●山学短大食物栄養科で豚レバー料理レシピ開発試食会
~レシピ6品目を食品製造企業が高評価~
~若い発想で食べやすさと食育を考えた~
12月22日、山梨学院短期大学で「豚レバーを用いた料理レシピの開発に係る試食会」が行われた。これは食品製造・株式会社いつみ家と山梨学院短大食物栄養科の特定事業協定に基づいたもので、まだ抵抗感のある豚レバーの消費を拡大したいいつみ家の求めに応じて山梨学院短大が豚レバーを用いた料理レシピを開発。このほど中間報告会としていつみ家関係者を招いて試食と意見交換会を催した。初めに山梨学院短期大学・遠藤清香学長、続いて株式会社いつみ家・椙山滋社長が挨拶。引き続き、山梨学院短大食物栄養科・中川裕子教授ゼミの1・2年生を中心に18人が調理した6品の豚レバーを用いた料理レシピが披露され、レシピ開発に携わった古屋七虹食物栄養科助手がそれぞれ詳細に内容を説明した。その後、遠藤学長はじめ4人のいつみ家関係者が試食し、調理にあたった学生たちに専門的立場からレシピのアイディアや工夫、苦労などを質問、活発に意見交換が行われた。その結果、出席者5人すべてが6品の試食品に高評価を与えた。最後にイタリア料理店オーナーシェフ今井 寿氏が「いろいろな発想があり、私も勉強になりました。皆さんのレベルの高さにはびっくりしました」と総評した。今後、さらに改善点を加え完成度の高い料理レシピを目指し商品化を目指す。
試食会が始まる前、山梨学院短大食物栄養科・中川裕子教授は今回の連携協定事業を「本学は企業の食育に関するいろいろな悩みを聞く相談窓口をホームページ上に開設しています。そこに今回、まだ抵抗感のある豚レバーを使った総菜を本学の先生や学生の知恵を借り、栄養的な付加価値を活かしたレシピを開発したいと電話で相談をいただいたのを契機にこの事業がスタートしました」と食品製造のいつみ家との連携事業のきっかけを語った。いつみ家は事前に山梨学院短大の学生約110人にアンケートを依頼し、レバーに対する若者の嗜好性を調査し、準備を進めた。一方、山梨学院短大としては、短大全体の特定事業として行うことで学生たちが実際に企業と協働する貴重な経験が得られると連携の方向で話が進められた。中川教授は続けて「本学は食育ボランティアというものをカリキュラムの中に単位化していますので、そういう形で学外の方たちと一緒に協働して食育活動することに非常に意味ある授業だと思っています。学生たちも非常に緊張感もありますけれどもやりがいを持って、自分の与えられたこと以上に今頑張ってやってくれている感じがして、とてもいい機会に恵まれたと思っています」と効果を説明。
■山梨学院短大と株式会社いつみ家が特定事業協定を結ぶー
2022年7月1日、山梨学院短期大学と食品製造の株式会社いつみ家は特定事業協定を締結。本協定により定めた特定事業を協定締結年度内(2023年3月31日まで)において進めることにより、地域の食と健康に関する教育・研究を深め地域の振興に寄与することを目的に、いつみ家商品の試食及び官能評価並びに商品開発を行うこととなった。(※官能評価=食品分野において、おいしさを評価する上で不可欠な方法として用いられる方法で、人間の感覚(味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚)を利用した評価のこと)。
■株式会社いつみ家ー
いつみ家は平成2年総合量販店で精肉、惣菜店としてスタート。その後、平成6年株式会社として法人設立。それからも業務を拡張。平成12年には株式会社いつみ家として組織変更し次々と業務を拡大した。中心となる食品製造部門では、たれ、畜肉加工、和菓子、米飯加工、冷凍食品など幅広い食品の製造に携わっており、現在、「惣菜キット」の製造販売に注力し、全国4500店舗に出荷し、「心豊かな食卓への貢献」を目指し新しい食文化を提案している。特にレバーにフォーカス(特化)したフローズン・デリで商品開発し、さらなる市場拡大を見据える。
■初めに両者代表挨拶
試食会開始前、今回豚レバーを用いた料理レシピに携わった山梨学院短大食物栄養科中川裕子教授ゼミの1・2年生14人と食育ボランティアカリキュラムをとる4人の計18人が調理実習室でレシピの仕上げに忙しく立ち働いていた。準備ができた午前10時45分、料理レシピを主導した中川裕子食物栄養科教授から出席者の株式会社いつみ家関係者の紹介があり、初めに山梨学院短大・遠藤清香学長が挨拶。「本日は、株式会社いつみ家様と本学の連携協定の基、豚レバーを使った商品開発が、報告会までに至りましたことをとてもうれしく思っております。ご協力どうもありがとうございます。学生の皆さん、いつみ家さんという企業と連携してこのような商品開発に関わるという経験、いかがでしたか。試食に至るまでいろんな調査をしたりしながら今日の日を迎えたと思いますけど、今日に至るまでの過程を振り返りながら実際の企業の方々と、一緒に課題研究をする機会を得られたことに感謝し、これからの報告会ができたらと思っています。いつみ家の皆さんもお忙しいところありがとうございます」と述べた。引き続き株式会社いつみ家・椙山滋代表取締役社長が「私にとっても貴重な機会になります。5月にレバーのアンケートを110人の方にお願いして、その結果をいただきました。やはり思っていた通り半分はまだ期待が持てるなと見ることができました。(中略)私たちは安全で安心で健康に、まさに命をつなぐ食材を提供できればと思います。今回の出てくるメニューが普通にテーブルの上に置かれるように私も企業として創意工夫、改善して事業化していければいいなと思っていますし、皆さんも食材というのは本当に命をつなぐものになりますので今から将来像を見越して頑張っていただきたいと思います」と述べた。
