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太郎良ゼミ生「租税教育」成果を小学生の授業に反映
~税理士会山梨県会との連携で課題テーマを研究~
~税への無関心から関心へ。学生の意識変化に光~

山梨学院大学経営学部太郎良留美ゼミで10月11日、税理士を講師に迎えて連携授業が行われた。山梨学院大学では、2016年に東京地方税理士会山梨県会と「租税教育の推進と充実」に関する協定を締結しており、以来、相互に連携して租税教育に携わる人材育成を行っている。経営学部・太郎良留美教授の専門演習Ⅱ「3年次配当科目」を受講するゼミ学生は、税理士会甲府支部、甲府税務署の協力を得て学んだ租税についての知見の成果として小学生を対象にした「租税教室」を毎年行っている。この日は、協定に基づく租税教育プログラムの一環として税理士会甲府支部から3人の税理士が講師として参加。現在、学生たちが取り組んでいる研究課題のテーマ別の進捗状況を見極め、調査方法や方向性についてアドバイスを示しながら次のステップに向け熱心に議論を交わした。13人4グループに分かれた太郎良ゼミの学生らは、自分たちが選んだそれぞれの4つ課題に苦しみながらも仲間と意見を出し合っていた。ゼミ生たちにはこの授業と相まって、これらの税に対する知識を学んだ成果を、自らが講師になって小学生に教えるという最終目的、「租税教室」が控えており、その準備がこれから本格的に始まりゼミ生にとって最も忙しく充実した日々を迎える。「租税教室」は12月21日、山梨学院小学校5年生の授業で実施される。

国が国民に社会の構成員として正しい判断力や健全な納税者意識を育てるという目的のため、2016年、税務署と地域の税理士会と教育機関と連携して租税教育に関する方針が打ち出された。山梨学院大学が連携協定に至るきっかけは甲府税務署からの打診により、5月に東京地方税理士会山梨県会と「租税教育の推進及び充実」に関する協定を締結した。租税教育は、次世代を担う児童・生徒が租税の意義や役割を正しく理解し、健全な納税者意識を養い、その使い道に関心を持ってもらうことを目的にしている。

10月11日、太郎良留美ゼミを訪ねると、11月1日に行われる租税に関する「研究課題発表会」の準備が進められていた。9月27日に始まった今回の授業は3回目となり、この日は協定に基づき、租税教育プログラムの一環として東京地方税理士会甲府支部の3人の税理士が講師として参加した。授業は、太郎良ゼミ13人が4グループに分かれ、税理士3人と太郎良教授が各チームを指導した。山梨学院大学経営学部学部長・太郎良留美教授は「現在、行っている租税に関する授業は、小学生に向けて行う授業の前に、本来学生が自分たちなりに税金というのがどんなものなのかに関して、課題を通して学習することによって、税に対する知識と小学生に授業する前の心構えをつけてもらいたいというのが狙い」と税への専門知識と問題意識を深め、教えることの大切さを語る。

内容は、甲府支部が事前に用意した税に関する研究課題テーマに沿って行われ、
〇1班は相続税の『富の再分配機能について』
〇2班は『超過累進課税制度について』
〇3班は日本/世界のおもしろい税金
〇4班はコロナ対策と税金 
それぞれに目的や根拠、効果などに訴求する調査・研究の3つのポイントを挙げ、●税の三原則(公平・中立・簡素)●税について考える“視点”は一つではない●私たちの税に対する向き合い方で制度設計も変わるーと守るべきルールと多角的に考えることが求められ、論点が逸脱しないように設定されている。2回目から資料収集、調査・研究が始まり、3日目のこの日は、グループテーマとして挙げられていた研究課題解決にどこまで分析がされているかなど、進捗状況の報告とこれからの方向性を見つけるための授業となった。授業には連携協定によって協働する東京地方税理士会甲府支部所属の有泉 真税理士、(同)小笠原光規税理士、(同)高野聖子税理士、そして太郎良教授が講師として授業を進めた。それぞれのチームで研究テーマの切り口や論点など講師の指導を受けながら自らの考え方や問題点の抽出など活発に意見交換が行われた。

