、「周りに議員さんに囲まれて、議長席に座って緊張もしたのですが、あまりない機会なので本当に有意義な経験で良かったです」。提案発表では「景観というところで実際の昭和町の写真を多く使用したことがうまく説明できたところです。データを出すところでデータの出所と意図が甘い部分があって、ちょっと突っ込まれました」と苦笑い。将来は「自分は行政職に就きたいと思っていので政策を立てるということは自分の未来につながることだと思うので、今回は時間を掛けた実践学習ができ、行政とはこういうことをやっているんだと知れたことがためになりました」と発表会の意義を話した。 
 
5つの提案発表を通して昭和町議会議員は学生たちの若い感性の考えと一生懸命に政策づくりに取り組んだ提言に真剣に聞き入りメモを取っていた。質疑応答には多くの議員の活発な意見の発言があり、励ましと時に厳しい指摘もあり、互いに熱のこもった発表会になった。最後の「景観」に対しての案では議員の一人は「事業を起こすにはどのくらいの費用対効果があるのか、ということまで突っ込んだ提案があったらよかった。昭和町はお金があるようでないのです。だから企業からお金を生み出すしかありません。国からお金はもらえません。そういう意味も含めて皆さんの提案を今後とも聞きながら進めていきたい」と学生の提言に評価とともに議員らしい鋭い指摘を述べた。 
 
閉会の挨拶に立った金丸富一副議長は「皆さんの提案に対して昭和町の未来を具体的に考えることができました。私たちも年齢を含めて幅広い人材と年間を通して活動できる議会を目指して改革を進めたいと思います。今回の発表会は、山梨学院大学ローカル・ガバナンス研究センターの皆さんと学生さん、私ども昭和町議会の議員全員の今後の成長活動につながればいいと思います」と謝意とともに発表会を締めた。終了後にはゼミごとに議員との記念写真撮影が行われた。
 
文(K.F) カメラ(平川大雪)2021.12.18