●2022年度全日本大学レスリング選手権大会2日目
~山学準優勝5階級決勝進出 日体の牙城を崩せず~
~チームの誤算を若い力でカバー 次回につなげる~
フリースタイル大学日本一を決める2022年度「第48回内閣総理大臣杯全日本大学レスリング選手権大会」2日目が11月20日、大阪・堺市金岡公園体育館で行われた。出場枠は参加大学から10階級に8階級までエントリーすることができ、1階級1人、8人が出場でき、個人の成績のポイントによる大学対抗戦として争われる。1日目を終えた山梨学院は多少の誤算はあったものの、1年・2年生が期待以上の活躍を見せ5階級で決勝に進んだ。6階級に決勝者を送る日体大が一歩リードするが山梨学院大は2019年以来、3年ぶりの王座奪還を目指した。試合前、65㎏級荻野海志の対戦相手の優勝候補、日体大選手が棄権のため、まずは1階級を制した。山梨学院勢の他の階級は、86㎏級の五十嵐文彌が専大の選手に勝利。70㎏級の青柳善の輔が僅差でインカレ優勝者を破り3人が優勝に輝いた。他の2階級の61㎏級の森田魁斗は先制して善戦するも後半に逆転され2位となり、125㎏級の留学生ソビィット・アビレイは相手の日体大選手の上手さが勝り2位。ともに大学対抗得点獲得に貢献した。山梨学院は5階級3階級を制するも、日体大は6階級で5階級で優勝を決め、団体戦のグランドスラムを達成する強さで他を圧倒した。その結果、大学大学対抗得点は日体大が81点、山梨学院は60点で2位、昨年の4位から順位を上げた。若いチームでの躍進は次に明るさをもたらした。
大会は各大学10階級中、オリンピック階級6階級と非オリンピック階級4階級の内から2階級にエントリーの計8階級で争われる。出場枠は参加大学から1階級1人の8人が出場でき、個人の成績のポイントによる大学対抗戦として争われる。1日目は各級の予備選から準決勝までを実施、2日目に敗者復活3位決定戦、決勝戦が行われた。決勝戦に5階級進出した山梨学院と6階級に決勝進出者を送る日体大との差はこの時点では小さくはないが直接対決を含め、結果次第では優勝も狙える位置についた。
■大会2日目 敗者復活戦3位決定戦、決勝戦ー
◆決勝戦に臨んだ5階級。65㎏級荻野海志―
試合開始前、65㎏級決勝戦、山梨学院荻野海志(1年)の対戦相手、優勝候補の日体大清岡幸太郎(3年)の棄権が伝えられ、不戦勝で荻野は優勝第1号になった。荻野海志選手は「清岡選手とは国体で負けたのでリベンジをしたくて本当に対戦したかったので優勝という結果ですけど」と複雑な表情を見せたが、「久々の優勝だったのでうれしさはありますが、インカレでも優勝するつもりで行ったんですけどまだ実力不足で、そこからの期間をどう埋めるかということで、それには練習するしかなかったので誰よりも練習している自信もありましたし、練習量でつかみ取った勝利だとは思います」と胸を張った。
◆86㎏級五十嵐文彌 軽快な動きと柔軟な身体で上を目指すー
決勝戦2戦目、86㎏級五十嵐文彌(1年)選手と対戦するのは専修大の内田貴斗選手(4年)。
開始早々、相手の速攻を柔らかい身体で凌ぐと素早い動きで足を取ると後ろに回り先制する。その後も攻撃の手を休めずに優位に試合を進め前半を7-0で折り返した。後半でも序盤に勝負を決めテクニカルフォール(TF)で勝利。2つ目の優勝をもたらした。五十嵐文彌選手は「素直にうれしいです」と照れた。決勝戦は「国体終わってから組み手を練習してきて、その練習が上手く発揮できた」と喜んだ。「最初の試合で上手くいったのでそれからいい感じでうまく乗れたというのはあります。まだそんなに強くないのでどうこうと言えないですが全日本に出て少しでも上位の人に食らいついて行きたい」と抱負を語った。
◆歴代のカザフスタンの遺産をつなぐか125㎏級ソヴィット・アビレイー
カザフスタン出身の留学生ソヴィット・アビレイの決勝の相手は日体大の伊藤飛未来(4年)。今年の97㎏級全日本学生選手権(インカレ)フリー、グレコ両スタイルで優勝した二刀流の長身選手。この大会でも優勝候補に挙げられていた。試合は前半、組み合いからアビレイが徐々に相手にプレスをかけサークル外で出し1ポイントを先制、さらに力で押し込む隙を狙った相手の素早いタックルから、外に投げ出される大技を掛けられ4ポイントを失った。後半も力で上から攻め倒してフォールにというこれまでの成功した攻撃が効かず、逆にポイントを失い1-7と完敗を喫した。負けたソヴィット・アビレイ選手は「うれしくない。次はタックルを磨いて頑張りたい。タックルが入れれば勝てたかも知れない試合だった」と悔しがった。