それを受けて、主に1班の指導に当たった有泉 真税理士は「まずはグループ内の答えを見つけてもらい、ただ調べるだけではなく、相続税の歴史がこうです。課税の根拠はこうなっています。根拠に対して日本ではこういう現状です。それがちゃんと機能しているか、していないのか。機能していないとしたらどう別の方法を取るべきか。ということを大学の研究なので調べるだけでなくて、自分なりの税金に対する答えを出してもらいたいという気持ちで取り組んでいます」。2班を指導した小笠原光規税理士は「税金というのは自分がどういう世界にしたいかによって変わっていくものなので、どのようにしたいのか、超過累進課税はいいと思うのか、悪いと思うのか、元々は自分はどういう世界がいいのかというところから出ているので、そこを考えてもらえたらいいなと。あなたはどう思うという感じで進めてくださいと伝えています」。3班を担当した高野聖子税理士は「日本や世界ではいろいろな税金があることは、ネットで調べればいくらでも出てくるので、ただそれを調べるだけではなく、どういう目的でその税金が導入され結果的にその国でどうなっていったのか。このテーマを研究するにあたり、税金は公平、中立、簡素という3つを満たすものでなくてはならない。もう一つが税金は、国の将来を決めていくために使われるものなので、自分たちがどういう国にしたいのか、この税金が役に立つのかどうかという大きな2つの視点結びつけて、自分たちだったら日本ではこういう税金が欲しい、というような感じのことを考えてほしい」と着目点を指摘した。税理士たちは実務のプロとして、参考となる具体例や資料の収集方法、資料の出展先の必要性、論点の整理・組み方など多角的な物事の捉え方を積み上げることがより発表内容に深みが増し、また、チームで議論することよりコミュニケーション能力を醸成する効果が考えられると指導する。

今回、指導を受けた学生たちは最後に次回に進めていくポイントをそれぞれのチームリーダーが挙げた。初めに1班のチームは「前回のパワーポイントで言うと、1番の相続税の歴史、課税の根拠と2番の富の再分配機能とは何か、を調べていて分からない部分があり調べきれてないところがあるのでそこを調べる。まとめの前段階ぐらいは行く」とした2班のチームは「今日はどうやって行くか方向性を話し合って、自分たちに課題を課して全員がそれについて知っておくことが必要なので、今週はそれをメインに活動しそれについて全員で話し合って企画し、パワーポイントにまとめようと考えています」と話した。3班のチームは「1~4までの項目すべての話し合いは終わり、次は課題を拾い上げて後は深く調べていくだけで、結構いい感じで進められた」と話した。4班のチームは「パワーポイントの1と2の項目を今調べていて、コロナと東日本の税金の使い道が何にいくら使われたかという資料を集めているところで、来週までにその資料をもとにパワーポイントを作って3の項目について話し合いたいと思う」とそれぞれ次週18日までの予定を立てた。研究発表まで残り3週間。13人の若者が作り上げた租税教育に対する研究成果が期待される。

太郎良留美教授はこの租税教育プロジェクト開始してから6年間の成果を「毎年学生は変わるんですが、みんなが口を揃えて言うのは、税金というものを改めて考えたり、調べたり、自ら知ろうという取り組みをしてこなかったんだけど、調べれば自分の身近なものであったり、我々の生活を支えるものだということが分かって、単に消費税が上がるのは嫌だとか、税金は取られるものだということを、『そこには疑問を持つようになった』と学生からはよく聞きます」と語り、学生たちは専門演習に加え、税理士など外部の講師らの指導と交流を通じ租税への専門的知識の習得、また、「租税教室」の講義体験から小学生に教えることにより無関心から日本国民としての自覚意識の芽生えが育まれていく。また、有泉 真税理士は「税金は切っても切れないものなので、自分事(国会議員を通じた)になります。このように課税制度は決められているのでそう意識を持ってもらい、今後、日本においては、税金というのが今までも増して複雑になっていきますし、税金自体が高くなってきていますので、学生さんたちには関心を持って社会に出てもらいたい」とここでの学びの機会は大事と話した。

学生たちは11月1日の「研究課題発表」を経て、いよいよ12月21日に山梨学院小学校での実施が予定されている「租税教育」の実践に向け、これまでに得た知識をもとに文科省の学習指導要領に沿い、税の種類や集めた税の使い道など分かりやすく理解してもらうポイントや方法などを練り上げたシナリオ案を制作。リハーサルを繰り返しながら本番に向う。ゼミ生にとって最も忙しく充実した日々を迎える。

文(K.F) カメラ(平川大雪) 2022.10.13