■学生たちの柔軟な発想が生み出した6品の料理レシピの紹介ー
続いて、料理レシピの紹介が中川教授とともに指導した古屋七虹食物栄養科助手から料理レシピの紹介が行われ、使われた材料や作り方、栄養価を説明した。6品の料理レシピは和・洋・中のバラエティーに富んだ試食品が提案された。
【和食】:1.せいだのたまじ風豚レバー炒め
【洋食】:2.豚レバーのネギチーズパイ~野菜添え~
3.豚レバーのパプリカの色野菜ソテー
【中華】:4.たっぷり野菜と甘酢あんの豚レバー肉団子
5.豚レバーとキムチのピり辛チャーハン
6.レバニラ風中華風スープ
これらのレシピは、レバーの臭みをカバーしたものや、健康に留意した野菜との組み合わせやレバーの含まれる鉄分の吸収力を促進したもの。調理方法で幅広い年齢層が食べやすいなど工夫が施されていると説明した。
■試食・意見交換
試食は、出席者の株式会社いつみ家から椙山滋社長、尾身彰隆統括部長、福田美奈子製造部MI開発課主任、イタリア料理オーナーシェフ今井寿氏の4人、山梨学院短大から遠藤清香学長が行った。5人は開発された料理を試食しながら調理した学生たちに質問やアドバイスし、学生たちがレシピ開発に懸けた思いなどを聞き、活発な意見交換をした。評価は各料理の外観・味・調理法を『とても良い』から『劣る』までの4段階評価でアンケートに記入する方法で行われた。その後、5人の出席者がそれぞれ感想を述べ、いつみ家・尾身彰隆統括部長は今回の料理レシピを試食して感じたことを、「嫌いな方を好きにしていただくことと、好きな方をもっと好きになってもらいたいという思いがつながる反面、まだまだレバーを使いこなせていないと感じるところがありましたので、どれも非常に参考になりましたので今後の商品化に向けて検討させていただきたい」と述べた。また、椙山滋社長は「びっくりしました。こう来るかって。私たちはどうしても事業として考えるとなかなかこういう発想はできないんです。しかし、皆さんがおいしいものであったり栄養のことを考えることは、身体につながることなんです。非常にいい機会でした。ありがとうございました」と感想を述べた。アンケートの記入にはすべてのメニューで『とても良い』、『良い』が並んだ。豚レバーと料理のマッチングについては「レバーの使い方に新たな可能性を感じる。参考になった」「若い発想力が素晴らしい」「この機会にレバーを好きになってくれたら」「どれも美味しかった」など高評価が書かれていた。
■総評ー
最後にイタリア料理店のオーナーシェフ・今井 寿氏が学生たちが取り組んだ料理レシピを総評した。「感激しました。今日6品いただきましたが、学食で作ったらどうですか。みんな本当に通用しますよ」と開口一番、出来栄えを褒めた。現在、食育、フードロスの仕事にも力を注ぐ今井氏は「食育は身体にいいと考えて食べていただくということです。これは嫌いだから駄目だとかということではなく、工夫して料理して食べていただくということは非常に大事なことです。どうやって食べてもらいエネルギーを蓄えるかは栄養士さん皆さんたちの大事な仕事です。先入観でレバーが駄目だということもあるんですが、今日はこうやって、いろいろな発想があり、私も勉強になりました。皆さんのレベルの高さにはびっくりしました」と学生たちの発想と料理に向き合う姿を称えた。
■中川教授、古屋助手とともにレシピ開発に取り組んだ学生ー
試食会が終わって、レシピの開発に携わった学生(左から小笠原祐衣さん、柿澤茉衣さん)「レバーは独特な味がするのでの好き嫌いも分かれ、その中でどうゆうふうな食材と合うのかを考えて調理するのが難しかったですけど、おいしいと評価してくれる人が多くて良かったです。評価してもらうことで、もしこれからレバーのレシピを作るときの、アドバイスをもらえたことがうれしいです」と小笠原さん。柿澤さんは「レバーが苦手な人でもどのようしたらおいしく食べてもらえるか考えた時に、私が今日作ったのは『せいだのたまじー』だったんですけど、味噌と砂糖がマスキング効果があるというのを調べて、他にもいろいろ調理法も工夫して調理したんですけど、やはり、どうしたらおいしく食べてもらえるかが最後まで難しい点ではありました」と話し、続けて「いろいろ考えて思いを込めて作ったものなので、認めてもらえたことが本当にうれしいですし、やり切った感じがすごくあります」と笑顔で話した。
中川裕子教授は「これら、いただいた貴重な意見を集約して最終報告会へ向けての活動とし、今後はいつみ家側からの要望があれば特定事業協定は継続する」と語る。山梨学院短期大学ではこれからもいろいろな企業とともにコラボレーションしていくことで本学の持つ知見を外に発信していく。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2022.12.22