◆61㎏級森田魁斗 全日本王者、全日本学生選手権王者の欠場の穴を完璧に埋めるー
1日目準決勝まで順調に勝ち上がってきた森田魁斗(2年)。対戦相手は日体大・田南部魁星(2年)。今年の国体で榊流斗に勝利し優勝した。怪我の回復が遅れて欠場した榊流斗(4年)の副選手として出場した森田は先輩のリベンジに燃えてマットに上がった。前半序盤、互いにキレのある動きを見せチャンスを窺う。先に森田が2ポイントを奪うと、中盤田南部が奪い返し2-2で後半につないだ。田南部が優位に立ち徐々に圧力を掛け逆転。さらにフォールに持ち込むが森田も必死に耐え凌いだ。その後、大学の意地をぶつかり合いが激しく互いに得点を奪うが田南部が優勢に試合を進め4-8。日体大に軍配が上がった。試合後、森田魁斗選手は決勝について、「自分は先制点を取るのが持ち味なのでそれを意識して、相手と戦うのは今回6回目なので前の反省を活かしつつ戦うことを意識しました。急に出場が決まったので、自分は減量を多くしなければならないのでもう少し調整してやればもっといい勝負ができると思います」と激闘の後を振り返った。
◆70㎏級青柳善の輔 最上級生がいない中、気迫で後輩を引っ張るー
今大会、終始落ち着いた雰囲気をまとい試合に臨んできた70㎏級青柳善の輔(3年)が対戦するのは全日本学生選手権(インカレ)優勝の日大・渡辺慶二(3年)。6月の東日本学生春季選手権に対戦し、勝利して優勝した相手で2度目の対戦となった。試合は互いに組み合いチャンスを窺うが決め手なく相手のコーションが青柳に得点され1-0で後半に持ち込まれた。後半は青柳のコーションが相手ポイントなり1-1の同点。一進一退の攻防が続いたが青柳が決定的ポイントがない3-1の僅差で勝利。山梨学院が3階級で優勝を飾った。一方、日体大はここまでにすでに5階級で優勝を決め、優勝は確実となった。青柳善の輔選手は「大学での全国大会は初めて。率直にうれしいです」と控えめに優勝を喜んだ。決勝戦について、「まだ6月に試合をしたばかりの相手で今回2回目。相手の技を自分がちょっと戸惑って点取りに行きづらい状態で進んでしまいロースコアのギリギリですが勝てて良かったです」と納得はしない。大会を通じて感じたことは、「課題がたくさん見つかる試合になってしまったんですけど、相手の動きを落ち着いて見て、攻めてきた時にカウンターを合わせるとかそういう練習をしてて、そのための追い込んだ練習をしてきたので効果が出た」と語った。
5階級中3階級の優勝に終わり日体大に差を付けられたが、その中で優勝候補と目された選手が得点争いに貢献した。
◆74㎏級世界選手権代表・佐藤匡紀 自らのミスを挽回、3位を死守―
佐藤匡紀(3年)は1日目の準々決勝で痛恨のミスを起こし、試合に敗れチームの誤算を招いた。その佐藤がその試合の相手が決勝に進んだため敗者復活戦に回り、雪辱の試合に臨んだ。敗者復活戦2回戦に出場。危なげなく相手を圧倒。TFで勝利。3位決定戦に進出した。決定戦でも貫録を見せ前半中盤でTF勝利し3位に入り大学対抗得点で貢献した。佐藤匡紀選手は審判へのアピールの間に相手に攻め込まれ負けの原因を作った行為に、「相手がサークル外に出たと思ったので。(審判)笛がなっていなかったので自分のミスです」と認めた。大会には「減量も上手くいき体調も良くて、自分はしばらく優勝していなかったので優勝したいと臨みました」と惜しくも優勝の機会を逸した。次の目標は「(12月の)天皇杯で久しぶり優勝に向けて頑張りたい」と再びの輝きを目指す。
試合終了後、小幡邦彦監督は「前評判で日体大かうちかと言われていたので、今回の決勝を見ていても日体大が6階級、うちが5階級。うちが万全であれば7階級行けたと思っていて対抗できるのはうちしかいないと思っているので、その辺は今回出たメンバーは3年生以下で今回の悔しい思いもしていると思うので来年に向けてリベンジできるようにこれから鍛えていきたい」と語った。
大学対抗得点は、1位・日体大81点、2位山梨学院大60点、3位・日大55点、4位・専大37,5点、5位早大35,5点、6位拓大30,5点、7位明大24,5点、8位国士舘大18.5点となった。個人賞では山梨学院の青柳善の輔が敢闘賞を受賞した。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2022.11.20